ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード30 1000年の旅路 うつろなる花のゆりかご

賢者ルシェンダに呼び出された主人公は、真のグランゼドーラ城にある賢者の執務室に向かった。
「おお、主人公か。待っていたぞ。そなたに大切な話があったのでな。ではメレアーデ姫をここへ呼ぼう。」
メレアーデがやって来た。
「久しぶりね、主人公。賢者ルシェンダ様から連絡を受けてエテーネの村からやって来たのよ。」
そこにファラスもやって来た。
「メレアーデ様!よくぞご無事でいらっしゃいました!」
「賢者ルシェンダ殿。メレアーデ様は我が主の姪御にあたる方。お引き合わせ下さり感謝致します。」
「そして主人公殿も!そなたまでこの時代に飛ばされて来たとは何と奇遇であろうか。」


メレアーデが言う。
「逆なのよ、ファラス。主人公はこの時代の住人。エテーネ王国の時代へ時渡りしてきていたの。」


「この時代から時渡りを?エテーネ王家の者でもないそなたにそのようなことが可能とは・・いえ、何でもございません。」
「してルシェンダ殿。自分は何を話せば良いのでしょうか。」


賢者ルシェンダが言う。
「思い出したこと、その全てを。ファラス殿の記憶がこの世界を救う鍵となるやも知れんのでな。」


「承知致しました。」
「主人公殿も知っての通り、あの日いずこからか現れた異型の魔物はエテーネ王宮を襲いました。」
「我が主の奥方マローネ様とその愛し子をお助けするため自分も必死に戦いましたが、とうとう魔物の群れに取り囲まれ・・」
「もはやこれまでと思ったその時、マローネ様の腕の中の赤子が突然時渡りのチカラを発揮なされたのです。」
「赤子ながらに身の危険を感じ取られたのか、お父上譲りの類まれなる才能を発揮し、いずこかへと時渡りなされてしまいました。」
「そこでマローネ様は赤子を守るようにと、かすかに残る時渡りの痕跡を辿り、すぐさまこのファラスを時間跳躍させたのです。」
「その間際、マローネ様はご自身の持つ時渡りのチカラでは一人を送り出すのが精一杯だと、そうおっしゃっていました。」
メレアーデが驚く。
「一人を送り出すのが精一杯?じゃあマローネ叔母様はエテーネ王宮から時渡りすることも逃げることも出来ずに・・」
「マローネ叔母様・・私達姉弟をあんなに可愛がって下さったのに。クオードが知ったらどんなに悲しむか・・」


「メレアーデ様、クオード坊っちゃんはどちらに?ご一緒ではないのですか?」


メレアーデが答える。
「あの子の行方も分からないの。全く手がかりがなくて・・」


賢者ルシェンダが言う。
「あなた方にお集まり頂いた理由はもう一つ。まさしくそのクオード殿について報告せねばならんことがあったからだ。」
賢者ルシェンダは主人公が古代ウルベア帝国で成長したクオードと再会し、彼が死に至るまでの経緯を説明した。


倒れ込みそうになるメレアーデをファラスが支える。
「クオード坊っちゃん、時渡りの果てに異郷の地で十数年も・・どんなにお辛かったことでしょう。」
「エテーネ王国を救うためとは言え、坊っちゃんがなされたという所業は決して許されることではありませんが、今はただクオード様の魂が安らかならんことを祈るばかりです。」


「エテーネ王宮の消失とそれに伴う数々の悲劇について、異なる時代の我々には理解しきれるものではないが、親しい者を亡くしたその哀しみ・・生きる時代が違えども、察して余りある。お悔やみを申し上げる。」


ファラスが主人公に聞く。
「我が主パドレ様のあの変わりよう。一体何があったのです?主人公殿、教えて下さい!」
主人公はファラスにウルベア大魔神の元に現れた黒衣の剣士パドレと戦ったこと、そして黒衣の剣士パドレがキュロノスと名乗る時見の箱に操られているらしいと説明した。
「時見の箱が我が主を?」
「そうか、それが真ならこれまでの違和感にも納得がいく。」
「やはりパドレ様を信じていてよかった。主人公殿、ご報告感謝する。」
「だがエテーネ王家最高の時渡りのチカラの持ち主と呼ばれた我が主を操るとは。」


メレアーデが賢者ルシェンダに聞く。
「賢者ルシェンダ様、パドレ叔父様を時見の箱から解放し、正気に戻す方法はないのですか?」
「私の大切な人達はみんな死んでしまった。せめてパドレ叔父様だけでも何とか助けたいんです!」


「そう言われるだろうと思ってな。既にある人物に調査させておいた。」
「現在メレアーデ姫が滞在しているエテーネの村のシンイ、あやつが人の記憶を操る術に詳しいのだ。」
「メレアーデ姫、エテーネの村へ戻りシンイに相談するとよい。きっとチカラになってくれるはずだ。」


「エテーネの村までは私が案内するわ。ファラス、主人公、あなた方も一緒に・・」
そこへ兵士がやって来た。
「失礼致します!メギストリス王国ラグアス王子より急使が!」
「主人公さんに大切なご用事があるため、すぐにメギストリス城までおいで願いたいとのお言葉です!」


「ラグアス王子が?もしやプクランドにもあの繭が?」


「そういうことならエテーネ村へはファラスと私が行きましょう。」
メレアーデとファラスは二人でエテーネ村に向かった。


「主人公。お前はラグアス王子が待つメギストリス城へ向かってくれ。頼んだぞ。」


メギストリス城に向かいラグアス王子と話をする。
「・・見える。滅びゆく世界を照らすかすかな光。僕達を導いてくれるその者は・・は!・・これが・・アストルティアの未来を守る鍵なんだね。アルウェお母さん!」
「・・主人公さん?いつからそこにいらしたんですか?」
「お久しぶりです。突然お呼び立てして申し訳ありません。」
「先日城に立ち寄った賢者ホーロー様から主人公さんがドワチャッカに出現した大魔神を退治したと聞きましたよ。」
「さすがは主人公さんです。あなたの活躍ぶりを聞いて僕は自分の予知に確信を持ちました。」
「そう、僕は予知をしたのです。」
「プクラスという名のプクリポ、ピィピのお宿に捨てられた古びた石版、そして救世の英雄主人公。」
「時を超えし魔獣がもたらす滅びよりアストルティアを救えるのはプクラスと古びた石版、主人公のみ。」
「プクランド中を探してもプクラスという名のプクリポは存在しない。だから初め、予知は間違いだと思いました。」
「けれど予知が示した場所、ピィピのお宿の片隅でこの古びた石版が見つかったのです。」
「これだけなら偶然かも知れません。ですが予知は主人公さんを示した。」
「あなたはプクランドを、いえ、世界を幾度となく救ってきた英雄です。だから僕は自分の予知を信じます。」
「この古びた石版と主人公さん、プクラスが揃いし時、世界は滅びから救われるはずです。ですから・・」
そこへ兵士がやって来た。
「お話し中失礼致します!」
「エピステーサ丘陵の底なし穴内部に巨大な繭が出現したそうです!」
「発見した兵士の話では巨大な繭だけでなく、不気味な生物がうごめいていたとか。いかがなさいますか!ラグアス王子!」


「まさか世界各地に出現したあの繭なのか・・確かあの地の底には某大な魔瘴が・・」
「賢者ホーロー様の話ではこれまでの魔獣はそれぞれの大陸で何らかのチカラを吸収してきたそうですね。」
「もし繭とともに出現した生物が例の魔獣だとすれば、目的はプクランド大陸の地底に眠る某大な魔瘴なのかも知れません。」


