ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード21 氷雪と恵みの彼方へ

エステラに呼ばれ、主人公は部屋に向かった。
「主人公さん、お待たせしました。」
「先ほど、氷の領界へ調査に向かったトビアスたちが戻ったと連絡がありました。」
「総主教オルストフさまの部屋で氷の領界の状況を報告したいとのことです。」


主人公たちは早速、総主教オルストフの部屋へ向かった。
「主な者はそろったようですし、氷の領界の報告をお願い出来ますかな。」


総主教オルストフがそう言うと、ジーモンという部下が報告を始めた。
「氷の領界はその全土を分厚い氷でおおわれており、それはもう寒々しいところでありました。」
リヘイという部下がそれに続く。
「我々は寒さに耐え、氷の世界を進みました。」
「そして、試練の塔を探し求めてとある洞くつにたどり着いたのです。」
ヒーゴという部下が続ける。
「しかしそこで、現地のものから白銀の死神と恐れられている凶悪な魔物に運悪く出くわしてしまいまして、我々をかばったトビアス様が大怪我を負ってしまい、それでいったん引き上げてきたのです。」


エステラが驚く。
「トビアスが!?怪我の具合はどうなのです?」


ジーモンが答える。
「かなり危ない状態だったのですが、なんとか一命は取りとめました。」
「今はご自分の部屋で休んでおられます。」


エステラは安堵の表情を浮かべる。
「そうですか。」


総主教オルストフが言う。
「ふうむ。やはり氷の領界も一筋縄ではいかない危険な場所だと判断するほかないようですな。」


エステラが前に出る。
「オルストフさま。トビアスに代わり、私が氷の領界へ向かいたいと思います。許可をいただけますか?」


総主教オルストフは頷いた。
「安全を確保出来てからと思っていましたが、こうなってはいたしかたありません。」
エステラ、あなたに任せましょう。」
「そして主人公さん。エステラと共にあなたも氷の領界へ行っていただけませんか?」


主人公は大きく頷いた。


「おお、いっていただけますか。感謝いたしますぞ、主人公さん。」


エステラが主人公に話しかける。
「主人公さん、ともに氷の領界へ向かいましょう。」
「私はあなたの後を追っていきます。」


総主教オルストフが氷の領界への道について説明をする。
「氷の領界への道は聖都エジャルナ南西に建つ業炎の聖塔のさらに北、円盤の遺跡にあります。」
「氷の領界の現状を見定めて次なる領界への道を開いて下さい。どうかよろしくお願いいたします。」


主人公とエステラはすぐに円盤の遺跡に向かい、氷の領界への門をくぐった。


氷の領界は寒さが厳しく、あらゆるものが凍りつく地域。
この領域の人々はイーサの村という南西の方角にある集落で暮らしていた。
身も凍るような寒さが続く中、エステラと主人公はイーサの村を目指し出発した。


イーサの村では、氷の領界に住む竜族の人々が皆、飢えに苦しんでいた。
それを見たエステラは、一度、炎の領界へ戻るという。


ちょうどその時、イーサの村の村人達が騒ぎ始めた。
「さあ、その目にしっかりと焼き付けてくれ。」
「これから私達を食糧不足から救ってくださる伝説の緑の者のお姿を。」
「こちらにおられるのが、伝説の緑の者、その名もダストンさまだ!」


奈落の門をくぐってすぐに行方不明になってしまった城主ダストンが、神輿にのってやってきた。
ダストンは怯えている様子だ。


城主ダストンの頭の上に咲く花をみて、イーサの村の村人達が騒ぐ。
「見ろ!あの頭の上に咲いている花は、まぎれもなく恵みの木の花。」
「本当に伝説の緑の者が現れたんだ!」


