ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード29 3000年の旅路 砂上の魔神帝国

賢者ルシェンダに呼び出された主人公は、真グランゼドーラ城の賢者の執務室へ向かった。
「よく来てくれた、主人公。そなたを呼んだのは他でもない。例の終焉の繭についてだ。」
「先程ドルワーム王国から通達があり、ドワチャッカ大陸、ダラズ採掘場の西に終焉の繭が出現したという。」
「黒衣の剣士・・メレアーデ姫の話では確かパドレという名であったか。」
「奴の行方は未だ分かっていない。だが繭のある所に奴は必ず現れた。ならば恐らく今後も。」
「手遅れになる前に、急ぎ向かってもらいたい。まずはダラズ採掘場の防砂ダム前にいる兵士カアチスに詳しい話を聞いてくれ。」


ダラズ採掘場の防砂ダム前に移動し、兵士カアチスの話を聞く。
「主人公殿とお見受けしました。自分はドルワーム軍のカアチスであります。ご足労頂き感謝であります。」
「我々は当初、ドルワーム王位研究員の調査員を護衛するため派遣されました。ですが、繭が出現したとのことで事態は一変。」
「現在は繭の動向を監視するため防砂ダム上に前線基地を築き、急ぎ情報収集に努めております。」
「おや?防砂ダムから誰かが降りてくるようですね。」


ビャン・ダオがやって来た。
「主人公?まことに主人公なのか。」
「おお、やはりそちであったか。防砂ダムの上から姿が見えたので慌てて降りてきたぞよ。」
「むむ、そのキョトンとした顔。よもや余を忘れたというのか?」
「共にドワチャッカ大陸を駆けずり回ったあの日々を忘れるとは・・まあよい。余は寛大じゃからな。」
「余はかのガテリア皇国の正統なる継承者、第一の皇子、ビャン・ダオ。」
「今はただのビャン・ダオじゃ。ガテリアの遺跡でそちと別れてからは、アストルティア中を旅しておった。」
「今は縁あってドルワーム王位研究院にて失われし古代技術の研究を手伝っておる。」
「この防砂ダムは、かつてウルベア地下帝国が甚大な予算を注ぎ込み建築したものでな。」
「ダムの向こうに広がる広大な流砂の海には、かの帝国の重要な遺産があるという。余はその調査に参ったのじゃが。」
「よりによってその遺跡のすぐ上にあの奇妙な繭が現れたのじゃ。」
「先に繭が現れたグランゼドーラやグレンのことは伝え聞いておるぞよ。放っておけば災いをもたらすに違いない。」
「余はリウ老師が希望を託したこの世界で生きていくと決めた。」
「老師の思いを踏みにじらせはせぬ。余もアストルティアの未来を守るため、ひと肌脱ぐ覚悟ぞ!」
「余は流砂の遺跡へ調査に向かう。そちも是非同行願いたい。」
「あそこに見えるのが防砂ダムの上に移動できる昇降機ぞよ。まずは上まで昇ってきてたもれ。」


昇降機を使い、防砂ダムの上まで昇っていく。
「主人公、こっちじゃ、こっち。」
ビャン・ダオが大きな乗り物に乗っている。
「ふふ、立派な船であろう。これぞ流砂の上を自在に進む、現代に復活せし砂上専用高速船。通称、砂上船ぞよ。」
「積もる話もあるが今は早速、遺跡へ向かうとしよう。」
「余の華麗なる操船技術をとくと味わうが良い。」


主人公が砂上船に乗り込むと、ビャン・ダオはもの凄いスピードで急発進した。
「どうじゃ、砂上船の乗り心地は。なかなかの速度であろう。」
「じゃが、かつてガテリア皇国があった3000年前のドワチャッカ大陸では、さらに高度な文明が栄えておった。」
「上空には反重力飛行装置が飛び交い、都には自動遊覧回廊が張り巡らされ、両足で歩かずともよい生活を送っていた。」
「出来ることならそちにも、あの見事な光景を見せてやりたいものじゃ。」
「しかしまあ・・同じような景色ばかりが続いておるのう。」
「砂嵐の日には巨人が現れるという噂もあるのじゃが。」
ビャン・ダオが何かを発見した。
「おお、巨人ではないが、我等が目指す遺跡が見えてきたぞよ。早速中に入り探索しようではないか。」
砂上船を降り遺跡の中に入る主人公とビャン・ダオ。
「ううむ、風化が激しい。見るも無残な姿じゃ。」
「栄華を誇ったウルベアの文化も3000年の月日の前には何もかもはかなき夢か。」
突然、地鳴りが起きた。
「何事じゃ?」
停止していたウルベア魔神兵が動き出し、こちらへ向かってくる。
「3000年の時を経てなお動くとは!主人公よ、何とかしてたもれ。」
主人公は襲いかかってくるウルベア魔神兵を倒した。
すると今度は大きな地震が起きた。
「今度は何事じゃ?気をつけよ、主人公。」
突然、主人公の足元にヒビが入り、崩れ落ちてしまう。
地下へ落下した主人公が辺りを見回すと、落ちたのは自分だけのようだ。
天井の穴からビャン・ダオの声がする。
「おお、どうやら無事のようじゃな。今助けを呼んでくるぞよ。」


エテーネルキューブからキュルルが現れた。
「主人公、あれを見るキュ。」
キュルルが指差す方を見ると、そこにはパドレがいた。
パドレは目前にある巨大な魔神像を眺めている。
主人公の姿に気づくパドレ。
「時の異分子か。かつて栄えた文明の衰亡の渦中に失われし地脈の結晶。それさえ手に入れば巨人は蘇ろう。」
パドレは不気味な笑みを浮かべながら姿を消した。


キュルルが言う。
「滅びの未来が訪れるのはどう考えてもアイツが関係しているせいだキュル。」
「アイツはこの巨人が完全な状態だった時代に、巨人を動かす手段を見つけに行ったようキュ。」
「僕たちもこの巨人を媒介にすればその時代・・3051年前に行けるはずキュ。」
キュルルがエテーネルキューブを操作し、主人公は3051年前に時渡りした。
時渡りした先はダラズ大鉱脈という場所だった。
「ここは何処だキュ?砂とホコリまみれで随分むさ苦しい場所キュルね。」
「というわけで主人公も察している通り、どうやらまた座標がズレたらしいキュ。まずは辺りを調べることを推奨するキュ。」


辺りを探索すると、沢山のウルベア魔神兵が作業をしていた。
作業しているウルベア魔神兵に近づくと、主人公は突然拘束されてしまった。
魔神兵に何処かの部屋へと連れて行かれた主人公。
しばらくするとリウ老師が部屋に入ってきた。
「もうよろしいでしょう。離してやりなさい08号。」
「私は技術者のリウと申す者。あなたを拘束した魔神機、08号らの生みの親です。」
「世間からはリウ老師と呼ばれております。良くも悪くも知られた名ですから聞いたことがあるかも知れませんな。」
「我等はウルベア地下帝国に捕まった囚人。」
「先の大戦で敗れたガテリア兵士の捕虜や帝国の横暴に異を唱えた反逆分子などがここで強制労働をさせられております。」
「もっとも、やられっぱなしというわけではありませんがな。」
「さて、08号があなたをスキャンした結果、ガテリア兵の捕虜でもウルベアの監督官でもどちらでもないと出たのです。」
「あなたは何者ですかな?」
主人公はリウ老師に事情を説明した。
「なるほど。主人公君。詳しくは話せないが、あなたは巨人を探してこの地を訪れたと。」
「何のためにそんな物を探しているのか詮索はしませんが、ふむ。」
「あなたが探している巨人かは分かりませんが、ウルベア地下帝国はウルベア大魔神と呼ばれる巨大兵器の開発に成功したようでしてな。」
「それはウルベア地下帝国の重要機密が集うウルベア帝国技術庁で厳密に管理されているそうなのです。」
「帝国技術庁はこのダラズ大鉱脈からも見える防砂ダムの向こう側、流砂の海にあります。ただ、潜入するのは容易ではありません。」
「しかしあの方に取り入ることが出来ればあるいは・・」
「分かりました。私が主人公君の巨人探しに協力してあげましょう。」
「08号。偵察用ミニマムモードを起動しなさい。」
リウ老師の命令で、ウルベア魔神兵08号は一度停止した。
すると中から小さな球体のロボットが飛び出てきた。
「不慣れな土地を旅するあなたに、この08号を案内役としてつけましょう。彼とウルベアに潜入するのです。」
「そして帝国技術庁で情報を集めて下さい。私はこの場所で彼から転送されてくる映像や情報を分析しましょう。」
08号が主人公の前に飛んできた。
「主人公様。付かず離れずお供致します。」
08号が仲間に加わった。


