主人公は賢者ルシェンダに呼び出しを受けた。
賢者の執務室で賢者ルシェンダと話をする。
「朗報だぞ、主人公。」
「そなたを助けたあの双刀の剣士が目覚めたようなのだ。」
「要するにそなたはあの者と顔見知りなのだろう?」
「何者なのか教えてくれないか。」
主人公は5000年前のエテーネ王国でファラスに出会ったことを話した。
「5000年もの時を超えてきたというのか。何か深い事情を抱えていそうだな。」
「彼には魔獣の襲撃から助けられた恩もある。」
「行き場に困っているようなら当面この城に滞在してもらうのがよかろう。」
「ファラス殿は3階の近衛兵詰所にいる。会いに行ってやるといい。」
3階の近衛兵詰所に行くと、ファラスはベッドで寝ていた。
夢を見てうなされているようだ。
「うう、主人公・・」
目が覚め飛び起きるファラス。
しかし主人公のことを覚えていないようだ。
「ああ、失礼だが、そなたの名前を教えてくれ。」
主人公は自分の名前を告げた。
「主人公というのか。主人公、主人公・・・」
「どうも頭の中が洗い流されたように真っ白でな。」
「思い出せるのは、青い港町、誰かの後ろ姿・・・」
キュルルがエテーネルキューブから飛び出す。
「ふーむ、やっかいキュ。」
「こいつは時間跳躍の後遺症っキュね。」
ファラスがキュルルの姿を見て驚く。
「魔法生物?」
「主人公も知っての通り、エテーネ人にも時渡りのチカラを持つ個体と持たない個体がいるっキュ。」
「適性のない個体が無理に時を渡れば人体にかかる負担は計り知れず、思いもよらない弊害を引き起こすキュル。」
「この男は記憶の喪失だけで済んでまだ幸運なほうっキュ。」
「本当にそれだけかはわからないけど、ともかく経過を観察するキュ。」
キュルルはそう言うとエテーネルキューブの中に帰っていった。
ファラスが考え込んでいる。
「魔法生物に好かれるヤツはいいヤツだと誰かが言っていた。」
「主人公、うまく言葉に出来ないが、そなたは不思議と懐かしい。」
そこへ賢者ルシェンダがやって来た。
「目覚めたか、ファラス殿。」
「ファラス、それが自分の名ですかな。なるほど、しっくりくる。」
賢者ルシェンダが言う。
「我が国の王は魔獣を倒してくれたそなたを賓客としてもてなすそうだ。」
「城の中ならば自由に見てくれて構わんぞ。」
ファラスはベッドから降り、大きく背伸びをした。
「そいつは大いに助かる。」
「部屋に籠もっているのは性に合わんのでな。」
「すこし外の空気を吸わせてくれ。」
ファラスが部屋から出ていった。
「肝の座った男だな。」
「さて主人公。先程グレン城のバグド王よりそなたへ直々に呼び出しがあった。」
「グレン上空に例の繭が現れたそうだ。」
主人公はグレン城のバグド王に会いに行った。
バグド王が頭を抱えている。
「頭が痛いな。」
「主人公、そなたも見たか?この城の空に浮かぶ奇怪な繭を。」
賢者エイドスが来ていた。
「グランゼドーラで見たものと瓜二つ、というより同一の存在であろう。」
「なれば次はこの国が襲われる可能性が高い。」
バグド王が言う。
「聞けばアンルシア姫でも苦戦するほどに強い魔獣が現れたそうだな。」
「急ぎ国の防備を固めねば。主人公もチカラを貸してくれ。」
そこへランガーオ村からの使いがやって来た。
「ギュランと申します。」
「オーグリードの盾の盟約に従い、村王クリフゲーンの伝令として参りました。」
「ロンダの氷穴で異形の魔獣を連れた不審な者が目撃されたとのことです。」
「黒い鎧に身を包んだ人間の男だとか。」
賢者エイドスが言う。
「ほう、グランゼドーラで魔物を放った者もそのような身なりをしておったな。」
「ロンダ岬か。嫌な場所に現れたものだ。」
「バグド王よ。これは只ならぬ事態やもしれぬ。速やかに最悪の事態に備えるのだ。」
「わしは主人公と共に急ぎロンダ岬へ向かう。行くぞ!」
主人公と賢者エイドスはロンダ岬へ踏み入った。
ロンダ岬の最奥にある結界の前に黒衣の剣士がいる。
持っている両手剣で封印の結界を破壊する。
封印の結界が破られ、悪鬼ゾンガロンが解放された。
「礼は言わぬぞ、人間。」
「代わりに存分に暴れてやろう。」
黒衣の剣士は笑みを浮かべその場から立ち去った。
賢者エイドスがその様子を見て慌てている。
「やられたな。オーグリードにとって最悪の事態じゃ。」
「この大陸は1300年前、ゾンガロンによって滅ぼされかけておる。」
「わしも力を貸す。主人公、食い止めてくれ!」
悪鬼ゾンガロンと対峙する主人公。
「まさか復活した我の相手が貴様ら程度か?下等生物が。身の程を知れ。」
「知性を捨て、獣となるがいい!」
主人公と賢者エイドスは悪鬼ゾンガロンが放つ闇の光を受け、魔物の姿になってしまった。
「グハハ。みっともない姿だな。」
「我の復讐の前菜として喰らってやろう。」
悪鬼ゾンガロンは主人公に攻撃を放つが、威力が弱い。
「フム、今はチカラが足りぬか。」
「我がかつての全能を取り戻せし時、今度こそすべてのオーガを滅ぼさん。」
悪鬼ゾンガロンは闇の衣をまといながらどこかへ消えてしまった。
主人公と賢者エイドスの姿は元に戻っている。
「う、ぐう、なんと強い。」
「あれがゾンガロンの伝承に聞く人の心を奪い、獣に変えてしまう光か。」
「主人公よ。ヤツを再び封印せねばオーグリードは終わりじゃ。」
「しかしかの封印は太古のもの。その全ては忘れられて久しい。」
「だが幸運にも、悠久の時をものともせぬ時渡りの名手がここにおったな。」
「ゾンガロン封印の術を知るため、かつてのオーグリードへ行ってくれるな?主人公。」
キュルルがエテーネルキューブから現れる。
「そろそろボクの出番だと思ってたキュ。どの時代へ移動したいキュル?」
「おぬしたちの向かうべきは古のオーガの勇士達がゾンガロンを封印した1300年前じゃ。」
キュルルが封印の結界に近づく。
「あの封印を媒介すれば良さそうキュ。」
「時間設定1287年前。エテーネルキューブ起動キュ!」
主人公はエテーネルキューブの力で1287年前のオーグリードの大陸へ時渡した。