「緑色の肌、私達とは異なるたたずまい、間違いないわ。伝説の緑の者が現れたというのは本当だったのね。」


イーサの村のノグリッド村長が村人たちに言う。
「皆の者、静粛に。くれぐれもダストン様にそそうのないようにな。」
「この方こそ、村の希望そのものなのだから。」


それを聞いた城主ダストンはますます怯える。
「ひぃ、やめてくだせぇ。わしはそんな役立つものじゃねえんです。」


ノグリッド村長はダストンが言うことにかまわず続ける。
「思えば伝説の緑の者が現れるこの時を、私達はどれだけ待ちわびたことか。」
「皆これまでよく耐えてくれた。」
「この地に食料をもたらす恵みの木が凍りつき、はや数ヶ月。これまでは村が食料不足で滅びるのも時間の問題かと思ったが。」
「村の伝承にある通り、伝説の緑の者が現れた。これでもう安心だ。必ずやダストン様が私達を守ってくださることだろう。」


それを聞いたダストンは逃げ出そうとしている。
「で、ダストン様、どちらへ行かれるおつもりですか?」
「ダストン様がこの村を救うことは定められた運命なのです。」
「運命に逆らうことなど出来ません。」


その時、ダストンは主人公の姿を発見する。
「アンタは!そんなところで何ボーッと見てやがるです!」
「早くわしを助けてくだせぇ!」


しかし、ダストンはそのまま村長の家に運ばれていった。


エステラは困惑の表情をしている。
「あの方が主人公さんのご友人・・?」
「いえ、すみません。話を本題に戻しましょう。」
「今、村の人達が話していた通り、この地は食料不足で困っているようなのです。」
「それで私、少しでも助けになりたくて。」
「教団から何か援助ができないか、総主教さまにかけあってこようと思います。」
「飢えと病という違いはありますが、彼らを見ていると、私の故郷マティル村を思い出しまして。」
「苦しんでいる人のため、私も何か出来ることがあるならどんな小さなことでもしてさしあげたい。」
「しばらく私は炎の領界に戻りますが、主人公さんもこの村のためにおチカラを貸していただきたいのです。」
「どうぞ、私が氷の領界に戻るまでこの村のことをよろしくお願いしますね。」


そう言って、エステラは炎の領界へと戻っていった。


主人公がイーサの村のノグリッド村長の家の前に着くと、家の前に、リルチェラという竜族の女の子がいた。
無理矢理笑顔を作って、ノグリッド村長の家のドアをノックしている。
中からノグリッド村長の妻が出てきた。
リルチェラの姿を見ると怯えるような眼差しで驚いた。
「きゃ!リルチェラ!?」


リルチェラはかまわず話し始める。
「おひさしぶりです、ヒヤーネ奥様。」


「なんの用かしら?」
ヒヤーネは嫌な態度を露骨に見せた。


リルチェラは言う。
「あのう、あたしもダストン様に会いたくて。」


ヒヤーネが首を横に振る。
「それはできないわ。ごめんなさいね、リルチェラ。どうか、お願いだから帰ってちょうだい。」


リルチェラはなおも食い下がる。
「ちょっとくらいダメ?だって、村のみんなには会ったんでしょう?あたしだってダストン様に会いたいよ!」


ヒヤーネが考え込んでいると、奥から声が聞こえた。
「おい、どうしたんだ!?そんな玄関先で立ち話か?」


ヒヤーネが答える。
「それが、リルチェラがダストン様に会いたいって訪ねてきて。」


それを聞いたノグリッド村長が玄関先にやってきた。
「リルチェラ、村にはあまり近づかないでくれと言ってあるだろう。」
「ダストン様は恵みの儀の準備で忙しい。悪いが帰ってくれ。」