「まずはカルデア溶岩帯を南に向かい、ガタラ大山林からウルベア地下帝国へ行きなさい。そこでウルタ皇女に会うのです。」
「帝国の主たるウルタ皇女の信頼を得られれば、ウルベア大魔神への道が開かれましょう。よろしく頼みましたぞ。」


外に出ると08号が話し始めた。
「リウ老師より、主人公様に歴史観光案内、特別プログラムを提供するよう要請あり。ローディング中・・」
「ガタラの丘へようこそ。眼下に見下ろすゴブル砂漠は5年前に起きたガテリア=ウルベア大戦の主な戦場です。」
「ガテリア皇国とウルベア地下帝国はお互いにドワチャッカ大陸の覇者たらんと小規模な戦争を繰り返していました。」
「卓越した文明と技術力は軍事利用のため発展したと言っても過言ではありません。しかし民の不満は募るばかりでした。」
「一時は停戦条約を結ぼうとしたものの、交渉はこじれ、最終的な全面戦争に突入。ガテリア皇国は滅亡を迎えたのです。」
「あちらがウルベア地下帝国の入り口です。」
「では参りましょう。」


カルデア溶岩帯を南に向かい、ガタラ大山林からウルベア地下帝国へ向かった。
ウルベア地下帝国の住人に話を聞く。
「この国を語る上で外せないのは、なんたって前の皇帝のジャ・クバ陛下だ。」
「この見事な街並みも陛下が整備したんだぜ。いつまでも豊かで平和に暮らせるようにって、みんなの事考えてくれてさ。」
「俺達みんな、陛下が大好きだったんだよ。なのにガテリアのせいで陛下は・・あいつら許せない!」
「グルヤンラシュ様はガテリアを滅ぼして陛下のカタキを取ってくれたんだ。やっぱ最後には正義が勝つんだよなー。」


女性の住人に話を聞く。
「どうやらあなた、この帝国の雰囲気にすっかり飲まれているザマスね?」
「まあ無理もないザマス。」
「行き交う万能浮遊椅子、高速道路や快適な空調設備、清潔な水道設備。特に宰相グルヤンラシュ様が地脈エネルギーを活用し始めてから、あらゆる生活が便利で快適になったザマス。」
「あたくし、これから大型反重力飛行装置で遊覧飛行するザマス。上級階級にだけ許された贅沢ザマス。」


別の男性にも話を聞く。
「グルヤンラシュ様はウルタ皇女の後見人なんだけど、ホントのとこ、帝国の実権を握ってるのはグルヤンラシュ様なんだ。」
「皇女みたいな引きこもりには期待できない。やっぱ俺らのグルヤンラシュ様だな。」


教会にいるウッツァ神父が事情通だと聞き、話を聞きに行く。
「なるほど、この国の事情に通じている人物を探していたら私に辿り着いた訳だね。」
主人公はウルタ皇女に謁見するための入場許可証が欲しいと説明した。
「ふむ、なるほど。ウルタ皇女か。」
「すでに知っているとは思うが、陛下亡き後、宰相グルヤンラシュ殿が帝国の実権を握っておられる。」
「というのも、大きな声では言えないが、前皇帝ジャ・クバ陛下の遺児、ウルタ皇女は国民からの評判がよろしくなくてね。」
「変わり者の皇女は大の人嫌い。グルヤンラシュ殿を除いては誰とも関わりを持とうとしないという。」
「王座の間に引きこもり、外に用がある時は世話係の魔神機を使いに出しているそうだ。」
「うむ、そうだな。ウルタ皇女の魔神機なら入場許可証を発行する権限を与えられているかも知れん。」
「その魔神機は時々帝都で見かけるから広場の辺りで探してみるといい。」


広場に向かうと、女性の叫び声が聞こえてきた。
「きゃー!いやー!何すんのよー!」
叫び声が聞こえる方を見ると、1体の魔神機が女性の顔にサーチライトを当てている。
サーチライトライトを当てられているツツマという名の女性が怒り出す。
「マリッチ!またアンタなの!眩しいからやめてって言ったのに。」
マリッチと呼ばれた魔神機は、今度は側にいたチェトスという男性の顔にサーチライトを当てる。
「ぐわー!目がー!」


そこへ2人の子供が駆け寄ってくる。
ランシシという名の少女がその様子を見て笑いだした。
「またマリッチが迷惑ビームで脅かして遊んでるー。」
もう一人の子供はクッチョという少年だ。
「やーい、役立たずのポンコツマリッチ。お前なんかすぐスクラップだぞ!」


それを聞いた魔神機のマリッチは怒り出し、子供達を追いかけ回し始めた。
子供達は慣れた様子でそれを楽しんでいる。


ツツマが言う。
「あれって皇女様の魔神機でしょ?毎日、何のためにやってるわけ?」
チェトスが答える。
「エテーネ人ってのを探してるんだとさ。でもエテーネ人って何だ?」


子供達と遊び飽きたマリッチがこちらへ向かってくる。
マリッチが主人公にサーチライトを当てると、ポンポンと飛び跳ね、喜んでいる。
ひとしきり喜び終えると、マリッチは出力口から1枚のチケットを出した。
主人公はチケットに記された文字を読んだ。
「入場許可証。本証書を持参する者のウルベア帝国城への入場を認める。」
「エテーネ人の生体情報と完全に合致。皇女ウルタ、エテーネ人を求むる。速やかに皇女ウルタに謁見せよ。」


マリッチはウルベア地下帝国城の中に帰っていった。
ウルベア地下帝国城の入口で入場許可証を見せ、城の中に入る。
奥へ進み、皇女ウルタと謁見した。
「わらわがウルベア地下帝国第十一代皇帝ジャ・クバの娘、皇女ウルタである。」
「そちがエテーネ人というのはまことかえ?どう見てもそのような人間には見えんがの。」
「エテーネ人を探せとは命じたが、マリッチのサーチ精度も信用ならぬでな。」
「そもそも、エテーネ人ともあろう者がこの帝国に何用で参ったのじゃ?」
主人公はウルタ皇女に事情を説明した。
「巨人を探している・・か。確かにウルベア大魔神は我が帝国の要。」
「じゃが国賓でもない、冴えない冒険者に案内してやる程の義理はないぞえ。」
「そちが真にエテーネ人であることを証明できれば話は別じゃがの。」
「わらわは古代エテーネ王家に伝わる時の球根なるものを所望する。持参すればエテーネ人と認めてやろう。」
ウルタ皇女が08号を見つけて興味を示した。
「こやつ、なかなか使えそうではないか。」
「ここ数日、調整していた機材の出力系統が安定せんのでな。少々手を貸してもらおう。」
ウルタ皇女は08号を連れて奥へ行ってしまった。


エテーネルキューブからキュルルが現れる。
「主人公、エテーネ王国について何か知りたいことがあるなら、メレアーデにでも聞いてみればいいキュ。」
「今頃エテーネの村で生体継続時間を無為に浪費しているはずキュ。早速行ってみるといいキュ。」


