ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード25 最終決戦

クロウズから呼び出しがかかり、主人公はムストの町の会議室へと向かった。


クロウズが言う。
「主人公さん、あなたをお待ちしていました。」
「私が未来を見通すチカラを持っているのは主人公さんもご存じのことでしたね。」
「ナドラガンドに来て以来、そのチカラは弱まる一方でしたが、とある予知だけは日に日に確信が深まっていくのです。」
「それは主人公さんの死の未来。」
「あなたの行く末は、ああ、私はそれが恐ろしい。」


「私は身体の持ち主であるクロウズの望み、彼の故郷である竜族の隠れ里の復興を叶えようとここまで来たつもりでした。」
「しかし気づけば弟さんと再会し、今、主人公さんと共に戦っている。」
「滅びたエテーネの村の3人が導かれ合い、いつの間にか、私自身、シンイ自らの戦いにもなりつつあります。」
「かつてエテーネの村を滅びから救えなかった。私は今度こそ運命をぬり替えたい。」


「弱気になるなんて私らしくもないですね。」
「さて、まもなく疾風の騎士団の偵察がもどり、事態の進展を告げることでしょう。」


会議室に疾風の騎士団のブレエゲがやってきた。
「クロウズ様、急ぎご報告したいことがあります。」
「弟様が捕らわれている大神殿、その入口をふさぐ結界はいまだに破る目途がたちません。」
「しかし別のところで進展がありました。」
「教団の偵察のため各地に散っていた者たちが、さらわれた神の器たちを目撃したのです。」
「彼らは教団の者の手により各地にあるナドラガ神のほこらへと運び込まれているということでした。」


クロウズが答える。
「バラバラにされたナドラガ神の肉体を祀っている竜神のほこらですか。」


ブレエゲが辛そうな表情を浮かべる。
「ほこらからは、神の器の方々の悲鳴が幾度となく聞こえてきたそうです。」


「なんてむごいことを。」
「邪悪なる意志の襲撃で神の器が連れ去られ、我々の手には創生の霊核だけが残りました。」
「しかし今思えば、邪悪なる意志は霊核には目もくれず、神の器だけを狙ったように見えたのです。」
「もしも邪悪なる意志が霊核なしでも竜神を復活させられるとしたら。」
「ここで霊核を守るより、私は主人公さんの大切な仲間を助けに行くべきだと思います。」
「主人公さん、各地のナドラガ神のほこらへ向かいましょう。」
「私があなたを守ると約束します。」


ブレエゲが驚く。
「クロウズ様、同行されるのは賛成いたしかねます。」
「ほこら内には恐ろしい番人が放たれ、偵察の者が何名も負傷しております。」
「竜の民である我々は、ほこらに残るナドラガ封印のチカラに阻まれ、本来の能力を発揮できないのです。」


クロウズが答える。
「まったく問題ありませんよ。」
「あなたは創生の霊核を厳重に守って下さい。」
「頼みますよ、ブレエゲ。」


ブレエゲが去った後、クロウズはシンイの姿に変わった。
「この姿で戦うのはあの日以来ですね。」
「あなたをひとりで行かせたら、弟さんに顔向け出来ませんから。」
「背中は私に預けて下さい。」
「目指すのは5つの領界にあるナドラガ神のほこら。」
「その番人の討伐と神の器たちの奪還です。」
「さあ、共に行きましょう。」


主人公とシンイは各領域のナドラガ神のほこらに向かい、神の器たちを助けて回った。
炎の領界ではマイユを、氷の領界ではラグアス王子を、闇の領界では城主ダストンを、水の領界ではヒューザを、嵐の領界ではフウラを助け出すことに成功した。


シンイが言う。
「5つの領界のほこらをすべてまわりましたね。お見事です、主人公さん。」
「神の器の皆さんは、主人公さんが助けに来てくれると信じていたようですね。」
「あなた方の絆の深さがよくわかりました。」
「皆さんから話を聞けたことで、邪悪なる意志の狙いも判明しました。」
「ヤツらは塔の守護者を実験に使い、魔瘴(ましょう)で操ることに成功したようです。」
「そして次に神の器に魔瘴を浴びさせ、生か死かの瀬戸際に追い込むことで六柱の種族神を降臨させようとした。」
「ナドラガ神復活のために。」
「しかし儀式は失敗し、神の器たちは魔瘴に侵されたまま放置された。」
「なんとも非道で許しがたい所業です。」
「本来なら魔瘴に侵されると手のほどこしようがなく、彼らは命を失っていたでしょう。」
「ですが幸いなことに、器たちは無意識のうちに神のチカラを引き出すことで魔瘴にあらがい、回復しつつあるようです。」
「これまでに助け出せた神の器は5人。まだアンルシア姫だけが見つからず、その身が危ぶまれます。」
「主人公さん、これからどうするかについて、会議室で作戦を考えましょう。」


会議室に行くと、シンイが待っていた。
「あなたと再び、共に戦う日が来るなんて。」
「背中を預かっていてよくわかりました。あなたは昔から頼もしい方でしたが、あの頃よりずっと強くなられたのですね。」


そう言うと、シンイはクロウズの姿に変わった。
「神の器の方々は、神のチカラを引き出すことで魔瘴にあらがっていますが、魔瘴は命をむしばむ死の瘴気です。」
「器の恩恵があれど、簡単には消えないでしょう。」
「主人公さんの手前、彼らは気丈にふるまっていたようですが、しばらく安静にしなければ。」
「気になるのはアンルシア姫のゆくえですが。」


そこへ、エステラがやってきた。
「もしかしたら、アンルシアさんのことも助けられるかもしれません。」


クロウズが言う。
エステラさん、お待ちしていましたよ。」


エステラは礼儀正しくお辞儀をする。
「神の器の皆さんが救い出されたとブレエゲさんにお聞きしました。」
「本当に皆さんが無事でよかったです。」


クロウズが答える。
「主人公さんの活躍があってこそです。それで、アンルシア姫を助けられるとは?」


「はい、おふたりと別れた後、エジャルナに戻り大神殿へ入る方法を探し続けていました。」
「そして神殿の外に取り残された神官や民と接触するうちにアンルシアさんが神殿に運び込まれたとの話を聞いたのです。」
「ですので主人公さんたちにお伝えしに戻ろうとした矢先、突如大神殿を包む結界が消えたのです。」


