ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード27 1000年の旅路 栄光の勇者と消されし盟友

賢者ルシェンダに呼ばれた主人公は、真のグランゼドーラ城、賢者の執務室に向かった。
「待っていたぞ、主人公。そなたにちと頼みたいことがあってな。」
「グランゼドーラ上空に浮かぶあの繭について、あらかた調査が終わったので叡智の冠を招集することとなった。」
「正直なところ、私一人の手には余る事態ゆえ他の賢者たちにも繭を確認してもらい、意見を聞きたいと思ってな。」
「さっそく秘密会議室の遠話装置で皆に呼びかけたのだが、賢者エイドスとだけ連絡がとれんのだ。」
「あやつに限って何かあったとは思えんが、念のため様子を見てきてほしい。」
「そしてやつが無事ならば、緊急事態ゆえ叡智の冠はグランゼドーラへ集結せよと伝えて欲しいのだ。」


主人公は賢者エイドスを探し出し、賢者ルシェンダの伝言を伝えた。
すぐに真のグランゼドーラ城へ戻り、地下にある会議室へ向かった。
賢者ルシェンダ、賢者ホーロー、賢者エイドス、賢者ブロッケンの4人がすでに集まっている。
「おお、主人公か。賢者エイドスの呼び出し、ご苦労だったな。」
「これでそろったな。では謎の繭についての調査結果を私から皆に伝えよう。」


賢者ホーローがまわりをキョロキョロしている。
「むむ?アンルシアちゃんはどこじゃ?あの子がおらんと始まらんではないか。」


「勇者姫アンルシアとアリオス王にはすでに状況を説明済みなのでな。今回の会議は我々だけで行う。」
「さて、グランゼドーラ城の上空に謎の巨大な繭が出現したことは皆も知っての通りだ。」
「我々は調査隊を結成し、あの繭についての情報を集めてみたが手がかりは何もつかめなかった。」
「グランゼドーラ王国をはじめ、諸国が所有する古文書を調べたがアストルティアの歴史にあの繭に関する記述は存在しなかった。」
「つまりあれは、この世界にとって未知なる存在であると言うしかない。」
「だがここにいる盟友、主人公はあの繭を見たことがあるそうだ。」


主人公は、エテーネルキューブのチカラで時を渡って見た、荒廃した未来のアストルティアにあの繭があったことを説明した。


賢者ブロッケンの杖が驚く。
「大変でアール。主人公が見た光景が現実になるなら、世界は滅亡してしまうのでアール。」


賢者エイドスが言う。
「繭ということは、あの中には生き物が潜んでいると?」


賢者ルシェンダが考えている。
「おそらくは。あれが見た目通り繭なのだとしたら、いずれは外へ這い出してくるはずだ。」
「ならばその前に・・」


その時、兵士が会議室の中に駆け込んできた。
「大変です、ルシェンダさま。とんでもないものが勇者の橋に。突然魔獣が出現したのです!」
「勇者の橋のあたりの空がふいにぐにゃりと歪んだと思ったら、突然空中から魔獣が現れたのです!」
「見たこともない不気味な魔獣は、城を目指し移動を始めました。」
「万一の場合にそなえ、城下町へ通じる門は閉ざしましたが、このままではじきに城へ到達します!」


賢者ルシェンダが即断する。
「わかった。自室にて待機中の勇者姫アンルシアにも急ぎ魔獣出現の報を伝えてくれ。」
「聞いてのとおりだ、主人公。この城から直接橋へと向かい、出現した魔獣を迎え撃つぞ!」


主人公達は急いで勇者の橋へ向かった。
橋にいた魔獣は主人公達の姿を見つけるといきなり攻撃をしてきた。
賢者たちは防護壁を創り出し、魔獣の攻撃を弾き返す。
そのまま結界で魔獣を封じ込めようとするが、今度は魔獣に結界を破られてしまう。


賢者ルシェンダが主人公に向かって叫ぶ。
「戦え、主人公。あの魔獣をを倒すのだ!」


主人公はこのヘルゲゴーグに似た魔獣を倒した。
しかしすぐに復活してしまう。
「復活しただと?バカな。確かに主人公がやつを倒したはずだ。」


そこへ勇者姫アンルシアがペガサスに乗ってやって来た。ペガサスから飛び降りたアンルシアは、一刀両断で魔獣を切り裂いた。
「主人公、遅くなってごめんなさい。」


賢者ホーローが喜び声をかける。
「さっすがアンルシアちゃん、魔獣を一刀両断とはかっこいいのう。」


アンルシアが倒れた魔獣を観察する。
「こいつが突然現れたという魔獣なのね、主人公。」
「あの不気味な繭と関係があるのかしら。」


全員で繭を見上げたその時、魔獣が再び蘇った。
間一髪で攻撃をかわすアンルシア。


「どうして?完全に倒したはずなのに。」


賢者ルシェンダが言う。
「まさかこの魔獣は不死身なのか?このまま戦ってもきりがないぞ。」


賢者ホーローが言う。
「皆の衆、やつを封じるぞ!」


頷きあった賢者たちは、皆で結界を創り出す。
「我ら叡智の冠が四重の封空をここに創り出さん!」


「四重の封空よ!現れよ!」
叡智の冠の賢者4人で魔獣を空中に封じ込めた。


賢者ブロッケンの杖が言う。
「四重の封空に封印されたらいかなる魔物も出られないのでアール。」


賢者エイドスは息を切らしている。
「やれやれ、久しぶりに高位の術を使ったせいで疲れたぞ。」
「それにしてもあの魔獣、一瞬にして復活するとは。」
「まるで伝説に聞く1000年前の魔王のようじゃな。」


賢者ルシェンダが考えている。
「かつて勇者アルヴァンが倒したという不死の魔王か。」


魔獣が四重の封空の中で暴れている。
封印が壊れそうだ。
賢者エイドスが驚く。
「あやつめ、まさか四重の封空すらも破るというのか?」


賢者ホーローが賢者たちに言う。
「ならば内側から重ねて封印するのじゃ!」
「アンルシアちゃん、主人公、わしら叡智の冠は四重の封空の中に入り、内側からやつを封じる。」
「わしらがやつを封じている間に、不死のチカラに打ち勝ち、あやつを倒す方法を見つけてくれ!」


4人の賢者たちは四重の封空の中に入っていった。


アンルシアが戸惑う。
「待って下さい、皆さん!不死の魔獣を倒す方法なんてどうやって・・」


賢者ルシェンダの声が聞こえる。
「1000年前、勇者と不死の魔王との戦いにきっとヒントがあるはず。頼んだぞ、主人公、アンルシア。」


アンルシアが覚悟を決める。
「あの封印が破られる前に不死の魔獣を倒す方法を見つけなければ。今度こそグランゼドーラは・・」
「主人公、さっきルシェンダ様が1000年前の不死の魔王のことを言っていたわね。」
「不死のチカラを持つ魔獣と不死の魔王。何か関係があるのかしら。」
「そうだわ、たしか勇者の聖壇に1000年前の勇者と不死の魔王の戦いについて記されていたはず。」
「もしかしたら不死の魔獣を倒す手がかりになるかもしれないわ。城の1階にある勇者の聖壇へ行ってみましょう。」
「叡智の冠のみなさんが、あの魔獣を封印してくれている間に急ぎましょう、主人公。」


主人公とアンルシアは勇者の聖壇へ向かった。
勇者の聖壇には、巨大な勇者アルヴァンの像がある。
右手で剣を掲げ、誰かを見つめているような表情をしている。
「勇者の聖壇、いつ来ても気持ちが引き締まるわ。」
「あなたもよく知っているとおり、この勇者像は私のご先祖様。1000年前に世界を救った勇者の像よ。」
「昔、トーマ兄さまこそが勇者なのだと信じていた頃、私は毎日のようにこの場所で祈りを捧げていたの。」
「かつての勇者様、どうか私にトーマ兄さまを支えるチカラを下さい、りっぱな盟友にになれますようにって。」
「トーマ兄さまの盟友になって、二人で世界を守るというかつての私の夢は叶わなかった。」
「でも今の私はあの頃とは違う。」
「私の夢は、盟友であるあなたと共に兄さまの愛したアストルティアを守ることよ、主人公。」
「この像のモデルになった勇者アルヴァンさまにも盟友がいたわ。」
「勇者アルヴァンさまと盟友カミル。相手の幸せをお互いに望みながらもすれ違ってしまった勇者と盟友。」
「二人が1000年の時を経て、王家の迷宮でようやく再会できたことはあなたもよく知っているわよね。」
「さっき橋で戦ったあの魔獣は、何度倒しても蘇ってくる。その姿はまさに伝説の不死の魔王のようだったわ。」
「もし勇者アルヴァンさまと会うことが出来れば、不死の魔王をどうやって倒したのか教えてもらえるのに。」


その時、勇者アルヴァンの像が掲げる剣が金色に光輝く。
「勇者の聖壇が光ってる。」


キュルルがエテーネルキューブから飛び出してきた。
「この場所には1000年前とのつながりがあるっキュね。この大きな像を媒介すれば1000年前まで行けるっキュ。」


アンルシアが突然現れたキュルルを見て驚く。
「あなた誰なの?主人公、あなたのペット?」


「失礼な人間っキュね。キュルルは誇り高き時の妖精キュル。ペットと呼ぶなら主人公のほうっキュ。」
「主人公、この像とさっきの魔獣は似通った波動を持っているよううだキュ。」
「つまり1000年前へ時間跳躍すれば魔獣を倒す方法も見つかる可能性があるキュ。さっさと時渡りするキュ。」


アンルシアが驚いている。
「1000年前へ時間を跳ぶ?時を渡って勇者アルヴァン様が生きた時代へ?」
「私も行くわ、主人公。もし本当に過去へ跳べるのなら私たち一緒に1000年前へ行って、二人で魔獣を倒す方法を探しましょう。」