主人公は現代に戻り、エテーネ村のメレアーデを訪ねた。
「いらっしゃい、主人公。今日はどうしたの?」
主人公はメレアーデに時の球根を探していると伝えた。
「時の球根・・ええ、聞いたことがあるわ。エテーネ王家に伝わる不思議な植物よ。」
「よくは知らないけど、エテーネ王国にとってすごく大事なものらしくて、王家の温室で厳重に保管してあるの。」
「門外不出だと言われていたけど、私ならきっと何とか出来ると思うわ。あなたと一緒だと時渡り出来るみたいだし。」
「ただ・・実はね、今までエテーネ王国のこと、あまり考えないようにしていたの。」
「お父様が私を装置に入れたこととか、王宮が消えてしまったこととか・・クオードのことも。」
「全部気を失ってる間に起きたことだから、夢のように現実感がなくて。」
「エテーネ王国に行ったら全てが明らかになって現実を見ることになるわ。それがすごく怖い。」
「でも主人公が世界を救うためにどうしても必要なものがそこにあるなら、私が何とかしなくちゃね。」
「あなたの為なら辛いことからも目をそらさずに頑張ろうって思える。」
「うん、決めたわ。一緒に行きましょう。エテーネ王国へ!」
「まずは王都キィンベルの王国軍事区画にある転送の門に向かってね。」
主人公とメレアーデはエテーネルキューブで5000年前のエテーネ王国へ移動した。


主人公が転送の門に入ると、後ろからメレアーデがやって来る。
「ふう、軍の人達に私のこと気づかれなくて良かったわ。今はまだ秘密にしておきたいの。」
「えっとね、王家の温室はパドレア邸や王立アルケミアと同じような浮島の一つに建てられているの。」
「王族だけが知ってる浮島の座標を入れれば、転送の門の行き先に追加されるはずよ。」
「ええと、確か・・」
メレアーデはたどたどしい手付きで転送の門を操作した。
「うん、成功よ。王家の温室が行き先に追加されたわ。あとはあなたに操作を任せるわね。」


メレアーデと一緒に王家の温室に向かう。
温室の入口は暗証番号を入力しないと開かないようになっていた。
「暗証番号、何だったかしら。昔、お父様に連れられて一度入ったきりだから。」
「お父様が自分で決めた番号だわ。番号そのものは思い出せないけど、確か『英雄レトリウスと永遠の友』っていう本に書かれた数字を順番に並べたものよ。お父様の愛読書だったの。」
「ドミネウス邸のお父様の部屋にあったはずなんだけど、まだ残ってるかしら。墜落しちゃったし。」
「考えてても仕方ないわよね。とにかく探してみましょ、主人公。」


主人公は廃墟のドミネウス邸の2階にある本棚から暗証番号のヒントを得た。
再び王家の温室に戻り、入口で暗証番号1543と入力する。
「暗証番号の入力を確認。どうぞお通りくださいませ、エテーネ国王。」


温室の中に入ると、正面に巨大な球根が根を張っていて、そこから不思議なチカラを感じる。
「これが時の球根よ。」
「親球は大きすぎるから、持っていくならこっちがいいと思うわ。」
主人公は時の球根を受け取った。
「この球根には王族の持つ時渡りのチカラに深く関わるという伝承があって、代々大切にされてきたの。」
「でも誰が植えたとか、どんな花が咲くとか詳しいことは全然分からないのよね。」
「こんなものを欲しがる人がいるなんて、何のために使うのかしら。」
「とにかく手に入って良かった。少しはあなたの役に立てたわよね。」
「せっかくエテーネに戻ってきたけど、まるで別の時代に来ちゃったみたい。」
「本当にもう王宮はないのね。お父様も、クオードも。」
「帰りましょう。あなたの時代に。」


主人公達はエテーネルキューブで現代のグランゼドーラ城下町に戻って来た。
「ごめんなさい、主人公。私何だか、目眩が・・」
メレアーデは突然、気を失って倒れてしまった。
主人公は倒れたメレアーデをグランゼドーラ城へと運び込んだ。


賢者の執務室で賢者ルシェンダと話をする。
「おお、主人公。倒れたメレアーデ姫のことだが、今は静かな部屋でお休み頂いている。」
「時渡りをしたことで疲れが出たようだと本人の口から直接聞いた。」
「休めば回復するそうなので安心するがいい。」
「それからそなたに伝言を預かった。」
「私は大丈夫だから球根を届けてあげて、とのことだ。」
「メレアーデ姫のことは私たちに任せて、そなたはなすべきことを果たすがいい。終焉の繭のこと、くれぐれも頼んだぞ。」


エテーネルキューブでウルベア地下帝国に移動し、ウルタ皇女に会いに行く。
08号はかなり役立っているようだ。
「そちはなんと使える魔神機じゃ。素材は粗末ながら、演算処理装置は帝国技術庁製よりもずっと優秀じゃの。」
「褒めてつかわすぞ、いい子、いい子じゃ。」
「そちを開発した技術者の名を教えよ。すぐにでも我が城で召し抱えようぞ。」
ちょどその時、ウルタ皇女は主人公の姿に気づいた。
「なんじゃ、戻ってきてしもうたか。このまま08号をうちの子にしてしまおうかと思ったのにのう。」
「それで時の球根は手に入ったのかえ?冴えない冒険者よ。」
主人公はウルタ皇女に小さな時の球根を渡した。
「どうやら本物のようじゃ。よくぞまあ、手に入れたものよ。」
「そちが従える08号の性能も見事じゃ。ただの冴えないだけの冒険者ではなさそうじゃな。」
「非礼を詫びよう、エテーネ人主人公よ。よくぞわらわの役に立ってくれた。」
「時渡りのチカラを制御する秘宝。これさえあれば・・」
「そちには話してやろう。わらわの願いを。」
「我が父、第十一代皇帝ジャ・クバは誰よりも平和を愛し、国民の幸せを願っていた。」
「長年続いていた西のガテリア皇国との戦争に終止符を打ち、和平条約を結ぶ手はずを入念に整えておった。」
「そんな父上の思いを踏みにじったのが、あのガテリアの野蛮人じゃ。」
「和平条約を結ぶ前日、きゃつは・・名を呼ぶのもおぞましいあの悪鬼は、父上の居室に忍び込み命を奪った。」
「ガテリアに和平を結ぶ気などなかった。父上を油断させ、はじめからウルベアを裏切るつもりでおったのじゃ。」
「それさえ分かっていれば歴史は変えられたものを。」
「わらわの願いは時を超え過去に戻り、父上の暗殺を阻止して歴史を改変すること。」
「これは決して夢物語ではない。帝国技術庁で開発しているアレさえ完成すれば、わらわの願いは叶うのじゃ。」
「時渡りはそち達エテーネ人だけのものではなくなるということじゃな。」
「時の球根は時を渡る新技術の完成に不可欠なパーツの一つらしくてな。これから技術庁へ届けてやらねばならん。」
「そちが探しているという巨人、ウルベア大魔神もそこにある。わらわが特別に連れて行ってやろうぞ。」
「城内の飛行装置発着場まで来るが良い。モタモタしていると置いてゆくぞよ。」


主人公は飛行装置発着場に移動した。
「ふふ、これはウルベア帝国式反重力飛行装置の最新モデル。しかも数量限定カラーじゃぞ。」
「新素材のフレームを採用することで機体の軽量化と燃費の向上及び浮力と速力の大幅な改善を実現。」
「振動を従来の3割以上もカットしながら機関部から伝わるこの熱量とパワー。こだわり抜いたマッシヴなシルエット。」
「ウルベアの技術の粋を凝縮した逸品じゃ。うむ、たまらんのう。」