ラグアス王子が兵士に聞く。
「あそこの地下にある魔瘴調査区画は今はどうなっている?」


「は!主任研究員パルミオ博士の管理下にて厳重に施錠され、一般市民の立ち入りは禁じられているはずです!」
「調査に赴かれるのでしたら、キラキラ大風車塔の井戸の底に住むパルミオ博士の持つ鍵が必要となります!」


ラグアス王子が主人公に言う。
「主人公さん、あなたに魔瘴調査区画の調査をお願いします。まずはパルミオ博士に会って下さい。」


主人公はパルミオ博士からパルミオの鍵を受け取り魔瘴調査区画に向かった。
魔瘴調査区画の奥には巨大な繭が出現している。
なぜかパルミオ博士がやって来た。
「おお、芳しくも濃密なる魔瘴の香り!長年この場所の調査をやっているが、こんな下層まで降りてきたのは初めてだ。」
賢者ホーローもやって来る。
「これ!勝手に先に行くでない!何が待ち受けているか分からんのだぞ!」
「まったく、このデンジャーかつシリアスな局面ではしゃぎおるとは困った奴じゃ。」
主人公の姿に気づく賢者のホーロー。
「おお、主人公か。ルシェンダ様から例の繭が現れたと聞きわしも駆けつけてみたんじゃが、どうやら当たりだったようじゃな。」
「これはあちこちに現れた例の繭と同じもの。とすると近くに魔獣が?」
新型の異型獣が地面を掘っている。
「グランゼドーラを襲った魔獣と似た波動じゃ。つまりこやつも?」
「地下の魔瘴には近づかせんぞ!叡智の冠が一人、放浪の賢者ホーローが直々に相手をしてやろう!」
賢者ホーローが放つ光の魔法が異型獣に炸裂するが、全く効かない。
その後異型獣は分裂し、増殖を始めた。
「なに!増殖したじゃと!これではきりがないではないか!」
「主人公!今のわしらではこやつを完全に倒すことは出来んようじゃ。ここは一旦退却じゃ!」
出口に封印の結界を張る賢者ホーロー。
「ラグアス王子にもここでの一件を報告せねばならんな。主人公よ。メギストリス城で改めて策を練ろう!」


主人公は賢者ホーロー、パルミオ博士と共にラグアス王子の元に向かった。
賢者ホーローがラグアス王子に報告する。
「・・うむ、わしはこの目で見た。エピステーサの底なし穴に出現したのはグランゼドーラに現れたのと同じ繭じゃ。」
「ならばあの増殖する魔獣も姿形は違えども、これまでアストルティア各地を襲った魔獣共と近しい存在なのじゃろう。」
「様々な能力を持つ魔獣が各大陸に現れ、黒衣の剣士によってそのチカラはあの禍々しき繭へ注ぎ込まれていく。」
「ここらで食い止めねば、いよいよあの繭の中身が目覚めるやも知れん。」


ラグアス王子が言う。
「賢者ホーロー様のお話によれば、エピステーサの底なし穴に現れた魔獣は倒そうとしても何匹も増殖するそうですね。」
その時、ラグアス王子が手に持つ古びた石版が緑色に光り始めた。
「どうして急に石版が・・」
石版に文字が現れている。
「プクランドに現れし増殖する魔獣によりアストルティアは滅びる。みな脱出に備えよ。」


それを見た賢者ホーローが言う。
「これはもしや!遥か古代、世界の歴史の全てを予言する神秘の秘宝、知理の石版が存在したという伝説がある。」
「知理の石版を携えし予言者の言葉は6000年前のゴフェル計画の根拠になったとも言われておるのじゃ。」


ラグアス王子が言う。
「ゴフェル計画・・大いなる災厄より種族の未来を守るため、アストルティアを捨て安全なる世界へ旅立とうとしたという・・」
「エピステーサの底なし穴に出現したあの魔獣はそれほどまでに恐るべきものなのですね。」
知理の石版に新たな文字が浮かび上がる。
「ああ、再び知理の石版が!まさか魔獣への対抗策を予言して・・」
「増殖する魔獣・・対抗策は・・この・・にて・・を・・」
文字が消えてしまった。
「文字が消えた・・壊れてしまったのでしょうか。」
キュルルがエテーネルキューブから現れた。
「ええ?この不思議な生き物は・・もしやこちらが時の精霊キュルルさん?」


「この知理の石版とやらは時間跳躍の触媒になりそうキュ。石版が作られた時代へ行けるキュよ。」


賢者ホーローが言う。
「そうじゃ!この石版を作った予言者なら壊れた知理の石版を修理出来るはずじゃ!」
「そうすれば今の予言の内容が、魔獣への対抗策が分かるかも知れん。」


「そこまでは保証できないキュルが、時間跳躍する価値はあるかも知れないキュ。」


ラグアスが言う。
「主人公さん!この知理の石版をあなたに託します。過去へ持って行って下さい!」
主人公はラグアス王子から知理の石版を受け取った。
「僕はこの時代でプクラスという名のプクリポを探しておきます。どうか魔獣の対策方法を見つけて下さい!」


「それじゃ、時間跳躍を開始するキュ。時間設定、知理の石版の波動を元に製造年代まで飛ぶキュ。」
「ポイント設定、当時の知理の石版が存在した地点。これで完璧キュ。」


主人公は時間跳躍した。
「うう、座標がずいぶん乱れているキュ。いつ、どこに到着したのか、この僕にも判断がつかないキュ。」
「主人公、まずは現地人と接触して、ここがどこでいつの時代なのかを解明するキュ。予言者探しも忘れるなキュ。」
「というわけで僕は疲れたのでしばらく休息を取るキュ。」


町のプクリポに話を聞く。
「ここはアルウェーンの町。私は幸福なアルウェーン市民です。全て問題ありません。私達は幸福です。」


町のいたるところに投影装置が置かれている。
町人は皆、虚ろな表情をしていて生気がない。
突然、投影装置にプクラスの姿が映し出された。
プクラスの顔にはバーコードが刻まれている。
「親愛なる市民の皆さん。私は永世管理者プクラスです。」
「まもなく奉仕の時間が始まります。」
「本日、奉仕当番にエントリーされている市民番号の方は速やかに奉仕室へ移動して下さい。」


主人公は中央地区のエレベーターで地下一階にある奉仕室に向かった。
奉仕室の中ではアルウェーンのプクリポ達が巨大な花の形をした装置に入れられている。
装置が作動し、アルウェーンのプクリポ達の身体からエネルギーが吸い取られる。
そのエネルギーは中央の装置に集められているようだ。
「個人の意思など不要。我々は全体のため奉仕すること以外を望みません。」
「市民の皆さんの精神エネルギーが我々全員の生活を維持しています。」
「これからも全体の幸福のため、どうか模範的な市民でいて下さい。さあ、もっとエネルギーを。」


しばらくするとプクリポ達は謎の機械から出され、それぞれ町へ帰っていった。
主人公が奉仕室を出ると、突然知理の石版が光りだした。
「緊急モード!この・・指示に従い、休眠中の管理者・・・を目覚めさせ・・」
エレベータの前にいるピンクのイルカが話しかけてきた。
「緊急モードを認証しました。エレベータのロックを解除致します。上層にある管理棟へ向かって下さい。」


主人公はエレベータで管理棟へ向かった。
管理棟の扉に知理の石版をかざして中に入る。
するとまた知理の石版が光りだす。
「緊急モード!管理者・・が眠るコールドスリープ・・に、この管理タブレットをかざし・・・」
コールドスリープポッドの前にいるピンクのイルカに話しかける。
「管理タブレットの緊急モードを認証しました。直ちにアルウェーンの永世管理者を目覚めさせます。解凍までしばらくお待ち下さい。」