到着したのは古代オルセコ闘技場の中だった。
斧を持ったオーガの戦士がアームライオンと戦っている。
巧みな斧の技でアームライオンを圧倒している。
運悪く、アームライオンのすぐ前に姿を表してしまった主人公は、不意の一撃をくらい気絶してしまった。
椅子に鎖で縛りつけられた状態で目を覚ます主人公。
場所は玉座の間のようだ。
沢山のオーガ戦士に囲まれている。
女のオーガが主人公の前に立った。
「いい度胸だよ。精鋭兵の只中に飛び込んでくるなんて。」
「それもまた獣ゆえの無謀さかねえ?鬼人国のスパイさん。」
「あんたのことはオルセコ王国現当主ギルガラン王子が直々に裁いて下さるとさ。」
玉座に座っているギルガラン王子が主人公を睨んでいる。
先程アームライオンと戦っていたオーガだ。
立ち上がり、斧を手に取ったギルガラン王子が主人公に近づいてくる。
「魂なき獣よ。俺の敵に生まれたことが運の尽きだ。次はオルセコの民に生まれてこい。」
斧を振り上げる。
「せめて安らかに眠れ。」
そこに年若のオーガがやって来て、主人公の前に立った。
「恐れながら兄上。」
「グリエよ。邪魔立てするならお前もろとも断ち切るぞ。」
この年若のオーガはグリエ王子というようだ。
「この者、瞳に意思が宿っております。」
「心失いし獣には見えません。」
グリエ王子が主人公を見る。
「キミの名前を教えて下さい。」
主人公は自分の名前を言った。
「主人公さん、ですね。身に付けていたものから想像するに遠い国より訪れた旅人なのでしょう。」
「僕に預けていただけませんか?国に益をもたらす情報を引き出してみせます。」
ギルガラン王子が斧を下ろす。
「何様のつもりだ。いつから俺に意見できる身になった?」
二人の王子が睨み合う。
その様子を見かねた女のオーガがため息をつきながら主人公の側に来る。
「まあねえ、こんなにやけ顔じゃ鬼人には見えないよね。」
「弟王子様が面倒見るってんなら、一つ任せてみてもいいんじゃない?って大臣は思うけど。」
ギルガラン王子の斧で主人公を縛り付けていた鎖が切られた。
「興が削がれた。二度と俺の前に現れるな。」
場は解散となり、グリエ王子と二人きりになる。
「ご無事でよかった。キミにこれ以上危害が加えられないよう僕の責任で取り計らいますのでご安心を。」
「よろしければ僕の私室で少しお話をしませんか?」
「この玉座の間を出て右手に部屋があります。それではお待ちしていますね。」
グリエ王子の私室にやって来た。
「ようこそ、お待ちしておりました。」
「主人公さん、とおっしゃいましたね。」
「僕はこの国の第二王子グリエと申します。」
「先程の兄の非礼をお許し下さい。」
「さあ、こちらへ。」
「遠方からの旅の方ならばさぞや戸惑われていることでしょう。」
「よろしければ僕から説明させて下さい。」
「オーグリード大陸がどんな惨状にあるかを。」
「今から数年前、悪鬼ゾンガロンと呼ばれる怪物が突如現れました。」
「ゾンガロンは各地でオーガを襲い、いくつもの集落が滅ぼされていったのです。」
「当時このオルセコ王国は隣国のドランドと戦争をしていたのですが、悪鬼ゾンガロンはドランド王国を陥落させ、ドランドの民の心を奪ってあっさり征服してのけたのです。」
「心を奪われたオーガは、獣のように凶暴になり鬼人と呼ばれるようになりました。」
「そして鬼人国が誕生したのです。」
「僕たちは今まさに鬼人国の驚異にさらされ、ゾンガロンに滅ぼされようとしています。」
「だから兄さんも余裕がなくなっていて。」
「口は悪いけど国を守ろうと必死なんです。どうか大目に見てやってくださいね。」
「すっかり長話になってしまいましたね。僕で良ければこの国を案内しましょう。」
誰かが部屋の扉をノックしている。
「おや、ちょっと失礼しますね。」
グリエ王子は扉の方へ歩いていった。
キュルルが現れる。
「主人公はトラブル体質っキュね。」
「まああの第二王子は話が通じそうだし、しばらく一緒に行動するっキュ。」
グリエ王子が戻ってきた。
「すみません。オルセコ王国の民達から沢山の陳情書が届きまして。」
「どうやらその・・兄さんがあちこちで騒動を起こしているようなのです。」
「僕は彼らの声を聞きに行かねばなりません。」
「ああそうだ。主人公さんも2件ほどお手伝いしていただけませんか?」
「この国の民の心に親しむには、正直、兄さんへの苦情を聞いてあげるのが一番の近道かと思いますから。」
主人公はグリエ王子からビントンの陳情書とリセセの陳情書を受け取った。
「僕の方も陳情書を解決しながら最期にオルセコ王国領の王家の墓に行く予定なのでそちらで報告をお願いしますね。」
オルセコ闘技場の市場にいるビントンに話を聞く。
「うっう、うおーん。」
「え?あんた、オレっちの陳情書を見て来てくれたのか。」
「聞いてくれよ。オレっちオルセコ闘技会にそなえて新品の青銅の剣を買ったんだぜ。」
「それをギルガラン王子に見せたら剣を片手で真っ二つに折って、もっとましな武器を買えっていうんだ。」
「あんまりだよ。オレっちの青銅の剣、弁償してくれよ。」
主人公は新品の青銅の剣を買ってあげた。
「うおーん!ギルガラン王子に折られた時はもう駄目だと思ったのに!」
「これでオルセコ闘技会に出られるよ。あんたなんていい人なんだ。」
「グリエ王子の友達なだけあるな。」
「本当にありがとな。」
同じく市場にいるリセセに話を聞く。
「ほんと嫌になっちまうよ。」
「ギルガラン王子のせいで大損さ。」
「ああアンタ。陳情書を見て来てくれたんだね。」
「実はさ、さっきギルガラン王子が市場を通りかかったんだけど、王子のしっぽが棚にぶつかってね。」
「店先に並んでた売り物を落として駄目にしちまったんだよ。」
「なのに王子ったら急ぎの用だ、許せってひとこと言って立ち去ってさ。」
「どれだけ人の迷惑かえりみないんだか。」
「だからアンタにお願いだよ。」
「落ちて割れちまったあの白くて丸い物を仕入れてきてくれないかい?」
主人公は新鮮卵を渡した。