リルチェラは家にあげてもらえず、閉めだされてしまった。
落ち込むリルチェラ。
その時背後から何者かに声をかけられる。


「おうおう、やい、元気ドロボウのリルチェラ!」
「こんな所まではるばる訪ねてきてもムダだったようだな。」


リルチェラが振り返ると、村の男の子が2人立っていた。
その男の子たちは、ジャイムとリエイグと言うようだ。


ジャイムがなおも言う。
「お前みたいな奴が村に来ると迷惑なんだよ!」
「ヒヤーネ奥様の顔を見ただろ?」
「まるっきりビビっていたじゃないか。」


リルチェラは怒った。
「そんなことないもん!いじわる言うな!」


リルチェラが怒ったことでジャイムは怯えた表情をするが、すぐに強がった。
「お前が怒ったってオレは怖くないぜ!」


そのとき、ジャイムはバランスを崩してリルチェラの手に身体が触れてしまった。
すると、急にジャイムは苦しみ出す。
リルチェラの手は緑色に光っている。


リルチェラが急いで手を離すと、ジャイムは気を失って倒れてしまった。


リエイグがリチェルラを怒鳴りつける。
「ほら見ろ!お前のせいでジャイムがひどい目にあったじゃないか!」
「お前が来るとみんなイヤな思いをするんだ!」
「元気ドロボウは村から出て行けよ!」


リルチェラは泣きながら村を去っていった。
その後ジャイムはすぐに目を覚ました。
身体に異常はないようだ。


主人公は村長の家に入り、ノグリッド村長に話を聞く。
「ん?あなたは先ほど女性神官の方と一緒にいましたね?教団の方でも緑の者への面会は出来ませんぞ。」
「この領界の民は凍てついた過酷な世界でも恵みの木と呼ばれる大樹のおかげでこれまで生きながらえてこれました。」
「寒さ厳しいこの領界でも恵みの木のまわりには植物が育つのですよ。」
「ところが、最近になって領界の寒さがいちだんと増し、恵みの木が凍りついてしまったのです。」
「このままでは食べていくことができません。」
「伝説の緑の者とは、恵みの木を治し、その名の通り、私たちに緑をもたらす人のこと。」
「どうか、緑の者のジャマはしないでください。」


主人公は、ダストンを探していたことをノグリッド村長に説明した。


ノグリッド村長は驚く。
「あなた、ダストン様と知り合いなんですか?」
「確かに先ほどダストン様が何やら名前を呼んでいたような。」


「それにあなたのその姿。私達竜族とは違うようです。」
「ダストン様と同じく、異世界からの客人ですか。」
「うーん、わかりました。仕方ありません。本来なら儀式の準備のため会えないのですが、ダストン様に会うことを許可しましょう。」
「ダストン様は2階の部屋におりますよ。ただし、話が終わったらここへ戻ってきて下さい。」


主人公は2階へ行き、ダストンに会うことが出来た。
「アンタ、わしを迎えに来たんですね?早くわしをここから解放するんです!」
ダストンが主人公に詰め寄る。


主人公はダストンに事情を説明した。
「なんですって?儀式が始まるまで出してもらえそうにない?」
「びっくりですよ。アンタがそんな使えないやつだったなんて。見直しましたよ。」
「とはいえ、わしはここに来てからというもの、もてなされるわ、ありがたがられるわでもうウンザリしてるんです。」
「こっちの世界に着いた時、でかい木の上に落ちたんですが、それでこの扱いとはひどいったらねえです。」


ダストンの頭には花が咲いている。
「村人たちはなぜかわしの頭を見ては、伝説の緑の者だとか言ってくるんですよ。」
「まったく意味がわからねえですな!」
「それにわしと竜族ポンコツ娘を引き離したことも許せねえんです。」
「アイツはお気に入りだったのに。」
「とにかく、あんたもわしをここから自由にする方法を考えるです。」
「わしもいろいろ試してみますからね。」


主人公はのノグリッド村長の元に戻った。
「ダストン様とお話出来たようですね。」
「ふむ、やはり。ダストン様のご機嫌はすぐれないご様子でしたか。」
「きっとダストン様は儀式の準備がとどこおっていることを気にしているに違いありません。」
「じつはあなたにご相談があります。」
「伝説の緑の者は恵みの儀という儀式を行い、恵みの木を再生させるのですが、私達では儀式に必要なものが入手できず困っていたのです。」
「見たところあなたはずいぶんと旅慣れた手練れのご様子。」
「どうでしょう、私達を助けると思って、恵みの儀を手伝ってくれませんか?」
「それに教団の方が探しているという塔も、凍りついた恵みの木によって閉ざされた道の先にあるんです。」
「恵みの木が治れば塔への道も開かれましょう。お願いします、どうか恵みの儀の準備を手伝って下さい。」