しばらくするとコールドスリープポッドが開き、プクラスが目覚めた。
「緊急モード?C141、状況を説明してくれないか。」
主人公の姿に気づくプクラス。
「君は?アルウェーンの住人ではないようだね。すごいや!初めての訪問者だ!」
「ゲホゲホ・・生まれつき身体が弱くてね。それにコールドスリープから覚醒した直後で調子が出ないんだ。」
「僕はこのアルウェーンの永世管理者プクラスだ。君が悪意ある侵入者でないことを祈るよ。」
「それにしてもC141はどこへ行ったんだ。僕の管理タブレットも見当たらないし。」
「おや?君が持っているのはもしかして・・ちょっと僕に見せてくれないかい。」
主人公はプクラスに知理の石版を渡した。
「なんだ。データが壊れてるみたいだね。修復して再起動しておこう。・・これでよし。」
プクラスは主人公が持っていた知理の石版を直してくれたようだ。
「ずいぶん古びてるけど組成も製造番号も僕が所有する管理タブレットと同じだ。世界に一つしか存在しないはずなのに。」
「・・解析完了。え?第一次ゴフェル計画当時のものだって?」
「まさか君は7000年前から現れたとでも言うのかい?」
「あれ?君、おかしな物体を持っているようだね。ちょっと見せてくれないか。」
主人公はプクラスにエテーネルキューブを見せた。
プクラスがスコープで解析をする。
「成分組成・・不明!内部に生命反応あり!完全なる未知の生命体?やった!これは新発見だぞ!」
「・・おっと失礼。うちの家系は珍しいものを発見するとついはしゃいでしまうんだ。」
主人公はプクラスから知理の石版を返してもらった。
「存在するはずのない管理タブレット。現れるはずのない訪問者。未知の生命体の出現。」
「全てを総合するに、君達はこの管理タブレットを持って異なる時代からやって来た。違うかな?」
エテーネルキューブからキュルルが姿を現す。
「時間跳躍の概念とは無縁の現地民にしては察しがいいキュ。」
「しらばっくれてもしょうがないキュね。まあ何か問題が起きたらコイツの頭を処理すればいいだけキュル。」
「主人公。コイツに事情を洗いざらい話してやるキュ。」
主人公はプクラスに、突然出現した増殖する魔獣の情報を求めて時間跳躍してきたことを説明した。
「エピステーサに増殖する魔獣が・・それじゃ君達はあの世界の終末の目撃者だと言うのか?」
「そうとも。ここは君達の時代から1000年以上未来にあたる時代。」
「世界の終末と呼ばれし忌まわしき年、アストルティアは増殖する魔獣バイロゴーグの襲撃を受けた。」
「当時メギストリス王国を統治していたラグアス王子は苦渋の決断の末、第二次ゴフェル計画を発動。」
「僕の父は移民宇宙船を製造し、プクランドにいたわずかばかりの人々だけがかろうじて外宇宙へと逃げ延びた。」
「ここは宇宙船アルウェーン。宇宙へ旅立ってから1000年余り、僕はコールドスリープを繰り返し、亡き父に代わりこの船を管理しているのさ。」
「それにしてもこの閉ざされた宇宙船に外界から訪問者が来てくれるなんてね。さぞ町のみんなも喜んだ事だろう。」
「なんだい?おかしな顔をして。アルウェーンの住人は陽気な連中ばかりだ。君達を見たら大はしゃぎしたはずさ。」
主人公は町で出会ったプクリポ達の様子がおかしかったことを説明した。
「奉仕室?町のエネルギーは無限動力炉でまかなえているはず。それにみんな虚ろな表情を?」
「管理コンピュータ・ペコリア!僕が眠っていた間、アルウェーン船内に何が起きたのかを教えてくれ!」
ペコリアがモニターに情報を映し出す。
「無限動力炉が作動していない。故障中ではないようだけど、何かトラブルが?」
「いや、それよりも感情抑制プログラム?幼少期から教育して自由意志を失わせる?それも何世代も・・」
「じゃあ眠りについてから100年以上も経ったって言うのか?ありえない!僕の覚醒は10年毎のはずだ。」
「町のプクリポ達がみな感情を失くし、奉仕室で魔法力と生体エネルギーを吸われてる・・100年以上も・・そんな!」
「この宇宙船で何が起きているんだ・・」
「10年毎に設定された覚醒が100年以上も妨げられていた。それにこのポッドは外部からロックされていて、こんなことが出来るのは僕の代理を務めている複製体だけだけどそれはあり得ない。」
「だってあいつらは優しくて気のいい僕にとって兄弟みたいなものなんだ。町のみんなを苦しめるなんて絶対に・・」
「現在僕の代理をしている複製体が管理棟のどこかにいるはずだ。探して直接話しを聞いてみよう。」
「君はこの部屋を出て東側にある研究室を探してみてくれ。僕はこの下にある動力室へ行ってみるよ。」


東側にある研究室を探すがプクラスの複製体はいない。
管理棟に戻るとプクラスがやってきた。
「動力室には複製体はいなかったよ。その様子では研究室にもあいつはいなかったようだね。」
「僕がコールドスリープしていた間にこの宇宙船で何が起きたと言うんだ・・」
そこに管理タブレットを持ったプクラスの複製体がやって来た。
複製体の顔にはバーコードが刻まれている。
「なぜ目覚めてしまった?」


プクラスが複製体に聞く。
「複製体C141、アルウェーンに一体何が起きてる?10年毎の覚醒はどうして失敗したんだ。」
複製体C141は何も答えない。
「いやそれよりも、まず僕の管理タブレットを返してくれ。」


複製体C141が謎の言葉を発する。
「イア・タア、シンパッ・ケウ・・イア・タア、シンパッ・ケウ・・」
「何一つ失敗などしていないさ。出来損ないの原始種よ。アルウェーンは正しき姿へと進化したのだ。」
「私こそが本物のプクラス。お前の遺伝子を改良し、全てにおいて優れたこのC141こそが永世管理者に相応しい。」
管理タブレットを操作する複製体C141。
「イア・タア、シンパッ・ケウ!さあ管理コンピュータ・ペコリアよ!そこにいる原始種共を捕らえよ!」
ペコリアというピンクのイルカの姿をした管理コンピュータが襲いかかって来たが返り討ちにした。
「物理エラーのため再起動いたしまーす。」
しかしすぐに復活してしまった。
「再起動完了いたしました。直ちに侵入者を宇宙船アルウェーンより排除いたしまーす。」


プクラスは複製体C141にコールドスリープポッドに閉じ込められてしまう。
「出来損ないの原始種よ。今度こそ永遠に眠り続けるがいい。」
複製体C141は管理タブレットを操作してプクラスをコールドスリープさせてしまった。
「イア・タア、シンパッ・ケウ・・イア・タア、シンパッ・ケウ・・」
「イア・タア、シンパッ・ケウ!時は来たれり!」
「原始種どもは皆、我が支配に屈した!創造主よ!今こそ蘇り我らに永遠の生命と祝福を与えたまえ!イア・タア、シンパッ・ケウ!」


足元の床が抜け、主人公は落とし穴に落とされてしまう。
「廃棄物をゴミ処理場へ移送いたしまーす。」


ゴミ処理場に落とされた主人公はごみ処理機に挟まれそうになるが、間一髪の所で機械が停止した。
何者かが機械を停止してくれたようだ。
「フー。何とか助かったキュルね。」
「まだ増殖する魔獣の情報が足りないキュ。さっさと脱出して寝てたほうのプクラスから増殖獣の情報収集キュ。」


ゴミ処理場を出ると自然遺産保護区に出た。
近くにいる複製体C136に話を聞く。
「ここへ来るのは初めてのようだね。この場所は自然遺産保護区。アルウェーンの町の下層にあたるんだ。」
「自然遺産保護区は封鎖されている。町へ通じるエレベーターはあるけれど、ずっと運転停止しているんだ。」
「エレベーターを動かす方法は分からないけど、北へ行くと古い博物館がある。そこになら宇宙船の設計図が保管されているはずだよ。」
「設計図には宇宙船の全施設の構造とメンテナンスのやり方が書いてある。エレベーターの起動方法も載っているはずだ。」
「博物館に配備された警備係ペコリアが助けになるはずだ。」
「それじゃあ気をつけてね。君と話ができて嬉しかったよ。」