「ああ、これこれ。新鮮、産みたての卵だね。」
「ありがとう、旅人さん。これでちょっぴり損失が減ったよ。」
「先王のゾルトグリン様は民が困ってたら真っ先に助けてくれるようなお人だったのに。」
「ニワトリの卵からカラスが生まれたのかしら。」
「あたしからの陳情書は取り下げるわ。」
「ギルガラン王子もアンタや先王様みたいに心ある人だったら良かったのにね。」
グリエ王子から頼まれていた陳情書をすべて解決した。
主人公はグリエ王子が待っている王家の墓に向かった。
「ああ主人公さん。お手伝い下さりありがとうございました。」
「ええ、すでに報告は受けています。キミが真摯に話を聞いて下さって皆さんも喜んでらしたようですよ。」
グリエ王子の側にボッチィという男性のオーガがいる。
「グリエ様は10人分の苦情を聞いたらしいぜ。人がいいよな!」
「オイラんちは代々ここの墓守をしてんだ。」
「ここにはオルセコ王国の歴代の王様が眠ってんだぜ。」
グリエ王子が言う。
「ボッチィさんからも陳情書をいただきましたが、この場所でも兄さんが?」
「そうなんだよ。ギルガラン様だよ。」
「あの人さっきドカドカとやって来て、王様の墓を掘り返したんだ。」
「どうしたもこうしたも分からんけど。しかも埋蔵品の鏡を持ってっちまったんだ。」
「墓泥棒だよ、墓ドロボー。」
「あーあ、先王様の時代は良かったなあ。どうして亡くなっちまったんだろうなあ。」
グリエ王子が謝る。
「それは失礼を致しました。」
「埋蔵品を戻すよう兄を説得してみますね。」
「全く手のかかる・・・」
「これから兄さんと話そうと思います。」
「キミの活躍ぶりも聞いてもらおうと思うので良かったら一緒に来て下さい。」
「今の時間だと兄さんはオルセコ闘技場の舞台で鍛錬をしているはずです。」
「よろしくお願いしますね。」
オルセコ闘技場の舞台には、一人斧を振り鍛錬をしているギルガラン王子がいた。
「二度と顔を見せるなと言ったはずだが?」
グリエ王子が言う。
「兄さん、主人公さんはオルセコの民の悩みをたちどころに2件も解決して下さいました。」
「とても心強い味方ですよ。」
「それで、民より訴えがありました。兄さんがあちこちでやんちゃをしているとか。」
「何か理由があってのことと思いますが、王家の墓を暴いて有無を言わさず埋葬品を持ち出したそうですね。」
「民は兄さんの声を聞きたがっています。言葉なくして想いは伝わりません。」
ギルガラン王子は斧を振り続けている。
「黙っていろグリエ。今は俺が王だ。」
「そしてオルセコの民は王の所有物。俺に従っていればいい。」
グリエ王子が言い返す。
「それでは民の心は離れるばかりだよ。」
そこへ突然、鬼人が現れた。
「鬼人だ。主人公さん、お逃げ下さい。」
ギルガラン王子が斧を構える。
「今度は本物の鬼人国の刺客らしいな。」
「主人公とやら、味方だと言うなら今役に立ってみせろ。」
主人公は襲いかかってくる鬼人兵たちを倒した。
「この程度なら・・たやすい・・」
「まもなく鬼人が群れとなりて・・オルセコを攻め滅ぼすだろう・・」
「召しませゾンガロン様!」
鬼人兵たちは消滅した。
グリエ王子が言う。
「宣戦布告ということでしょうか。」
「主人公さんがお強かったのでなんとか勝てましたが。」
「兄さん、民に呼びかけ兵を集めて国の守りを固めましょう。」
ギルガラン王子が答える。
「必要ない。」
「攻めてくるのならその前に潰せばいいだけのことだ。」
「兄さん、まさか・・」
ギルガラン王子がオルセコ闘技場を去っていく。
「俺が戻るまでここを任せるぞ。」
グリエ王子が主人公に言う。
「兄さんは確かにこの国で最強とうたわれる一騎当千の武人ですが、まさか鬼人国に一人で攻め入る気なのか。」
「このままではあの人は死んでしまいます。」
「主人公さん、すみませんが一緒に来て兄さんを止めて下さい!」
「鬼人の居城、鬼岩城はオルセコ王国領の東、ドランド平原を突っ切った先にあります。どうかお願い致します!」
グリエ王子と鬼岩城に向かう。
「これが難攻不落とうたわれた強国ドランドの末路か。」
「僕らの父王ゾルトグリンは類稀な戦術家でしたが、この城は落とせないとよく嘆いていました。」
「そんな城に一人で突っ込んで行くなんて。全くギルガランらしい。」
「兄さんはすでに侵入してドランド王の王座を目指しているでしょう。」
「中は鬼人だらけです。くれぐれもお気をつけて。」
鬼岩城にかかる吊橋を渡っていると不意に猫の声がした。
「にゃーん。」
前方にある骨で出来た籠から聞こえてきているようだ。
籠を覗き込むと、中から黒猫が飛び出して来た。
なんと黒猫はメレアーデの飼い猫チャコルだった。
グリエ王子が言う。
「こんな所に猫ちゃんが。」
「あはは、かわいいなあ。主人公さんのこと好きみたいですね。」
黒猫のチャコルは崖を飛び降りて滝に近づいていく。
チャコルの側には主人公の亡霊のようなものが見える。
主人公の亡霊はレバーを操作し、滝の流れを止め、チャコルと一緒に奥へ進んでいった。
「不思議な猫ちゃんだなあ。あの子のおかげで光明が見えましたね。」
主人公とグリエ王子もレバーを操作し滝の奥へ進んでいく。
鬼岩城の玉座の間にたどり着くと、ギルガラン王子がすでに到着していた。
鬼岩城の王が玉座に座っている。
「我らの血、我らの肉、すべてゾンガロン様の糧。」
ギルガラン王子が言う。
「轟雷王と呼ばれ、何者の風下に立つことも決して許さなかった貴様が獣の下僕に成り下がるとは。」
「惨めだな、ドランドの王よ。」
「若造には分かるまい。」
「いかなる強き者も賢き者も、圧倒的なチカラを前にして頭を垂れ、甘美なる敗北の味を知る時が来る。」
ギルガラン王子がグリエ王子の姿に気づく。
「何故来た?」
ドランドの王が突然襲いかかってくる。
主人公とギルガラン王子は協力して鬼人と化したドランドの王を倒した。
「こんな形で終わりとうはなかった。」
「祖国を守れぬ王など、王にあらず。」
ドランドの王は消滅した。
グリエ王子が言う。
