ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード32 いばらの巫女と滅びの神

突然勇者姫アンルシアから手紙をもらった主人公。
プクランド大陸のキラキラ大風車塔に来てくれというので向かうと、熱気球の前にアンルシアがいた。
「急なお誘いだったのに来てくれてありがとう。うれしいわ。」
「私、気球に乗るのが夢だったのよ。」
「だから期間限定で気球に乗れるって聞いて思わず予約しちゃったの。」
「それと前からあなたとのんびり過ごしてみたかったから。」
「一緒にどうかなと思って。」
「それじゃ、さっそく乗りましょう。」
主人公とアンルシアは気球に乗り込んだ。
「わー、すごい。」
「ほら見て、大風車塔がもうあんなに遠くに。」
「ねえ、思えば私達一緒にたくさんの冒険をしてきたわよね。」
「いろいろと辛いこともあったけれど、あなたがいてくれたからいつも乗り越えることができたのよ。」
「私、気づいたらあなたのことばかり考えているわ。」
「ねえ、あなたのことは勇者と盟友の関係以上に特別な人だと思っているの。」
「あなたにとって私との関係は勇者と盟友だけなのかな。」
「それとも特別な人なのかな。」
特別な人だと答える主人公。
「そう、そうなのね。なんだか照れちゃうわね。」
「まさかあなたも同じ気持ちでいてくれたなんて嬉しいわ。」
「なーんちゃって。」
アンルシアが笑い出す。
「あはは。そんなワケないでしょ。」
「こんな冗談に本気になっちゃうなんてとんだマヌケね。」
「お遊びの時間はおしまい。」
「はい、さようなら。」
偽者のアンルシアは主人公を蹴飛ばし、気球から落とした。
空中でもがいていると、本物のアンルシアがファルシオンに乗って助けにきた。
「ふう、危なかった。」
「間に合ってよかったわ。」
偽者のアンルシアと対峙する本物のアンルシア。
「私の姿に化ける者よ。」
「正体を見せなさい!」


「あはは。本物が来ちゃったなら仕方ないな。」
偽者のアンルシアは黒いケキちゃん人形に姿を変えた。
旅芸人ピュージュが空を飛んでやって来る。
「やあやあ!盟友くん、久しぶり。」
「旅芸人ピュージュのドッキリショーはお楽しみいただけたかな?」


勇者姫アンルシアが言う。
「あなたがガートラントで陰謀を仕掛けたというピュージュ。」


「あはは。勇者姫ははじめましてだね。」
「知ってもらえてるなんて光栄だな。」
「ここで駆けつけてくるなんてさすが。」
「でも残念ながらもうキミ達に用はないんだよな。」
ピュージュが二人に分裂した。
片方のピュージュの手には時元神キュロノスが消滅したときに残されていた「戦渦の種」があった。
「ボクらの目的は主人公が気球に乗る前に置いてってくれた荷物の中にあったんだよね。」
「あはは。これで必要な分が揃ったんだ。」
「ボクらの大願がまもなくかなうよ。」
「これから本当に怖いことが起きるんだ。」
「地獄の扉が開かれて恐ろしい災が溢れ出すよ。」
「きっとたくさんの血が流れるんだ。」
「なかなか楽しかったよ。それじゃ、バイバイ。」
二人のピュージュは物凄いスピードで飛んで逃げていった。


アンルシアが言う。
「ところで、あなたすっかり騙されていたようだけど偽者の私に何か変なこと言ったんじゃない?」
事情を説明する主人公。
「え、そうなの。」
「私を特別な人と思っているのかって聞かれたのね。ふうん。」
「それであなたはなんて答え・・ううん、やっぱりいい。」
「今のは聞かなかったことにして。」
「ごめんなさい。今はこんな話してる場合じゃなかったわね。」
「実は私が出かけてる時、ルシェンダ様からあなたが危ないという連絡があってね。」
「急いで駆けつけてきたのよ。」
「下でルシェンダ様が待っておられるわ。」
「いったん戻りましょう。」


下に降りると賢者ルシェンダが待っていた。
「おお、そなた無事だったか。」
「アンルシア姫もよくやってくれた。」


アンルシアが言う。
「ええ。危機一髪のところでした。」
「ルシェンダ様のおかげです。」
「けれどピュージュを逃してしまいました。」
「そうだ、ルシェンダ様。主人公の荷物は無事ですか?」
「ピュージュが狙っていたようでしたが。」


賢者ルシェンダが言う。
「荷物自体は無事のようだが。」
「何かを盗られた恐れがあるのか?」
「ならば調べてみるがいい。」


主人公は急いで荷物を調べた。
主人公の大事な物の中から時元神キュロノスが落とした「戦渦の種」が無くなっていた。
「なに?戦渦の種だと?それを奪われたというのか。」
「戦渦の種について私の知っている限りのことを話そう。」
「ガートラントの事件を覚えているか?」
「ピュージュがそっくりの偽者を操る術で内乱をそそのかし、国に混乱を起こした事件だ。」
「私はガートラント王国と懇意にしていてな。」
「ピュージュが事件を起こして以来、秘かにヤツの動向を探っていたのだ。」
「その結果、ピュージュはどうやらあるものを求めて各地に争いの火種をまいていたことが分かった。」
「それこそが戦渦の種という訳だ。」
「戦渦の種は魔瘴に関わる戦いにより生まれ、戦いの怨念と魔瘴が結実したものと言われている。」
「ピュージュは人々を騙し、争いを起こしては沢山の戦渦の種を生み出して拾い集めていたようなのだ。」