博物館に向かい警備係ペコリアと話をする。
「アストルティア博物館へようこそー。機密資料閲覧のご申請と館内インフォメーションはこちらでどうぞ。」
知理の石版が突然光りだした。
「緊急モードを認証しました。扉のロック解除いたしまーす。」
事務室東側の扉の鍵が解除された。
「こちらの扉から事務室に入り、メインコンピュータに管理タブレットをかざしてアクセスして下さーい。」
「ありがとうございましたー。またご利用下さいませー。」


事務室に入り、メインコンピュータに知理の石版をかざした。
「緊急モードを認証しました。アストルティア博物館メインコンピューターを起動。宇宙船アルウェーン設計図を表示します。」
「宇宙船アルウェーン設計図を表示中です。・・エレベーターの運転状況に異常を感知。」
「停止中のエレベーターを運転再開するためシステムの初期化を実行致します。」
「エレベーター運転システム初期化完了。自然遺産保護区、中央地下通路にあるエレベーターへ向かって下さい。」
「エレベーターに緊急操作パネルがあります。パネルを開け非常運転用ボタンを押してエレベーターを運転再開させて下さい。」


中央地下通路にあるエレベーターの前で非常運転用ボタンを押してアルウェーンの町に移動し、管理棟の扉の前で知理の石版をかざす。
しかし何も起こらなかった。
「アルウェーンに市民登録されていない方の管理棟への出入りは禁じられていまーす。」
「コールドスリープ室、研究室、無限動力炉への入室をご希望でしたら市民登録された方とご同行下さーい。」
突然知理の石版が光りだした。
「緊急通信!」
「僕だよ、プクラスだ。万一の事態に備えて思考転送でこのメッセージを君達に残しておいた。」
「この町にある管理コンピュータは全て町の住人の意思に従うように作られている。」
「自由意志を失くしてしまったプクリポ達が自我と感情を取り戻すことが出来れば、管理コンピュータは僕達の味方に戻る。」
「C141からこの町の全権限を掌握できる管理タブレットを取り返すこともそれで可能になるはずだ。」
「町のみんなも僕や君と同じように本来は喜怒哀楽を持っている。強く感情を揺さぶることが出来ればきっと・・」
「主人公、この宇宙船のプクリポ達に感情を取り戻す方法を見つけてくれ!」
「たとえ僕が殺されてしまっても、宇宙船アルウェーンが秩序を取り戻すことが出来るように。」


キュルルが言う。
「プクラスの作戦は悪くないキュル。とは言えこの時代のプクリポ共や主人公では役に立ちそうにないキュ。」
「プクリポ達の感情を揺さぶりたいなら、ここはあえて現代に戻って方法を考えてみてはどうキュルか?」


主人公は現代に戻ってエテーネ村のシンイに会いに行った。
「おや?ずいぶん浮かない顔ですが、一体何があったのですか?」
主人公はシンイに未来のプクリポ達の感情を取り戻す方法を探していると説明した。
「なるほど。大変な事情のようですね。僕も何か方法がないか考えてみますのでしばらく時間を下さい。」
「先に黒衣の剣士パドレの件から片付けるとしましょう。メレアーデさんとファラスさんをお呼びしますね。」
メレアーデとファラスがやって来た。
「主人公さん、ファラスさん。心を操られた者を正気に戻す方法、ようやく見つかりました。」
「竜族に古来より伝わる胡蝶の秘術。かつてクロウズがアンルシア姫に行った他者の記憶に入る術の究極奥義です。」
「古い文献の殆どは散逸してしまい入手が困難でしたが、もう一人の私が助けてくれました。」
「竜族の隠れ里に古い書物が沢山保管されていたのです。古文書の一つに胡蝶の秘術について記してありました。」
「竜族に伝わる秘術にて胡蝶の護符を作り、心操られたる者へその者と親しき存在が護符を捧げよ。」
「竜族の隠れ里より取り寄せた古文書にはそう記されていました。」


メレアーデが言う。
「パドレ叔父様に近しい存在と言うと、私よりもファラスの方が相応しそうね。」
「それとも主人公の方がいいのかしら?」


ファラスが驚く。
「メレアーデ様。それはどういう意味なのですか?」


「私ね、しばらく前から考えていたの。」
「もしかしてどこかの時代へ時間跳躍したマローネ叔母様の赤ちゃんって主人公なんじゃないのかなって。」
「主人公、王家の者以外にはまだ発表されてなかったけどファラスが探している赤ちゃんの名前、あなたと同じなのよ。」


ファラスが言う。
「それは確かにマローネ様もお子をあやす時、主人公という名で呼んでおられましたが・・」
「自分が探すお子は未だ乳飲み子。主人公殿とは年齢が違いすぎます。ただの偶然では?」


キュルルがエテーネルキューブから現れた。
「5000年も時間跳躍したなら10年や20年は誤差の範囲キュ。」
「それに古代エテーネ王国の時代から現代まで一気に時間跳躍するには某大な時渡りのチカラが必要になるキュ。」
「僕が知る限り、そんなとてつもない時渡りのチカラを持つ人間はここにいる主人公だけキュル。」


メレアーデが言う。
「王族である私だってこの時代から古代エテーネ王国へ時間跳躍したらすっかり参ってしまったわ。」
「なのに主人公は様々な時代へ時間跳躍してもケロっとしてる。それにその名前だって。偶然とは思えない。」


「主人公殿があの幼き赤子だと・・そうであればどんなに救われるか。」
「ですが今の自分には確信が持てませぬ。」


シンイが言う。
「主人公はこのエテーネの村で温かい家族とともに育ちました。お探しの方と同一人物とは思えませんが。」
「ともあれまずは胡蝶の護符を作ることにご協力下さい。」
「主人公さん、ファラスさん、胡蝶の護符を作るためには材料である胡蝶の花が必要になります。」
「この島の名もなき草原から北に抜けた谷間の広場で胡蝶の花を手に入れて私の所まで持ってきて下さい。」


主人公とファラスは谷間の広場に向かった。
「主人公殿、そこにあるのはもしや・・」
青いアゲハ蝶のような花が咲いている。
「やはりこれが胡蝶の花。この花さえあれば我が主は・・」
「心を操られた姿しか知らぬそなたには信じられんかも知れんが、我が主パドレ様はまこと心正しきお方。」
「時見の箱に操られる前のあの御方はどことなくそなたと似た、聡明で優しい瞳をされていたのだ。」
「あれは・・そう。パドレ様がちょうどそなたと同じ年頃だった時のことだ。」
「代々の王家に使える従者の家系に生まれついた自分は幼少期よりパドレ様にお使えし、そのまま一生を終えるのだと思っていた。」
「ところがある日、パドレ様はこのファラスの従者の任を解くとおっしゃられた。」
「パドレ様には従者は不要なのだと言ってな。」
「代々王家に仕え、主のためなら命も捨てるという従者という身分は間違っている。等しく同じ人間なのだから自ら望むままに生きるべきだとおっしゃられた。」
「パドレ様の心意気に惚れた自分は、それからは個人として仕えることにしたのだ。」
「パドレ様も気が変わるまで好きにしろとおっしゃってくれた。」
「もしそなたが5000年の時を越え古代エテーネ王国よりこの時代に辿り着き成長したあの赤子だと言うなら、マローネ様もパドレ様もどんなにか喜ばれる事だろう。」
「だがもしそうだとすれば、そなたとパドレ様が・・実の親子同士が殺し合うなど断じてあってはならぬことだ。」
「すまぬ・・お喋りが過ぎたな。この胡蝶の花を持ってエテーネの村のシンイ殿の元へ帰ろう。」