「どれほどの人々の運命がゾンガロンによって狂わされたのでしょう。」
悪鬼ゾンガロンの声がする。
「狂えよ、狂え。」
「我が手のひらで踊り狂え。」
主人公たちの前に悪鬼ゾンガロンが姿を現した。
「最期には我が喰らってやろう。」
「愚かなオーガ共の殺し合いを高みから見物させてもらったぞ。」
「ああ愉快愉快。」
「今我は満腹の心持ちよ。」
ギルガラン王子が言う。
「誇り高き貴様が何故獣に身を落とした?」
「俺を見ろ、ゾンガロン。いや、我が父ゾルトグリンよ!」
ギルガラン王子の手にはラーの鏡がある。
ギルガラン王子はラーの鏡でゾンガロンを覗き込んだ。
なんと鏡には先王ゾルトグリンの姿が映しだされた。
「貴様のその腕輪、父の誕生日に俺が贈ったものだ。」
悪鬼ゾンガロンが驚いている。
「ほほう。」
「ゾルトグリンなどとうに捨てた名だ。」
グリエ王子が言う。
「何故ですか、父上。」
「皆があれほど愛し敬ったあなたが。」
「何故我らを滅ぼそうとするのですか。」
「気色悪い、父などと呼ぶな。」
「我はチカラを求め、チカラを得た。」
「我にとって真の姿とはこの姿よ。」
「苦しめ、憎め、恐怖しろ。」
「そのすべてが我のさらなる糧となる。」
そう言うと悪鬼ゾンガロンは姿を消した。
「話は城でだ。帰るぞ。」
ギルガラン王子は城へ帰っていった。
主人公達も城へ帰り、玉座の間へ向かった。
王座の間にはギルガラン王子とムニュという名前の女大臣がいた。
グリエ王子が言う。
「兄さんが王家の墓を暴いたのはラーの鏡が必要だったからなんですね。」
「僕は全然気づけなかった。やっぱり兄さんはすごいです。」
「父上にも何か理由があるのでしょうか。僕らには見せられない苦しみを抱えていたのでしょうか。」
ギルガラン王子が言う。
「獣に身を落とし祖国を滅ぼそうとするなど、いかなる理由があろうと許されん。」
「父は所詮、王の器ではなかったということだ。」
グリエ王子が否定する。
「王とて人ですよ、ギルガラン。」
「人並みに苦しむこともある。」
「辛いことがあるなら一緒に背負いたかった。」
ギルガラン王子が立ち上がる。
「俺を諭しているつもりか。お前はいつからそんなに偉くなった?」
「グリエ、お前ごときに王の何がわかる。」
「背負うものがない第二王子は引っ込んでいろ!」
ムニュ大臣が怒る。
「アンタ、グリエ様を軽んじるのもいい加減にしなよ。」
「本当に王を継ぐ資格があるのはさ、アンタがいつもバカにしてる目の前のグリエ様なんだよ!」
「グリエ様がアンタを心配して当然だろう。」
「アンタの兄さんなんだから!」
グリエ王子が言う。
「安心して下さい、ギルガラン。」
「僕には王を継ぐ意思も資格もありません。」
「兄というのは本当です。」
「ただ僕の病弱な身体では世継ぎにふさわしくなかったと言うだけ。」
「弟と偽っていたのは、せめてキミのチカラになりたかったからですがこれ以上僕がいると国を乱しかねません。」
「だから去りますね。」
グリエ王子は去っていった。
ギルガラン王子が怒っている。
「大臣、どういう事だ。皆して俺をたばかっていたと?」
ムニュ大臣が答える。
「いえ、真実を知っていたのはグリエ様と先王ゾルトグリン様、王妃ララリエ様、そしてアタイのみ。」
「これは先王様の深いお考えがあってのことなのです。」
「バカにされたものだな。」
「俺はゾンガロン討伐の支度をする。邪魔立てはするな。」
ギルガラン王子も去っていった。
ムニュ大臣が頭を頭を抱える。
「あー、墓場まで持ってく気だったのにやっちまったよー。」
「今日の宮廷記録には一体なんて書きゃいいんだ。」
「すまないね、主人公さん。」
「アンタの前でこんないざこざを見せてさ。」
「このこと、皆には内緒にしておくれよ。」
「しっかしゾンガロン。あの偉大なるゾルトグリン様を倒す方法なんて見当もつかないのに。」
「ギルガラン様、どうするんだろうね。」
「また暴走しなきゃいいけど。」
「大臣なんて心配事ばかりさ。」
「時々未来の自分の宮廷記録を盗み見してみたくなるよ。」
ムニュ大臣が去っていった。
キュルルが現れる。
「あの大臣、記録を残してるって言ってたキュ。」
「もし未来にその記録が残っているならゾンガロンを封印した方法も書いてあるんじゃないキュル?」
「早速、現代のオルセコ闘技場へ行ってみるっキュ!」
現代のオルセコ闘技場の地下一階にある木箱にムニュ大臣の宮廷記録が収められていた。
主人公はゾンガロンの封印について記された書を見つけた。
「ムニュ大臣の宮廷記録第二十六章」
「これまでに多くのオーガが命を賭したが、未だ悪鬼ゾンガロンの封印は完成しない。」
「封印のために最初の犠牲となったのは、その方法を見つけてきたギルガラン王子だった。」
「ゾンガロンの魔力はあまりに強大で、封印には100年もの年月がかかるらしい。」
「どうやらアタイが生きているううちに平和なオルセコを目にすることはなさそうだ。」
キュルルが現れた。
「あの偉そうな王子様、ギルガランってヤツ、死んじゃうっキュね。」
「そんなことよりゾンガロンの封印に100年もの時間がかかるキュル?」
「そんなことしてるうちに滅びの未来がやってくるっキュ。」
そこへ男性のオーガがやって来た。
「あの、すみません。」
「先程ギルガランと聞こえまして。」
「よかった。その名を知ってるなんて、あなたはオルセコ王国史を研究されている考古学者の先生とお見受けしました。」
「僕はエリガン。」
「かつてオルセコ王国の王家の血筋であったグリエという男の子孫にあたります。」
「我が家の書庫の古い巻物の中に、祖先グリエの手記が何万もの字で綴られておりました。」
「グリエはギルガランを死なせてしまった。そのことを一生悔やんでいたようです。」
「どうやら祖先は弟らの犠牲を出さずにゾンガロンを封印する別の手段を見出しかけていたようなのです。」
「ここで会えたのも何かの縁でしょう。どうかこれを研究に役立てて下さい。」
主人公はエリガンからガズバランの印を受け取った。
「これは先祖グリエが求めていたもの。」