主人公は快く引き受けた。


儀式には「極光の魔鉱石」というオーロラの光を浴び続けた石が必要だという。
この「極光の魔鉱石」が伝説の緑の者のチカラを引き出すと言われているらしい。
しかし恵みの木が凍った後くらいに「極光の魔鉱石」が採れる遺跡の奥に凶悪な魔物達が住み着いてしまったようだ。


主人公はすぐにアヴィーロ遺跡に向かい、凶悪な魔物たちを倒し、遺跡の奥にあった「極光の魔鉱石」を手に入れてノグリッド村長のもとへ届けた。


ノグリッド村長の元へ戻ると、城主ダストンが部屋からいなくなってしまったと困っていた。
主人公は村人たちに話を聞き、ダストンがいると思われる小さなほら穴に向かった。


そのほら穴には先ほどの不思議な女の子リルチェラが住んでいた。


「あなた誰?」
リルチェラが怯えている。


部屋の奥には城主ダストンが隠れていた。
「おまえか、驚かせないでくだせぇ。」
「せっかく逃げ出してきたのに、村の誰かが追いかけてきたのかと。」
「どうやら村の奴らは一緒じゃねえようですね。」


そこにリルチェラが割って入る。
「ダストン様を叱らないで!あたしに会いに来てくれたからここでちょっとお話していただけなの。」
「あなたはダストン様の友達なの?じゃあ、ダストン様を叱ったりしないよね?」


主人公が頷くと、リルチェラは安堵の表情を浮かべる。
「よかった。はじめまして、ダストン様の友達さん。あたしはダストン様とは村の人よりも先に恵みの木の前で知り合ったんだよ。」
「ダストン様がお空からポーンって落ちてきたからね。すごくびっくりしたけど、あたし思い切って話しかけたんだ。」
「でもその後すぐに村の人達がやってきて、ダストン様は伝説の緑の者だからって、村に連れて行かれちゃったの。」
「あたし、村には行きづらいから、ちっともダストン様に会えなかったんだ。」


ダストンが主人公に話しかける。
「そんなことより、これを見やがるです!」


そう言うと、ダストンは両手でリルチェラの身体を触った。
すると、緑の煙が吹き出し、あたり一面を覆い尽くす。
「コイツに触ると、身体にチカラが入らず、もれなくへにゃへにゃになるんです!なんて役立たずなやつなんでしょう!」


チカラが抜けている城主ダストンは、何故か嬉しそうだ。


リルチェラがダストンの身体を突き飛ばして、両手を身体から離した。
「ちょっと、ダストン様!あたしに沢山触るのは危ないよ!」


城主ダストンの頭の上に咲いていた花は枯れてしまっている。
「危ないですって?そんなの全然へっちゃらです。」
「なぜなら、わしにとってポンコツなものより大事なものなんて、何一つないんですからね。」


ダストンがそう誇らしげに話すと、頭の上の枯れていた花がすぐに復活した。


リルチェラが主人公に話しかける。
「今の見たでしょう?あたしね、この変なチカラのせいで村のみんなから怖がられているんだ。」
「でも不思議とダストン様はあたしのこと怖くないみたい。」
「だからね、ダストン様が村にいるのが嫌だって言うなら、これからもここにいて欲しいと思ってるんだ。」


するとそこにノグリッド村長がやってきた。ダストンはそれを見て怯え始める。
「やはりここにおられましたか、ダストン様。急にいなくなられては困ります。村の者も皆心配しておりますぞ。」


それを聞いたダストンはますます怯える。
「いいかげんにしてくだせぇ。わしはアンタらが思っているような役に立つものじゃねえんですってば。」


しかしノグリッド村長は取り合わない。
「またまたご冗談を。今まで儀式の準備に時間がかかってしまいダストン様をお待たせしてしまいましたが、もうまもなく恵みの儀を行えます。」
「これで思う存分チカラを発揮できますよ。」
「さあ、一緒に村へ帰りましょう。」