キュルルが言う。
「それは無理キュ。時渡りが出来るのは、時渡りのチカラを持つエテーネの民だけキュ。アンタには時間跳躍は出来ないキュ。」


その時、兵士がアンルシアの元に駆け寄ってきた。
「国王陛下がお呼びです。先程の怪物について姫様から直接お話をお聞きになりたいそうです。」


アンルシアが言う。
「そうだったわ。賢者様たちがいない今、私まで1000年前に旅立ってしまってはお父様や城のみんなを守れない。」
「主人公、私はこの時代に残ります。不死の魔獣を倒す方法を必ず見つけてきて。それと、無事に帰ってきてね。」


アンルシアは玉座の間へと向かっていった。
「それじゃ、時間跳躍を開始するキュ。時間設定、1000年前。ポイント設定、グランゼドーラ王国。この勇者像とつながりのある場所に出るはずキュル。」
「主人公、1000年前の勇者と魔王との戦いの結末は確定された歴史キュ。すでに起きてしまった歴史を変えるのは簡単なことではないキュ。余計なことは考えないキュルね。」
「1000年前でやるべきことは不死の魔獣といかにして戦うか。その方法を観測することだけと心得ておくキュ。」


キュルルがエテーネルキューブを操作する。
「設定完了。エテーネルキューブ起動キュ!」


エテーネルキューブが起動し、主人公は1000年前のグランゼドーラ王国にたどり着いた。


着いた場所はグランゼドーラ王国の教会の中だった。
「ちょっと座標がズレたみたいキュル。まあ、1000年も時間跳躍したんだからこの程度は誤差の範囲キュ。」
「さてと、現地人との接触は主人公に任せたキュ。ボクはしばらく休憩を取るキュル。」
そう言うとキュルルはエテーネルキューブの中に消えていった。


そこへ2人の人間がやって来た。
主人公の姿には気がついていない。
「この場所ならば城の者たちに聞かれる心配はないでしょう。」
「カミル様、本当に不死のチカラを封じる秘術を手に入れるおつもりなのですか?」


一人は盟友カミル、もう一人はヤスラムという名の男性のようだ。
「私が貴方に内密の調査を依頼したのはたわむれではありません。ヤスラム殿。」


ヤスラムが言う。
「本来秘術は国を挙げて探すべきもの。なにゆえ勇者アルヴァン様にも知らせず、よそ者である私に調べさせたのですか?」


盟友カミルが答える。
「秘術のありかが確かなものとなったならアルヴァンにも知らせましょう。今はその段階ではないというだけです。」


ヤスラムが興奮して言う。
「いいえ!私の目は誤魔化せませんよ。あなたはグランゼドーラのために犠牲になるおつもりなのだ!」
ヤスラムが盟友カミルの手を取ってひざまずく。
「カミル様、あなたは美しい。」


盟友カミルが困惑している。
「ヤスラム殿?何をなさるのです。」


ヤスラムが言う。
「私の気持ちはよくご存知のはずです。そしてこの国が長くはもたないということも。」
「長きにわたる魔軍十二将との戦いで国土は荒れ果て、生き残った民はわずか。この城下とて、じきに焦土となるでしょう。」
「グランゼドーラはもうおしまいです。たとえ勇者アルヴァン様であろうとも不死の魔王にはかなわない。」
「カミル様、グランゼドーラを捨てて私と逃げましょう。どうせ我々は異国の民ではありませんか。」


盟友カミルは驚いた表情を見せている。


主人公の他にもう一人、この話を聞いている人物がいた。
この教会の神父エッカートが隠れて聞いていたのだ。


そのことには気づかずヤスラムが話を続ける。
「私とこの国を出て、どこか遠いところで二人で幸せに暮らすのです。」


盟友カミルが手を振りほどく。
「やめて下さい。私はグランゼドーラに命を救われた身。我が身の犠牲でこの国が救われるというならば喜んでこの生命を捧げましょう。」
「それに国を出たところで不死の魔王から逃れるすべなどありません。これは世界の危機なのですから。」


ヤスラムが立ち上がる。
「あなたの気持ちが変わるその時を、私はいつまでも待っていますよ。カミル様。」
「国から連れてきた従者に調べさせたところ、秘術を祀ってある場所の入口は特殊な術で閉ざされているとか。」
「古来よりカギを守ってきた守り人に認められなければ、一国の王であろうとも中へ入ることは出来ないそうです。」


盟友カミルが言う。
「すぐにその物に会いに行きます。何処にいるのです?教えてください。」


「その場所は・・」
ヤスラムが場所を言いかけた時、1人の兵士が教会へ駆け込んできた。
「敵襲です!見張り塔より伝令です!魔王軍が城下町へ接近しています。みなさん、すぐに城へ避難して下さい!」


盟友カミルがヤスラムに言う。
「話はあとでゆっくり聞かせてもらいます。魔物たちは私に任せて下さい。」
「あなたは城へ戻り、ヴィスタリア姫のもとへ!」


盟友カミルとヤスラムが駆け出していった。
主人公は盟友カミルの後を追った。
グランゼドーラ城下町の広場では、魔軍十二将の一人、ギーグハンマーが暴れていた。
「ぐぉっほほほ、愚かにして貧弱なる人間どもよ。我が主、不死の魔王様のために貴様らの魂、残らず捧げるがよい。」


襲い掛かってくるギーグハンマーを倒す主人公。
「貴様、何者だ?いまだこれほどの使い手がこの国に生き残っていたとは。」
「強き者よ、勝利の祝だ。我が軍勢との戦いも存分に楽しむがよい。」
「じきに我が主、不死の魔王様は、グランゼドーラに総攻撃を仕掛けるご予定だ。せいぜい束の間の勝利に酔いしれよ。」
「あがくだけムダなことよ。不死なる我が主、いずれ俺も、復活する・・」
召喚の魔法陣を上空に打上げると、チカラを使い果たしたギーグハンマーは倒れ込んだ。


そこへ、ペガサスに乗った勇者アルヴァンが広場にやってきた。
「ギーグハンマーは?」
勇者アルヴァンは左肩と左足を負傷しているようで、息を切らしている。
「あのギーグハンマーをまさか倒してしまうとは。君は一体何者なんだ?」


ギーグハンマーが打ち出した召喚の魔法陣から魔物が湧き出てきて勇者アルヴァンに襲いかかる。


「危ない、アルヴァン!」
盟友カミルが駆けつけ、一撃で魔物を仕留める。
召喚の魔法陣から次々と魔物が湧き出してくる。
勇者アルヴァンはギガデインを放ち、魔物を倒していく。
勇者アルヴァンと盟友カミルはお互いに背中合わせに立ち、剣を構えた。
「不死の魔王のしもべたちよ、滅びるがいい。」
2人同時にギガブレイクを放つと、魔物たちは一瞬で消滅してしまった。


盟友カミルが言う。
「魔軍十二将め。城下町を破壊し尽くすつもりか?」


勇者アルヴァンが苦しそうだ。
「やはり一刻も早く不死の魔王を倒さなければ・・うっ!」
勇者アルヴァンは膝をつき、呼吸を乱している。
すぐ側に駆け寄る盟友カミル。
「魔王城で負ったキズが開いたのですね。すぐに城へ戻って手当を。」


勇者アルヴァンが笑いながら言う。
「大げさだなあ、カミルは。この位どうってことはないさ。それよりも、そこにいるギーグハンマーを倒した英雄を城へ招待したいんだ。」


盟友カミルが主人公に言う。
「あなたは、旅の方ですね。ギーグハンマーは私たち二人ががりでも手こずるほどの相手です。よろしければお名前をお聞かせ下さい。」


主人公は名前を名乗った。
「主人公さんとおっしゃるのですね。あなたのような頼りになる方にお会い出来るとは心強いことです。」


勇者アルヴァンが言う。
「主人公がグランゼドーラに来てくれたのはまさに天の助けだ。さっそく父王に紹介したい。いいだろう?」
「はじめて会ったのにおかしいけれど、君のことは他人という気がしないんだ。」
「まるで旧知の、頼もしい友人のように感じるんだよ。」


主人公は勇者アルヴァンに連れられて王座の間へ向かった。


勇者アルヴァンが父王に報告を済ませる。
「なるほど、城下町に襲撃してきた魔物をそこにいる旅の者が倒してくれたというのか。」


「はい。魔軍十二将が一角、猛将ギーグハンマーはひときわ凶暴な魔物。僕とカミルでも手こずるほどです。」


勇者アルヴァンが主人公に言う。
「紹介しよう、我が父、ジュテ国王。僕の剣の師匠でもあるんだよ。隣にいるのは母のエメリヤと妹のフェリナだ。」


今度はジュテ国王に言う。
「こちらは主人公。ギーグハンマーを倒した英雄で、異国から来たとびきりウデの立つ旅人です。」


ジュテ国王が言う。
「自分の国と思い、くつろぐがよかろう。」


妹のフェリナ姫も主人公に微笑みかける。
「私とも仲良くしてくださいね、主人公。アルヴァン兄様が最近構ってくれなくて退屈していたんですもの。」


勇者アルヴァンが言う。
「不死の魔王を倒し、世界が平和になったらいくらでも遊んでやるとも。それまで待っていてくれ、フェリナ。」


ジュテ国王も笑っている。
「して、魔王城はいかがであった?アルヴァンよ。」


「はい、我が国の南の海上に浮かぶ魔王城には無数の魔物たちがひしめき、来るべき総攻撃の準備をしておりました。」


盟友カミルが話を続ける。
「アルヴァンはペガサスで、私は飛竜にて空から偵察していたところ、魔物たちに気づかれてしまい戦闘に。」
「魔軍十二将を蹴散らし、不死の魔王にも一度は深手を負わせたものの、やつはすぐに再生してしまい、やむなく退却いたしました。」


勇者アルヴァンが悔しがる。
「不死の魔王、ネロドス。やつの不死のチカラを封じぬ限り、僕達に勝機はありません。」
「いずれ倒した魔軍十二将たちも魔王の持つ不死のチカラで蘇り、世界が滅びるまで戦いは続いてしまう。」


