ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

5000年前の歴史 ファラスの手記

5000年前のアストルティアのお話。
これはエテーネ王国の王室付き従者、ファラスの手記である。


レンダーシア貿易の要として機能している「海洋都市リンジャハル」。
その長を務めているのは才気あふれる若き一人の召喚士リンジャーラだった。


召喚士リンジャーラは、学徒時代、ファラスの師匠とお互いに助けあう良き友だった。


アストルティア最大の大国「エテーネ王国」と物流の要「海洋都市リンジャハル」。
その未来を担う者同士、通じ合うものがあった。


しかしひと月前に、海洋都市リンジャハルの住民の3分の1が命を落とす恐ろしい疫病が広まった。
そしてそれによって、ファラスの師匠が正式にエテーネ王国の使者として強大な力を持つ宝珠をたずさえ、海洋都市リンジャハルを救うため旅立つことになった。


遠く海都を見つめる師匠の横顔は厳しい。
久しぶりの友人との再会がこのような時になってしまい、辛いのだろう。


海洋都市リンジャハルに着くと、市街の至る所にしかばねが転がり、時々亡霊のようにうつろな人間とすれ違う。
海洋都市リンジャハルは、まるで地獄だった。


中央塔で対面した召喚士リンジャーラの目はぬけがらのように生気がなく、その姿に我が師匠もショックを隠し切れないようだった。


しかし、師匠は懸命にご友人を励まされた。
この宝珠が持つ強大なチカラでともにリンジャハルの民の命を救おうと。


その言葉でリンジャーラの瞳にチカラが宿るのをファラスは見た。
その後、リンジャーラは寝る間も惜しんで宝珠のチカラを活かす方法を探求した。


そのかいあって数ヶ月後には疫病は駆逐され、それどころか海洋都市リンジャハルは宝珠のチカラによりかつてない速度で発展を遂げていった。


その急激ともいえる勢いは、二度とあの地獄を繰り返させないというリンジャーラの強い決意を表しているようだった。


召喚士リンジャーラから我が師匠に招待状が届いたのはほんの2日前のことだった。
招待状には復興した海洋都市リンジャハルをぜひ見に来て欲しいと書かれており、遠く海都を見つめる師匠の横顔は明るかった。


中央塔に着くと、二人は学徒の頃に戻ったように軽口をたたきあい、無邪気な笑い声を夏風に運ばせた。


リンジャーラは宝珠のことを気にしているのか、この借りはいつか必ず返すと言っていた。
師匠は貸し借りを気にする方ではないのだが。


しばらく歓談した後、リンジャーラは仕事に戻り、師匠とファラスはリンジャハル名物の魚料理を食べようと町の料理屋に向かった。


その店で私達は偶然にも、近頃失踪する住民が急増しているという気になる噂を耳にするのだった。


持ち前の正義感の強さから我が師匠は住民の失踪事件の調査に乗り出した。


調査を初めて数日後の月夜、異変は起こった。


放心状態の男が一人、リンジャーラの住む中央塔へ入っていくのを見かけたのだ。
師匠は男の後をつけていくことにした。


男を追って着いたのは、中央塔周辺に建つ5つの塔の一つだった。
そして塔の中で我々は信じられない光景を見た。


そこでは異形の魔神が男を頭から食べていたのだ。


その傍らには表情のないリンジャーラがおり、師匠は厳しい表情で彼に詰め寄った。


リンジャーラは宝珠を闇に染め、魔神を召喚し、強大なチカラを得たのだと告げた。
国を豊かにするには、そのチカラが必要なのだと。


師匠が何かを言おうとした瞬間、塔が大きく揺れた。
私達が慌てて外へ脱出すると、5つの塔から無数の魔人たちが次々と溢れだしていた。


魔人たちは次々と海洋都市の住民を喰らい、建物を破壊していった。
師匠と私は無我夢中でその魔人たちと戦った。


師匠の持つ、比類なき魔力の前に、魔人たちは次々と倒されていった。
そしてあと一歩ですべての魔神を一掃できると思ったその時、中央塔から光が溢れ、他を圧倒する禍々しく強大な気配が現れたのだ。


それは咆哮し、都市全体を震え上がらせた。


不甲斐なくも私は衝撃で気を失ってしまい、気がついた時には師匠の姿はどこにもなかった。
駆けつけた塔の中ももぬけの殻だった。


海洋都市リンジャハルは生者のいない死の都と化していた。
私は町中を探しまわったが、とうとう師匠は見つからなかった。


あの時何が起こったかわからないが、我が師匠が簡単に命を落とすとは思えない。
だから私は師匠を探す旅に出ることにしたのだ。


これで私はこの手記の筆を置こうと思う。
最も敬愛した人に再び会える日まで。