クロウズが言う。
「その状況で先走らず報告に戻られるとは、冷静な判断でしたね。」
「さて、どういうことでしょうか。邪悪なる意志は大神殿を去ったのか、あるいは何か想定外のトラブルが起こったのか。」


エステラが答える。
「いずれにせよ、今が主人公さんのご兄弟やアンルシアさんを救出する唯一のチャンスだと思うのです。」


クロウズが考え込む。
「しかしこれは邪悪なる意志の罠だとも考えられますね。」


エステラは決意の表情を見せる。
「それでも私はオルストフさまや神殿にいる皆さんを救いたい。」
「わたしはエジャルナへ行きます。」


クロウズがそれを止めようとする。
エステラさん、お気持ちはわかります。ですが今は焦ってはなりません。」
「神の器たちは教団に浴びせられた魔瘴によりひどく衰弱していて、彼らが回復するまで私はここを離れられません。」
「彼らの状態が万全になった時こそ、皆で行動を起こすべきではないでしょうか。」


エステラが落ち込む。
「教団の者たちが主人公さんの仲間にそんなひどいことを。」
「あなたがたアストルティアの皆さんは、ナドラガンドのためにチカラを尽くして下さいました。」
「もうこれ以上ないほど充分に。」
「これから先は、私が、ナドラガンドの民が立ち上がらなくては。」
「私ひとりでエジャルナの大神殿へ向かい、オルストフさまや皆さんのお仲間をきっと助け出してみせます。」


クロウズが言う。
「それは、あまりに危険すぎます。」


エステラは静かに首を振った。
「このままではナドラガンドの民は自らを助けるため、他社を犠牲にする悪しき道へと身を落とすことでしょう。」
「手遅れになる前に私が止めなくては。」
「ですが主人公さんが救って下さったこの命、無駄にする気はありません。」
「お二人のやさしさに感謝いたします。」
「今まで本当にありがとう。」


エステラは大神殿へと一人で向かっていった。


クロウズが言う。
「まったく、思い立ったらわき目も振らないところは主人公さんによく似ていますね。」
「主人公さん、私は今の状況での大神殿への潜入には賛成できません。」
「邪悪なる意志の懐へ、援護もなしに飛び込むのは無謀です。」
エステラさんがあなたにとって大切なお仲間なのは承知の上ですが、彼女の後を追って大神殿へ行くような無茶はしないで下さい。」


主人公はクロウズの言うことを無視して大神殿へと向かった。
大神殿の前にエステラがいる。
「主人公さん、どうして。」
「あなたはいつだって、そうやって手を差しのべてくださるのですね。」
「ありがとうございます。」
「この中で何が待ち受けているのでしょう。」
「ずっと暮らしていた所なのに、今はまるで知らない場所みたい。」
「それでも、私は覚悟を決めました。すべてを受け入れて前に進むと。」
「主人公さんがいてくださるなら、いっそう心強いです。」
「参りましょう、オルストフさまのもとへ。」


大神殿の中にエステラが入ると、ナドラガ教団の人々が驚きながら集まってきた。
「皆には心配をかけました。」
「どうか私の話しを聞いて下さい。」


そこへ、トビアスがやってくる。
「よくおめおめと顔が出せたものだな。」


エステラがトビアスに聞く。
「オルストフさまはどこにいらっしゃいますか?」


「オルストフさまは今はおらぬ。大神殿の留守は私が預かっている。」
「裏切り者はナドラガ教団に、いや、竜族の未来に必要ない。」
「貴様を拘束する。」


エステラがトビアスに優しく言う。
「もう、いいのですよ。」
「あなたが何度もキズつき戦ってきた姿を、私はずっと見てきました。」
「そんな風にキズだらけになるまで。あなたは、あなたの正義を貫いたのです。」
「私たちは間違いを認める勇気を持たなくてはなりません、トビアス。」


ビアスが泣き崩れる。
「クソッ、オレたちはいつから間違っていた?」


「皆もどうか聞いて下さい。」
「解放者さまの失墜、私の破門、そして突然の大神殿の封鎖、さぞ戸惑っていることかと思います。」
「私たちは今まで一心にナドラガ教団を信じてきました。」
「疑ったことなど、ただの一度もありませんでした。」
「ここは私たちにとってたったひとつの帰る場所だったから。」
「気づけなかった。なんとおろかだったのでしょう。」
「邪悪なる意志に操られ、私たちはとんでもない間違いを犯しているのかもしれません。」
「神さまが、解放者さまが、自分以外の誰かが苦境から救ってくれるという教え、その教え自体が間違っているとしたら。」
「私たちは何を信ずるべきなのか、今一度、自分自身で決めねばなりません。」
「それはゆらぐことなき意志となり、私たちの明日を形作るチカラとなります。」
「すべては皆の未来のために。」
「私はこれから自分の意志で先へ進みます。」
「まだやり直せるはずだから。」
「どうかオルストフさまの居場所を教えてください。」


教団の一人がエステラに答える。
「それがナダイアさまと共に姿を消してしまわれて。」


ビアスが起き上がった。
「心当たりがある。集会場に来てくれ。」


集会場に着くと、トビアスが言った。
「ここだ。」


何かのスイッチを押すと、隠された階段が現れた。


エステラが驚く。
「こんなところに隠し階段が。」


「オルストフさまは姿を消す前、ナダイアさまに追い立てられるかのように集会場へ入っていった。」
「私の心にも疑念があった。外から様子をうかがっていると、ふたりはこの辺りで突然消えたんだ。」


エステラが言う。
「主人公さん、トビアス。」
「ナダイアさまは邪悪なる意志。これはゆるぎない真実です。」


ビアスが頷く。
「くやしいが、私も今はそう考えている。」
「オルストフさまは優しすぎるお方。邪悪なる意志に騙されて利用されてしまったんだ。」


エステラが言う。
「幼い頃、この集会場でかくれんぼをして閉じ込められてしまったこと、覚えていますか?トビアス。」


「ああ、覚えている。ふたりとも遊び疲れて眠ってしまって。」
「中に子供がいると気づかれぬまま、この集会場はカギがかけられたんだ。」


エステラが頷く。
「目が覚めたら扉は開かないし真っ暗だしで怖くてたまりませんでしたね。」
「それで夜中にようやく発見されて、叱られると思っていたのに、オルストフさまは私たちを見るなり抱きしめてくださった。」
「ふたりしてわんわん泣きましたっけ。オルストフさまはいつだって私たちのことを心配してくれました。」
「私はあのお方をどうしても救いたい。だからオルストフさま救出のため、この先へ進みます。」
「参りましょう。」