エメリヤ妃が驚く。
「たった二人だけで魔王と戦った?なんという無茶をするのじゃ、アルヴァン。では、その怪我も魔王城で?」


盟友カミルがうつむきながら答える。
「はい、不死の魔王から私めをかばい、アルヴァンはひどい怪我を。」


そこへ一人の姫君と従者のヤスラムが近づいてきた。
「役立たずの盟友が足を引っ張ったから魔王ネロドスを倒せなかったのね!」
姫君が言った言葉にオロオロするヤスラム。


盟友カミルが答える。
「ヴィスタリア姫のおっしゃる通りです。勇者を守るべき盟友の役目を果たせず、逆に守っていただくなど。」


この姫君はヴィスタリアといい、ファルエンデ国出身。
アルヴァンの希望で許嫁としてグランゼドーラに来ている。


勇者アルヴァンが盟友カミルをかばう。
「いや、カミルは魔軍十二将、邪将トロルバッコスに食われそうになった時、僕を救ってくれた。命の恩人なのですよ。」


ヴィスタリア姫はまだプリプリ怒っている。
「でもそんなお怪我をなさっていては、魔王を相手に戦うことはできませんわ!それもこれもカミルが。」


勇者アルヴァンがニッコリと微笑む。
「僕の体のことは、僕が一番わかっています。ご心配にはおよびませんよ、許嫁どの。あなたの心遣いに感謝いたします。」


盟友カミルが言う。
「ヴィスタリア姫、ご安心くださいませ。もう勇者様にご迷惑はかけません。アルヴァン、どうかあなたは城で静養を。」
「私はやるべきことがありますので、お先に失礼致します。」


盟友カミルは王座の間を去っていった。
ヴィスタリア姫が憎まれ口を叩く。
「あーら、何処へ行くのかしら?アルヴァンさまとグランゼドーラを見捨てて一人だけ逃げるつもりじゃないの?」


ヤスラムがヴィスタリア姫に言う。
「失礼ながらヴィスタリア様。カミル様は恐らく不死のチカラを封じる禁忌の秘術を探すためご出発なされたのかと。」


ヴィスタリア姫はヤスラムの足を思い切り踏みつけた。


エメリヤ妃が言う。
「不死のチカラを封じる術?伝承に聞く禁忌の秘術。不死のチカラを封じる秘術のありかを、まさかカミルは見つけたと言うのか?」


王の側近が言う。
「盟友カミルの言葉に偽りはありますまい。必ずや禁忌の秘術とやらを手に入れて城に戻ってくれることでしょう。」


勇者アルヴァンが力強く言う。
「ああ、不死のチカラさえ封じることが出来れば僕達が負けるはずはない!」
「カミルが帰ったら、すぐ魔王城へ・・くっ。」


倒れ込んでしまう勇者アルヴァン。
「きゃー、お兄様!」
妹のフェリナ姫が勇者アルヴァンに駆け寄る。
「心配ないよ、フェリナ。ちょっとふらついただけさ。」


ジュテ国王が諭す。
「わしの目はごまかせぬぞ。魔王城で負った怪我はかすり傷とはいかぬようだな。アルヴァンよ。」
「衛兵!我が息子を部屋へ連れて行け!」
「アルヴァン、秘術探しはカミルに任せて、そなたはしばし療養せよ。よいな。」


勇者アルヴァンは衛兵に担がれ、部屋に運ばれていった。


「さて、主人公よ。そなたに一つ頼みがある。」
「盟友カミルを追い、不死のチカラを封じる秘術探しを手伝ってやってほしい。」
「我が息子アルヴァンは勇者であると同時に、グランゼドーラの王位継承者である。ここで死なれるわけにはいかぬ。」
「だが不死のチカラを封じる秘術なくしては世界は滅びてしまうじゃろう。そこでそなたのチカラを借りたい。」
「カミルの行方はわからぬが、先程の様子ではヴィスタリア姫の従者、ヤスラムどのが何か知っているはず。」
「どうかカミルの行方を突き止め、秘術探しを手伝ってやってくれ。頼んだぞ、主人公。」


主人公は従者ヤスラムに話を聞きに行った。
「あなたは確か王座の間でお会いした主人公さんでしたね。姫のお世話係のヤスラムと申します。」
「姫と私はファルエンデ国より参りました。カミル様もまた辺境の国のご出身。我々はグランゼドーラの民ではありません。」
「それゆえか、カミル様はこの国の兵士や召使には頼めぬことを時折私に打ち明けてくださいます。」
「わかっております。カミル様の行方をお知りになりたいのですね。あの方はおそらく樹天の里に向かったはず。」
「グランゼドーラ領より南、ロヴォス高地に樹天の里はございます。禁忌の秘術のありかを守る民が住むとか。」
「私はヴィスタリア姫に仕える身。姫の側を離れるわけには参りません。どうかカミル様をお願い致します。」


樹天の里に行くと、シュトルケという人物がカミルの行方を知っていた。
カミルはレビュール街道南の遺跡、神儀の護堂へ向ったようだ。
樹天の里だけに伝えられてきた秘密の合言葉を勇者か盟友が唱えれば、禁忌の秘術を祀った遺跡の扉が開くらしい。


主人公が神儀の護堂に着くと、すでに盟友カミルが来ていた。
「見つけた。これが神儀の護堂。不死のチカラを封じる秘術を祀りし洞くつ。」


主人公の姿に気づく盟友カミル。
「あなたは、主人公さんとおっしゃいましたね。どうしてこんなところへ。」


主人公は盟友カミルに、国王に頼まれ秘術探しを手伝いに来たことを伝えた。


「お気持ちは大変嬉しいのですが、アルヴァンは負傷しています。彼一人では城の守りに不安があります。」
「主人公さん、私を手伝ってくださる気持ちがあるのなら、城へ戻り、魔王軍襲来にそなえて下さい。」
「そうしてくれれば、私も安心して不死のチカラを封じる秘術を探せます。どうかこの通りです。」


そこへグランゼドーラ王家の馬車がやって来た。
中にはヴィスタリア姫と従者ヤスラムが乗っている。
ヴィスタリア姫が馬車から降りてきた。
「逃さないわよ、カミル。」


盟友カミルが驚く。
「ヴィスタリア姫、どうしてこのような危険なところに。」


ヴィスタリア姫が遺跡の扉の前に立った。
「ふーん、この扉、見せかけだけじゃないわね。奥に広いお部屋がありそうだわ。」
「てっきり魔王軍に恐れをなして一人で逃げる気だと思ってたけど、あなた、本当に秘術を探してるみたいね。」
「ま、いいわ。あなたなんかに手柄を立てさせてたまるもんですか。秘術はわたくしが手に入れるの!」


盟友カミルがヴィスタリア姫に駆け寄る。
「姫、何をおっしゃるのです。遺跡には危険な魔物も出ましょう。どうか安全なお城へお帰りくださいませ。」


ヴィスタリア姫は腰に手を当てて怒る。
「いやったら嫌よ。ほら、さっさと扉を開けなさい。この遺跡の扉は勇者か盟友でないと開けられないんでしょう?ね、ヤスラム。」


ヤスラムは困った顔を盟友カミルに向ける。
盟友カミルがなおも説得にあたる。
「あなた様は未来の王妃なのですよ?もしものことでもあったら、アルヴァン様がお嘆きになられます。」


ヴィスタリア姫は全く聞く耳を持たない。
「なら、未来の王妃の命令よ。カミル、すぐにこの扉を開けなさい!」


盟友カミルが主人公に言う。
「主人公さん、先程の言葉は撤回いたします。どうか遺跡の中へご同行下さい。」
「あなたには是非ともお二人の護衛をお願いいたしたい。どうかよろしく頼みます。」


ヴィスタリア姫が主人公に近づいてきた。
「あら、あなたがわたくしの護衛なの?それじゃ、さっさと行きましょう、主人公。」


ヤスラムが主人公に礼を言う。
「ご迷惑をおかけいたしますが、どうぞ宜しくお願い致します。」


盟友カミルが扉の前に立つ。
「では、シュトルケ殿から教わった方法にてこの扉を開くことにいたしましょう。」
カミルが扉に手をかざす。
「我、当代の盟友カミルが大いなる遺跡の守護者に乞い願う。」
「秘術へ至る道、その扉をここに開かんことを・・・」


「アバカム!」


遺跡の扉が青白く光り輝き、大きな音をたてながらゆっくりと開いた。
「それでは私は先に入って様子を見てまいります。ヴィスタリア姫、失礼致します。」


「お待ちなさい、カミル!ヤスラム、後を追うわよ!」
ヴィスタリア姫とヤスラムも遺跡の中へ入っていった。
主人公も後を追う。


遺跡の中間地点に広間があり、そこでもヴィスタリア姫が駄々をこねる。
「疲れたわ!わたくしはここで休憩します。」


盟友カミルが振り返る。
「立ち止まっていては危険です!いつ魔物が襲ってくるとも知れぬのですよ。どうか今しばらくご辛抱下さいませ。」


「いやったら嫌!わたくし、もう歩けないもの。ヤスラム、座りたいわ。」


ヤスラムは手持ちのハンカチで近くの石をきれいに拭き、ヴィスタリア姫を座らせた。


盟友カミルも諦めた様子だ。
「ここでご休憩なさるそうです。私はこちらを見張りますので、主人公さんはあちらをお願いします。」


ヴィスタリア姫がまたカミルにつっかかる。
「ああ、足が痛いこと。それもこれもみんなカミルが悪いのよ。あなたがこんな場所に来たせいだもの。」


盟友カミルが謝る。
「誠に申し訳ございません。」


「そうやって、しおらしいフリをしたって騙されないわよ。」
「あなたは、わたしくの兄様を殺したんだから!」
「どうしてアルヴァン様はお父様にカミルなんかの命乞いをしたのかしら。あの方は優しすぎるわ。」


ヤスラムが言う。
「お言葉を返すようですが、ヴィスタリア様。アルヴァン様によればあれは不幸な事故だったと。」


ヴィスタリア姫がヤスラムを睨む。


盟友カミルが言う。
「いえ、ヤスラム殿。姫のおっしゃる通りです。あの時のことはよく覚えております。」
「オルセコ王国で開催された武術大会にてファルンデ国代表としてご出場なされた姫の亡き兄上様との戦いが白熱し・・・」