「しかし手に入ったときには手遅れでした。」
「俺は祖先の手記を読んで居ても立ってもいられず、思いあまって滅んだオルセコ王国までやって来ました。」
「あなたに出会えてよかった。」
「何か大切なことを果たせたように思います。」
エリガンが去った後、賢者エイドスがやって来た。
「やれやれ、ここにおったか。」
「探したぞ、主人公よ。」
「まずいことになった。」
「ゾンガロンとは別の異形の怪物がグレン城に降り立ったのだ。」
「急いで城へ向かってくれ。」
グレン城下町では銀色の異形獣が暴れていた。
黒衣の剣士が銀色の異形獣を操っているようだ。
「耳障りな鳴き声だ。」
「行け原獣プレゴーグよ!本能のままに暴れるがいい!」
主人公がグレン城下町に到着した。
突然、原獣プレゴーグが主人公に襲いかかってくる。
主人公は原獣プレゴーグを倒した。
黒衣の剣士は顔色を変えない。
そこへ悪鬼ゾンガロンが現れる。
「オーグリードは我の大地。ここで暴れていいのは我のみよ。」
悪鬼ゾンガロンは倒れている原獣プレゴーグを食べてしまった。
「ゲテモノはウマいというがどうやら真実らしいな。」
悪鬼ゾンガロンの身体から闇のチカラが溢れ出す。
それを見届けた黒衣の剣士は笑みを浮かべ消えてしまった。
「昔日のチカラが蘇っていく。」
「コイツを消化しきれば、封印による消耗も癒えるだろうよ。」
「1300年分の復讐だ。震えて待つがいい。」
悪鬼ゾンガロンは姿を消した。
バグド王が駆けつける。
「あの怪物を倒してくれたのだな。重ねて礼を言うぞ、主人公。」
賢者エイドスもやって来た。
「して主人公よ。先刻は聞きそびれてしまったが、ゾンガロンの封印について何かわかったか?」
主人公は今まで調べてきたことを話した。
バグド王が驚く。
「封印に100年の年月がかかるだと?その間に大地は荒廃しきるぞ。」
「オルセコ王子の子孫を名乗る者が別の封印手段があると申したのは確かか?」
賢者エイドスが考え込んでいる。
「これは導きではあるまいか。」
「その方法をグリエとやらに聞けば悪鬼に対抗できるやもしれぬ。」
「主人公よ。今一度過去に戻り、グリエに会ってくるのだ。」
主人公はグリエ王子に会いに行った。
しかしグリエ王子の姿が見当たらないので、ひとまずギルガラン王子に会うことにした。
「王になって国を背負った気でいたが、これじゃまるでハリボテの王だな。」
「俺を心配して来たのなら無用だ。あの程度で俺は揺るがん。」
主人公はギルガラン王子にグリエ王子の居場所を聞いた。
「何?グリエを探している?」
「お前もあいつの行方を知らんのか。くそ、腹立たしい。」
「国王が命じる。あんな奴は放っておいて俺に手を貸せ。」
「ちょうど使える手駒が欲しかったところだ。」
「貴様も知っての通り、ゾンガロンはこの国の先王だ。」
「父の身に何が起こったのかを知らねばならん。」
「城の地下に父の部屋が残されている。まずはそこを探るぞ。」
先王の部屋に向かうギルガランと主人公。
二人で協力して本棚を探し、関連する資料を見つけた。
「どうやら当たりらしいな。」
資料を読む。
「愛しき妻ララリアよ。」
「お前が逝ってから我は老いてしまった。」
「ドランド王国は強い。毎夜のように軍略をめぐらせたが、あの堅固なる城を攻略する手立てがない。」
「このままでは子らの世代に戦争を継がせることになってしまう。」
「それだけは何としても避けたい。」
「ギルガランは我の思い描いた夢のままに芯のある強きオーガとなった。」
「そして長くは生きられないと言われたグリエは今も弟を優しく支えている。」
「我はあの子にひどいことをした。」
「それなのにすべてを許し、慈しむ心根はお前によく似ている。」
「我は息子らに平和を遺したい。」
「そのための手立てをひとつだけ見つけた。」
「雄峰ランドンの山頂に眠る戦神が人智を超えたチカラを与えてくれるとの古き言い伝え。」
「我はこの言い伝えを辿って戦神の守護者に会いに行く。」
「息子らに平和を残すためのチカラをくれるなら、神にでも悪魔にでもすがろうではないか。」
資料を読み終えたギルガラン王子が言う。
「見損なった。」
「息子、息子と。そんな素振りなど一度として見せなかったではないか。」
「これでは王失格だ。ゾンガロンになるべくしてなったんだ。」
「馬鹿な父親だ。」
「雄峰ランドンの山頂に眠る戦神。おそらくはそいつが元凶だ。」
「城の前に馬車を用意させる。」
「俺たちも戦神の守護者とやらに会いに行くぞ。」
主人公は馬車で雄峰ランドンの山頂に向かった。
一人の女性が立っている。
「ここは不浄の地。」
「そなたたちのような者が来る場所ではありません。」
ギルガラン王子が問う。
「お前が戦神の守護者か?」
「そなたはよく似ていますね。」
「私は戦神の、封印の守護者。六聖陣がひとり、魔封剣姫。」
ギルガラン王子が聞く。
「数年前、ここを訪れた者がいたはずだ。」
「確かに。戦神の力を求めてこの地を訪れたオーガの王がおりました。」
「その者は険しい雪道に行き倒れており、私が介抱していたのですが、目を離した隙に姿を消してしまったのです。」
「どこでまかり間違ったのか、そなたらの伝承に戦神から人智を超えた力を得られると記されているそうですね。」
「しかしそれは大いなる誤りです。」
「戦神とは戦禍の邪神。」
「人に害をなし、この世に災厄を振りまく存在。」
「戦禍の邪神は自らを封印したオーガの神ガズバラン、ひいてはオーガという種族を憎んでいます。」
「オーガ達を滅ぼすためなら、いかなる策謀とて講じるでしょう。」
「おそらくあのオーガの王は、邪神と契約しチカラを得る代わりに、オーガを憎む心を植え付けられたのです。」
ギルガラン王子が言う。
「それがゾンガロンの真実か。」
「俺はゾンガロンを倒す術を探している。知恵を授けて欲しい。」
「あれは邪神の加護を受けた存在。」
「倒すことは難しいですが、封ずることなら叶いましょう。」
「ただし、封印の術には術者の命を使います。」