主人公とエステラは、隠し階段の先へと進んでいった。
階段は大神殿の地下につながっていた。


地下の奥へと進む途中に手記が落ちていた。
# かの地よりドノマとロマニは戻ったが、ついにあやつは帰ってこなかった。
# 夢なかばにして果てたか、弟、アンテロよ。
# 志は必ず私が成し遂げると誓おう。


本棚に日記があった。
# 兄者、今夜アストルティアへ発つ。
# 覚えているだろうか、我らの故郷、スルゲドの村での誓いを。
# 我らは絶望を知らざるをえなかった。
# 30年前、愛する故郷が、溶岩と降りそそぐ炎にのみ込まれたあの日に。
# 山あいの小さな村は、断末魔に満ちていた。
# 伸ばした手の先に救える命はなく、抱き合った親子さえ目の前で炭となった。
# 友が、子らが、親兄弟が、息絶えていく。
# その光景を聖鳥は静かに見下ろしていた。
# 我らの祈りは届かなかった。
# 小さな祈りでは何も変えられない。
# 兄者はいかなる手段を使っても、おのが手でこの世界を変えてみせると誓った。
# 絶対的なチカラがなければ救済は訪れない。
# 俺は兄者がつかむ未来へのいしずえとなろう。
# そのためにどれほど犠牲を払おうとも。


地下の奥には、かつて奈落の門でアンテロを迎えに来ていた竜族、ドノマとロマニが待ち構えていた。
そして、神官長ナダイアが現れる。
「己の立場と使命を自覚せよ。」
「私はお前にそう伝えたはずだが?」


エステラが答える。
「お言葉をお返しします、ナダイアさま。」
「あなたほどに徳の高いお方が、なにゆえ皆を裏切ったのですか。」


ナダイアが笑みを浮かべる。
「裏切りとは心外な言われようだ。」
「お前は真の救いとは何かを考えず、耳触りのいい言葉に惑わされているだけだ。」
「だからいつまで経っても未熟なのだぞ、エステラよ。」


エステラが言う。
「私にとってナダイアさまは兄弟子。あなたの言葉は常に絶対でした。」
「だけど、それは私が考えることを放棄したあやつり人形であっただけ。」
「私は己の立場と使命を、私の意志で決めます。」
「ナドラガ神の復活を阻止し、竜の民とアストルティアの民が共に生きる新たな世界を目指します。」


ナダイアが笑う。
「甘い、甘いわ、ヘドが出そうだ。」
「救いの意味も理解できぬお前のような甘ちゃんなど、竜族に必要ない。」
「それからそこの毒虫。」
「私の弟アンテロの命を奪った貴様だけは、この手で葬ってやると決めていた。」
「ようやくそれが叶う日が来たわ。」
「救いとは絶対的な支配。ナドラガ神の復活こそが唯一の救い。」
「私は邪悪なる意志と呼ばれし者。」
「私の中にある、ゆらぐことなき信念を貴様らは知ることになるだろう。」


ナダイアは巨大な闇の竜に姿を変えた。
ドノマとロマニも竜化する。


主人公とエステラは、襲い掛かってくるナダイアとドノマとロマニを打ち破った。


「私にはその道を選ぶことができなかった。お前の選んだ道で救ってみせろ。」
そう言うと、神官長ナダイアは消滅した。


「主人公さん、オルストフさまやさらわれた方々を探しましょう。」


奥の部屋にはオルストフ、弟、アンルシアが倒れていた。
エステラがオルストフを抱きかかえる。
「オルストフさま。」


オルストフが答える。
「おお、エステラや。助けに来てくれたか。」


アンルシアと弟もまだ息があるようだ。
弟が言う。
「お兄ちゃん、あれほど来ちゃダメだっていったのに。」
「ボクのせいだね。お兄ちゃん、ごめんなさい。逃げて・・・」


次の瞬間、主人公は何者かに背後を攻撃される。
気がつくとエステラも倒れている。
正体不明の大きなサソリの尻尾のようなものが主人公を何度も何度も刺してくる。
その尻尾の持ち主は、オルストフだった。
「解放者さまには感謝しております。」
「あなたは常に竜族を先導して、ナドラガンドをひとつにして下さいました。」
「領界をつなぐための、ありとあらゆる手を尽くしてきた私にとって、あなたは幾星霜(いくせいそう)もの間待ちわびた存在。」
「ありとあらゆる手。そう、聖鳥をけがし、恵みの木を凍らせ、月を落とし、神獣を弱らせる。」
竜族を団結させ、領界をつなぐことが唯一の救いと信じさせるために必要な脅威。」
「それこそが邪悪なる意志。」
「そして、我が真の名は、竜神の意志。」
「ずいぶん時間がかかってしまいましたが、私はついに見極めました。」
「6つの神の器をつなぐ存在が誰なのかを。」
「解放者さま、最後の役割を与えましょう。これは死出の旅に出るあなたへの私からのはなむけ。」
「せめて安らかにお眠り下さい。」


オルストフは、主人公にとどめの一撃を与えた。
主人公は死んでしまった。


クロウズが駆けつけたが、すでにオルストフの姿は見当たらない。
「これは一体・・・」
アンルシアと弟の姿を見つける。
「よかった。気を失っているだけですね。」


クロウズは辺りを見回し、死んでしまった主人公を発見する。
「魂のぬくもりが消えている。そんな、主人公さん・・・」


クロウズは、主人公のなきがらをムストの町へと連れ帰った。


なんとか主人公を回復させようと、神の器たちが集まっている。
アンルシアが悲しみに暮れている。
「あなたも兄さまのように私を置いていってしまうの?」
「神さま、大いなるグランゼニスよ。主人公が生き返るなら私の命を捧げます。」
アンルシアはそう言うと、自分の身体を剣で突き刺す。
剣はすんでのところで止まった。
アンルシアの身体は青い光に包まれ、それが両手に宿る。
それを見ていた神の器たちの両手にも青い光が宿った。