ヴィスタリア姫が話を続ける。
「ファルエンデ国、次期国王だったわたくしの兄様をあなたが殺した。貴賓席で見ていたお父様の目の前で。」
「怒ったお父様に首をはねられる寸前、たまたまご観覧になっていたアルヴァン様に庇われて助かったのよね?」


盟友カミルがうつむく。
「慈悲深きファルエンデ国王陛下により私の生命はアルヴァン預りとなり、こうして生きながらえております。」


ヴィスタリア姫が真っ直ぐに盟友カミルを見つめる。
「ええ、あなたは生きているわ。わたくしの兄様はあなたに殺されたのにね。大罪人カミル。」
「すこし乱暴なところもあったけれど、わたくしにはとても優しい兄様だったわ。二人っきりの兄妹だった。」
「それを、あなたが!」


盟友カミルがひざまずく。
「どう言い訳をしようとも、私が人殺しであることに違いはございません。」
「ですからその償いとして、生命にかえても勇者アルヴァンの盾となり、不死の魔王を倒す所存でございます。」


ヴィスタリア姫はなおも責め立てる。
「なによ、えらそうに!先日、魔王城に偵察に行った時だってアルヴァン様に怪我を負わせたくせに!」


「ヴィスタリア姫、どうか信じてくださいませ。私は心よりこの世界を救いたい。秘術を手に入れ、不死の魔王を倒したいのです!」
「汚れた手の私ごときに出来る恩返しはそれだけなのですから。」


ヴィスタリア姫の怒りはおさまらない。
「口先だけならなんとでも言えるわよ!」


「姫、これからも未来の王妃としてアルヴァンを支えて差し上げてください。どうかお願い致します。」
カミルは立ち上がった。
「そろそろ出発いたしましょう。すべてはもうすぐ終わるはずです。」


「お待ちなさい、カミル!わたくしを置いていくつもりね!」
ヴィスタリア姫も駆け出していった。


ヤスラムも後を追いかける。
「主人公さん、あなたも急いで下さい。カミル様は恐らく、死ぬつもりです。」


主人公が遺跡の最深部に着くと、奥から剣を交える音が聞こえてきた。
盟友カミルが秘術の守護者を剣で打ち負かし、試練を突破したようだ。
秘術の守護者が言う。
「見事だ、盟友カミルよ。よくぞ秘術の守護者たる我を倒した。そなたの覚悟は太刀筋より伝わったぞ。」
「よかろう、この巻物に記されしふたつの対なる秘術をそなたに授けよう。」


盟友カミルは秘術の巻物を手に入れた。


「まず一つ目の秘術は邪魂の鎖。」
「邪魂の鎖にて縛れば、いかに不死のチカラといえども逃れようなく封じることが出来ようぞ。」
「されど気をつけよ。邪魂の鎖は術者の魂より生み出される。」
「鎖の輪をひとつ生み出すたび魂は汚れ、死の苦しみが汝を襲う。」
「秘術にて魔王に立ち向かうのならば、必ずや・・」


秘術の守護者がそこまで言った時、突然ヤスラムが叫ぶ。
「不死のチカラを封じる秘術など絶対に使わせない!」


ヤスラムはドルモーアを盟友カミルに向けて放った。
秘術の守護者が身を挺してカミルを守る。
「盟友よ、秘術、そなたに託した・・」


秘術の守護者は消滅してしまった。


ヤスラムが言う。
「カミル様、あなたにその秘術を使わせるわけにはいきません。」


盟友カミルが戸惑っている。
「突然何をなさるのです、ヤスラム殿。」


「くくく・・」
ヤスラムが不気味な笑いをする。
「ヤスラムだと?そんな下賤な名前で私を呼ばないでいただきたいな。」
ヤスラムの身体が闇の衣に包まれ、魔物に姿を変えた。


盟友カミルが驚く。
「ヤスラム!貴様、魔物だったのか!」


「誉れ高きわが真の名は、魔軍十二将がひとり、知将ジャミラス。」
「下等にして醜い人間の女よ。貴様に恋い焦がれていたヤスラムとは我がかりそめの姿にすぎぬ。」


盟友カミルが聞く。
「魔軍十二将が一体いつの間にグランゼドーラ城に入り込んでいたのです!?」


知将ジャミラスはヴィスタリア姫を人質にとっている。
「この間抜けな姫様がファルエンデ国からやってきたその晩からさ、はっはっは。」


盟友カミルが剣を抜く。
「ジャミラス!姫にかすり傷一つでもつけたら承知せぬぞ!」


ジャミラスはヴィスタリア姫に鋭い爪を向ける。
「それは、あなたの態度次第ですね、カミル様。」
「では3つほどお願いを聞いていただきましょうか。」
「まずはひとつめ、武器をお捨てなさい。」
「どうしました?大事な大事な未来のグランゼドーラ王妃様の生命が惜しくないとでもいうのですか?」


「言うとおりにしよう。だからヴィスタリア姫を解放してくれ。」
盟友カミルは剣を足元に置いた。


「よろしい、では二つ目。忌々しい秘術の巻物をこちらへ。」


盟友カミルは秘術の巻物をジャミラスの方へ放り投げた。


「素直な女は好きですよ。では次が最後のお願いです。」
「愚かなる盟友カミル様、主人公と共にどうかこの場で死んでくださいませ。」


知将ジャミラスが闇の術で主人公達を攻撃する。
そこへヴィスタリア姫が割って入る。
「乱暴はやめて!わたくしを離して!」


ヴィスタリア姫はジャミラスの一撃を喰らい吹っ飛ばされた。


「仰せの通り、離して差し上げましたよ、ヴィスタリア姫。」
「さんざん見せつけたおかげで、お世話係ヤスラムと盟友カミルが恋仲だという噂はあちこちに広まっています。」
「ここであなたを消し、私が姿を隠せば、盟友カミルは魔王との決戦を前に恋に溺れ、民を捨てて逃げた、そう思うでしょう。」
「なんと愚かで汚らわしき盟友。よかったですねぇ、姫様。」
「兄上を殺した人殺しの名誉が地に堕ち、カミルが目の前から消える。そのあなたの願いを叶えてあげますよ。」


知将ジャミラスは盟友カミルにメラガイアーを放った。
盟友カミルはメラガイアーをまともに喰らい、吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられてしまう。


「いかがです、姫様。この人殺しの盟友めが無様に死ぬ姿。お楽しみ頂けてますか?」


ヴィスタリア姫が倒れ込みながらも懸命に首を振る。
「もうやめて、もう充分です。だからやめて。」


盟友カミルが言う。
「心配ありませんよ、姫。私は並の人間より丈夫に出来ています。このくらい、なんとも。」


「ほほう、まだそんなに喋れるとは。ならばもっと念入りにいたぶってやらねばなりませんね。」


知将ジャミラスがカミルに気を取られている隙に、ヴィスタリア姫はジャミラスの尻尾に噛み付いた。
しかし、ヴィスタリア姫は簡単に吹き飛ばされてしまう。
「この小娘が!お前もいたぶって欲しいらしいな。」


ヴィスタリア姫が立ち上がり、知将ジャミラスを睨みつける。
「盟友カミル、主人公!未来のグランゼドーラ王妃の命令よ!」
「わたくしはどうなってもかまわないわ。ヤスラムを、この魔物を倒しなさい!」


この隙に剣と秘術の巻物を素早く拾い上げた盟友カミル。
「承知!」
剣を構えるカミル。


それを見たヴィスタリア姫は微笑んだ後、気を失ってしまった。


「ふん、死に損ないめが。よかろう、思い上がった盟友よ。この知将ジャミラスがじきじきになぶり殺しにしてくれるわ!」


主人公と盟友カミルは協力して知将ジャミラスを倒した。


「まあいい。此度は貴様らの勝ちだ。だが不死のチカラを封じる秘術だけは誰にも使わせはせぬ。」


知将ジャミラスは最後のチカラで出口にドルマドンを放った。
「もはや外へ出ることは叶うまい。人間どもよ、秘術を抱いて朽ち果てるが良い。」
知将ジャミラスはそう言うと、笑いながら消滅した。


出口は崩れた岩で塞がれてしまい、主人公達は閉じ込められてしまった。
ヴィスタリア姫は気を失っているだけで、無事のようだ。


「主人公さん、どうやら我々はこの遺跡の中に閉じ込められてしまったようです。」
「この大岩をどうにかどかせれば・・」


ヴィスタリア姫が目を覚ました。
「カミル、魔物は無事倒せたようですね。」
「わたくし、あなたのことは嫌いよ。」
「でも助けてもらったのにお礼を言わないのは礼儀知らずだわ。」
「主人公、盟友カミル、あなた方はわたくしの命の恩人です。」
「どうもありがとう。」


盟友カミルは嬉しそうだ。
「ヴィスタリア姫、現在我々はこの遺跡の中に閉じ込められてしまいました。脱出する方法を探しておりますので、どうかお待ち下さい。」


脱出する方法を探している盟友カミルの足元に、一匹の黒猫がいた。
メレアーデが飼っている黒猫のチャコルだ。
チャコルは大岩の隙間から外へ抜け出していった。
それを見ていた盟友カミル。
「どうしてこんな所に猫が。あの子ぐらい身体が小さければ外へ出ることも出来たのに。」


ヴィスタリア姫がカミルに尋ねる。
「ねえ、カミル。さっきの秘術の守護者さんの話、秘術を使うと魂が汚れてしまうって。あれはどういうことなの?」


なんでもないと誤魔化そうとする盟友カミル。


「わたくし知ってるのよ!国で家庭教師に教わったもの。」
「大きなことを成し遂げる秘術の中には、使い手の生命を奪うものもあるんだって。まさかこの秘術もそうなの?」


なおも誤魔化そうとする盟友カミル。
「姫様、あまりお喋りをされますとお怪我にさわります。どうかお静かになさいませ。」


「世界を救うために死ぬ気なの?だって死んじゃったら世界は平和になってもあなたは何の徳もないじゃない!」


盟友カミルが答える。
「この秘術で不死のチカラを封じさえすれば、アルヴァンならば絶対に不死の魔王を倒してくれるはず。」
「ここで死ぬわけにはいかない。ウデの1本や2本くれてやる。アルヴァンのもとへ秘術を持ち帰らねば。」