08号が言う。
「ああ見えて皇女は一流の技術者です。代々ウルベア地下帝国の王族は技術者としての素質に恵まれています。」


ウルタ皇女が同意する。
「然り、我が父上ジャ・クバはあの天才技師リウ老師に手ほどきを受けていたのじゃぞ。」
「戦乱を前にして決別してしまったがの。今となってはきゃつが生きているのか死んでおるのかも・・」
「それはそうと、何をボサッとしておる?わらわの後ろへ乗せてやるゆえ、ありがたくライドオンするのじゃ。」
反重力飛行装置に乗り込む主人公。
「いざ、帝国技術庁へ、全速前進!」


帝国技術庁に着くとグルヤンラシュが出迎えに来ていた。
「おお、出迎えに来てくれたのか、グルヤンラシュ。」


グルヤンラシュが言う。
「エテーネ人が現れたと聞いていたが、お前は本当にボウフラのような奴だな。」
グルヤンラシュと呼ばれている男は、なんと・・クオードが成長した姿だった。
「時渡りが出来るということは、お前もまたエテーネの血を引く者だったのか。あの土壇場で発動させるとは悪運が強い。」


ウルタ皇女が言う。
「おお、グルヤンラシュの知人であったか。時の球根を手に入れられたのも道理じゃな。」


クオードが近づいてくる。
「なんて顔をしてる。俺だ。正真正銘のクオードだ。お互い生きてまた会えるとはな。」
「時見の神殿が崩壊したあの日、俺は姉さんを助け出した後、無我夢中で時渡りのチカラを発動したらしい。」
「辿り着いたのが、このウルベア帝国だった。お前はつい最近ここに来たようだが、俺はもう10年以上この時代にいる。」
「どうだ、見違えたか?ずいぶん背が伸びただろう。」
「あの後、エテーネがどうなったのか、この時代の文献をつぶさに調査した。そして分かったことがある。」
「王宮が消失してから間もなく、エテーネ王国は滅びを迎えたという。」
「俺は戻らねばならない。エテーネの滅びを回避するため、あの時代に必ず帰らなければ!」


ウルタ皇女が言う。
「グルヤンラシュはわらわの同志。その上エテーネ人の仲間が増えるとは、こんなに心強いことはないぞえ。」


クオードが頷く。
「俺はこの帝国技術庁でウルベアの叡智とエテーネの錬金術を組み合わせた新技術で再び時渡りを成功させるつもりだ。」
「グルヤンラシュというのは、『あの日へ帰る』という意味の古代語でな。今はその名でウルベア帝国に仕えている。」
「ウルタ皇女は俺の良き理解者だ。彼女となら夢を実現できる。きっと。」


「グルヤンラシュよ。早速、例の件を確認したい。ゆくぞ!」
クオードとウルタ皇女は何処かへ行ってしまった。


エテーネルキューブからキュルルが現れる。
「まさかここに来てアイツと再会するとは思わなかったキュね。」
「ああいう、その時代での影響力が強い奴に、未来から来たことやメレアーデのことを言うとロクな事にならない可能性が高いキュ。」
「クオードには何も言うなキュ。主人公が同じ時代に飛ばされたと勘違いしてるみたいで助かったっキュね。」
「さてと、僕はしばらく寝るキュ。メレアーデまで時空転移させたことでだいぶエネルギーを消耗したキュ。」
「キューブの動作には支障ないキュ。それではお休みだキュ。」


08号が近づいてくる。
「主人公様。周辺を調査して来ました。重要機密に関わる主任研究員を3名確認。」
「3名の主任研究員に聞き込み調査を実施し、ダラズ大鉱脈で待つリウ老師のため、帝国技術庁で情報収集しましょう。」


1人目の主任、バカル主任に話を聞く。
「おや、見学者さん。いらっしゃい。ここは泥と油にまみれた中型魔神機開発部だ。」
「おら達が愛する03系統と05系統は分かりやすく言うと戦闘能力の低いウルベア魔神兵ってとこだ。」
「03系統の労働魔神機は大型化に成功した初めての魔神機で、鉱山や採掘場での活動を想定して作られたのさ。」
「この帝国技術庁を建設する時にも、巨木の根っこを掘って、掘りまくって、まあそれはそれは大活躍してね。」
「今じゃこんな流砂の海になっちまったが、ちょいと前まではガタラ大山林並に深い森だったんだよ。」
「たった10年でこんなになるのは変な話だけど、グルヤンラシュ様の方で原因調査中らしいね。流石だね。」
「あの方はかなりの切れ者だよ。中型魔神機にも予算をしっかり配ってくれるし、不満なんかいっこもないよ。」


2人目の主任、チュカカ主任に話を聞く。
「やあ、小型魔神機開発部へようこそ。僕が責任者のチュカカさ。小型魔神機に興味があるのかい?」
「僕たちが開発する02系統の支援魔神機や04系統の警備魔神機は人々の生活をサポートすることを主目的としているんだ。」
「特に警備魔神兵はリウ老師が開発した原型機の04号から完成度が高くて、ジャ・クバ陛下も特に評価していたんだよ。」
「ただジャ・クバ陛下のご存命中に警備魔神兵の量産に至らなかったことは今でも深く後悔していてね。」
「僕らがしっかりしていれば、調印式にさえ間に合わせていれば、陛下が死ぬことはなかったかも知れない。」
「ガテリアが陛下を裏切り、当時の側近たちも戦乱の中次々と命を落とし、残されたウルタ皇女は孤独を深めていった。」
「その時のトラウマで皇女は魔神機にしか心を開かなくなってしまったんだよ。お可哀そうに。」


3人目の主任、ツォンデム主任に話を聞く。
「ウルベア帝国随一の技術力を誇る大型魔神機開発部へようこそ。」
「君が見学したがるのも当然の帰結と言えよう。」
「我々が開発する06系統と07系統は、通称ウルベア魔神兵と呼ばれ、先の大戦で多くの戦果を上げた英雄なのだからな。」
「敵と識別した対象を人の判断を待たずに人工知能の自己判断で攻撃できる破壊兵器。完成に至るまでには多くの犠牲も出たが、世の中結果が全てだ。」
「犠牲者達も戦争の勝利に貢献できたことをあの世で誇りに思っているだろう。」
「そして我々大型魔神機開発部の集大成、ウルベア大魔神の事も語らねばなるまい。」
「なんと大魔神はガテリア兵5000名を超高出力ビームで一気に焼き払ったのだよ。何という殺傷力。身震いするじゃないか。」
「今は第二庁舎の地下で眠っているが、時が来ればまたあの雄姿が見られよう。次の戦争を楽しみに待っていたまえ。」


第一庁舎3階に向かうと、マリッチが故障して煙を上げていた。
故障したマリッチをウルタ皇女が懸命に修理している。
「むう、飛行中にやられたか?まったく、どんくさいのう。」
「マリッチ、起きよ。そんな軟弱な子に組み上げた覚えはないぞえ。」
マリッチは起き上がろうとするが、また煙を上げて壊れてしまった。
「かー、このポンコツ!」
ウルタ皇女が主人公の姿に気づく。
「なんじゃ、来ておったのか。」
08号がマリッチに近づき、様子を観察する。
「マリッチのメンテナンス許可を求めます。私にお任せ下されば・・」


ウルタ皇女が08号の話を遮る。
「ふ、見くびるな。わらわはまだ本気を出しておらぬ。華麗に直してみせるゆえ見ておれ。」
ウルタ皇女は再びマリッチの修理を始めた。
その様子を見ていた08号がマリッチの体内に刻まれている印に気づく。
その刻印は08号の体に刻まれている印と同じものだった。