フウラが両手を高く掲げた。
「風の神、エルドナ神さま。どうか、どうか私の身体にお降りください。」


マイユが両手を掲げる。
「炎の神、ガズバランよ。」


ヒューザが両手を掲げる。
「水の神、マリーヌ。」


城主ダストンが両手を掲げる。
「土の神、ワギ。」


ラグアス王子が両手を掲げる。
「花の神、ピナヘトさま。」


アンルシアが天に向かって叫ぶ。
「勇気の神、グランゼニスよ。」
「主人公が生き返るなら、私の命を捧げます。」


天から声が聞こえる。
「愚かなる人の子よ。」
「人の命は人の意のままにあらず。その者の魂はすでに滅びておる。」
「天の理すらもゆがめてこの者を助けるならば、お前たちは定められし命を縮めることになるだろう。」


ヒューザが言う。
「こいつのためならかまわねぇよ。」


ガズバランの声がする。
「仲間のためとは血がたぎるな。」


マリーヌの声がする。
「寿命を差し出すなんて、バカな子たち。」


エルドナの声がする。
「ゆえに人はいとおしいのです。」


ワギの声がする。
「どれ、ワギもひと肌ぬごう。」


ピナヘトの声がする。
「ぱんぱかぱーん、見せてあげるよ。神のショータイムを。」


グランゼニスの声がする。
「ひさしいな、兄弟たちよ。」
「我ら六神ならば奇跡を超えて、天の理をも動かせよう。」
「今一度、チカラを合わせようではないか。」


六柱の神々が降臨し、主人公の身体が青い光に包まれる。
そして主人公は生き返った。


アンルシアが主人公に駆け寄る。
涙を流し喜ぶアンルシアに、主人公は笑顔を返した。
喜ぶ神の器たち。


と、その時。オルストフの右手が空中から現れる。
主人公が持っていた竜の聖印が緑に光り輝く。
竜の聖印から光が放たれ、その光は創生の霊核を直撃し、創生の霊核の中からナドラガ神の心臓が現れた。
オルストフの右手がその心臓を掴み、持ち去っていく。
「ついに竜神の心臓が我が手に。」
「ナドラガ神復活の最後のカギ。」
「それは絶大なる神のチカラの源たる竜神の心臓を解放すること。」
「そのためには心臓を霊核に封印した六種族の神どものチカラを導くことが必要だったのです。」
「はじめは神の器を痛めつけ、神を降ろそうとしましたが、彼らが心から望まなければ奇跡は起こらないようでね。」
「それゆえ、あなたに死んでもらったのですよ。」
「神の器たち全員が、天の理に反してでも助けたいと思う存在。それがあなただったのです。」
「主人公。あなたはまさしく私が見込んだ通りの解放者でしたよ。」


弟が言う。
「どこまで人の想いを踏みにじるんだ。」


クロウズが言う。
「状況はすこぶる最悪ですが、神を降ろした皆さんの消耗がはげしい。」
「まずは休ませないと。」


クロウズは神の器たちを騎士団の部屋へ運び、休ませた。


「ふたりに大切な話があります。主人公さん、弟さん。」
「地上の教会跡でお待ちしていますね。」


主人公は教会跡に向かった。


クロウズが言う。
「せっかくエテーネの生き残り3人がそろったのにひどい状況ですね。」


弟が言う。
「ボク、なんにも怖くないよ。」
「なんてったってお兄ちゃんがいるもん。」
「この3人が一緒なら誰にも負けないよ。」


クロウズが言う。
「弟さんののんきさには昔から何度も救われましたっけ。」
「いいでしょう。今が最悪なら、はいあがるだけです。」


突然、シオンの声が聞こえる。
「弟、お久しぶりです。」


弟が驚く。
「もしかしてカメさまなの?」


「ずいぶんなつかしい名前ですね。」
「時にカメさま。時にペガサスのファルシオン。今はシオンと呼ばれています。」
「主人公、お元気になられてなによりです。」
「さて、事情はだいたい察しています。」
「今は竜神の心臓が奪われ、ナドラガ復活の最終段階に入ったと考えるべきでしょう。」


クロウズが聞く。
「しかし、エジャルナの大神殿には私が行った時、神官たちしかおりませんでした。」
「総主教オルストフはいったいどこへいったのでしょう。」


シオンが答える。
「神墟ナドラグラム。はるか昔、ナドラガンドがアストルティアの空に浮かんでいた頃、ナドラガ神殿があった神の名を冠する都です。」
「ナドラガ復活の準備がととのった今、オルストフが向かったのは神墟ナドラグラムとみて間違いないでしょう。」


クロウズが考え込んでいる。
「5つの領界がつながる時、復活する場所だと聞いたことありますが。」
「どうしたら行けるのでしょうか?」


「主人公は領界をつなぐ不思議な空間、いざないの間のことを知っていますね。」
「あそこはかつて、神墟ナドラグラムへ通ずる旅の扉が存在したのです。」
「オルストフはおそらくそこを通ったはず。」
「いざないの間へ行ってみなさい。」


主人公、クロウズ、弟の3人は、いざないの間へ向かった。
いざないの間から旅の扉に入り、神墟ナドラグラムへと進む。


神墟ナドラグラムの奥へと進む途中、どこからともなく声が聞こえてきた。
「待っていたぞ。竜ならざる者よ。」
「私は祭司ドラガン。私はどれほど待ったのか。」
「かつてここは神々の語らいの場だった。」
「原初において竜族は、他種族の調停者たる役目を与えられていた。」
竜族の神ナドラガは、弟妹である六神と語らうために調停の祭壇を築き、ひとたび争いが起これば神々を呼び集めた。」
「そして神々に召集を呼びかける際は六神の象徴である武具を台座におさめることが合図だった。」
「すべての神が語らいの席に着いた時、竜神の柩(ひつぎ)・・かつてのナドラガ神殿の扉が開き、ナドラガ神は姿を現したのだ。」
「祭壇がその用を成さなくなった今も、神々の語らいの準備がととのったならば竜神の柩への扉は開かれよう。」


主人公は5つの神の武具を解放し、祭壇に武具をおさめた。
そして祭壇で祈りを捧げると、大地に突き刺さっている巨大な大剣が光り輝き、竜神の柩への道が開かれた。


竜神の柩の中に入ると、オルストフがいた。
エステラは気を失い、祭壇の上に横たわっている。
オルストフがエステラの上に竜神の心臓を捧げると、竜神の心臓は赤く光り輝き、祭壇全体を包み込んだ。