ヴィスタリア姫が気づいた。
「あなた、アルヴァン様のこと、愛しているのね。」


「・・おたわむれを。」
「勇者とともに不死の魔王を倒すこと。それは盟友としての私の悲願です。なんら私情などございません。」


その時、勇者アルヴァンの声がした。
「今の声は、カミル!ここに閉じ込められているのか!」
「危ないから瓦礫から離れていろ!」


勇者アルヴァンは出口を塞いでいた大岩を両手剣で粉砕した。


勇者アルヴァンに駆け寄る盟友カミル。
「アルヴァン、どうして。」


アルヴァンの姿を見たヴィスタリア姫は安心して、また気を失ってしまう。


「カミルのことが気がかりで城を抜け出して探しに来たんだよ。そうしたらこの遺跡の前でどこからともなく黒猫が現れてね。」
「何かを訴えるように必死に鳴くのでついて来てみたら、ここに着いたのさ。」
「あの猫、もしかしたら神の使いだったのかもしれないな。」


盟友カミルが嬉しそうに笑っている。
「そうでしたか。ここは神儀の護堂。不死のチカラを封じる秘術が祀られていた場所です。」
「主人公とヴィスタリア姫様のおかげで秘術を手に入れることが出来ました。これが秘術が記された巻物です。」


秘術の巻物そっちのけでヴィスタリア姫を心配するアルヴァン。
「許嫁殿が?ああ、なんて無茶をなさるのです。」


盟友カミルが状況を説明する。
「ヴィスタリア姫は我々を妨害しようとした魔物によって怪我を。どうか急ぎ城へお連れし、治療を。」


「任せてくれ。」
気を失っているヴィスタリア姫を抱きかかえる勇者アルヴァン。
「これまで姫はカミルのことをお嫌いなのだとばかり思っていたが、チカラを貸してくださるとは。感謝します。」


盟友カミルが言う。
「これで不死の魔王も倒せるはずです。アルヴァン、このことを奴らに気取られる前に魔王討伐に向かいましょう。」


勇者アルヴァンが頷く。
「ああ、いよいよだな。カミル。」
「僕はヴィスタリア姫を連れて行く。主人公、カミル。グランゼドーラ城で会おう。」


主人公とカミルもグランゼドーラ城へ向かった。


グランゼドーラ城1階の広場には、勇者アルヴァンと盟友カミルの巨大な石像がある。
お互いに剣を掲げ、お互いを見つめ合っているかのようだ。


主人公が石像を見ていると、盟友カミルがやって来た。
「主人公さん、あなたを待っていました。すこし私の話にお付き合いください。」


「あの遺跡で手に入れた巻物に、こう記してありました。」
「不死のチカラを封じる禁忌の秘術は使うものの生命と魂を汚す。竜王が持つ不死の力は神にも等しきもの。ゆえに対抗するには大きな代償が必要なのだと。」


「ヴィスタリア姫は聡明な方ですね。私は禁忌の秘術を使います。」
「不死のチカラを封じなければ、魔王に勝てない。このままでは世界は滅びてしまうのです。何を迷うことがありましょうか。」


彫刻家のエルノーラが2階の踊り場から話を盗み聞きしている。


「けれど、このことをアルヴァンが知ればきっと秘術を使うことを反対する。いえ、反対するだけならまだしも、心優しいアルヴァンは私に代わって自分が秘術を使うとすら言い出しかねない。それは、それだけは困ります。」
「勇者とは、魔王を倒すだけに必要なのではありません。」
「不死の魔王ネロドスを倒した後、この傷ついた世界を導き守るため。その時こそ勇者のチカラが必要なのです。」
「主人公さん、あなたにお願いがあります。」
「秘術に代償が必要であることも、私がすべてを捧げる覚悟だということも、誰にも言わないで下さい。」


主人公は頷いた。


「ありがとうございます、主人公さん。恩に着ます。」
「私が盟友に選ばれたのは、不死のチカラを封じるためだったのでしょう。そう、これは運命なのです。」
「盟友とは勇者を守る盾。アルヴァンに救われたこの生命。アルヴァンのために死ねるなら本望です。」
「これは私の遺言です。主人公さん、どうか秘術のことはご内密にお願い致します。」
「それと、ヴィスタリア姫の世話係ヤスラムの正体がジャミラスだったことも皆には伏せておいて下さい。」
「城の者が真相を知れば、不安がるでしょうし、姫のお立場も悪くします。なにとぞご内密に。」
「長々とお引き止めして申し訳ありません。それでは主人公さん。後ほど王座の間でお会いしましょう。」


王座の間に行くと、皆そろっていて主人公の到着を待っていた。
教会の神父エッカートや彫刻家エルノーラ、樹天の里のシュトルケもいる。


「待っていたよ、主人公!」
勇者アルヴァンが主人公に声をかける。
「勇者と盟友、そして頼もしき友人主人公のすべてがここにそろいました。父上。」


ジュテ国王が言う。
「よろしい、盟友カミルよ。そなたの報告を聞こうではないか。」


盟友カミルがひざまずき、ジュテ国王に報告する。
「は、では手短にご報告いたします。」
「不死のチカラを封じる禁忌の秘術を探し、国中を探索した末、とうとう秘術を手に入れてまいりました。」
「これも主人公さんとヴィスタリア姫の助けがあればこそ。私一人の手柄ではございません。」


アルヴァンの妹のフェリナ姫が驚く。
「まあ、あの姫が?にわかには信じられませんが。」


勇者アルヴァンが言う。
「許嫁どのは秘術を狙う魔物との戦いに苦戦するカミルを助けるためにひどい怪我をなされたようだ。」
「姫を護衛していた世話係のヤスラムは魔物の手にかかり息絶えたとカミルから聞いているよ。」


エメリヤ妃が言う。
「おお、ヤスラムが。お怪我をなされた上、腹心の従者を失ったとなれば姫も心細うございましょう。」


ジュテ国王が頷く。
「うむ、いまだ幼き姫と思うていたが、グランゼドーラのため、生命を賭けるとは。まことあっぱれ。」
「ヴィスタリア姫は立派な王妃となろう。二人が結婚すれば国は安泰じゃ。のう、エメリヤ。」


エメリヤ妃が頷く。
「勇者に相応しき勇気ある妃となりましょう。魔王討伐が成ったならば遠からず婚礼をあげるがよいぞ、アルヴァン。」


盟友カミルが言う。
「この不死のチカラを封じる秘術さえあれば、魔王ネロドスなど恐るるに足りません。」
「魔王軍に秘術の存在を知らねぬうちに、明日の朝、夜明けとともに決戦におもむくべきかと。」


勇者アルヴァンが言う。
「僕の怪我もすっかり治りました。いつでも魔王討伐に出発できますよ。」


ジュテ国王は立ち上がり、皆に言う。
「あい、わかった。では不死の魔王ネロドスとの決戦の日取りは明朝とする。アルヴァン、カミル。そなたらに任せたぞ。」
「そして主人公よ。そなたには勇者と盟友が留守の間のグランゼドーラの守りを頼むぞ。」
「皆の者、宴だ!勇者アルヴァンと盟友カミルの勝利を祈る宴を開こうではないか。」
「グランゼドーラに永遠の栄あれ!」


不死の魔王ネロドスとの戦いにおもむくアルヴァンとカミルのため、グランゼドーラ城では盛大な宴が開かれた。
長く苦しかった魔王軍との戦いに、とうとう終止符が打たれるかもしれない。その希望は国中の民に笑顔を取り戻した。


ヴィスタリア姫が主人公に会いたがっていると聞き、東の塔3階の寝室に向かった。


「主人公、わたくしあなたにちゃんとお礼を言わなきゃと思ってここへ来て頂いたのよ。」
「もしもあなたがいなければ、わたくしはカミルを誤解したままヤスラムに殺されていたわ。」
「主人公はわたくしの恩人よ。あなたがいてくれてよかった。」
「今ね、国のお父様に手紙を書いていたの。」
「わたくしはカミルに生命を救われた。あの方はりっぱな盟友だから、もうひどいことは言わないでって。」
「それから、わたくし、故郷のファルエンデ国に好きな男の子がいたの。」
「でもお父様の命令でアルヴァン様のもとに嫁ぐことになって。あの子に自分の気持を伝えられぬままグランゼドーラへ。」
「この国へ来てすぐ、故郷からの便りであの子は魔王軍との戦いに巻き込まれて死んだと、そう教えられたわ。」
「わたくしね、平和になったら、ファルエンデ国に戻ろうと思うの。」
「そして兄様とあの子が眠るお墓の前で、勇者アルヴァンと盟友カミルが魔王を倒し、世界を救ってくれたのよって教えてあげるの。」
「だからその前に、アルヴァンさまときちんとお話しなくちゃね。宴の最中のようだし、明日にすべきかしら。」
「あら、どうしたの、主人公。何か言いたそうな顔をしてるけど。」


主人公はヴィスタリア姫に、不死の魔王との決戦が明日の朝に決まったと説明した。


「え、魔王との決戦はカミルの進言で明日の夜明けに?どうしてそんな早く。」


「ごめんなさいね、主人公。わたくし、急ぎの用があるの。失礼致しますわ。」


ヴィスタリア姫は走って部屋を飛び出していったので、主人公はあとを追いかけた。


勇者アルヴァンの部屋にヴィスタリア姫がいた。
二人で話をしているようだ。
「僕との婚約を破棄したいと、そうおっしゃるのですね、ヴィスタリア姫。何か僕が失礼なことをしたでしょうか?」


「いえいえ、そもそもアルヴァン様はカミルの命乞いのために、嫌々わたくしとの結婚を承諾なさったのでしょう?」


勇者アルヴァンが否定する。
「そのようなことは断じて。僕達二人がふたつの国の友好の証として結ばれればと。」


「心配はありませんわ。わたくしからお父様にカミルのことはもう許して欲しいとお願いするつもりです。」
「お父様の命令で婚約いたしましたが、実を言うと、アルヴァン様ってわたくしのタイプじゃありませんの。」
「それはアルヴァンさまも同じでしょう?」