「うむ、外装こそ新しいが素体は古い。父上に仕えた初期型魔神機のものでの。壊れたまま放置されていたので、こうして再利用することにしたのじゃ。」
「取り立てて取り柄のない子じゃが、形見と思って側に仕えさせておる。」
「ふん、形見などと・・歴史を改変すれば父上はわらわの元へ帰ってくるのじゃ。早よう会いたいのう。」
「よし、一気にやってしまうか!」
ウルタ皇女は素早い手つきでマリッチを修理していった。
しばらくすると故障は直り、マリッチは元気に動き始めた。
ウルタ皇女も嬉しそうだ。
「なんじゃ、油臭い奴め。あまり寄るでない。」
「主人公、08号、礼を言う。そなた達の優しさが嬉しかったぞよ。」
「おお、そうじゃ。見せたいものがあるゆえ、この庁舎の最上階にある開発中枢区まで来てたもれ。」


主人公は4階にある開発中枢区に向かった。
中に入るとクオードも来ていた。
「ウルタ皇女、いよいよここまで来ました。これが完成すればついに我々の願いが叶う。」


ウルタ皇女が言う。
「グルヤンラシュ、礼を言うぞ。そちがいなければ、わらわはとうの昔に壊れていた。」
「父上が暗殺され、絶望したわらわに過去はやり直せる、歴史は変えられると生きる希望を与えてくれたのじゃ。」


クオードが言う。
「私も同じです、皇女。あなたが私の言葉を信じてくれたからここまでやってこれたのですよ。」


ウルタ皇女が主人公の姿に気づく。
「うむ、よくぞ参った。見せたいものとはこれじゃ。」
ウルタ皇女が見上げる先にはエテーネルキューブが浮かんでいた。
「これこそが歴史改変の夢を叶える時間跳躍制御装置、エテーネルキューブ。」


クオードが言う。
「エテーネルキューブを作るためには非常に入手困難な3つの素材が必要だ。」
「1つ目の素材はアルケミダスト。高位錬金術の副産物として生成され、キューブのエネルギーに変換できるものだ。」
「この時代で優秀な錬金術師と出会い、配下につけることが出来たのは幸運だった。エネルギー問題は早々に解決出来た。」
「2つ目の素材は時の球根。時渡りのチカラをキューブに定着させ、安定した時渡りを実現するものだ。」
「こちらも錬金術で作り出した代用品で間に合わせる予定だったのだが、お前のおかげで手間が省けた。」
「どうやって手に入れたのかは知らんが、相変わらずお前は物探しの天才だな。」
ウルタ皇女が話を続ける。
「そして最後がボロヌジウム。時渡りのチカラと膨大なエネルギーを内に封じるキューブ外殻の素材じゃ。」
「ガテリア皇国領地、ボロヌス溶岩流地帯の地底から採掘される希少な鉱物資源でな。魔力を宿し、とこしえの輝きを放つ。」
「ガテリアが国の宝とするボロヌジウムを我等ウルベアに譲るはずもない。交渉で済むならどんなに良かったか。」
「しかし結果的にボロヌジウムを手に入れるためには、かの国へ侵攻し滅ぼすしか道は残されていなかった。」
「だが、本当にそうだったのか・・果たしてあれが正しい選択だったのか、今でもわらわは・・」


クオードがウルタ皇女の肩に手をのせる。
「皇女、いいですか。そもそもがガテリアから仕掛けてきた戦争。滅亡したのも当然の末路です。」
「前皇帝ジャ・クバ様、あなたのお父上を殺したのは、ガテリア皇国第一皇子、悪鬼ビャン・ダオなのですから。」
「かつてビャン・ダオはウルベアとガテリアの和平を結ぶため、使者として我が帝国へやって来た。」
「生真面目な性質と情熱的な姿勢を皇帝は気に入っておられたのに、それも全て演技だったとは。」
「調印式の前日、ビャン・ダオは油断した皇帝の私室に忍び込み、その尊いお命を奪った。」
「ですがご安心下さい。歴史はやり直すことが出来るのですから。」
「そうでしょう?ウルタ皇女。」


ウルタ皇女が言う。
「エテーネルキューブの完成を急げ。」
「そちは自分の故国に戻るため。わらわは父上の悲劇を止めるため。」
「わらわはもう迷わぬ。」


ウルタ皇女が去っていった後、クオードが主人公に近づいてきた。
「さて、お前がとんだお人好しということは重々知っている。」
「だがそれだけのために時の球根を手に入れてくるとは思えない。何か目的があるのだろう?」
「共にエテーネ王国へ戻ることか?何でも話してくれ。俺に出来ることなら協力しようじゃないか。」
主人公はクオードにウルベア大魔神が狙われていることを話した。
「大魔神が敵に狙われている?それを守りに来た?」
「例え敵に狙われていたとしても、この帝国技術庁ほど守りに適した場所はない。余計な心配はしてくれるな。」
「だが知らせてくれて感謝する。大船に乗ったつもりで後は任せておけ。お前はここで自由に過ごすがいい。」


クオードが去っていった後、08号が話し始めた。
「リウ老師より音声通話の要請あり。会話を許可。接続致します。」
リウ老師の声が聞こえてくる。
「聞こえますかな、主人公君。長旅ご苦労様でした。」
「おかげで重要な情報が入手出来ました。一度ダラズ大鉱脈の管理事務所まで戻って来てもらえますかな?」
「とても大事な話があるのです。宜しく頼みましたぞ。」


主人公はダラズ大鉱脈の管理事務所に戻り、リウ老師と話をする。
「おかえりなさい、主人公君、08号。遠路はるばる呼び戻してすみませんな。」
「08号を通して状況は把握しております。あなたの活躍のおかげで実に素晴らしい成果が上がりましたよ。」
「ええ、私が期待していた以上にね。」
「あなたのその腕を見込んで、今回ウルベアに潜入してもらった本当の理由を話しておきたいと思いました。」
「私はかつて、ウルベア地下帝国に使える筆頭技術者でした。」
「人々の暮らしを豊かにしたいという前皇帝ジャ・クバ陛下の勅命を受け、魔神機をはじめ多くの発明をしたものです。」
「しかしグルヤンラシュが急速に台頭し、陛下のお心をとらえると、軍事技術に偏った開発方針を推し進めるようになりました。」
「私はその方針に納得できず、技術協力を断り、ガテリアへと亡命したのです。」
「ガテリアでは第一皇子ビャン・ダオ様の家庭教師として教え導いておりました。」
「あの方は実にいい教え子でしたよ。聡明なだけでなく、心根が真っ直ぐで情熱に溢れていた。」
「私が亡命してから間もなく、ウルベアからガテリアへ和平交渉の機会がもたらされました。」
「ガテリアは使者としてビャン皇子をウルベアへ遣わしました。」
「そして、調停式の前日、ビャン皇子はジャ・クバ陛下を暗殺した。」
「・・そんな訳はない!平和の尊さを学び、よく理解して下さったあの方が、ジャ・クバ陛下を殺す理由などあるはずもない。」
「私は魔神兵を連れてウルベア城に潜入し、収監された皇子を救出しました。」
「魔神兵の体内凍眠室に入って頂き、凍眠機能を作動させたのです。」
「目覚めの時まで誰にも侵されぬよう。」
「皇子とは未来で会う約束をしております。ですがまだ行けないのですよ。」
「ビャン皇子にかけられた無実の罪を晴らすまではね。」
「あなたと08号をウルベアへ送ったのは皇子が無実であるという確たる証拠を掴むためだったのです。」
「おかげで予定外の手がかりを得られました。ひょっとするとあの方の汚名をそそぐことが出来るかも知れません。」
「私は現地に潜り込んでいる協力者を頼りに帝国技術庁へ向かいます。」
「あなたにも是非来て頂きたい。ビャン皇子のために、どうか頼みます。」
主人公は頷いた。
「では帝国技術庁の開発中枢区へ。08号は引き続き、主人公君のサポートを頼みましたぞ。」


主人公はリウ老師と共に再び帝国技術庁の開発中枢区へ向かった。
ウルタ皇女とクオードがエテーネルキューブを見上げている。
「ああ、お前か。丁度良かった。ついにエテーネルキューブが・・」
リウ老師の姿を見つけたクオードが険しい顔をする。