オルストフが主人公の姿に気づく。
「これはこれは解放者さま。」
「ここまで来られるとは流石ですね。」
「あなたの役割は終わっているというのに。」
「永い永い間、夢を見ていました。」
「私はもともとナドラガさまの血肉の一部。それが自我を与えられし存在。」
「ナドラガさまが封印された時、私はナドラガさまから切り離されて、悠久の時の果てに復活の願いを託されました。」
「私は竜の民とともに暮らし、繰り返される生き死にを見守りながらこの日を夢に見ていたのです。」
エステラもまた、私の手で育てた子のひとり。」
「永き時を経てようやく生まれたナドラガ神の器である彼女を見つけた時、夢見た日が来ると確信したのです。」


クロウズが怒りに震える。
「彼女と竜の民の不幸は、貴様のような者が統率者だったことだ。」
「貴様がいなければ、竜の民は正しき道をたどり、救いの日に至っていた。」
「私は竜族として、クロウズとして貴様を見過ごせない。」


クロウズが竜化してオルストフに挑むが、あっさり吹っ飛ばされてしまう。
「私は竜の神の意志。竜族が逆らえるはずがない。」
「今日まで人の身を得て生きてきてわかったことがあります。」
「人というものは、自分で自分を救う努力をしない生物。」
「決して自らは行動を起こさず、神やいつか現れるだろう解放者にすがってばかり。」
「すなわち、人は自らを救うことなどできないのです。」


オルストフは巨大なサソリに姿を変えた。
「さあ、解放者さま。竜の民の救済の前に、あなたにも救いを。」
「下等な種族に生まれたその身を引き裂いて、魂を解き放ちましょうぞ。」


主人公と弟は協力して総主教オルストフを倒した。
「ククク、これでよい。竜族としての生の締めくくりには悪くない余興でした。」
「これで心おきなく神のもとへ行ける。」
「とうに復活の儀式は済んでいます。」
「ここで死ぬことにより、私は神と再び一つになるのです。」
「今こそ御許へまいります、ナドラガさま。」
「いまわしき六神への復讐をとげ、竜の民を永き戒めから救いたまえ。」


総主教オルストフは消滅し、竜神の心臓に吸い込まれていった。
そしてエステラと竜神の心臓は一体となり、ナドラガ神が復活した。


その姿はとてつもなく巨大だった。
「天地は我が手の中に。我はこの世のすべてを支配する者。」
「呪わしきアストルティアを破壊しつくし、竜の世界に創りかえる神なるぞ。」
「愚かな弟どもから生まれし存在よ。貴様らは我に触れることすら許されぬ。」


主人公たちはナドラガ神が繰り出す衝撃波で吹っ飛ばされてしまった。


クロウズが苦しそうにナドラガ神を見上げる。
「これが神、近づくことすら出来ないとは。」


弟は絶望の色を顔に浮かべる。
「あんなのと、どうやって戦うの。」


ナドラガ神が天に向かって強烈な炎を吐くと、空間に亀裂が入り、アストルティアとつながる大きな穴が出来た。


クロウズが驚く。
「あれは、アストルティアの空。」
「ナドラガは向こう側へ攻め込む気だ。」


弟が取り乱す。
「どうしよう。このままじゃアストルティアのみんなが。」


その時、主人公の懐から声がした。
「ついにオイラの出番が来たプー。」


声の主はプオーンだった。
「主人公、オイラ今こそ男の約束をはたすプー。」
「とーーちゃーーーん!」


プオーンは父親のブオーンを大声で呼んだ。
するとアストルティアの空からブオーンが現れ、空の穴をくぐり、ナドラガンドに入ってくる。
空の穴に向かって飛んでいたナドラガ神に、ブオーンの強烈な右ストレートが炸裂し、吹っ飛ばした。


すぐさま起き上がるナドラガ神とブオーンは取っ組み合いになり、お互いに殴り合いを始める。
「魔神族か。こうべを垂れよ。獣。」


その時、シオンの声が聞こえる。
「主人公、グランゼニスの遺せし断罪の剣のもとへ。」


クロウズが言う。
「おそらく断罪の剣とは、道中にあった大地に突き刺さる巨大な大剣のことでしょう。」
「すぐに向かいましょう。」


ナドラガ神とブオーンが戦っている隙に、主人公たちは断罪の剣の前にたどり着いた。
アストルティアの空からシオンの声が聞こえる。
「エテーネの希望たちよ。勇気のチカラを分けてください。」


主人公、クロウズ、弟の3人は断罪の剣の下で両手を天に掲げる。
するとアストルティアの空からシオンがペガサスの姿で舞いおりて来て、ナドラガ神と対峙した。


天馬ファルシオンが言う。
「神代の戦いが再現されている今、六神に連なる者たちよ。」
「今こそ移ろえる運命にくさびを。」


聖鳥が現れた。
「祈りは届く。」


リルチェラが現れた。
「恵みの木よ。生命のチカラをあたしに貸して。」


神獣パチャティカが現れた。
「とわを超えた約束のしるし。キミにささぐよ。ボクのまごころ。」


神獣カシャルが現れた。
「持てるチカラはすべて竜の民のために。」


神獣アマカムシカが現れた。
「ここに邪神を縛る結界を結びます。」


眷族たちがチカラをあわせてナドラガ神に縛りの結界を放つ。
ナドラガ神とブオーンのまわりに縛りの結界が現れ、ナドラガ神とブオーンは動けなくなった。


天馬ファルシオンが言う。
「主人公、これが最後の戦いです。今ならナドラガのもとへ近づけるでしょう。」
「神であるナドラガを倒すためには、その体内へ飛び込むしかありません。」
「そして竜神の心臓を砕くのです。」


竜化したクロウズの背中に主人公と弟が飛び乗る。
そして二人はナドラガ神の口から体内へ侵入した。


主人公と弟はナドラガ神の心臓部を目指す。
途中、体内に刺さった断罪の剣の破片があった。
その破片に触れると、主人公の身体は光の神殿に転送された。
声が聞こえる。
「聞け、アストルティアの子よ。」
「私はナドラガの体内に取り残されし剣の断片に宿る光の意志。」
「ここに残されしは神々の世の記憶。」
「かつて子らとともに治めた世界。光あふれるアストルティア。」
「永遠に続くと思われた神代に終焉の時が来た。」
「大いなる闇との戦いの果てに私はこの身を失った。」
「そして残されたのは子らであった。」
「私のいとしい七人の子。」
「さあ、目覚めよ。そしてこの者に世の始まりを語り伝えなさい。」