「そして100年の年月がかかるでしょう。」
「あなたは自らの命を捧げられますか?」
ギルガラン王子が答える。
「先王の罪は現王の俺の罪でもある。」
「覚悟は出来ている。」
「良いでしょう。では魔封の術を授けましょう。」
ギルガラン王子は魔封の術を手に入れた。
「オーグリードに光あらんことを。」
ギルガラン王子が主人公に礼を言う。
「主人公、お前のおかげで真実にたどり着けた。」
「俺はオルセコに戻り戦の支度をする。」
「すまぬが最後の頼みだ。グリエを探し出し、連れ帰って欲しい。」
主人公とギルガランは馬車でオルセコ王国へ帰った。
オルセコ王国領にある剣闘の間にグリエ王子がいた。
「探しに来てくださったんですね。」
「オルセコの城を出てから、僕はずっと父の心を取り戻す術を探していました。」
「ちょっとした心当たりがあって、各地に残るオーガの誕生にまつわる神話を巡っていたのです。」
「ですが当てが外れました。」
「闇雲に探しても本当に欲しいものは手に入りませんね。」
「兄さん、ギルガランはどうしていますか?」
主人公は雄峰ランドンの山頂での出来事を話した。
「自らを犠牲にしてでもゾンガロンを封じる術・・」
「そんなの、絶対にさせない。」
「少しお話しましょう。」
「僕が生まれた時、父ゾルトグリンはたいそう喜んだそうです。」
「父にとって待望の跡継ぎでしたから。」
「ですが僕は、赤ん坊の頃から身体が弱く、立派なオーガに育つ見込みがなかった。」
「4歳になる頃、ギルガランが生まれると父は僕を養子に出しました。」
「幼いながらにその意味を察しましたし、少しだけ父を恨みました。」
「それから何年かして僕はギルガランの弟というていで城に戻りました。」
「頑健で身体も大きかったギルガランは、子供の頃からあんな感じで。」
「生意気で傲慢で、嫌な奴でした。」
「でも別々に育ったってのに、あいつは僕を弟だと信じていつも守ろうとしてくれた。」
「あいつは誰かを守ることを躊躇わない。」
「その姿に僕は王の器を見ました。」
「それ以来、僕の夢は定まりました。」
「ギルガランを立派な王に育てる。」
「だから弟を死なせるわけにはいきません。」
「何としてでもオーガ族の神器、ガズバランの印を手に入れないと。」
主人公はガズバランの印をグリエに渡した。
「そ、そんな・・まさか・・どこでこれを!?」
「いや、そんな事はどうでもいい。」
「ありがとうございます、主人公さん。」
「これで弟を救える。」
「どうか急いでオルセコ王家の墓に来ていただけますか?」
「すべてはそこでお話しします。」
主人公はグリエ王子と一緒に王家の墓に向かった。
「オーガよ、忘るるな。」
「胸の内に宿る炎の音を。」
「主人公さん。この壁画にはオーガの誕生にまつわる神話が描かれているのです。」
「曰く、我らオーガは怪物の身体に人の心を宿すという試みで生み出されたと。」
「最初の頃は魔族と変わらぬ粗暴さでしたが、ガズバラン神が用いたとある御業によって心を制御し、ひとつの種族となったとか。」
「ゾンガロンの使う人を獣となす光は、オーガを原初の状態へ回帰させるもの。」
「ならばガズバラン神の用いた御業によって心を取り戻すことが出来るはずです。」
「僕はガズバラン神の伝承を読み解くためにガズバランの印を探していたのです。」
グリエは墓のくぼみにガズバラン印をはめた。
ガズバランの印が赤く光り古代文字が浮かび上がる。
その古代文字を読んだグリエがひらめく。
「そうか、心を制御した御業とは踊りなんだ!」
「不思議ですね。まるで太古の昔から知っていたように脳裏に戦の舞が思い描かれました。」
「オーガを人と成したこの舞があればゾンガロンも心を取り戻すはずです!」
そこへ黒猫のチャコルがやって来た。
口に手紙をくわえている。
「どうしたんだい、猫ちゃん。」
手紙を受け取るグリエ。
「これは、ギルガランの字。」
ギルガランの手紙を読む。
「グリエよ。お前には心から失望した。」
「俺をずっと昔からたばかっていたとはな。」
「だが俺はいつも考えていた。」
「お前のような穏やかな者が王であったら、どれほど良い国を作ったろうと。」
「結局、俺は王の器ではなかった。」
「ならば俺は、俺の出来ることを果たそう。オルセコを任せたぞ。」
手紙を読み終えたグリエ王子が言う。
「あのバカ、死ぬ気だ。」
「主人公さん、お願いがあります。」
「ギルガランは一人でゾンガロンの封印に向かったのでしょう。」
「僕の弟を助けてやって下さい。」
主人公は頷いた。
「心より感謝致します。」
「ゾンガロンはこの大陸の北端にある黄昏岬をねぐらをしています。」
「大陸の北へはドランド平原の港から船が出ています。」
「話は通しておくのでお使い下さい。」
「この御恩、一生忘れません。」
「僕も僕のやるべきことを果たしたらすぐに後を追います。」
主人公は太古の氷穴にある黄昏岬に向かった。
主人公が黄昏岬に到着すると、すでにギルガラン王子が悪鬼ゾンガロンと戦闘を繰り広げていた。
「父王ゾルトグリンよ。」
「俺はあなたに憧れていた。」
「だからこそ無念だ。」
「親父が敗れる姿は見たくなかったよ。」
悪鬼ゾンガロンが言う。
「いつまで家族ごっこを続けるつもりだ?ゾルトグリンの意志などもはや存在せん。」
「貴様もすべてを忘れ、獣となれ。」
悪鬼ゾンガロンが人を獣となす光を放つが、ギルガラン王子はラーの鏡で跳ね返す。
「あまり見くびるなよ。」
そこへ主人公が合流する。
「誰が来いと言った。」
「つけあわせが増えたところで変わらん。まとめて喰らうのみよ。」
悪鬼ゾンガロンが襲いかかってくる。
主人公とギルガラン王子は協力して悪鬼ゾンガロンを倒した。
「グハハ。追い詰められた獣は侮れんな。」
「それでこそ我が獲物に相応しい。」
「そろそろ本気で狩ってくれよう。」
悪鬼ゾンガロンが再び襲いかかってくる。
ギルガラン王子が斧で攻撃を防ぐが、悪鬼ゾンガロンは前よりチカラを増しているようだ。
悪鬼ゾンガロンの攻撃を防ぎきれず、強烈な一撃を受けそうになったその時、グリエ王子がゾンガロンとギルガランの間に飛び込む。