エテーネの村に戻り、シンイに胡蝶の花を渡した。
「これが胡蝶の花なのですね。私も実物を見るのは初めてですが、なんと美しい。」
「では早速胡蝶の護符を作ってみましょう。」


メレアーデが言う。
「これでパドレ叔父様が本当に元に戻るといいんだけど。」
「そう言えば主人公。あなた、また新たな時代へ時渡りしたのよね。そこではどんな事があったの?」
「もしも何か困っているなら私に手伝えることはないかしら。良かったら話してみて。」
主人公はメレアーデ達に未来世界の感情を失くしたプクリポ達に心を取り戻させる必要があることを説明した。
「未来の世界がそんな事に?しかも陽気なプクリポ達が感情を失くしてしまったなんて。」
「うーん。感情を取り戻させるか・・それだったら今作ってもらっている胡蝶の護符が役に立たないかしら。」


シンイが言う。
「黒衣の剣士は心を操る何らかの術をかけられていると推測できますが、お話を聞くに未来のプクリポは長年そう育てられてきた。」
「もし胡蝶の護符を未来のプクリポ達に使ったとしても、恐らく効果はないでしょう。」


そこに賢者ホーローがやって来た。
「シンイ!メレアーデちゃん!おお、やはり主人公もエテーネ村におったのか!」
「ラグアス王子から主人公がこの時代に戻ってきたと聞いてな。メギストリスから追いかけて来たんじゃ。」
「古代で例の予言者には会えたのか?魔獣についてはどうじゃ?このホーローに話してみい。」
主人公は今までの出来事を説明した。
「主人公が時渡りしたのがまさか未来だったとは。しかもあの陽気なプクリポ達がそんな事にのう。」
「ほっほっほ!これしきでお手上げとは情けないぞ。シンイよ。」
「オホン!全ての生き物には本能というものがある。」
「生まれたばかりの雛は飛ぶことを知らぬがやがて大空へと羽ばたいていく。か弱く小さき子猫もいずれネズミを狩る。」
「そして笑いを愛する陽気な種族プクリポの本能、それはお笑いじゃ!」
「ちょうどわしの秘蔵の記憶の結晶がある。これに現代のプクリポ達のお笑いや楽しい芸を記録して見せてみれば、未来のプクリポ達も本能に目覚めて感情を取り戻すかも知れんぞ。」
主人公は賢者ホーローから記憶の結晶を受け取った。
「ちょうどプクランドにわしが昔からひいきにしているパノンという芸人がおる。そやつの芸を記憶の結晶に記録するのじゃ!」
「やつは宿無しのパノンと呼ばれておってな。舞台に上がる時以外は別の名前を使っておるからそれらしい者を探すといい。」
「今は恐らくオルフェア地方東のピィピのお宿辺りにいるはずじゃ。」


主人公はピィピのお宿でパノンを探し出し、パノンの芸を記憶の結晶に記録した。
その記憶の結晶を持ってアルウェーンの町に行き、プクリポ達に再生して見せる。
「見たことのない市民・・誰なんだ。」
「高くジャンプして・・回って・・」
「あの市民・・失敗したのに処罰されない。」
「笑っている・・笑い・・笑いという言葉・・何だか懐かしい・・」
「あ・・れ?何だ・・この気持ち・・」
「胸が何だかあたたかくて・・身体がソワソワして・・」
「楽しい!!」
アルウェーンのプクリポ達は自我を取り戻した。
「あれ・・君ってアルウェーンの市民ではないようだね。一体どこから来たの?」
「ねえねえ、あの映像は君のなの?良かったら僕達に頂戴!ね!」
未来のプクリポ達は強引に主人公の手から記憶の結晶を奪ってしまった。
「ねえねえ、君ってばこの町にどうやって来たの?」
主人公は未来のプクリポ達に本物のプクラスが複製体に捕まったこと、みんなが感情を奪われていたことを説明した。
「僕達にずっと命令していたあのプクラス様は本物じゃなかったの?」
「ププッ!だから変な言葉を言ってたんだ。イヤー!イター!シンパッケウ!あはは!」
「君は全体の幸福を満たす映像を見せてくれた恩人だもん。その話を信じるよ。ね、みんな!」
「全体の幸福のために本物のプクラス様を助けてあげなきゃね。もちろん協力しちゃうとも!」
「管理コンピュータ・ペコリア!全てのロックされている扉を開いて!」


管理コンピュータ・ペコリアが言う。
「全ての扉、ロック解除致しまーす。」
「ただし現在の永世管理者、複製体C141が管理タブレットによってロックした扉は暗号化されているため開きませーん。」


「悪い複製体め!主人公さんを管理棟に近づけないつもりだな!でも他の道から行けたはずだよ。」
「自然遺産保護区の立入禁止区画が管理棟に通じてるって聞いたことがあるよ。ペコリアに頼んで通してもらおう!」
「さあみんな、出発だ!本物のプクラス様を助けてさっきの楽しい映像をお見せしてやるぜい!」


主人公はアルウェーンのプクリポ達と一緒に自然遺産保護区の立入禁止区画から管理塔に向かった。
管理塔にある複数のコールドスリープポッドの中にはプクラスと3体の複製体が眠りについていた。
「ホントだ!プクラス様と同じ顔だよ!この部屋にはいっぱいいるね。あはははは。」
「でもどれが本物のプクラス様なんだろう。間違えて複製体を起こしちゃったら嫌だよ。」
「管理コンピュータ・ペコリア!本物のプクラス様を起こして!」


管理コンピュータ・ペコリアが言う。
「現在このポッドは特別管理命令によってロックされていまーす。」
「管理タブレットからの許可がなければ解凍することは出来ませーん。」


知理の石版が突然光りだし、本物のプクラスを目覚めさせた。
「・・出してくれ、C141!」
「あ!君達はアルウェーンの町の・・それに主人公!無事だったのか!」
アルウェーンのプクリポ達が喜んでいる。
「ありがとう、主人公。君は本当に時間を超えて、この船のみんなを救ってくれたんだね。」
「僕やここにいるみんなは助かったけど、未だに宇宙船アルウェーンの全権限を持つ管理タブレットはC141の手にある。」
「アイツに気づかれる前にペコリア達を利用して僕のタブレットを取り戻さなきゃ。」
「管理コンピュータ・ペコリア!複製体C141の居場所を教えてくれ!」
管理コンピュータ・ペコリアがモニターに複製体C141の居場所を映し出す。
「なるほど、やはりそうか。僕の複製体C141がいるのはこの真下にある無限動力炉だ。」
「無限動力炉に停止命令を出してみんなに奉仕室でエネルギーを供給しろと命令していたのはアイツのはずだ。」
「今更あの場所に何の用が・・理由は分からないけど何だか胸騒ぎがする。とにかく行ってみよう!」


無限動力炉に行くと複製体C141がいた。
「イア・タア、シンパッ・ケウ・・イア・タア、シンパッ・ケウ・・」
「これは創造主パルミオが常に唱えていたという神言だ。」
「創造主パルミオは初めに世界の光たる無限動力炉を創られた。」
「次に世界そのものであるアルウェーンを。そして最後にこの新世界に住む者として我ら複製体達を創られたのだ。」
「愚かなる原始種共よ。貴様らは創造主パルミオに創られたるこのアルウェーンの主には相応しくない。」