風の神エルドナ神の像が語りかけてくる。
「それでは長姉たる私からお話ししましょう。」
「始まりに我らが母ルティアナは、空の神ナドラガを生みました。」
「ナドラガはルティアナの愛を一身に受け、雄大な空を翔ける強き神へと育ちました。」
「ああ、悲しき兄さまよ。」
「あの方は自分こそが唯一なる正統の神であると思い違えたのです。」
「さあ、あなたに風が集めてきた叡智を授けましょう。」


主人公の胸に清らかな光が宿った。
「ガズバラン、続きを語ってさしあげて。」


炎の神ガズバラン神の像が語りかけてくる。
「ナドラガが充分にチカラをつけた頃、母なるルティアナは、我ら六柱の弟妹を生むことにした。」
「しかし我らが長兄ナドラガは、それに異を唱えた。」
「我ひとりあれば他の神など必要ないと。」
「だがルティアナはナドラガに言った。」
「異なる才や個性を持つ者たちが手を結んだ時、そこに比類なき強きチカラが生まれる。」
アストルティアで何よりも強いチカラは調和であると。」
「貴様には炎のように燃えたぎる闘志を授けよう。」


主人公の胸にあたたかな光が宿った。
「ワギ、次をまかせるぞ。」


土の神ワギ神の像が語りかけてくる。
「大いなる闇の根源との戦いの中で母ルティアナはその身を失った。」
「母亡きあと、我らはチカラを合わせアストルティアを治めていくはずであった。」
「しかし長兄であるナドラガは訴えた。」
「チカラを持つ竜の民こそが他の種を統べるべきだ。」
「それこそが闇の者たちに対抗する唯一の手段であると。」
「我らが異を唱えると、兄者は激高し、永きに渡る戦いが始まった。」
「そなたには踏み固められた土のような堅忍を授けよう。」


主人公の胸に静かな光が宿った。
「お前の美声で語り聞かせておくれ、マリーヌ。」


水の神マリーヌ神の像が語りかけてくる。
「兄が最初に狙いをつけたのは、我らが末弟が治める大地レンダーシア。」
「人間たちは特別なチカラを何も持たぬが、心に輝かしい勇気を秘めていました。」
「それゆえか亡き母は、グランゼニスを特別に可愛がっていた。」
「兄は妬ましくてたまらなかったのでしょう。」
「我らはグランゼニスに手を貸し、レンダーシアの大地をナドラガの進撃から守りました。」
「我々の調和のチカラの前にナドラガは後退し、戦いの終焉は目前でした。」
「しかしおろかな兄は敗北を認めることができず、恐ろしい禁忌に手を出したのです。」
「兄は大いなる闇の根源と手を結び、魔瘴のチカラをその身に宿してしまいました。」
「そして何千何万もの命が失われる戦いの日々が始まりました。」
「あなたに包み込む水のような慈愛を授けてあげましょう。」


主人公の胸にやわらかな光が宿った。
「出番よ、おちびちゃん。」


花の神ピナヘト神の像が語りかけてくる。
「これが神代の終わりの大戦ってワケ。」
「しかも兄貴、魔瘴をとりこんでブクブクでさ。ほんといやになっちゃうよね。」
「それは六種族も竜の民も次々と命を散らす、笑顔なんてかけらもない涙にくれるばかりの時代だったよ。」
「このあまりに激しい戦いを終わらせるために、グランゼニスを除く五神は意志だけの存在になっちゃったんだ。」
「オイラたち、自分の身体を失っちゃったってワケ。」
「オイラ的にはさ、竜の民に罰を与えて永いこと苦しめたことも悔いてはいるんだ。」
「だからどうかキミが終わらせておくれ。」
「じゃあオイラからは花のように愛される才華をあげる。」


主人公の胸に華やかな光が宿った。
「さて、最後はお前の番だよ。」


光にかたどられた影が語りかけてくる。
「最後の決戦の時、私は五神の全霊を宿した剣でナドラガの身を切り裂いた。」
「そしてナドラガンドを断罪の虚空に送り封じ込めたのだ。」
「身体を失った兄姉たちは、それでもいつか竜族たちに許しを与えるため救いの道を用意していたようだが。」
「すべてのチカラを使い果たした私は、永き眠りにつくこととなった。」
「かくしてアストルティアから神は失われた。」
「さあ、これですべてを語った。」
「あなたに運命すらも切り開く大いなる勇気を授けよう。」


主人公の胸に神々しい光が宿った。
「私は勇気の神グランゼニス。いつでも見守っているよ、主人公。」


ルティアナの声が聞こえる。
「失われし神々の声を聞いてくれたか、アストルティアの子よ。」
「この先ナドラガがそなたの道を阻もうとも、そなたの身に宿った神々のチカラが行く先を照らしてくれるだろう。」
「これはそなたの歩みとともに紡がれてきた絆から生まれしもの。」


主人公は調和のオーブを受け取った。


「ナドラガ、私が最初に生んだ闇に染まりし悲しき子。」
「どうかそなたの手で、あのおろかな子を止めてくれ。」
「永きにわたる神代の戦いの、その残火を鎮めるために。」


主人公の身体は、断罪の剣の破片の前に転送された。


魔瘴でかたく閉ざされた竜の経路の前で調和のオーブをかざすと、竜の経路が開く。
竜の経路の奥に進むと、心臓部にたどり着くことが出来た。
そこにはエステラが囚われていた。


エステラの前に、虚空の神ナドラガが現れる。
「かつて我らは空を統べていた。」
「我らは自由の空を翔け、世界を導いた。」
「強き者が弱き者を守る理想郷。」
「しかし思いあがった弱き者どもが空を奪った。」
「我らは奈落の果てで今日を待ち続けた。」
「我に祈りを捧げよ。我に救いを乞うてみろ。」
「今こそ神にひれ伏す喜びを教えてやる。」