リルチェラが村長に懇願する。
「ねぇ、村長。ダストン様、嫌がってるよ。」
「だから連れて行かないで、お願い。」


ノグリッド村長は怒りだした。
「なにを言っているんだ、恵みの儀をしないと食べるものがなくなって、村人が苦しむことはお前にもわかっているだろう。」
「ワガママを言うんじゃない!これは村人全員の命がかかっていることなんだ!」


嫌がる城主ダストンを連れて、ノグリッド村長は帰っていった。


ノグリッド村長はすぐに恵みの儀を始めるようだ。
主人公とリルチェラは急いで恵みの木に向かった。


主人公は恵みの木に着いた。リルチェラは村人に見つからないように隠れている。
恵みの木は枝や根まで凍りついている。


そこに村人に神輿で担がれたダストンが連れてこられた。
恵みの木のふもとで「極光の魔鉱石」を手渡されるダストン。
ノグリッド村長が言う。
「伝承では、伝説の緑の者が「極光の魔鉱石」を掲げて祈りを捧げる、ただそれだけで恵みの木は息吹を取り戻したという。」


ダストンはしかたなく「極光の魔鉱石」を掲げて祈りを捧げてみた。
しかし、なにも起こらない。
その様子に不思議がる村長たち。
「なぜだ、なぜ何も起こらない?」


突然、恵みの木から緑のツルが伸びてきてダストンの身体に巻き付いた。
そして、ダストンは恵みの木の地下に引きずり込まれてしまった。


村人たちは突然のことに右往左往している。


そこに、隠れて見ていたリルチェラが出てきて主人公にこう言った。
「村長はロープで引き上げるって言ってるけど、そんなことしている間にダストン様がどうなっちゃうかわからないよ!」
「おねがい、ダストン様を助けるためにあたしに協力して!」
「あのね、ここから東にあるカーレル氷雪洞は恵みの木の地下につながっているんだ。」
「そこをたどって行ったほうが早いと思う!」
「あたしね、物心ついた時にはお父ちゃんもお母ちゃんもいなかったんだ。」
「育ててくれたばっちゃんもあたしがちっちゃい時に死んじゃったからそれからずーっと一人で生きてきたの。」
「生まれつきのこの変なチカラのせいで、村のみんなからは嫌われちゃったからね。」
「あたしにとって触れることっていうのは、誰かに嫌な思いをさせることだった。」
「だってそれが当たり前だったんだもん。」
「だからあたし、ダストン様がなにげなく触れてくれた時、すっごく嬉しかったんだ!」
「あたし、どうしてもダストン様を助けたいの!」


主人公はリルチェラと一緒にカーレル氷雪洞に向かった。


カーレル氷雪洞の奥へ進むと、緑のツルが身体に巻き付いてもがいているダストンがいた。
リルチェラはダストンに巻き付いている緑のツルに触れる。


すると突然、1匹の魔物が現れた。
「びっくりした〜。わざわざ隠れていたのに、キミのせいで身体のチカラが抜けちゃったじゃないか。」


その魔物はフロスティと名乗った。
村人達から白銀の死神と恐れられている魔物だ。
「ボクはフロスティ、とくぎは色んな物を凍らせたり操ったりすること。」


リルチェラが驚く。
「凍らせたり操ったりする!?」
「じゃあ、恵みの木を凍らせたのもダストン様をさらったのもあなたなのね?」
「なんでそんなことするの?」


フロスティが答える。
「答えは簡単。なぜならそれは邪悪なる意志の思し召しだからさ。」


そう言うとフロスティが襲いかかってきたので、主人公はフロスティを倒した。


リルチェラはダストンを助けようと、ダストンの身体に触れた。
するといつものような反応が起きて、ダストンの身体のチカラが抜けてしまった。
その時、地面が崩れて2人共、更に地下へと落ちてしまう。


その時、緑の輝きとともに2人の落下が止まった。
2人の身体は浮いている。


驚くダストンとリルチェラ。
しかもリルチェラの手がダストンに触れたままなのに、ダストンは平気な様子だ。


リルチェラも驚いている。
「なんだかわからないけど、この緑の光、あたたかい。」
「それに、ダストン様からいっぱいもらった元気が身体の奥からあふれてくる感じがする。」