勇者アルヴァンがたじろいでいる。
「僕はそもそも、その、不死の魔王をカミルと共に倒すまでは、愛だの恋だのなんて考えられませんし・・」


その様子を見たヴィスタリア姫がニッコリと微笑む。
「やっぱり、あなたたち、相思相愛ね。」


「許嫁どの、一体何の話をなさっているのですか?」


ヴィスタリア姫が言う。
「とにかく、わたくし、もう決めましたの。怪我が治り次第、国に帰ります。皆様には改めてご挨拶いたしますわ。」


ため息をつく勇者アルヴァン。
「そこまでおっしゃるのでしたら。」
「わかりました。魔王討伐から戻りましたら、ファルエンデ国までお送りしましょう。」


「ええ、お願い致しますわ。」
「ところでアルヴァンさま。魔王との決戦の日取りが明朝というのは本当のことですの?」


勇者アルヴァンが答える。
「おや、ご存知でしたか。秘術のことを魔王軍に気取られぬうちに出陣すべきとカミルが強く主張したのですよ。」


「やっぱり本当だったのね。」
「アルヴァン様、お願い。カミルを止めて。このままではカミルが死んでしまいます。」
「秘術を守っていた守護者さんが言っていました。秘術には代償が必要だと。その代償とはカミルの魂。」
「カミルは不死の魔王討伐のために、いいえ、アルヴァン様のために、自らを捧げるつもりなのです!」


言葉を失う勇者アルヴァン。
「まさか、そんな・・」
「だがそれなら頑なに秘術探しに僕を同行させなかったことも頷ける。」


勇者アルヴァンが主人公の前に駆け寄ってきた。
「主人公、君はあの遺跡にカミルと一緒にいたね。姫の話は本当なのか?」


カミルに口止めされていたが、首を縦に振る主人公。
「やはりそうなんだね。不死のチカラを封じる秘術に代償が必要だというのは本当のことなんだね。」
「魔王ネロドス。その不死のチカラは恐るべきものだ。だが魔王討伐のために犠牲が必要だなんて。」
「カミルが犠牲になるだなんて、そんなの絶対に認めない!」
「姫!秘術についてもっと教えてください。なにか他に不死のチカラを封じる方法はないのですか?」


「わかりませんわ。カミルが持っている秘術の巻物にならもしかしたら書いてあるのかも。」


がっくりと肩を落とす勇者アルヴァン。
「すまない、許嫁どの、主人公。僕はこれで失礼させてもらいます。カミルと直接話しをしなければ。」


主人公は勇者アルヴァンの後を追い、テラスへ向かった。
テラスには勇者アルヴァンと盟友カミルがいた。
「カミル、不死の魔王との決戦前に、君と二人で話がしたいんだ。」
盟友カミルが言う。
「もう夜も更けてきました。明日に備えて休んだ方がいい。話なら明日にでもゆっくり聞きましょう。」


「駄目だ!今でなければ駄目なんだ。このとおりだ、カミル。一生のお願いだから僕の話を聞いてくれ。」
頭を下げる勇者アルヴァン。


「わかりました。そこまでおっしゃるのでしたら。」


勇者アルヴァンが主人公の姿に気づく。
「主人公、君も来てくれたんだね。」
「僕はカミルと大事な話があるんだ。すまないが、宴は僕達抜きでやってくれと父上に伝えて欲しい。」


勇者アルヴァンはペガサスに、盟友カミルは飛竜に乗って夜の空へ去っていった。


主人公は王座の間に向かい、ジュテ国王にアルヴァンの伝言を伝えた。
「なんと、アルヴァンとカミルは二人で何処かへ行ってしまったのか。」


側にいたフェリナ姫が言う。
「きっと、つもる話もあるのですわ。いよいよ魔王との決戦ですもの。」


ジュテ国王が頷く。
「うむ、勇者と盟友の間には我らには計り知れぬ絆があるのだろう。」
「しかし主役二人がいないとなると。そろそろ夜も更けてまいった。このあたりで宴はお開きとするか。」


ジュテ国王が立ち上がる。
「皆の者、宴はこれで幕引きとする。明日の魔王の決戦にそなえ、しっかりと休息をとっておくがよい。」


華やかな宴が終わると人々はそれぞれ翌日の決戦にそなえ帰っていった。
主人公もアルヴァンとカミルの帰りを遅くまで待っていたが、やがて眠りにつく。
そして、夜が明けた。


翌朝、すでにアルヴァンたちが魔王城へ出発したとの報せは皆を驚かせた。
それでもアルヴァンとカミルが無事魔王を討伐して帰ってくると信じ、人々は王座の間に集まっていた。


心配そうなジュテ国王。
「そろそろアルヴァンとカミルは魔王城に到着した頃合いか?ふたりとも無事だと良いのだが。」


エメリヤ妃が言う。
「まったく、せめてこの母にひと目、顔を見せてから出発すればよいものを。夜中に城を出ていってしまうとは。」


そこへ一人の兵士がやってきた。
「恐れながら申し上げます。」
「太陽が天頂に昇るまでは誰にも言うなとアルヴァン様に口止めされていたのですが、昨晩、魔王城へご出発されたのはアルヴァン様お一人でございます。」


ジュテ国王とまわりの人々が驚く。
「なんだと?カミルはどうしたのだ?何故アルヴァン一人で旅立ったのだ?」


兵士が答える。
「むろん、カミル様は何処にとお聞きしたのですが、アルヴァン様は何も語らず、盟友がいなくても心配いらない、幸い秘術の巻物は自分が持っているから一人でも魔王は倒せると強引に出発を。」


ジュテ国王が肩を落とす。
「なんということだ。」


ジュテ国王の側近が言う。
「カミルめ、まさかと思うが魔王討伐直前になって怖気づき、逃げ出したのではあるまいな。」
「私は昨夜、彫刻家エルノーラから聞いたのだ。禁忌の秘術は使う者の魂を汚し、生命を奪うのだと。」


教会の神父エッカートが言う。
「実は私は見てしまったのです。以前、城下町の教会でカミル様とヤスラム様が密会なさっていました。」
「その時お二人は、グランゼドーラを捨てて何処か遠い国へ逃げようと相談されていたようでした。」


ジュテ国王が立ち上がる。
「皆の者、しずまれい!」
「今は余計な詮索は無用。アルヴァンが無事に帰ってくれさえすれば、すべての事情ははっきりしよう。」


フェリナ姫が言う。
「誰か、アルヴァン兄様を追いかけて魔王城へ行き、助太刀してくださいまし。」


ジュテ国王が言う。
「無理を申すな、フェリナ。魔王城ははるか海上。空を飛ぶ手段なくしてはたどり着けん。」
「ペガサスも飛竜も、その主と同様、城にはおらん。」
「もはやどうしようもないのだ。」


倒れ込んだフェリナ姫にエメリヤ妃が駆け寄る。
「おお、フェリナ、しっかりおし。」
「誰か、フェリナを部屋まで運んでたもれ。」


その時、メレアーデの飼い猫、黒猫のチャコルが主人公の足元にやって来た。
主人公についてこいと言っているようだ。
主人公は黒猫のチャコルについて行くことにした。
城を出て、城下町を抜けて、グランゼドーラ領にある見張り塔の上までやって来くる。
見張り塔の上には、樹天の里のシュトルケがいた。
盟友カミルに秘術の巻物がある場所を教えた人物だ。


「よ、俺の船、乗ってく?」
「俺は伝説の四術師がひとり、破邪舟師シュトルケ。」


破邪舟師シュトルケは、一瞬で見事な破邪舟を創り出した。
「魔王城で勇者アルヴァンが泣きべそかいて待ってるぞ。早く助けにいってやるといい。」


主人公はシュトルケが創り出した破邪舟に乗り、魔王城へ向かった。


魔王城で魔軍十二将を撃破しながら最奥の死闘の間に着くと、勇者アルヴァンが魔王ネロドスと対峙していた。
魔王ネロドスが言う。
「魔軍十二将ごときではもはや貴様の足止めにすらならぬか、勇者アルヴァンよ。」


勇者アルヴァンが答える。
「ああ、良い準備運動になったよ。心のこもったもてなしに感謝する、魔王ネロドス。」


「ほほう、赤子のようにわめきたて、剣を振り回していた小僧もようやく礼節を覚えたとみえる。」
辺りを見回す魔王ネロドス。
「はて、頼みの盟友はどうした?貴様一人とは軽んじられたものよ。」


「カミルがいなくたって、俺はお前を倒してみせる。」
「覚悟しろ、ネロドス!」


ネロドスが闇の波動を勇者アルヴァンに放つ。
「猶予をやろう、盟友をここへ呼ぶがいい。そなた一人では楽しめぬわ。」


闇の波動を受け、苦しむ勇者アルヴァン。
そこへ主人公が飛び込み、盟友の盾で闇の波動を跳ね返した。


魔王ネロドスが驚く。
「貴様、何者だ?」


勇者アルヴァンも驚く。
「主人公、どうしてここに?それに君のこのチカラは・・」


魔王ネロドスが笑みを浮かべる。
「主人公と申したか。盟友と同等のチカラを操るとは、面白い。」
「勇者アルヴァン、主人公。我は不死の魔王。いまだ死の敗北を知らざる者。」
「あがけ、苦しめ。貴様らのそのただひとつの生命を捧げ、我が無限の生への糧となるがよい。」


勇者アルヴァンが言う。
「行くよ、主人公。不死の魔王を倒してグランゼドーラに、世界に平和を取り戻そう!」


勇者アルヴァンと主人公は協力して魔王ネロドスを倒した。


「喜ぶがいい、かつて我が不死の糧となりし幾千万の勇敢なる戦士たちよ。そして勇者アルヴァンと主人公よ。貴様らは誇るがよい。このネロドスに勝利せしことを。」
「おお、死とはなんと甘味なものよ。我に初の敗北を与えし貴様らを心より讃えようぞ。」
「だがこのネロドスは不死なる魔王。我は滅びぬ。幾度倒されようとも無限に蘇る。」