「ギルガラン!」
ギルガランの代わりに悪鬼ゾンガロンの一撃をまともに受けるグリエ。
吹っ飛ばされ倒れ込んでしまった。
グリエを抱き起こすギルガラン。
「グリエ、お前・・」
グリエは意識があるようだ。
「よかった、間に合った。」
そこへオルセコ王国の人々が助けにやって来た。
「オルセコのために命をなげうつとはな。」
「ギルガラン様はちゃんと民を想ってたんだ。」
ギルガランがオルセコ王国の人々を見る。
「お前たち・・」
グリエ王子は残るチカラを振り絞り、オルセコ王国の人々に言った。
「皆さん、今こそ戦の舞を!」
オルセコ王国の人々が皆で戦の舞を踊り始める。
「グオオオオ・・・」
悪鬼ゾンガロンが苦しみだし、先王ゾルトグリンの意識が蘇る。
「息子たちよ。」
「苦労をかけた。」
「これ以上、我の愛するものを壊させはせん。」
「この意識、長くはもたぬ。」
「我がこやつを抑えられるうちに。」
「我が魂を封印の楔とせよ。」
ギルガラン王子が斧を持ち立ち上がり、悪鬼ゾンガロンの眉間に強烈な一撃を放った。
悪鬼ゾンガロンはギルガランによって太古の氷穴に封印された。
喜ぶオルセコ王国の人々。
倒れたままのグリエに気づいたギルガランが駆け寄る。
「ギルガラン、そこにいるの?」
「ねえ、覚えているかい?」
「兵士たちが僕のことからかった時。」
「キミが飛んできて彼らを蹴散らした。そして言ったんだ。」
「お前の思慮深さは俺にはないものだ。」
「俺には俺の出来ることが、お前にはお前の出来ることがあるって。」
「あれはちょっと救われた。」
「キミはぶっきらぼうだけど、誰より人を愛おしんでいる。」
「キミはいい王になる。」
「そばで見ていたかった・・な・・」
グリエは息を引き取った。
「お前は心配しすぎなんだよ。」
「・・バカ兄貴。」
皆でオルセコ王国の玉座の間に戻った。
ギルガラン王子が皆に言う。
「皆に礼を言おう。」
「そなた達が命を懸けて国を救ったこと、俺は生涯忘れまい。」
「俺はいまだ未熟な王だが、常に己に問い続けると誓おう。」
「真の強さとは何か。真の王とは何かを。」
「俺はこれからもオルセコを守り抜く。どうかチカラを貸してくれ。」
「そして獅子門の難民たちよ。」
「ゾンガロンの脅威は消えたわけではない。」
「そのため、封印を見張る勇士の村を作りたい。」
「オーグリードを守り抜く役割、そなたらに頼むぞ。」
「これをもってオーグリードの盾の盟約とする。」
人々が解散した後、ギルガラン王子と二人で話をする。
「さて、主人公よ。」
「お前には兄共々世話になった。心より感謝している。」
「グリエは本当に生意気な弟で、いつも見透かしたような目をしているのが憎たらしかった。」
「でも、ずっと前から兄として見守っていてくれたんだな。」
「お前はグリエと同じ優しさを持っている。それは俺にはないものだ。」
「大切にしてくれ。」
「この鏡にも世話になったな。」
「ゾンガロンの封印に役立つなら、後ほど獅子門の者らに届けるとしよう。」
突然、黒猫のチャコルがギルガランに飛びかかった。
驚いたギルガランは手に持っていたラーの鏡を床に落としてしまった。
ラーの鏡の上に乗り、ギルガランを威嚇する黒猫のチャコル。
「動物に好かれぬのは直らんな。」
黒猫のチャコルが主人公の方を向いて鳴いた。
主人公はラーの鏡を拾い上げ、黒猫の姿を映した。
なんと鏡にはメレアーデの姿が映し出された。
「ようやく元の姿に戻れたわ!猫背になっちゃうかと思った。」
「主人公、また会えたわね。」
ギルガラン王子が驚く。
「お前は人間だったのか。」
「びっくりさせてごめんなさい、王子様。」
「私、エテーネ王宮が異形獣に襲われた時、時渡りを使ってしまったみたいでこの時代に来てしまったの。」
「それで彷徨ってるうちにゾンガロンに出くわして、例の光で獣にされちゃって。」
ギルガラン王子が言う。
「言っている意味はよくわからぬが、主人公の知り合いなら再開できてよかったな。」
「主人公よ。俺はこれから葬儀の支度がある。」
「いつの日かまた会おう。」
メレアーデが言う。
「ねえ、主人公。」
「あなたこの時代にいるってことは時渡りが出来るのよね?」
キュルルがエテーネルキューブから現れた。
「あら、この子。魔法生物かしら?」
キュルルがメレアーデをジロジロと観察する。
「どうやらコイツはボクのことを知ってた怪しい方の王女様じゃなさそうっキュね。」
「なかなか面倒なことになったキュ。」
「かくなる上は仕方ないキュル。」
「コイツにはすべてを伝えておくっキュ。」
キュルルがメレアーデに魔法をかける。
メレアーデはすべてを理解した。
「まさか、あなたがエテーネの民の末裔で、時渡りで世界を救おうとしてるなんて。」
「偉い、偉いわ、主人公。」
「私、感動しちゃったわ。」
「私にはもう帰る場所がないから。よかったらあなたを手伝わせて!」
キュルルが言う。
「この王女様、なかなかに優秀な時渡りのチカラを秘めてるキュ。」
「コツさえ掴めば一緒に時を渡れるっキュ。」
メレアーデが言う。
「それなら主人公の時代に行ってみたいわ。」
キュルルがエテーネルキューブを起動する。
「時間設定、現代。エテーネルキューブ起動キュ。」
主人公とメレアーデは現代に時渡りした。
「うーん、なんだか頭がクラクラする。」
「お星様が回ってるわ。」
賢者エイドスがやって来た。
「主人公よ、帰ったか。」
「うん?なんだ、その娘は。」
「まあよい。そなたが何をしてきたかは知っておる。」
「今まさにグレン城がゾンガロンに襲われておる。」
「急ぎ選王の儀礼場へ向かってくれ!」
主人公とメレアーデは選王の儀礼場へ向かった。
バグド王が悪鬼ゾンガロンと戦っている。
かなり苦戦しているようだ。
「くっ。これがオーグリードの伝説の魔獣か。」
主人公の姿に気づいた悪鬼ゾンガロンが言う。
「ああ、待っていたぞ。ようやくすべて思い出したわ。」
「1300年前はよくも封印してくれたな。主人公よ。」