そのとき、どこからか声が聞こえてくる。
「リルチェラ、リルチェラ。あなたをずっと待っていました。」
「そう、あなたこそが緑の者。」
「今こそ分け与えてもらってきたチカラを私へと解き放ち、皆へ恵みをもたらすのです。」


その声の主は、恵みの木のものだった。
ダストンは、もっていた「極光の魔鉱石」をリルチェラに渡した。
「極光の魔鉱石」を受け取ったリルチェラは、祈りを捧げる。


ダストン、リルチェラ、主人公の3人の身体は地上へと浮かび上がる。


一方、闇のフードを被ったものがその様子を陰から見ていた。
「ほう、炎の領界で魔炎鳥を失った時は何かの偶然が重なったのかと思ったが。」
「まさか、フロスティをも倒すとはな。」
「神の器は逃したが、まあ、いい。次の手を打つとしよう。」
「解放者か。面白くなりそうだ。」


そう言うと、フードの者は闇の中に消えていった。


地上では、ノグリッド村長達がロープを使って城主ダストンを助け出そうとしていた。
そこに突然ダストン、リルチェラ、主人公の3人が、緑色の光に包まれて浮いて来たので驚いてしまう。
「リルチェラ!お前、その姿は一体・・・」


リルチェラはそれには答えず、「極光の魔鉱石」を掲げ、祈りを捧げる。


リルチェラの身体から緑の光が溢れだし、凍っていた恵みの木は一瞬で本来の緑を取り戻した。
「極光の魔鉱石」は粉々に砕け散ってしまったが、復活した恵みの木には大きな果実が沢山実っていた。


ノグリッド村長は目を大きく見開き、驚きで言葉が出ない。
村人たちは歓声をあげた。
「治った!やったぞ!恵みの木が元に戻ったんだ!」
「ありがとう!本当にありがとう!リルチェラ!」


ヒヤーネがノグリッド村長に声をかける。
「あなた、私たちは大きな過ちをおかしていたのかもしれませんね。」
ノグリッド村長は大きく頷き、リルチェラの元に歩み寄る。


「リルチェラ様、どうか、今までの非礼をお許し下さい。」


リルチェラは動揺した。
「村長、やめてよ!あたしは元気ドロボウのリルチェラ。」
「急に様づけなんておかしいよ!」


ノグリッド村長は頭を下げたまま答える。
「いえ、まだ驚きを隠せませんが、あなたが恵みの木を治したことに間違いはない。」
「これが示す事実はひとつ。」
「あなたこそが伝説の緑の者だったのですね。申し訳ありませんでした。」


リルチェラは首を振る。
「ちがう、あたしはこんなふうにみんなに謝って欲しかったんじゃないもん。」
「あたしね、本当は今までずっと寂しかった。」
「当たり前みたいにギューって抱きついたり、いい子いい子って頭をなでてもらったり、そんな普通のことが羨ましかったよ。」
「みんなに怖がられるのも悲しかったけど、こんな風に様づけで呼ばれたりするのも嫌。」
「もっと普通に接して欲しかったんだもん。」


ノグリッド村長が頭をあげた。
「お前の気持ちはわかった。いったん村に戻り、これからのことを話そう。」
「リルチェラ、それでいいね?」


リルチェラは泣いている。
それをダストンは冗談を言いなぐさめた。


主人公は、ダストンとともに村長の家に向かった。


村長の家に着くと、エステラが炎の領界から戻っていた。
ノグリッド村長から事情を聞いている。
「そうですか、ではこの村の食料不足もまもなく解消されるのですね。」
「それを聞き、本当に安心しました。」


エステラが主人公の姿に気づいた。
「主人公さん、話は村長から聞きました。」
「私が炎の領界で食料の確保をしている間に村を救って下さったとか。」
「おかげでこの領界の塔への道も通れるようになったそうですね。」
「さすがは解放者様。ありがとうございます。」
「恵みの木からもとのように安定して食糧を得られるようになるまでには、まだもう少し時間がかかるでしょうが、教団からも援助できることになりました。」
「主人公さんは安心して氷晶の聖塔へとお進み下さい。」