「お久しぶりですな、グルヤンラシュ殿。そしてウルタ皇女。お美しく成長されましたな。」


クオードが言う。
「大罪人の脱獄に手を貸した後、レジスタンス共にかくまわれたそうだな。今さら何をしに来た?」


「私は皇帝ジャ・クバ暗殺の真相を解き明かしに来ました。」
「確かめてみましょう。誰の目にも明らかな証拠が残っているはず。」
「そうですな、01号?」
リウ老師はマリッチの方を見ている。


ウルタ皇女がマリッチを抱きかかえる。
「この子はわらわの世話係、マリッチ。01号とは何のことじゃ。」


「ウルベアの魔神機は私が生み出したもの。初めての試作機には01号と名付け、ジャ・クバ陛下に献上したのです。」
「08号を通してマリッチの素体を見させていただきましたよ。あれは紛れもない私の刻印でした。」
「主人公君の協力のおかげでようやく気づくことが出来たのです。」
「さあ01号よ。調印式の前日、ジャ・クバ様の居室にて記録した映像を再生なさい。」
「01号に戦闘能力はありませんでしたが、皇帝の体調管理を行うための記録装置をつけていました。」
「これは01号がとらえ、保存し続けていたジャ・クバ陛下の最後の映像・・」


マリッチは宙に映像を映し出した。
ジャ・クバが机に向かって座っている。
「明日の調印式でようやくドワチャッカ大陸に安寧の時代が訪れる。」
「兵士たちが尊い命を散らすことも、莫大な軍事予算が民草の生活を蝕むことも、もうない。」
「お前達、忠実なる魔神機達が戦場で傷つくこともなくなるのだよ。よく頑張ってくれたのう。」
「ガテリアにも平和を愛する者がいてくれた。ウルタもいつかあの青年のような・・」
そこへ誰かが部屋に入ってきた。
侵入者はマリッチに打撃を加えた。
「お前は!一体何故・・」
映像は一度途切れてしまった。
再び映像が映し出される。
そこに映し出されたのは、うつ伏せに倒れているジャ・クバと剣を持ったままジャ・クバを見下ろすクオードの姿だった。
クオードがその場を立ち去った後、ジャ・クバは意識を取り戻した。
「誰ぞ・・聞こえるか・・そこにおらぬか?」
マリッチがジャ・クバに近づく。
「01号、もし聞こえていたら愛するウルタに伝えておくれ。」
「余の死を乗り越えよ。お前にウルベアのこれからを・・未来を・・託す・・」
ジャ・クバは絶命した。


映像を見ていたウルタ皇女が泣き崩れる。
追い詰められたクオードが叫ぶ。
「デタラメを映す下劣なガラクタめ!こんなもの何の証拠にもならん!」
クオードが警報装置を作動させた。
入ってきた警備魔神機に取り囲まれる主人公とリウ老師。
「国家転覆を目論む反逆者共を拘束せよ。」
主人公達はエレベーターに乗せられ、第302開発室に連行された。
08号が第302開発室をスキャンする。
「脱出不可能。完全に閉じ込められました。」


リウ老師が落ち込んでいる。
「主人公君にはすまないことをしました。すっかり私達の事情に巻き込んでしまいましたな。」
「グルヤンラシュはジャ・クバ陛下のご存命中から軍事に偏った技術開発ばかり推し進めていました。」
「そうして宰相として実権を握った後は、平和を愛するジャ・クバ陛下が邪魔になったのでしょう。」
「皇帝殺しの罪をガテリアになすりつけた上、ウルタ皇女を孤立させ意のままに操ることに成功した訳です。」
「このような所業、とても人とは思えぬ。悪鬼とは他ならぬ奴のことですな。」


08号が警戒モードに入る。
「生体反応、1体接近中。」


扉が開くと、なんと・・主人公の弟が入ってきた。
「お兄ちゃん、やっと会えた!おいらだよ、弟だよ!助けに来たよ!」


リウ老師が弟の姿を見て言う。
「その制服、帝国技術庁の筆頭研究員ですな?」


「おいらはこの国に流れ着いてから、錬金術師としてグルヤンラシュと一緒に時渡りの研究を続けてきたんだ。」
「時渡りで苦しむグルヤンラシュの境遇は、おいらもすごく共感できたから。同じ目的のためにキューブを開発してきた。」
「でもアイツの悪事に気づいちゃって。何度も止めようとしてきたんだけど、結局何も出来なかった。」
「だけどこれ以上は見過ごせない。今回のことは監視装置を通して見ていたんだ。それでお兄ちゃんに伝えたいことが・・」


その時、警報装置が鳴り響く。
「第二庁舎、警戒レベル上昇。SSランクの研究員以外の立ち入りを禁ず。職員各位、留意せよ。繰り返す・・」


弟が話を続ける。
「ウルタ皇女が第二庁舎の下層にある特別監視室に監禁されているんだ。」
「第二庁舎につながる渡り廊下は4階だよ。ロックは僕が解除しておく。」
「一緒に皇女を助けよう。そしてグルヤンラシュを止めるんだ、お兄ちゃん!」


ウルタ皇女を助けに行く途中、クオードの部屋に立ち寄ると日誌が3冊あった。
「リウ老師がガテリア皇国に亡命した。動揺した陛下はリウ老師を連れ戻すためなら軍事計画の中止さえ言い出しかねない。」
「俺とて戦争をしたいわけではない。だが強気なガテリア皇帝は国の宝であるボロヌジウムを絶対に渡そうとしないだろう。」
「充分な軍事力があってこそ対等な外交が成る。そこを強調し陛下のことは説き伏せるとして、問題は弟の方だ。」
「最近アイツは俺と顔を合わせるたび『今に取り返しのつかないことになる。』と不安そうな表情で忠告を繰り返す。」
「まさかアイツまで計画の中止を望み、エテーネルキューブ完成を諦めるつもりか?ここで費やした歳月と苦難の日々を忘れたか?」


2冊目の日誌を読んだ。
「・・ついにこの手を汚してしまった。」
「鼻の奥には鉄の匂いがこびりついて何度も吐き気がこみ上げてくる。」
「だが仕方のない犠牲だった。この俺に一言の相談もなく和平交渉を進め、長年の計画を台無しにするところだったんだ。」
「エテーネへ帰還し、滅びの運命から救う。俺の意志を妨げる者は許さない。誰であろうと、絶対にだ!」
「ただ、陛下の亡骸に泣すがるウルタ皇女の姿を思い出すと、どうしようもなく胸を掻きむしりたくなる。」
「今振り返っていたら心が砕けてしまう。何も考えるな。人の心など捨ててしまえ。もう後には引けないんだ。」


3冊目の日誌を読んだ。
「・・これは悪夢か?夢なら覚めてくれ。」
「ウルベア大魔神の扱いを大型魔神機開発部に一任したのは大きな間違いだった。」
「大魔神の圧倒的なチカラに熱狂した連中はリミッターを解除し、最大出力のビームでガテリア皇国を焼き払ってしまった。」
「過ぎたるチカラが人を狂わせた。俺の意思に関係なく歴史は動いて、大きな渦に飲み込まれていく。」
「メレアーデ姉さん。俺はどこで道を間違えたんだろう。会いたい、姉さん・・」


第二庁舎の下層にある特別監視室に着くと、ウルタ皇女が結界で拘束されていた。
結界を破壊し、ウルタ皇女を救出する。


解放されたウルタ皇女はマリッチに抱きついた。
「マリッチ・・」
「お前を疑う訳ではない。だがどうしても信じられぬ。」
「あのグルヤンラシュが裏切り者だなどと信じたくない・・」
ウルタ皇女が弟を見る。
「わらわ達は同じ夢を見ていたはずじゃ。必ずや時を渡り、歴史を変えるのだと。」