襲い掛かってくる虚空の神ナドラガを主人公と弟は協力して倒した。


「地べたをはいずる弱き者どもがなにゆえ竜神ナドラガの意思たる我のチカラに耐えうるか。」


主人公のまわりに六神の青い光が輝いている。


「六神の加護に守られているとは、目ざわりな光だ。」
「調和などという甘えた幻想にすがり続ける出来損ないの弟どもが。」
「地上の民は意地汚く小賢しい。」
「ゆえに高潔なる空の民がやつらを支配せねばならぬ。」
「強き者が弱き者を統べる。それがゆらぐことなき世の理なのだから。」
「我らに嫉妬した弱き者どもが群れ集い、竜の民を奈落の果てに封じるなど、永遠にも近い責苦を受けさせるなど。」
「断じて許されぬ罪業。」
「悠久の時を超えた憎しみ。弟どもを八つ裂きにして刻もうとも、アストルティアを焼き払おうとも消えぬ。」
「我が心臓よ。竜の神たる我が創生のチカラの源よ。」
「今こそ主の意思と一体となる時ぞ。」


エステラが解放され、意識を取り戻した。


「そして我が身に宿る大いなる闇の根源のチカラよ。」
「地上の民、すべてを滅ぼす瘴気を解き放つ。」


そう言い終わると、虚空の神ナドラガは口から大量の瘴気を吐き出した。
瘴気は渦を巻き、渦の中から巨大な両手が現れた。
かつて冥王ネルゲルを冥獣王ネルゲルに転生させたあの両手だ。
その両手は虚空の神ナドラガを握りつぶし、闇の瘴気を放つ。


空一面が魔瘴に覆われ、巨大な竜の姿に転生した邪竜神ナドラガが現れる。


弟が透明になりつつある自分の手を見ながらつぶやく。
「ちくしょう、こんな時に・・時間が・・」


エステラが瘴気の嵐に耐えながら言う。
「どうか届いて・・・オルストフさま。」


邪竜神ナドラガが言う。
「オルストフ、我が肉片のことか。」


エステラが言う。
「竜神の心臓にとらわれている間、私は幼い頃の夢を見ていました。」
「オルストフさまにお話をせがむ小さい私。」
「あなたが語る物語の結末はいつも同じ。」
「竜の民が救われ、いつまでも幸せに暮らす。そんな幸福な結末でした。」
「オルストフさまならば、竜の民をチカラで従属させることも出来たはずです。」
「ですが決してそうはしなかった。」
「私にはその理由がわかります。」
「あなたは、竜の民を愛しているから。」


邪竜神ナドラガが言う。
「言われるまでもない。我は竜族の神ナドラガ。」
「お前たちを愛しているに決まっている。」


エステラが涙を流す。
「オルストフさま、私たちはあなたにすがることに慣れてしまい、自らの歩みを止めていたのですね。」
「私は今、自分の足で歩きだします。」
「勇気を。未来の切り開き方を。主人公さんが教えてくれたから。」
「主人公さん、共に戦います。」
「竜の民のひとりとして、私の手で終わらせたいんです。」


弟が言う。
「最後の戦いはふたりに託すね。」
「この先の未来を作るのはお兄ちゃんたちだよ。」


エステラが泣きながら言う。
「さようなら、お父さん。」


エステラと主人公は協力して邪竜神ナドラガを倒した。


邪竜神ナドラガが苦しんでいる。
「ああ、憎い、憎い。」
「竜の民は、皆、我の所有物。」
「だというのに、なにゆえ裏切るのか。」
「六神のチカラごと、貴様を食ろうて、アストルティアもナドラガンドも滅ぼしてやろうぞ。」


エステラが言う。
「もう、おやめください。」


その時、主人公が持つ調和のオーブから神の器の姿を借りた六神が現れた。


アンルシアの姿を借りたグランゼニスが言う。
「まだわからぬか、兄よ。」


城主ダストンの姿を借りたワギが言う。
「神の時代など、とうに終わっておるぞ。」


フウラの姿を借りたエルドナが言う。
「子らは自らの両足で歩んでいます。」


マイユの姿を借りたガズバランが言う。
「アンタが気づくのを俺たちは待っていたんだが。」


ヒューザの姿を借りたマリーヌが言う。
「兄さんってどれだけ愚かなのかしら。」


ラグアス王子の姿を借りたピナヘトが言う。
「兄貴、時代遅れの神話に幕を下ろす時だよ。」


六神が全員で声をそろえる。
「世界の一部となり、我らと共に、子らの行く末を見守ろう。」


邪竜神ナドラガが怒る。
「愚か者ども、兄を讃えよ。讃えぬか。」


六神はそれ以上何も言わず、青い光を放出して主人公の前に両手剣を創り出した。


主人公はその両手剣を握り、邪竜神ナドラガに振り下ろす。
邪竜神ナドラガの身体は真っ二つになり、体中から瘴気が吹き出した。
「我が間違っていたというのか。我が誇り、竜の民よ。」
「我が母、ルティアナよ。」


邪竜神ナドラガは消滅した。


神の器たちも意識を取り戻す。


アンルシアが言う。
「すべて終わったのね。」


ナドラガ神の身体が崩壊をはじめる。
主人公たちは身体の中からなんとか脱出した。


脱出中に青い光に包まれたオルストフがいた。
オルストフは、最後に脱出の手助けをしてくれた。


主人公たちが脱出したあとの体内に、謎の黒衣の剣士がいた。
「竜神の宿す、創生のチカラ。もらいうける。」


黒衣の剣士は竜神の心臓を手に入れ、どこかへ姿を消した。


主人公たちが神墟ナドラグラムに戻ると、天馬ファルシオンは縛りの結界を解除した。
その瞬間、ナドラガ神は光とともに姿を消した。


天馬ファルシオンが言う。
「ついに神代の戦いが終わりましたか。」


ブオーンがプオーンと共に去っていく。
「男の約束は果たした。さらばだ、小さき者ども。」


エステラが言う。
「この世界の神は滅びました。」
「だけど私たちは生きています。」
「さあ、帰りましょう。私たちの故郷へ。」


そして・・・


ナドラガ大神殿の大広間で宴が始まる。
主人公が到着すると、皆が集まってきた。


ヒューザが言う。
「お前ってさ、いつもおいしいとこ全部持っていくよな。」


ラグアス王子が言う。
「それってきっと人徳だと思うんです。ですよね?主人公さん。」


城主ダストンが言う。
「全く、こんなにも役立つなんて見損ないましたよ。」


ヒューザが城主ダストンとラグアス王子に聞く。
「あんたたちはこれからどうするんだ?」


ラグアス王子が答える。
「ぼくはそろそろ都に帰ります。ナブレットおじさんが留守番してくれていますが、王座を空け続けるわけにはいきませんから。」


城主ダストンが続けて答える。
「もきゃ。わしも早く帰って秘蔵のガラクタたちの無事を確認しますよ。わしを持てはやす変な所とはおさらばです。」


フウラが近づいてきた。
「主人公さま、またお世話になっちゃったね。本当にありがとうございました。」
「そろそろ帰ってあげないと、お父様が心労で倒れちゃうかな。」


マイユがやってくる。
エステラさんのはからいで、ナドラガ教団の薬師さんたちがアロルドの薬を急いで作ってくれたの。」
「ずいぶん待たせてしまったけど、彼をようやく治してあげられるわ。だから私も帰らなくちゃ。」