プクラスが言う。
「創造主?僕の父さんを神だと思い込んでいるのか。」
「もうやめろ!本来のお前はアルウェーン住民を傷つけるような奴じゃないはずだろう。」


「これまではそうだったかも知れないな。」
「だが私は新たなる種として生まれ変わる!イア・タア、シンパッ・ケウ!」
複製体C141は管理タブレットを操作して大型ロボットに変身した。
「私はC141にあらず!我が名はパルミオ2世!」
「無限動力炉より摂取せし魔獣の細胞にて、私は無限のチカラを手に入れた!」
「このチカラを得た代償に複製体としての肉体は崩壊するだろう。だがそれで構わぬ。」
「もはや我等は誰の命令にも従わぬ!己の意思で己の為すべきことを決め、生死も全て己で選ぶのだ!」
「イア・タア、シンパッ・ケウ!」
パルミオ2世は3体に増殖した。


プクラスが言う。
「無限動力炉から採取した細胞・・あいつもしかして!」
「主人公!君の持っている管理タブレットを僕に貸してくれ!」
主人公は知理の石版をプクラスに渡した。
「増殖機能・・動力炉と同じなら・・よし!自己増殖機能停止命令!」
プクラスは知理の石版を操り、複製体C141の増殖機能を停止する信号を発信した。
「命令信号の出力が弱すぎる。そうか・・無限動力炉が停止しているから船全体のエネルギーが足りないんだ。」
「ならば・・無限動力炉活動再開!」


複製体C141の増殖機能が停止され、1体のパルミオ2世に戻った。
「忌まわしき原始種よ!滅びし世界の残滓よ!この宇宙船を貴様らの墓標にしてくれる!イア・タア、シンパッ・ケウ!」


主人公は襲いかかってくるパルミオ2世を倒した。
「創造主パルミオ・・蘇りて・・我等創られし者たち・・永遠の生命を・・喜びの園へ・・導きたまえ・・」
パルミオ2世は消滅した。


プクラスが落ちていた管理タブレットを拾い上げる。
「イア・タア、シンパッ・ケウ。父さんの口癖『やったぁ、新発見だ』を神の言葉だとあいつは信じていたのか。」
「なんて悲しい生き物だったんだ。僕達はアルウェーンで生き延びるためにあいつら複製体達をずっと犠牲に・・」
「ありがとう、主人公。君こそがアルウェーンの、アストルティアの救世主だ。」
「そうだ。君の管理タブレットを返しておかなきゃね。本当に助かったよ。」
主人公はプクラスから知理の石版を返してもらった。
「僕達のかけがえのない仲間である君をアルウェーンの名誉市民として迎えたい。管理コンピュータにも登録しておくよ。」
「それからもう一つ。君が持っているその管理タブレットに僕と同等の管理権限を与えよう。」
プクラスは知理の石版に宇宙船アルウェーンの全権限を与えた。
「これでアルウェーン内の移動は自由だ。狭い船だけど、どうかくつろいでいってくれ。」
「僕の父パルミオは、かつて自らが発見した増殖獣バイロゴーグの細胞を元に無限動力炉を発案した。」
「僕も幼い頃、滅びかけたアストルティアで魔獣を見たけどC141と同じように自分を増殖させていたんだ。」
「父は魔獣の細胞をひそかに採取、培養して無限動力炉を作り上げ、安全装置として管理タブレットに強制停止命令を組み込んだ。」
「だから一か八か無限動力炉の増殖を停止する操作信号をアイツに向けて送ってみたんだ。そしたら上手くいったっていうわけさ。」
「主人公、君は増殖獣バイロゴーグに対抗する方法を探すためにこの船へ来たんだろう?だとしたら・・」


そこに黒衣の剣士パドレが現れ、無限動力炉からエネルギーを奪ってしまった。
「増殖獣バイロゴーグより造られし無限動力炉のチカラ・・貰い受ける。」


時見の箱キュロノスも現れた。
「これで必要なものは全て揃った。」
「やはり我が前に立ちはだかるか。時の異分子よ。」
「時の狭間にて我に歯向かいし罪を永遠に悔み続けるがよい。」
「あるいは・・」
時見の箱キュロノスに操られた黒衣の剣士パドレが主人公を時の狭間に引き込もうとする。
その時キュルルがエテーネルキューブから現れた。
「まったく主人公ときたら間抜けな奴キュルね。しょうがないから助けてやるキュ!」
キュルルが黒衣の剣士パドレの術を跳ね返した。
しかしその衝撃でプクラスが管理タブレットを持ったまま時の狭間に吸い込まれてしまった。


時見の箱キュロノスが驚く。
「跳ね返しただと?そなた・・まさか・・」
「時の異分子よ。お前には時の狭間へ飛ばすよりも有益な使い道がありそうだな。」
「良かろう。此度はお前を見逃してやろう。」
時見の箱キュロノスと黒衣の剣士パドレは姿を消した。


「みっともない負け惜しみキュ。とはいえ、ちょっとだけ疲れたキュね。」
「心配はいらないキュ。少し休めば高貴なる時の妖精・・すぐ元気に・・」
キュルルの身体が徐々に透明になり、その場から消えてしまった。


アルウェーンのプクリポ達が困惑する。
「宇宙船アルウェーンのエネルギー源、無限動力炉も壊れちゃって・・僕達これからどうしたら・・」
「そうだ、奉仕室だ!これまでも無限動力炉は動いていなかった。」
「奉仕室で僕達のエネルギーを供給すればアルウェーンは持ちこたえられる!」
アルウェーンのプクリポ達は奉仕室に向かって走っていった。


主人公も奉仕室に向かう。
「やあ、主人公さん。来てくれたんだね。」
「今みんなでエネルギーを供給したからこの船は大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
「でも・・プクラス様は・・」
「管理コンピュータ・ペコリア!プクラス様を探して!」


「永世管理者プクラスの生体反応を探しまーす。」
「・・宇宙船アルウェーン内には永世管理者プクラスは存在しませーん。」
「コールドスリープ中のプクラス複製体C142、C143、C144の解凍でしたら可能でーす。」


落ち込むアルウェーンのプクリポ達。
「ううん、目覚めさせちゃ駄目だ。せっかく全体の幸福を取り戻したのに、あの頃には戻りたくないもん。」
「僕達は、僕達だけで何とかやっていかなくちゃ。」
「プクラス様にもあの楽しい映像を見せてあげたかったのに。」
大笑いするアルウェーンのプクリポ達。
「あはははは!あの映像を思い出したら笑えて来ちゃった!」
「そうだね!楽しく笑って全体の幸福に奉仕しよう!笑ってれば元気が湧いてくるもん!」
「管理コンピュータ・ペコリア!無限動力炉なしでもやっていけるかな?」


「イレギュラーな事態が起きなければ奉仕室からのエネルギー供給だけでもアルウェーンの運営は可能でーす。」


アルウェーンのプクリポ達が言う。
「幸福にいこうよ!大丈夫、無限動力炉は直せるよ!」
「悪い複製体を探してる時に管理棟の研究室に入ったんだ。そしたら無限動力炉の設計図があったよ!」
「どうやったら直せるかはまだ分からないけど、設計図があるなら何度も試せばいつかは絶対出来るよ。」
「そうだね。プクラス様みたいには出来ないかも知れないけど、みんなで笑いながら頑張ればいつかは。」
「そうしてこの宇宙船アルウェーンが安全で楽しい場所になったら町のみんなにも楽しい映像を見せてあげようよ。」
「みんなにも笑うことや楽しむことを思い出させて、いろんな事があってすっごく大変だったよって笑い話にしよう。」
「うん!みんなで笑おうね!」
「主人公さんは遠い世界から大事な旅の途中にこの宇宙船に来たんだってプクラス様が言ってたよ。」
「僕達はもう大丈夫だから主人公さんは自分の旅に戻って。でもまた遊びに来てよね!」
「それまでに頑張ってこの宇宙船を安全で楽しい所にするから楽しみにしててね!」
「じゃあね、主人公さん!絶対また会おうね!」