ノグリッド村長がリルチェラに話しかける。
「どうやら私たちはお前のチカラについて誤解をしていたようだね。」
「あのチカラは恵みの木の危機にそなえて生命力を蓄えておくものだったとは。」
「知らなかったとはいえ、今まですまなかった。」
「そこであれからよく考えたのだが、お前にひとつ提案したいことがあるんだ。」
「どうだろう、リルチェラ、これからはこの家で私達と一緒に暮らさないか?」


リルチェラが驚く。
「この家で?私が?」


ヒヤーネが語りかける。
「夫と相談したのですが、あなたさえ嫌じゃなければ、やはりうちに来てもらうべきだろうと。」
「今まで寂しい思いをさせてしまった分、これからの時間をあなたと一緒に過ごしていきたいのです。」


ノグリッド村長も一緒になって言う。
「私はお前のチカラを忌み嫌い、ダストン様の言葉もまともに聞かず、多くの者に迷惑をかけた。」
「何より、村長としてまだ幼い子供であるお前をひとりきりにさせてしまったこと。許されることではない。」
「どうか私にこの過ちを償う機会を与えてはもらえないだろうか。」


リルチェラは首を横にふる。
「村長と奥様の気持ちは嬉しいけど、あたしはやっぱり村に合わないよ。」
「それにみんなも戸惑うと思うし。」


ノグリッド村長はそれを否定する。
「そんなことはない。村の者も心の奥底ではずっとお前のことを気にかけていたのだ。」


困ったリルチェラはダストンに話しかけた。
「ダストン様はこれからどうするの?主人公さんと一緒に行ってしまうの?」


ダストンが答える。
「わしはもともと、見たことのないガラクタを集めるためにこの世界に来たんです。」
「それなのにだいぶ足止めされちまいました。」
「ここの氷はもう見飽きたんで、これから炎の領界とやらを見てこようと思ってますよ。」


エステラが前に出る。
「あら、ダストンさんは炎の領界にご興味があるのですね?」
「そういうことでしたら、教団を頼れるよう、手配しておきましょう。」


リルチェラが言う。
「じゃあ、あたしもダストン様と一緒に行きたい!ねえ、いいでしょう?」


ダストンは大きく首を横にふった。
「そんなの、お断りです。」
「あんたにはがっかりなんです。なーんの役に立たねえただのポンコツだと思っていたのに。」
「本当は役に立つ人だったなんて、ひでえです。」
「そんなあんたはみんなから大事にされて暮らしていくのがお似合いです。だから連れてってやったりしませんからね。」


リルチェラはうなだれた。
「もお、そんなにハッキリ言うなんて、ダストン様ってばひどいなあ。」
「でもダストン様の言うことはわかった。」
「ありがとう、ダストン様。」


ノグリッド村長がダストンに礼を言う。
「ダストン様、本当にご迷惑をおかけしました。」
「また氷の領界に来ることがあれば、イーサの村にもぜひお立ち寄りください。」


ダストンは一人で炎の領界へ旅立った。


エステラが言う。
「ダストンさんのことはご心配なさらず。」
「教団のものにも注意しておくように連絡しておきますので。」


主人公はエステラと共に氷晶の聖塔へ向かった。


氷晶の聖塔へ向かう途中、突然、主人公の弟が姿をあらわした。
「あれだけボクたちが止めたのに、やっぱりお兄ちゃんは奈落の門を越えて来ちゃったんだね。」
「お兄ちゃんはこっちに来ちゃいけなかったんだよ。だってお兄ちゃんは、このナドラガンドで死んじゃうんだから!」