ヒューザが言う。
「オレはまた旅に出るつもりだ。ひとつの場所に落ち着くのは性に合わねぇ。」


アンルシアがやってきた。
「私はあなたがいないと何も出来なかった。」
「自分の未熟さを痛感したの。このままじゃ勇者として兄さまやレンダーシアの人々に顔向け出来ない。」
「だからもっと強くなると誓うわ。あなたと一緒にね。」


シオンが隠れるように立っていた。
「その心がけはいいことですが、王や王妃が心配していますよ。アンルシア。」


アンルシアが驚く。
「まあ、シオンさま。そうよね、お父様やお母様にもずいぶん心配をかけてしまったわ。早く帰ってあげなくっちゃね。」


シオンが言う。
「皆さんの事は私が責任を持って故郷まで送り届けましょう。」


アンルシアが皆に言う。
「帰りましょう。アストルティアに。」


皆、アストルティアに帰っていった。


アンルシアが最後、主人公に笑顔を向ける。
「助けに来てくれて本当にありがとう。やっぱり主人公は私の勇者だわ。」


ビアスがやってきた。
「よくぞ戻られました、主人公殿。」
「あなたならばやってくださると信じていました。」
アストルティアのお仲間は帰られたが、あなたと話したい者たちもまだまだ大勢いるようです。」
「これはあなたを讃える宴。思う存分、飲んで歌って、楽しんで下さい。」


主人公はエステラに会いに行った。
「ああ、主人公さん。こんなに素晴らしい宴を開ける日が来るなんて。」
「宴に集まってくださった方々と心ゆくまでお話を楽しめましたか?」
「では私からもあなたとお話をさせて下さい。」
「主人公さんと彼らの笑顔を見ていて、やさしくてあたたかい本物の仲間だと思いました。」
「この戦いではアストルテイアの皆さんにすっかりお世話になってしまいました。」
「そして何より、ナドラガンドを救ってくださった。」
「主人公さんに心から感謝いたします。」


ビアスがやってきた。
「私からもお礼を言わせて下さい。」
「あなたがいなければ、我らは道を違えたまま取り返しのつかないことをしていた。」
「ありがとうございます。主人公殿。」


エステラが言う。
「異なる者たちの心をひとつにし、ナドラガ神への依存から解き放ってくれて、あなたはやはり真の解放者でした。」
「私はトビアスにナドラガ教団を託し、アストルティアへ行こうと思っています。」


ビアスが驚く。
「なに!?これから竜の民を導くのはお前だろう。私は怪我を負い、ぶざまに転がっていただけだ。」


エステラが言う。
「トビアス、あなたは竜の民のために誰よりも血と汗を流してきました。」
「本当の痛みを知るやさしいあなただから皆も慕っているのですよ。」
「それに竜の民のために新しい世界への道を開くことも私たちの使命なのですから。」


ビアスが言う。
「フン、そう言うことなら仕方ない。当分の間ナドラガ教団のことは私が面倒を見よう。」
「いつか必ず帰ってこいよ。それまで総主教さまの席を守っててやる。」


エステラが微笑む。


そこにクロウズがやってきた。
「それではこの私がエステラさんを竜族の隠れ里へご案内いたしましょう。」
「彼らもまた同胞を探し出し、竜族を再興させることを夢見ているのです。」


エステラが驚く。
「まあ、アストルティアにも竜族が。ぜひお願い致します。」


クロウズが言う。
「でもその前に、主人公さんをお借りしますよ。」


エステラが言う。
「主人公さん、アストルティアでまたお会いしましょう。」


クロウズが語りだす。
「私たちがエテーネの村で別れてからどれほどの月日が流れたでしょう。」
「私と主人公さんは生き返しを受け、もう一つの人生を背負い、弟さんは時を超えて旅をしました。」
「全く数奇な運命をたどったものです。」
「でも私は私の人生を誇らしく思っています。すべてはあなた方と語らうこの日に繋がっていたように思うのです。」
「クロウズとしての夢、竜族の隠れ里の復興は皆さんのおかげで果たせそうですから。」
「今度はシンイとしてエテーネ村の復興を成し遂げてみせます。」


弟がやってくる。
「どれほどの月日が・・・か。」
「おいらにとっちゃ、数千年の旅路だからなあ。」


弟は消えかかっている両手を見つめながら言う。
「ま、その話はいつか話すよ。」
「今はさ、今しか出来ない話をしよう。」
「あのさ、お兄ちゃん。もう忘れてるかもだけど、あの日、会いたくなかったなんて言ってごめんね。」
「本当は胸が苦しくなるくらい嬉しかった。」
「おいら、お兄ちゃんが死ぬって予知を聞いて、怖くて怖くてたまらなかったんだ。」
「だけど、兄ちゃんには強くてやさしい仲間、兄ちゃんのために命を削ってくれるような仲間がいっぱいいた。」
「おいらね、すごく安心したんだ。」


弟の身体全体が透明になってきた。
「だからさ、笑ってさよならが言えるよ。」
「いつの時代でも、どんな姿でも、兄ちゃんをきっと見つけるから。」


弟はそう言うと、その場から消えてしまった。
消えたあとには、銀色の小箱が残されていた。
主人公はその小箱を拾い上げ、大切にしまった。


クロウズが言う。
「最後に3人で話したいって、弟さんがおっしゃいましてね。」
「しかし悲しむことはありません。」
「あなたたち兄弟は不思議すぎる絆で結ばれていますから。」
「必ず再びめぐり会うでしょう。」
「いにしえの竜をめぐる一つの物語が終わり、また新たな物語が始まるのです。」