「オルセコの王子をこの手で引き裂けなかったことは心残りだが。」
「代わりに貴様を引き裂いて喰ろうてやろう!」
突然、悪鬼ゾンガロンが腹を押さえて苦しみだす。
「グ、グウ・・何だ?」
「我の腹を食い破るのは誰だ?」
「グワアー!」
悪鬼ゾンガロンの腹を食い破り、原獣プレゴーグが飛び出してきた。
「アハハ・・アハハ・・」
「ねえ、遊ぼう・・」
エイドスが驚く。
「まさか、自らが喰らった魔獣に身体を奪われたのか。」
「みんな、ボクと遊ぼうよ・・」
原獣プレゴーグの身体から赤い光が吹き出す。
それを見た賢者エイドスが言う。
「この光は・・」
「皆よ、時は来た!」
バグド王が叫ぶ。
「戦の舞だ!」
グレン城の兵士たちとバグド王が戦の舞を踊り始める。
賢者エイドスが言う。
「ランガーオ村に伝わる史書曰く。」
「オルセコ王ギルガランの治世、主人公と名乗る旅人現る。」
「その者、オルセコの兄弟の心を結び、古の戦の舞を蘇らせ、ゾンガロンを封印せしめん。」
「主人公よ。そなたの紡いだ絆がこの舞を伝えたのだ。」
原獣プレゴーグの身体から赤い光が消えていく。
「主人公よ、今こそオーグリードの因縁に決着をつける時。」
「ヤツを完全に討ち滅ぼすのじゃ!」
主人公は原獣プレゴーグを倒した。
グレン城の空に浮かぶ繭から金色の光が発せられる。
その光は原獣プレゴーグの亡骸に照射され、亡骸ごと繭に取り込まれていった。
金色の光に包まれた繭は大きく拍動し、次の瞬間、何処かへ消えてしまった。
バグド王が喜ぶ。
「我らの勝利だ!」
「主人公よ、ゾンガロンを討ったそなたの働き、このオーグリードにて永久に語り継がれるに相応しい!」
黒衣の剣士がその様子を睨みつけるように上空から見ていた。
「あの時の異分子、来るべき未来を脅かしかねんな。」
上空から主人公に結界を張り、クモノで身体を拘束する。
動きを封じられた主人公に黒衣の剣士が上空から襲いかかる。
と、そこにファラスが現れ加勢に入った。
黒衣の剣士の斬撃を弾き飛ばし、なおも攻撃を繰り出す。
「この者を、傷つけさせはせん!」
ファラスがクモノの結界を剣で破壊し、主人公の身体が自由になる。
天下無双と超はやぶさ斬りを続けざまに繰り出すが、黒衣の剣士は両手剣で難なく弾き返す。
その様子を見ているメレアーデ。
「一体どういうこと?何故あの二人が戦っているの?」
ファラスと黒衣の剣士が剣を交えて睨み合う。
「この太刀筋、確かに覚えがあるぞ。」
黒衣の剣士が言う。
「主の邪魔をするとは何事だ。」
ファラスが何かを思い出した。
「あなた・・なのですか?」
ファラスが気を抜いた一瞬の隙を突き、黒衣の剣士がファラスの剣を弾き飛ばす。
そしてファラスの脇腹に両手剣を突き刺した。
「いつも詰めが甘いのだ、お前は。」
脇腹を押さえて倒れ込むファラス。
「お逃げ下さい、主人公殿!」
黒衣の剣士が驚く。
「主人公・・だと?」
何かを思い出したのか、突然、頭を押さえて苦しみだす黒衣の剣士。
すると突然、上空に光の渦が現れた。
黒衣の剣士は渦に吸い込まれ、姿を消してしまった。
賢者エイドスがファラスに癒やしの魔法をかける。
「どうやら込み入った事情があるようだな。」
「一度、賢者ルシェンダの元へ行き、これからのことを話し合うがよかろう。」
メレアーデが言う。
「主人公、何がどうなっているの?」
「あの黒い鎧の人は、私の叔父であり、エテーネ王国最高の時渡りの使い手。」
「パドレ様よ。」
大きな混乱を残したまま、主人公とメレアーデは賢者ルシェンダの待つグランゼドーラ城へ向かった。
賢者ルシェンダの所へ行くと勇者姫アンルシアも来ていた。
「主人公、おかえりなさい!」
「また大変な冒険をしてきたそうね。」
「あら?その方は?」
メレアーデがアンルシアに駆け寄る。
「あなたがこの時代の勇者、アンルシアちゃんね!すごく強いのになんて可愛らしいの。」
勇者姫アンルシアが戸惑う。
「可愛らしい?ありがとう・・」
「あなた方は主人公の時渡りの力のことを知っているようなので話が早いわ。」
「私はメレアーデ。」
「5000年前に存在したエテーネ王国の姫よ。」
「訳あって時空の迷子になってしまって。主人公に助けてもらったの。」
勇者姫アンルシアが言う。
「まあ、ちょうどエテーネ王国のことをルシェンダ様に聞いていたところよ。」
「ずっと昔に消えてしまった、とても美しい国なんですってね。」
「このレンダーシアにはエテーネの村という小さな村があって、主人公の故郷なのよね。」
メレアーデが考え込んでいる。
「エテーネの村・・」
賢者ルシェンダが言う。
「ようこそメレアーデ姫。」
「重傷を負ったファラス殿はこの城で責任を持って治療させてもらおう。」
「ところでグランゼドーラを襲った黒衣の剣士の正体が判明したらしいな。」
メレアーデが答える。
「はい、あの方は間違いなく、私の叔父のパドレ様です。」
「この時代で異形獣を操っているのがあの方なら、もしかしてエテーネ王国を襲ったのも・・」
賢者ルシェンダが言う。
「ふむ、何か嫌な予感がするな。」
「こちらでも黒衣の剣士の行方を捜索しよう。」
「そなたはこれからどうするつもりだ?」
勇者姫アンルシアが言う。
「よかったらこの城で暮らさない?」
「ファラスさんもここで治療しているのだし。」
「ありがとう、アンルシアちゃん!」
「だけど私、さっき教えてくれたエテーネの村という場所に行ってみたいの。」
「またグランゼドーラにも遊びに来るから、その時はゆっくりお茶でもしましょう。」
「ということで主人公。エテーネ村への案内、よろしくね!」
主人公とメレアーデはエテーネの村へ向かった。
「ありがとう、主人公!」
「今日から私、ここに住むことにするわ。」
「シンイさんに事情を話したらこの家を使っていいと言ってくれたの!」
「実は昔から緑いっぱいの小さな村で暮らすことに憧れてたのよ。」
「こんなに良いお家を頂けるなんて、主人公とシンイさんに感謝しなくっちゃね。」
「これからエテーネの村を拠点にして頑張ってみるから宜しくね!」