弟がエテーネルキューブを取り出す。
「残念だけど、あんたの願いは永遠に叶わないんだ。」
「どんなに強く願っても、このエテーネルキューブはエテーネ人が持つ時渡りのチカラにしか反応しないんだ。」
「あんたにずっと打ち明けたかった。だけど長い間、自分の研究室を出ることすら許してもらえなくて。ごめん・・」


リウ老師が言う。
「この先にあのウルベア大魔神が格納されておるのですな。」


弟が答える。
「グルヤンラシュはウルベアの技術で作った大魔神を、おいらが作った地脈の結晶で動かして最強の軍事兵器にしてしまったんだ。」
「この研究所の周辺が流砂の海なのは、ウルベア大魔神が地脈エネルギーを吸収したからだって言われてるんだ。」
「グルヤンラシュはこの先にいる大魔神を使って何か企んでいるはず。」


リウ老師言う。
「私はウルタ皇女と脱出の準備をします。グルヤンラシュの野望をどうか止めて下され。」
リウ老師がウルタ皇女に近づく。
「ジャ・クバ様はウルベアの未来を貴女に託された。」
「ウルタ皇女、これからどうなさいますか?」


主人公と弟が奥にある格納庫へ向かうと、大魔神の前にクオードがいた。
「貴様にはエテーネルキューブを開発することだけ命じたはずだが?」


弟が言う。
「おいら、あんたを信じて絶対にキューブを作ろうって決めたんだよ。時間の漂流者同士、諦めず頑張ろうって。」
「なのにどうしてこうなっちゃうんだよ。あんたは自分の都合のために沢山のものを犠牲にしすぎた。」
「皇帝を殺した上、皇女を騙してガテリア皇国まで滅ぼした。絶対に許されることじゃない。」


クオードが言う。
「許して欲しいなどと誰が言った?」
「お前達に理解出来るはずがない。」
「自力で時を渡ることすらままならないのに、いつになればあの時代に戻れる?どうすればエテーネを救える?」
「寄る辺なき時代で焦りは募り、月日だけが刻々と過ぎ、年を重ね、頭がどうにかなりそうだった。」
「主人公!お前にこの絶望が分かるか?」
「俺は突き止めた。エテーネ王国が滅んだのは大規模な地盤沈下によるものだと。」
「ウルベア大魔神は地脈エネルギーをその心臓部たる地脈の結晶に蓄える事が出来る。」
「ドワチャッカ大陸全土の地脈エネルギーを過去へ持ち帰り、大エテーネ島に注ぎ込めば滅びの未来は回避されるはずだ。」
「いくつの国が滅びようと、誰を殺そうと、俺は必ずやり遂げて見せよう。」
「エテーネを滅びの未来から救うんだ!」


そこへ突然、パドレが現れた。
両手剣を振り下ろし、格納庫を破壊していく。
そして大魔神の胸に赤く輝く地脈の結晶に手をかざしたパドレは、地脈の結晶を奪い去った。


格納庫が崩れていく中、弟が焦りながらエテーネルキューブをいじっている。
「動け、動いてよ!」


パドレがクオードを見た。
パドレの顔を見たクオードが驚く。
「馬鹿な・・そんなはずは・・」


パドレは何も言わずにその場から消え去った。
「何故だ?今のは・・パドレ叔父さん・・」


格納庫が崩れ、瓦礫が主人公の頭上に降り注ぐ。
そこへウルタ皇女とリウ老師が反重力飛行装置に乗って助けに来た。
主人公はリウ老師に、クオードはウルタ皇女助けられ、崩れゆく格納庫から脱出した。
弟の姿は何処にも見当たらない。


砂防ダム展望台へ避難した後、ウルタ皇女がクオードを問い詰める。
「第十一代ウルベア皇帝ジャ・クバの娘、皇女ウルタが問う。」
「皇帝を暗殺したのは宰相グルヤンラシュ、そちに間違いないか?」


クオードは崖の上に立って遠くを見つめている。
「そうだ。」


「皇帝暗殺の罪をビャン・ダオになすりつけ、帝国の実権を握り、意に沿わぬ技術者や廷臣を戦地へ送り込んで密かに謀殺したか?」


クオードが言う。
「そうだ。」


「過ぎた時を戻すと、わらわをそそのかして時間跳躍制御装置の開発を行い、実際は自分だけが時を渡ろうとした。」
「これも間違いないのじゃな?」


クオードが言う。
「ああ。」


ウルタ皇女が怒鳴りつける。
「申し開きの一言もないのか!」


クオードはまだウルタ皇女に背を向けたままだ。
「エテーネ王国を滅びの歴史から救う。例えどれだけの罪を重ねようとも、俺はやらねばならなかった。」
「・・それだけだ。」


クオードの背を睨みつけるウルタ皇女は銃を構えた。
「在りし日の温もりを取り戻すため時を渡り、歴史を変えるという夢。」
「同じ夢を見てそちと過ごした日々は本当にかけがえのないものだった。」
「だがわらわは皇女として、次の皇帝として、奸臣グルヤンラシュを断罪する。」


クオードが言う。
「俺の夢は破れた。もはや何の未練もない。」
振り返り、皇女ウルタを見る。
「・・撃て。」


銃を構える皇女ウルタの手が震えている。
「グルヤンラシュ・・わらわは本当に信じていたのに・・」


「撃て!!」
クオードの気迫に押された皇女ウルタは思わず銃の引き金を引いてしまった。
皇女ウルタが放った銃弾がクオードの胸を貫く。
「メレアーデ姉さん・・」
クオードは胸を押さえたまま崖の下に落ちていった。


主人公達は反重力飛行装置に乗ってウルベア帝国城に戻った。
城に戻ったウルタ皇女は家臣たちに、これまでの真相を全て話した。
特に皇帝を暗殺したグルヤンラシュを皇女の手で断罪した件は大きな衝撃を与え、城内に動揺が広がった。


玉座の間に家臣たちを集めたウルタ皇女は玉座に座った。
「事の真相はすでに伝えた通りじゃ。これまでわらわが不甲斐ないばかりに多くの者に迷惑をかけてしまった。」
「それでもわらわの呼びかけに応じ、集ってくれた者たちに礼を言う。皆のチカラをどうか貸して欲しい。」
「父上はもうこの玉座には帰らぬ。わらわがこの国を導かねば。」
「マリッチよ。しっかりと見ていておくれ。」
ウルタ皇女が立ち上がり、家臣たちに言う。
「大戦を引き起こしウルベアに混乱をもたらした奸臣グルヤンラシュは死んだ!」
「これよりウルベア地下帝国、次期皇帝であるわらわの決意を示す。よく聞いて欲しい。」
「まずはじめに、ガテリア皇国第一皇子ビャン・ダオの名誉は回復される。」
「ダラズ採掘場で不当な労働に従事するガテリアの捕虜たちも解放させよう。難民の救済にも全力を尽くす。」
「また、帝国のエネルギー資源を根本から見直し、砂漠化を食い止め、後の子孫たちに誇れるような、真に豊かな国づくりを始める。」
「歪んだ時代を正し、思い半ばに散っていった者たちが託した未来をしっかりと両の手で受け止め、このような悲劇を二度と生むことのない新たな時代、新たなウルベアをわらわと共に築いて欲しい!」
家臣たちから歓声が上がる中、ウルタ皇女が主人公に近づいてきた。
「主人公よ。此度はウルベア地下帝国のためよく働いてくれた。」
「そちにはこのままここに留まって、わらわを助けてもらいたいが、何やら使命があるそうじゃな。」
「リウ老師にはなんぞ気になることがあるとか?」