主人公はエテーネルキューブで現代に戻った。
キュルルが主人公の前に落ちてきた。
「・・時見の箱はどこへ行ったキュ!」
辺りを見回したキュルルは落ち着きを取り戻した。
「・・どうやら現代に戻ってきたようキュルね。」
キュルルが突然驚いた顔をする。
「大変キュ!いつの間にかこの時間軸の先にある未来に大きなゆらぎが発生しているキュ!」
知理の石版が突然光りだした。
「遠い未来に生きる主人公へ」
「久しぶりだね、主人公。僕だよ。プクラスだ。」
「僕はどうやら爆発のショックで遥か古代へと飛ばされてしまったようだ。」
「はっきりした年代は分からないが、植物相や地形からここは君の時代から6000年ほど過去ではないかと推測される。」
「まさか過去の世界に来られるとはね。君のおかげで刺激的な体験が出来たよ。」
「1000年以上夢見てきた遙かなる故郷アストルティアの大地に再び降り立つことが出来たんだ。この運命も悪くないさ。」
「恐らく僕が自分のいた時代に戻ることは出来ないだろう。」
「だから少しでもより良い未来が訪れるように、この時代の人々のために自分の知識を役立てていくつもりだ。」
「いつか僕の管理タブレットが知理の石版と名を変え君の手に渡って世界が救われると信じて。」
「あの時言いかけた通り、無限動力炉と増殖獣バイロゴーグは同じ特性を持っている可能性が高い。」
「魔獣の増殖能力を知理の石版で停止するんだ。」
「そうすれば・・にも・・勝利・・・」


キュルルが言う。
「たった今未来が変わったキュル!」
「増殖獣バイロゴーグの増殖する能力は知理の石版で止められるキュ!」
「これならアイツを倒せるキュル!」
「主人公!早速増殖獣との戦いに向かうキュ・・」


そこへファラスと賢者ホーローがやって来た。
「主人公殿、会えてよかった!」
「ようやく胡蝶の護符が完成したため自分が持ってまいりました!」
主人公はファラスから胡蝶の護符を受け取った。


賢者ホーローが言う。
「してどうじゃったのだ、主人公。未来のプクリポ達はパノンの芸で救われたのか?」
主人公はアルウェーンでの出来事を報告した。
「そうか。未来のプクリポ達は感情を取り戻したものの、またもや黒衣の剣士パドレが。」


ファラスが言う。
「これまで通りであれば我が主は魔獣討伐の後、そのチカラを繭に吸収させるために現れるはずです。」
「もはや一刻たりとも無駄には出来ません。この時代を脅かす魔獣を倒し、胡蝶の護符で我が主を元に戻すのです!」
「このファラスも助太刀致します。急いで増殖する魔獣を倒しましょう!」


主人公はファラス、賢者ホーローと共にエピステーサの底なし穴に向かった。
終焉の繭の周りにいる増殖獣バイロゴーグに近づくと、知理の石版が光りだした。
「管理者モード!無限動力炉は現在稼働中です。管理者権限にて無限動力炉を停止させる場合は決定ボタンを押して下さい。」
主人公は決定ボタンを押した。
すると知理の石版から無限動力炉停止信号が発信され、複数体いた増殖獣バイロゴーグが1体になった。
「お見事です、主人公殿!」
「さあ忌まわしき魔獣よ。我等が相手だ!かかってこい!」
ファラスと主人公は協力して増殖獣バイロゴーグを倒した。


増殖獣バイロゴーグは動かなくなったが、知理の石版が壊れて無くなってしまう。
そこに時見の箱キュロノスと黒衣の剣士パドレが現れた。
「我が眷属ではもはや相手にはならぬか。素晴らしき戦闘能力よ。」
「主人公よ。この時間軸に存在する全ての生命体の中でお前が最も我が目的に相応しき個体。」
時見の箱キュロノスの緊縛の術により身体の自由を奪われてしまう主人公。
「この使い古しに代わってお前を新たなる傀儡としてやろう。」
「この欠陥品の人としての名前はパドレだったかな。」
「パドレよ。これが最後の仕事だ。そこの代用品が我が支配を受け容れるまで痛みと苦痛を与えてやるが良い。」
パドレが剣を抜き動けない主人公に襲いかかってくるが、ファラスが助太刀に入る。
「お止め下さい!パドレ様!」
お互いに一歩も引かない剣技の応戦が続く。
「下等なる生命体め。貴様に用はない。」
時見の箱キュロノスが術を放ちファラスを時の狭間に引きずり込もうとするが、賢者ホーローが光の結界でファラスを守る。
「お前さんより知恵は回るようじゃな!時見の箱キュロノスよ!」


黒衣の剣士パドレが主人公に剣を構える。
「時の異分子よ、覚悟!」
それを見たファラスは剣を投げ捨て主人公の前に入り、パドレの剣を身体で受け止めた。
「いけません、パドレ様。主人公殿はあなたの・・がは!」


賢者ホーローが主人公にかかっている緊縛の術を解く。
動けるようになった主人公はすぐに胡蝶の護符を使った。
ファラスとパドレの周りをアゲハ蝶が舞い、2人の身体は光の柱に包まれた。
「これが胡蝶の術か。主人公、あの光の柱に入るんじゃ!パドレを時見の箱の支配から解放してやれ!」


主人公は光の柱に触れ、パドレの記憶の中に入った。
パドレア邸の居室でファラスとパドレが話をしている。
「ではリンジャハル行きを承諾なされたと、そうおっしゃるのですか。パドレ様。」


パドレが答える。
「流行病により、かの海洋都市リンジャハルは甚大なる被害を受けた。同盟国として放置するわけにはいくまい。」
「王子である俺がリンジャハルまで出向けば、両国の友好は一層確かなものとなろう。ドミネウス兄上もよく考えたものだ。」
「リンジャハルを襲った流行病の被害がそれほど恐るべきものだったと言うだけさ。これも王家に連なる者の役目だよ。」
「父上のお側には第一王子である兄上がついているのだ。何も案ずることはあるまい。」


ファラスは納得しない。
「ですが国王陛下がご病床にあるこの時期にエテーネ王宮を離れるとは・・」
「わざわざ実の弟を遠方へ追いやるのはパドレ様が次期国王に指名されるのを防ぐためでは?」


「ドミネウス兄上は国王代理という重責により些か気難しくなっているものの心根は優しい方だ。他意などあるはずがない。」
「お前とて長年父上の補佐を務められてきた兄上の手腕はよく知っておろう。そもそも長子が王位を継ぐのは当然のこと。」
「それに海洋都市リンジャハルの長は懐かしき我が学友、召喚士リンジャーラだ。」
「この任務は軍務続きで疲れていたこの俺に、しばらく友と旧交を温めてこいという兄上なりの優しさなのだ。」
「まあいい。先程の発言は忘れるとしよう。だが二度とドミネウス兄上のことを悪く言うのではないぞ。ファラスよ。」


パドレア邸2階でパドレと赤子を抱えたマローネが話をしている。
「海洋都市リンジャハルへのご出発は今日からでしたね。」
「あの恐ろしい疫病から数ヶ月・・かの地の復興はめざましいものだと聞きます。リンジャーラ様にも宜しくお伝え下さい。」


パドレが言う。
「うむ、リンジャーラの招待状には、そなたもぜひ復興を祝う宴に連れてきてくれと書いてあったのだが。」
「主人公が生まれたばかりだからな。まだしばらく遠出は出来まい。落ち着いたら親子三人で訪れるとしよう。」
「はっはっは!元気な主人公だ。主人公!楽しみにしているといい!」


「ご出立に水を差すようですが海洋都市リンジャハルの良くない噂を耳にしたのです。」
「このところ、かの国の民が相次いで失踪しているとか。あなたにもしものことがあったら・・」