大いなる闇の根源から不死のチカラを受け、復活する魔王ネロドス。


「この戦いは貴様らの勝利と認めてやろう。だが今一度、我に勝てるかな?二度勝てたとて三度、四度・・」
「無限に蘇る我に無限に勝てるかな?」


勇者アルヴァンが答える。
「勝てるさ。」
勇者アルヴァンが秘術の巻物を手に取る。
「不死の魔王ネロドス!今日こそお前は滅びるんだ!」
「禁忌の秘術よ!僕の魂を使うがいい!いでよ!邪魂の鎖!」


3本の邪魂の鎖が魔王ネロドスの身体に喰い込み、不死のチカラを引き剥がしていく。
苦しみだす魔王ネロドス。
「グオオ、再生が止まる、我が不死が封じられるだと?」


勇者アルヴァンの魂がどんどん汚されていく。
「これで終わりだ!」


不死のチカラは邪魂の鎖によって完全に引き剥がされた。
邪魂の鎖が消える。
不死のチカラは赤黒く光り、球体で宙に浮いている。


「我は、不死なる、魔王。」
「不死なるこの身が、滅び、死することなど、断じて、認めぬ。」


魔王ネロドスは仰向けで倒れ込む。


苦しそうな勇者アルヴァン。
「あとは魔王から切り離した不死のチカラを、もう一つの秘術、聖魂の剣で砕けば。」


「カミル!どうか僕にチカラを貸してくれ!」
勇者アルヴァンが聖魂の剣を出そうとしたその時、謎の黒衣の剣士が現れた。


黒衣の剣士が不死のチカラに右手をかざす。
「魔王ネロドスが宿せし不死のチカラ、もらいうける。」


勇者アルヴァンが言う。
「駄目だ!不死のチカラは滅さねば!」


勇者アルヴァンがもう一度聖魂の剣を出そうとするが、黒衣の剣士に闇の攻撃で防がれてしまう。


黒衣の剣士は右手で不死のチカラを握りつぶし、そのまま姿を消してしまった。


キュルルがエテーネルキューブから飛び出してきた。
「本来の歴史であれば、ここでネロドスと共に不死のチカラは封じられたはずっキュ。」
「でもあの人間が1000年後の世界に不死のチカラを持っていって、魔獣の一部として取り込んだらしいキュ。」


勇者アルヴァンが言う。
「1000年後?本来の歴史?主人公、君たちは一体・・」


キュルルが言う。
「説明は面倒キュルね。ちょっと危険だけど、どうせ死ぬ相手だから未来をみせてやるキュル。こういうことキュル。」


キュルルが勇者アルヴァンにまじないをかける。
勇者アルヴァンは1000年後の未来を見た。
「勇者アンルシア・・」
「そうだったのか。君はあの少女の、未来の勇者の盟友。だから僕を助けてくれたのか。」
「主人公、君たちの時代はネロドスの不死のチカラを持つ魔獣に今も襲われているんだね。」
「禁忌の秘術を記したこの巻物を君に、勇者アンルシアに託すよ。」


主人公は禁忌の秘術を記した巻物を手に入れた。


勇者アルヴァンが苦しみだす。
「僕はもうダメだ。じきに化物になってしまう。だからその前に、何処かへ・・」


そこへ、天馬ファルシオンがやって来た。
「私があなたを王家の迷宮に導きましょう。」
「あそこならばあなたの迷える魂を封じ込め、他へ害を及ぼすことはないでしょう。」
「さあ、アルヴァン。私の背に乗りなさい。」


勇者アルヴァンは天馬ファルシオンによって背に乗せられた。
勇者アルヴァンから瘴気が吹き出す。
「だめだ、ファルシオン。君まで汚れてしまう。」


天馬ファルシオンが答える。
「ええ、今あなたを背に乗せれば、汚れにより私は一時的にチカラを失うでしょう。」
「ですが心配はいりません。当代の勇者である、あなたがもたらしてくれたわずかな平和の時代、そのほんのひと時の間、安寧の地で羽を休めていれば、やがて私のチカラは蘇りましょう。」
「さあ、行きましょう。勇者アルヴァン。」


勇者アルヴァンが言う。
「主人公、アンルシア。君たちはどうか、幸せに。」


天馬ファルシオンは勇者アルヴァンを背に乗せ、王家の迷宮へ旅立っていった。


キュルルが言う。
「この時代に留まる理由はもうなくなったっキュ。」
「不死のチカラに対して秘術が有効だと、これで実証されたキュル。ボクらの時代に帰還するキュ。」


主人公はエテーネルキューブで現代に戻った。


勇者の聖壇の前で勇者姫アンルシアが祈りを捧げている。
「いにしえの勇者アルヴァン様、どうか主人公をお守り下さい。無事私たちが暮らすこの時代に帰ってきてくれるように。」


勇者姫アンルシアの背後にキュルルと主人公が現れた。
「僕がついている以上、時間跳躍に失敗する確率はとても低いキュル。心配はいらないキュル。」


「主人公、よかった。戻ってきてくれたのね。あなたの無事を祈っていたのよ。」
「アルヴァン様の時代に行ってきたのよね?魔獣の不死のチカラに対抗する方法は見つかったの?」


主人公は勇者姫アンルシアに過去の世界の出来事を説明した。


「なんてこと、アルヴァン様、おかわいそうに。」
「けれど2つの禁忌の秘術を使えば不死のチカラを打ち破ることが出来るのね。主人公、私に秘術の巻物を貸して。」


主人公は勇者姫アンルシアに秘術の巻物を渡した。


「ありがとう、主人公。」
「邪魂の鎖を生み出す秘術でアルヴァン様の魂は汚れてしまった。使えば私だってどうなるかわからない。」
「私の生命の一つで人々を救えるなら、私はどうなってもかまわない。」
「もし私がアルヴァン様のように人ではないものになってしまったら、あなたの手で王家の迷宮に封印して。」
「約束よ、主人公。」


兵士が走って来た。
「大変です!アンルシア様!」
「叡智の冠の皆様の封印が解けて、あの怪物が出現してしまいました。」


「わかったわ。不死の魔獣は今何処に?」


兵士が答える。
「橋の上です!城下町に被害が及ばぬよう、門を閉めてあります。城から直接橋へお向かいください!」


「行きましょう、主人公。今度こそ不死の魔獣を倒すのよ。」
主人公と勇者姫アンルシアは橋の上へ向かった。


橋の上では、賢者ルシェンダ達が結界を張りなんとかこらえていた。
「我ら叡智の冠が集結しても、やつには歯が立たんというのか。」


賢者ホーローも苦しそうだ。
「どうすればいいんじゃ、四重の封空が破られた以上、もう打つ手はないぞ。」


そこへ主人公と勇者姫アンルシアが到着した。
賢者ルシェンダが気づく。
「主人公!アンルシア!」


勇者姫アンルシアが言う。
「主人公、魔獣はあそこにいるわ。今度こそあいつを倒してみせる!」


不死の魔獣がしゃべる。
「また、貴様らか。」


驚く賢者ルシェンダ。
「しゃべっただと?あの魔獣、進化しているとでもいうのか?」


不死の魔獣が言う。
「我、不死のチカラ、戦うたび、強くなる。」
「来い、弱き者共よ。我が不死の前に滅びるがよい。」


勇者姫アンルシアが剣を構える。
「いいえ、滅びるのはお前よ。」
「私と主人公が不死のチカラを打ち破る!」
「不死の魔獣!お前に勇者と盟友の真のチカラを見せてあげるわ!」


主人公と勇者姫アンルシアは協力して不死の魔獣を倒した。


「これが勇者と盟友のチカラよ!」


不死の魔獣が再生を始める。
「我は不死。幾度倒されようとも、無限、蘇る。」


勇者姫アンルシアが言う。
「不死のチカラで再生するつもりね。そんなことはさせない!」


勇者姫アンルシアは秘術の巻物を取り出した。
アンルシアが邪魂の鎖を出そうとしたその時、声が聞こえた。
「駄目だ、勇者アンルシア。君一人で禁忌の秘術を使ってはいけない。」
「ようやくわかったんだ。秘術は主人公とともに、勇者と盟友、二人で使うべきものだと。」
「勇者と盟友の心が一つになった時にだけ起きる奇跡を、どうか信じて。」


勇者姫アンルシアが言う。
「まさかあなた、勇者アルヴァン様なのですか?」


返事はない。
勇者姫アンルシアが考える。
「私は、今の声は1000年前の勇者アルヴァン様のものだと信じるわ、主人公。」
「不死の魔獣を倒すための禁忌の秘術は、使った者の魂を汚してしまう。だから私一人で使おうと思っていた。」
「だけど今のアルヴァン様の声を聞いて考えが変わったわ。」
「主人公、あなたの生命、私に預けてくれるわね?」


大きく頷く主人公。


「ありがとう。」


「禁忌の秘術よ!私たちの魂を使うがいい!いでよ、邪魂の鎖!」
勇者アンルシアと主人公の二人は秘術の巻物から邪魂の鎖を放つ。


3本の邪魂の鎖が不死の魔獣に食い込む。
不死のチカラが魔獣から引き剥がされた。


「主人公、不死のチカラは封じたわ。あとはもう一つの秘術で完全に消滅させる。」
「禁忌の秘術よ!私たちの魂を使うがいい。いでよ、聖魂の剣!」


神々しい聖なる光を放つ聖魂の剣2本が現れた。
「さあ、最後よ、主人公。」
「私たちのチカラで不死の魔獣を完全に倒す!二人ならどんな敵にだって勝てるわ!」


不死のチカラに向かって、二人同時に聖魂の剣を振り抜く。
不死のチカラは消滅し、魔獣も息絶えた。
息絶えた魔獣の身体は小さな無数の闇の粒になり上空に浮かぶ繭に吸い込まれていく。