主人公の隣りにいたリウ老師が答える。
「私の懸念は謎の剣士に持ち去られた地脈の結晶のことでございます。」
「格納庫が崩落したため、今のところウルベア大魔神には誰も触れられません。」
「しかし地脈の結晶が何処かに存在する限り、この先の未来においてウルベア大魔神が復活する可能性はゼロではないのです。」
「戦時中グルヤンラシュが使役したウルベア大魔神は、ガテリア皇国を一夜にして滅ぼしてしまった。」
「あれこそは高度な文明の慢心が生んだ大いなる罪の象徴。」
「私はこの時代の技術者として、生涯をかけウルベア大魔神が復活した時の対抗策を講じていく所存にございます。」
「地脈エネルギーへの対抗策・・恐らく太陽エネルギーにその可能性があるのではないかと考えております。」


ウルタ皇女が頷く。
「うむ、頼んだぞ、リウ老師よ。」
「わらわも全力で支援すると約束しよう。」


リウ老師がレーダーのようなものを手に持っている。
「私は確信しております。あなたならばきっと役立ててくれると。」
「さあ、こちらを受け取って下さい。」
主人公はリウ老師の探知機を受け取った。


主人公が玉座の間を出ると、キュルルがエテーネルキューブから出てきた。
「快眠、快眠っキュ。」
「だいぶチカラが回復したキュル。主人公、状況報告を要請するキュ。」
主人公は状況を報告した。
「そんな状況なのにまだこの時代に留まってるつもりキュ?」
「何をすべきかは、もう分かってるはずキュ。」
「こうしてるうちに黒衣の剣士が現代で大魔神を起動させてるに決まってるキュ。」
「さっさろと元の時代に戻るキュ。ほれ、ほれ!」


現代に戻りリウ老師の探知機が示す場所に向かうと、機能を停止したウルベア魔神兵があった。
探知機がウルベア魔神兵に共鳴している。
ウルベア魔神兵の体内には大きな玉が埋め込まれていた。
どうやら探知機はこの玉に反応しているようだ。
なんとウルベア魔神兵が動き出し、主人公を見ている。
「おお、主人公様。なんと懐かしい。」
「私です。08号です。あれから3051年経過。」
「視覚認識装置、老朽化のため顔を充分に確認できず残念ですが、お会いできて嬉しいです。」
「主人公様、リウ老師はあなたが未来から時を渡って来た者だと初めから察していたのです。」
「私の体内にある太陽の弾は、リウ老師が生涯をかけ作り上げた大魔神へのたった一つの対抗策。」
「どうか私達の未来を脅かす敵に思いっきりブチ込んでやって下さい。」
「以上で主人公様へのサポート任務、全て終了。」
「ご利用ありがとうございました。さようなら、主人公様。」
08号は役目を果たし、動かなくなった。
主人公は太陽の弾を手に入れた。


防砂ダムに向かうとウルベア大魔神が動き出していた。
大魔神の側にはパドレの姿がある。


主人公はビャン・ダオのもとに向かう。
「あんなものに立ち向かう術などない。今度こそ余もリウ老師のもとへ・・」
ビャン・ダオが主人公の姿に気づいた。
「なんと、主人公か!そなたなら必ず生きていると信じていたぞえ。」
「だが再会の喜びもあの大魔神の前では全てが虚しいか。」
主人公はビャン・ダオに状況を説明した。
「リウ老師が遺した大魔神への対抗策じゃと?」
主人公は太陽の弾を取り出し、ビャン・ダオに見せた。
「おお、リウ老師。こうしてまたそなたに教え導かれるとは。」
「そうであったな。余はこの時代を守ると決めたのじゃ。生きておる限りは全力で抗って見せようぞ。」
「砲撃準備!至急、太陽の弾を装填せよ!目標、眼前に迫るウルベア大魔神!」
ドルワーム軍の兵士が大砲に太陽の弾を装填した。
「撃ち方、始めーい!」
発射された太陽の弾の弾は、ウルベア大魔神に吸い込まれるように飛んでいく。
太陽の弾はウルベア大魔神が繰り出すバリアを突き破り、胸に赤く輝く巨大な地脈の結晶を撃ち抜いた。
地脈の結晶を撃ち抜かれたウルベア大魔神は、大きな音を立てながら後ろ向きに倒れていく。
「やったぞ!我等はついにウルベア大魔神を討ち滅ぼしたのじゃ!」
「3000年の時を越えてリウ老師が余を守ってくれたのじゃな。」
「ガテリア皇国の弔い合戦を果たせたこと、そちには感謝してもしきれぬぞよ。」
「主人公、そちはまさにドワチャッカ大陸の英雄じゃ!」
「おお、こうしてはおれんぞよ。急ぎドルワーム王国へと戻り報告せねば。」
「ウルベア大魔神、討伐せり、とな!」
ビャン・ダオはドルワーム王国へ帰っていった。


主人公の前にパドレが現れた。
「邪魔してもらっては困るな。」
「時の異分子よ。今度こそ貴様との因縁・・ここで断ち斬る。」
パドレが剣を構えた時、キュルルがエテーネルキューブから現れた。
「主人公、今の状態でアイツと戦うのは得策とは言えないキュ。」
「この戦線を離脱することを推奨するキュ。」
しかし主人公はやる気満々だ。
「・・分かったキュ。君が融通のきかない非効率な思考回路を有した個体だということは理解してるキュ。」
「ただし、今ここで主人公に死なれると僕としてもそれなりに困るキュル。」


主人公は襲いかかってくるパドレを倒した。
膝をつき、倒れ込むパドレ。
「くっ・・がはっ・・」


何処からか声が聞こえる。
「実に興味深い。」
主人公が声のする方を見上げると、そこには黄金に輝く巨大なキューブがあった。
そのまわりには無数のエテーネルキューブが漂っている。
エテーネ王国にあった時見の箱に似ている。
「我が名はキュロノス。」
「再三にわたり我が眷属を倒す戦闘能力。強大な時渡りの能力を有する希少性の高さ。実に興味深い。」
「そこにいる欠損品と同等以上の性能を有していそうではあるが・・」
「究極へと至るまであと少し。今しばらくは我が傀儡として使役するとしよう。」


仰向けに倒れているウルベア大魔神が繭に吸い込まれる。
大魔神を吸収した繭が消えるのと同時に、キュロノスとパドレも姿を消した。


キュルルが少し離れた場所からキュロノスがいた場所をじっと見つめている。


主人公はこれまでのことを報告する為、賢者ルシェンダの待つグランゼドーラ城へ向かった。
「主人公よ、ご苦労であった。よもやウルベア地下帝国の古代兵器にまで魔獣を取り憑かせるとは。」
「ともかくウルベア大魔神と黒衣の剣士という強敵たちをよく撃退してくれた。」
「メレアーデ姫なら体調が回復したので丁重にエテーネ村へと送り届けさせた。またいつでも訪ねて欲しいとの事だ。」
「さて、キュロノスと名乗る存在のことだが、黒衣の剣士を傀儡として使役していると、そのように語ったそうだな?」
「キュロノスこそが一連の事件の黒幕だとはっきりした今、気がかりなのは黒衣の剣士、パドレ殿のことだ。」
「パドレ殿はキュロノスに何らかの精神操作をかけられていると思われる。それを解く方法を早急に見つけなければ。」
「こちらはキュロノスの動向を探りつつ、精神操作に詳しい者を調べておこう。」
「そなたも充分にチカラをつけておいてくれ。」


主人公はエテーネ村にいるメレアーデに会いに行った。
「あ、主人公。ひょっとして様子を見に来てくれたの?私ならもう大丈夫よ。ありがとう。」
「あれからどんな旅をしたの?あなたに渡した時の球根が役に立ったなら嬉しいんだけど。」
「あら?どうかした?」
主人公は成長したクオードと再会し、彼が命を落としたことを言おうとした。
しかし、どうしても言い出すことが出来なかった。
「ふふ、おかしな主人公。せっかく来てくれたんだし、ゆっくりしていってね。」


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