パドレが笑いながら言う。
「もしその噂が真実であるなら、我が友リンジャーラとこの俺で見事解決してやらねばならないな。」
「事件が片付いた暁には土産に海洋都市リンジャハル名物の新鮮なカニをたっぷり持ち帰ってやろう。」


「ご無事に帰って来て下さることが一番のお土産ですよ。ねえ、主人公。」


パドレがマローネに時の指針書を渡す。
「マローネ。これを持っていてくれ。俺の時の指針書だ。」
「この時の指針書があれば俺がリンジャハルでどう過ごしているか分かって安心だろう?」


マローネも自分の時の指針書を出す。
「ならば私の時の指針書もお持ち下さい。主人公と私がどれほどあなたを待ちわびているか分かるように。」


「・・では行ってくる。」


時の狭間で召喚士リンジャーラと戦っているパドレの記憶が蘇る。
「邪法に手を染め数々の生命を奪い魔人と成り果ててまで望んだのは・・パドレ、君を超えること。」
「最初から分かっていたよ。そんなことは絶対に無理なんだって。だがそれでも私は・・」
倒れ込む召喚士リンジャーラをパドレが抱きかかえる。
「はは・・やっぱり君には敵わないな・・」


「俺が勝てたのはほんの紙一重の差さ。お前だけが俺の好敵手だ。」
「もう一度やったら結果は変わっていた。だろ?」


「そうかもね・・次こそ負けやしないよ・・パドレ・・君と最後に全力で戦うことが出来て良かった・・ありがとう・・」
召喚士リンジャーラは息絶え消滅し、時の狭間にパドレだけが残された。


「もはやすべての力を使い果たしたか。ここから脱出は出来そうにないな。」
「だがアイツの魂を救えたのならそれで満足だ。」
持っていた記憶の結晶に思いを込めるパドレ。
「・・これでいい。いつかこの記憶の結晶がマローネと主人公に届くように。」
「マローネ、約束を守れずにすまん。どうか主人公を良い子に育ててくれ。」
「ファラスよ。俺はお前の信に足る主であったか?」
パドレは記憶の結晶だけを時間跳躍させた。
「兄上・・エテーネ王国をどうか良き未来へとお導き下さい・・」


何者かの声がする。
「いいや、その願いは叶わない。」
「ドミネウスはお前の妻子を殺し、エテーネ王国を恐怖をもって支配するだろう。」
パドレが持つマローネの時の指針書が開かれる。
「これはお前の妻マローネの時の指針書。何が書かれているか見えるだろう?」
「エテーネ王国第二王子パドレの妃マローネよ。そなたに与える指針はない。」
「そなたと愛し子主人公はドミネウスが生み出した異形の魔物に襲撃され息絶えるであろう・・とな。」


パドレが言う。
「まやかしだ!時の指針書が我が妻にそのような未来を告げるはずがない!」


「ならば我がチカラを貸してやる。時見によって自分の目で確かめてみるがいい。」
「お前の兄が差し向けた魔獣が幼き我が子と愛しき妻を殺し、エテーネ王国が暗黒に包まれる様を。」


時見の箱が姿を現した。
「これは・・何なのだ?」
「そうだ。かつて父上と共に時見の神殿で見たことがある。」


「我が名はキュロノス。」
「正しき時の流れを守るためこの世界に舞い降りし者。」
「ドミネウスはお前への憎しみから時を歪め、エテーネ王国を滅ぼす。」
「エテーネ王国だけではない。時の歪みは世界を巡りながら崩壊の連鎖を巻き起こし、やがて全ての未来が闇に閉ざされる。」
「お前の時渡りのチカラがあればアストルティアの未来を救えるのだ。」
「パドレよ。我が手を取るが良い。」
パドレは時見の箱キュロノスに支配されてしまった。
「さあ行こうではないか。即位せしドミネウスが何を為すか、その目で確かめるといい。」
「我が望む正しき時の流れにはお前のチカラが必要なのだ。」


「主人公・・マローネ・・お前たちだけは幸せになって欲しいと、そう願っていたのに・・」
「おのれドミネウスよ・・よくも愛しき妻子の命を・・」
「このままでは時の流れは正しき未来より外れてしまう。故に我が介入せねばならぬ・・」


主人公はパドレの記憶の深層に辿り着いた。
そこに時見の箱キュロノスが現れる。
「この者を解き放たせはせぬぞ。」
「アストルティアを滅びから救うため、時の異分子はことごとく処分してくれる!」


主人公は襲いかかってくる時見の箱キュロノスを倒し、無事パドレの記憶から生還した。
パドレが正気を取り戻す。
「・・ここは?」
「俺は今まで何ということを・・」
深傷を負ったファラスが言う。
「良かった、我が主よ・・正気に戻られたのですね・・」
倒れ込むファラスをパドレが抱きかかえる。
「しっかりしろ!ファラス!」
「俺は・・まさかお前を・・」


「よろしいのですよ、パドレ様。この程度では返しきれぬ程のご恩を俺はこれまで・・」
「最後、あなたの役に立てて・・良かった・・」
ファラスはそう言うと息絶えた。


時見の箱キュロノスが言う。
「まさか我が支配から逃れようとは。さすがはエテーネ王族の血といったところか。」


「おのれキュロノス!貴様だけは許さぬぞ!」
パドレが剣を構えると、そこにマローネが現れた。
「主人公を新たなる傀儡にと考えていたが、なかなか手強いのでな。」
「我が目的を果たすまでの間はこの代用品で我慢するとしよう。なあ、パドレよ。」
時見の箱キュロノスとマローネは終焉の繭と共に姿を消してしまった。


パドレが言う。
「我が従者ファラスと共に時見の箱の支配から解き放ってくれたこと、感謝する。」
「貴様の行き先は分かっているぞ!キュロノス!」
「俺は・・なんとしてでも我妻マローネを時獄の迷宮から助け出さねばならんのだ!」
パドレは時渡りをして何処かへ行ってしまった。


賢者ホーローが言う。
「行ってしまったか。あの男、無事に目指す場所へ辿り着けると良いのじゃがな。」


主人公は賢者ホーローと共にメギストリスに戻り、ラグアス王子に報告した。
「そうでしたか。ファラスさんは命がけで時見の箱からパドレさんを解き放ったのですね。」
メレアーデも来ていた。
「クオードに続いてファラスまで・・」
「賢者ホーロー様。パドレ叔父様は無事なんですよね。一体どこへ消えてしまったの?」


「あやつは時見の箱の新たな傀儡となったマローネという御婦人を追いかけて時獄の迷宮とやらへ時渡りしたようじゃ。」
「じゃがパドレは見たところずいぶん衰弱しておった。無事に辿り着けたかどうか・・」


メレアーデが言う。
「そんな!マローネ叔母様まであの時見の箱に?どうしてこんな酷いことに・・」


ラグアス王子が言う。
「犠牲は大きかったもののエピステーサの底なし穴から繭と魔獣は消え、滅びの驚異はひとまず遠ざかりました。」
「主人公さん、僕の予言通りあなたとプクラス、知理の石版は現代のアストルティアを救ってくれた。」
「未来の世界を救うことが出来なかったのはひとえに僕の予知が未熟だったせいです。」


賢者ホーローが言う。
「わしは叡智の冠の皆にことの次第を報告せねばならん。名残惜しいがここらで失礼しよう。」
「メレアーデちゃんはどうするのじゃ?」


「私はエテーネの村に帰ります。これまでのことやこれからのことをあの場所でしばらく考えてみたいの。」
「主人公、また会いましょう。約束よ。」


一人になったラグアス王子に新たな予知がおりてくる。
「・・感じる。新たな未来の姿を・・これは・・」
「そんな馬鹿な!主人公さんや僕達がどう足掻こうと・・アストルティアは滅びるのか・・」


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