その瞬間、繭が闇の色に染まり、ドクンと脈打った。


勇者アンルシアが言う。
「あの繭、まさか不死の魔獣を食べたって言うの?」


繭の前に黒衣の剣士が現れた。
繭の状態を確認している。
「早すぎるな。なにゆえこのようなことに。」


主人公の姿を見つける黒衣の剣士。
「またお前の仕業か。どうやらお前は我が目的の障害となりうるようだな。」


黒衣の剣士が指を鳴らすと召喚の魔法陣が現れ、そこから無数のヘルゲゴーグが現れた。
倒しても倒しても、次々と現れるヘルゲゴーグ。


その時、どこからともなくファラスが現れてヘルゲゴーグを一刀両断で撃破した。
主人公や黒衣の剣士に気づくファラス。
「お前たちは・・?」


ファラスの姿に気がついた黒衣の剣士は、主人公達に光の魔法を放つ。
ファラスが主人公達の前に立ちはだかり光の攻撃を弾き返す。


その様子を見た黒衣の剣士は無言で繭の前に移動し、繭とともに消えてしまった。


ファラスは突然、激しい頭痛に襲われる。
頭を抱えるファラス。
「俺は・・誰・・なんだ・・」


ファラスはそう言うと、その場に倒れ込んでしまった。


勇者姫アンルシアと主人公も、秘術を使った影響で倒れ込んでしまう。


主人公が目を覚ますと、そこは賢者の執務室だった。
賢者ルシェンダと話をする。
「ようやく目を覚ましてくれたのだな、主人公。」
「そなたは何日も意識不明だったのだぞ。」
「あの時突然現れた双刀の剣士は酷く身体が弱っていたため、近衛兵詰所で療養中だが、まだ意識を取り戻さん。」
「ともあれ、不気味な繭は謎の黒衣の剣士とともに姿を消した。ひとまず安心しても良いだろう。」
「勇者姫と盟友によってグランゼドーラは再び救われたのだ。心から礼を言わせてもらおう。」
「叡智の冠たちは、あの黒衣の剣士と繭の行方を突き止めるため、それぞれ世界中へ散っていった。」
「何か手がかりがつかめ次第、そなたにも使いを出そう。」
「それまでの間はしばし骨を休めるがよい。」
「しかし、まさか禁忌の秘術をこの目で見ることが出来るとは。長生きもしてみるものだな。」
「盟友主人公、此度はまことにご苦労であった。いずれまた会おうぞ。」


盟友カミルのその後が気になった主人公は、エテーネルキューブを使い、再び1000年前へ旅立った。


勇者アルヴァンの妹、フェリナ姫が主人公に会いたがっているようなのでフェリナ姫の部屋へ向かった。
「主人公、よく来てくれたわ。実はちょうどあなたにお願いしたいことがあったの。」
「先日、私の部屋で手紙が見つかったの。いなくなる前の兄様が密かに残したものよ。読んでみるね。」
「フェリナ、お前がこの手紙を目にしているということは、僕はもうこの世にはいないのだろう。」
「僕はカミルが禁忌の秘術を使い、自らの命を犠牲にするつもりだと知って、自分ひとりで魔王を倒しに行くことにした。」
「カミルのことは追ってこれないようにして置き去りにしてきた。世話をかけてすまないが、彼女のことをどうかよろしく頼む。」
「・・この手紙に書かれていることが事実なら、カミルは逃げ出したりなどしていない。ならば一刻も早く探し出して助け出さないと。」
「でもみんな兄様を失った悲しみが深すぎて手紙を見せても信じてもらえるかどうか。むしろカミルの身に危険が及ぶかもしれない。」
「でもあなたならこの手紙の内容を信じてくれそうな気がしたの。お願い、どうかカミルを探してきてくれない?」


主人公は盟友カミルを探しに再び破邪舟に乗り魔王城へ向かった。
魔王城のエントランスに盟友カミルがいた。
「主人公さん!アルヴァンは一体何処に?不死の魔王ネロドスはどうなったのです?」


主人公は盟友カミルに魔王城で起きたことを説明した。


「そんな・・では、アルヴァンはもう・・」


「あの宴の晩、アルヴァンは私を連れてドラクロン山地の崖の上へ向かいました。」
「そこでアルヴァンは何も語らず私を気絶させ、気がつけば竜笛は壊され、私はひとり取り残されていました。禁忌の秘術を記した巻物もなくなっていて。」
「アルヴァンは私をかばうために、自ら秘術の犠牲になることを選んだのですね。」
「ああ、アルヴァン。やはり私のような者があなたの側にいてはならなかったのですね。」


「主人公さん、私のような不甲斐ない者にまだ何か用があるというのですか?」


主人公はアルヴァンがフェリナ姫に残した手紙について語った。


「アルヴァンがフェリナ様にそんな手紙を。」
「もし叶うなら、たとえ魂が汚れ、闇に落ちてしまったのだとしても、私はアルヴァンに会いたい。」
「ですが王家の迷宮に入るためには王家に連なる方か、王家から迷宮の管理を任された方のチカラが必要だとか。」
「私は勇者を守れなかった盟友。このような罪にまみれた身で誰かの助力を得ることは難しいでしょう。」
「ですが、フェリナ様なら、私が王家の迷宮に入れるようチカラを貸して下さるかもしれません。」
「主人公さん、すみませんがこれからフェリナ様宛に手紙を用意しますので届けては頂けないでしょうか?」


カミルはフェリナ姫への手紙をしたためて封をした。


主人公はフェリナ姫へ盟友カミルの手紙を渡しに行った。
「ああ、主人公。あなたの表情を見ればわかるわ。カミルが見つかったのね。」
「それで主人公、カミルは今一体何処にいるのかしら?早く会って話がしたいわ。」


主人公はカミルの手紙をフェリナ姫へ渡した。


「これはカミルからの手紙?なんてこと。」
「アルヴァン兄様の魂を追うために王家の迷宮に行くだなんて。そんなことをしたらカミルは・・」
「どうしたって直接カミルに会って話さなければならないわね。カミルは今王家の墓に向かっているって書いてあったわ。」
「私は外出することをお医者様から禁止されているから、お城を出るところを誰かに見られたら止められてしまう。」
「だからレムオルの粉を使うわ。」
「レムオルの粉は使ったものの姿を消すことが出来るの。それを使えば皆に気づかれずにお城を抜け出せる。」
「私の体調のことは心配しなくても大丈夫。世話係のカディーラが持ってきてくれる薬湯のおかげで最近は調子がいいんだから。」
「これから私は王家の墓に向かうから、あなたも来て一緒にカミルを説得してちょうだい。」
「待ってて、カミル。私があなたを助け出してみせるわ。」


主人公が王家の墓に着くと、盟友カミルとフェリナ姫がすでに来ていてた。
フェリナ姫が必死に説得する。
「カミル、お願い。どうか考え直して。アルヴァン兄様もこんなこときっと望んでいないはずよ。」


盟友カミルが言う。
「私のような者を気にかけて下さり、ありがとうございます。フェリナ様は本当にお優しい方ですね。」
「ですが、アルヴァンは魂を汚され王家の迷宮で今も一人苦しんでいる。それが私には耐えられないのです。」
「フェリナ様、これが私の最後の望みです。どうか私をアルヴァンのもとへ、王家の迷宮へ行かせて下さい。」


フェリナ姫が言う。
「どうして、なぜあなたたちはそうやって、私を置いていってしまうのですか!」


盟友カミルがフェリナ姫に頭を下げる。
「申し訳ありません。」
「ですが、この心は変えられないのです。」


フェリナ姫が言う。
「あなたは本当に強情な人ね。」
「いいわ、それなら私も連れて行って。残されることがどれほど辛いか、あなたなら分かるでしょう?」


盟友カミルが言う。
「私はこのような生き方しか出来ない人間です。ですがフェリナ様なら違う生き方を選べるはず。」
「アルヴァンがいなくなってしまった今、あの人の代わりを務められるのはあなたさましかいません。」
「ですからフェリナ様はここに残り、フェリナ様にしか出来ない努めを果たして下さい。」
「そして何よりも、お幸せになって下さい。それが私の心からの願いです。」


フェリナ姫が言う。
「カミル、あなたがもし死ぬつもりなら、私はあなたを王家の迷宮へ行かせるわけにはいきません。」
「だから約束して下さい。アルヴァン兄様の魂を救ったら、必ず生きて帰ってくると。」


盟友カミルが再びフェリナ姫に頭を下げる。
「ありがとうございます。必ずアルヴァンの魂を救い、フェリナ様のもとへ帰ってまいります。」


フェリナ姫が言う。
「その言葉、信じていますからね。ならば私はグランゼドーラの王女として王家の迷宮を開放するわ。」


フェリナ姫はふところから短刀を取り出すと、人差し指に刃を当てて引き、指先から流れる血を祭壇に捧げた。
すると祭壇から光が溢れ、王家の迷宮への扉があらわれた。


「カミル、私頑張って務めを果たすわ。」
「だから国や私のことは心配しないで。アルヴァン兄様をきっと救ってあげてね。」


「ありがとうございます、フェリナ様。どうか末永くお元気で。」
盟友カミルは王家の迷宮へ旅立っていった。


フェリナ姫は決意した。
次代の勇者を絶やさぬよう、グランゼドーラ王家の血筋を守り伝えていくということを。


その後、グランゼドーラ城に飾られていた勇者アルヴァンと盟友カミルの対になった美しい像は、グランゼドーラの民が怒りに任せて城に押し寄せ、盟友の像だけが打ち壊されてしまった。
グランゼドーラの民を先導したのはエメリヤ妃だという。


ヴィスタリア姫は故郷のファルエンデ国へは帰らずグランゼドーラに残り、盟友カミルの汚名を晴らすべく懸命に活動した。


王家の迷宮へ入って行った盟友カミルは迷宮の半ばで息絶えてしまい、自分が何者かすらも忘れた迷宮をさまよう魂となってしまう。
盟友カミルは魂となりさまよい続け、勇者アルヴァンは迷宮の奥で苦しみ続けている。
1000年後、2人で王家の迷宮に入り鍛錬しなさいとシオンに言われた勇者姫アンルシアと主人公が勇者アルヴァンと盟友カミルの魂を救い出すまで・・


dq10story.hatenablog.jp