そう言うと、弟は姿を消した。


エステラと主人公は氷晶の聖塔の中に入った。
幾つかの試練を乗り越え、頂上を目指す。


氷晶の聖塔の頂上には氷魔フィルグレアという魔神がいた。
氷魔フィルグレアがこの聖塔の守人のようだ。
この試練には主人公だけでなく、エステラも一緒に立ち向かう。


氷魔フィルグレアが主人公に語りかける。
「哀れみのピナヘトが打ち込みし氷のくさびを取り払わんとする者よ。」
「我に挑み、チカラを示せ。」


なんとか氷魔フィルグレアを倒したエステラと主人公。
氷魔フィルグレアがが消え去った後には、「氷の解錠の円盤」が残されていた。


エステラが安堵の表情を浮かべる。
「よかった。今回も円盤が手に入りましたね。」
「それは業炎の聖塔にあったものと同じく、領界をつなぐためのカギなのでしょうね。」
「主人公さんと共に戦うのははじめてで足手まといにならないか心配でしたが、あなたのお役に立てたようでうれしいです。」
「これから先も出来る限りあなたを手助けさせて頂きますのでどうかよろしくお願いしますね。」


「それではさっそくですが円盤をはめに行きましょう。」
「この氷晶の聖塔の外の遺跡にも円盤をはめるための台座のくぼみがあると報告を受けております。」
「そのくぼみに円盤をはめれば闇の領界への道が開かれるはずです。」
「私は教団の者に報告してから向かいますね。」


主人公は外の遺跡に向かった。
到着するとまもなく、エステラが現れた。
「主人公さん、お待たせしました。」
「教団の者を連れてまいりました。」


振り返ると、エステラと共にトビアスも来ていた。
「解放者様、ごぶさたしております。」
「白銀の死神にやられた怪我が治りましたのでこうしてまた、はせ参じました。」
「私が療養している間に、解放者様は白銀の死神と呼ばれるフロスティを倒し、氷晶の聖塔を攻略、闇の領域への道まで開こうとしていようとは。」
「何のお役にも立てず、私はなんとも情けない気持ちでいっぱいです。」


エステラがなぐさめる。
「トビアス、気を落とさないで。」
「これでようやく5つに分かれた領域の3つめ、ナドラガンドの半分が繋がるのですね。」


主人公はくぼみに「氷の解錠の円盤」をはめた。


台座に魔法陣が現れ、地響きが起きた。
封印されていたゲートに光が集まり、その光は一本の道となり天空を貫いた。


エステラが主人公に礼を言う。
「ああ、感謝いたします。解放者様。」
「あなたのおかげでまた一歩、竜族の救済の時へと近づきました。」


「領界がつながり、ナドラガ神が復活すれば必ずや竜族は救われます。」
「これほどうれしいことはありません。」


ビアスが言う。
「これより我ら教団はこのゲートが正常に動作しているか確認に入ります。」
「解放者様の露払いとなるのも教団の使命。」
「氷の領界の時と同様に、こちらは封鎖させていただきますのでご了承ください。」


エステラが言う。
「すみません、主人公さん。これも総主教さまのご意向なのです。」
「どうか今はしばしの休息をお取りください。」
「私も一度炎の領界に戻らせていただきます。」




一方、どこかでクロウズが話しているようだ。
「弟さん、お戻りになったのですね。」
「そうですか、とうとう闇の領域にまで。」
「主人公さんのことも気になりますが、我々には他にもなすべきことがあるのを忘れてはいけませんよ。」
「そうです、ついに例のモノのありかが判明したのです。」
「すべての元凶とも言える存在。創生の霊核の隠されている場所が。」




総主教オルストフは一連の報告を受け、一人で思案していた。
「これでナドラガンドの半分がつながり、また一歩、我ら竜族の悲願が成就する日へと近づきましたか。」


青い炎が灯る燭台の前で総主教オルストフは祈りを捧げる。
「たゆたう炎よ、解放者がその手でつかむ光明のきざしを今ここに示しておくれ。」


炎の中に、苦しむマイユの姿が見える。
眼鏡をかけた竜族の少年がこちらを見ている。
黄色いドラム缶のようなロボットの姿が見える。
フォステイルがなにやら呪文を唱えているようだ。


総主教オルストフがつぶやく。
竜族の夜明けはまだまだ遠い様子。解放者の行く道は困難が多いようですな。」
「ですが必ずや導きの光が我らにもたらされましょう。」
「ナドラガ神よ、これからも民をお守りくだされ。」