アンルシアが言う。
「そう言えば地獄の扉が開かれて災いが溢れ出すとピュージュは言っていました。」
「そしてこうも言っていました。」
「これで必要な分が揃った。」
「まもなく大願がかなうと。」


「どうやら事態は切迫しているようだな。」
「これは一刻も早くピュージュから戦渦の種を取り返さねばならぬな。」


スピンドル兵士長がやって来た。
「ルシェンダ様!」
「スピンドル兵士長参上!」
「頼まれていた件のご報告です。」
「ピュージュどもの行き先がつかめました。」
「我らの情報網にかかればお手の物。」
「2匹もいたとは意外でしたが。」
「今度こそヤツらをとっちめてやりましょう。」
「ピュージュどもは二手に分かれ、依然海上を飛行しながら逃走中です。」
「一方はウェナ諸島の無人島へ、もう一方のピュージュはどうやらゲルト海峡の方角に向かっているようです。」


賢者ルシェンダが言う
「ではこうしよう。」
「ウェナ諸島の無人島へ逃げたピュージュはファルシオン様と共にアンルシア姫が追ってくれ。」
「主人公はゲルト海峡へと逃げたピュージュの方を追いかけるのだ。」
「私は万が一の事態にそなえ、スピンドル兵士長と共にガートラントへ向かい応援を連れてこよう。」
「地獄の扉が開く・・か。」
「ゲルト海峡に浮かぶ小島、ガミルゴの盾島では島に空いた大きな穴を石化した巨人が塞いでいるというが。」
「それは約500年前のガミルゴという術士がその大穴、魔界へと通じる穴を封じるために命に代えて変身した姿なのだ。」
「術士ガミルゴは他でもない、私の先祖でな。」
「なぜだか無性に胸騒ぎがするのだ。」
「我が身に流れる父祖の血が危機を知らせているような。」
「くれぐれも気をつけてくれ。武運を祈る。」


主人公はゲルト海峡で渡し舟に乗り、ガミルゴの盾島に向かった。
島の中央にある大きな扉の前に、戦渦の種を持ったピュージュがいた。
「あはは。もう少しであのお方の願いをかなえることができる。」
「とっても素晴らしいことが起きるんだ。」
主人公の姿に気づくピュージュ。
「おや?盟友くんじゃないか。」
次々とピュージュが現れ、全部で10人になった。
「ようこそ、この世の地獄・・魔界の入り口へ。」
空が闇雲に覆われる。
10人のピュージュがそれぞれ手に持つ戦渦の種を扉に捧げた。
「あはは。戦渦の種が喜びに震えてる。」
「もうすぐ魔界への扉が開かれるよ。」
「昔々、戦渦の邪神が空けた大穴は光の河を貫いて魔界まで繋がってるんだ。」
「あのお方も開通を楽しみに待ってるよ。」
「いいこと思いついた。」
「主人公の躯をこの儀式の供物にしよう。」
「さあ、世にも恐ろしい旅芸人ピュージュの残酷ショーをとくとご覧あれ。」
主人公は襲いかかってくる10人のピュージュ達を倒した。
「あは。あれれ。おかしいな。」
「ボク達はどうして負けたんだろう。」
「でももう間に合わないね。」
「種から溢れ出した戦渦の呪力が封印を破壊して魔界の扉が開かれるよ。」
「じきにバルディスタの連中が現れる。」
「これでボク達の役目は果たされた。」
「本当に怖いのはここからだよ。」
「あははは。」
ピュージュ達は消滅した。


大きな門が開き、大穴を塞いでいた石像が崩れ落ちた。
大穴から馬に乗った女の魔王が現れる。
「この地は我らが征服する。」
「目障りだ。失せろ。」
主人公に向けて強烈な氷属性の斬撃を放つ。
不意をつかれた主人公は魔王の斬撃をまともに受け、意識を失ってしまった。


大穴から次々と魔物が出現する。
そこにアンルシアがファルシオンに乗ってやって来た。
アンルシアは大勢のアストルティア軍兵士を引き連れている。
その中には賢者ルシェンダの姿もあった。
魔王軍の中の何者かが武器弾薬を爆発させる。
武器弾薬の謎の爆発とアストルティア軍の思わぬ反撃を受けた魔王軍は態勢を立て直す為、一旦魔界に退いていった。


「まだ息はあるようだな。」
気を失って倒れている主人公の元に魔族の男がやってきた。
この男は魔王軍の武器弾薬を爆発させた張本人だ。
「気に入った。お前の命、救ってやろう。」


主人公が目を覚ますと、異形の姿に変わっていた。
魔族の男が言う。
「ようやく目覚めたか。待ちくたびれたぞ。」
「どうした、ほうけた顔をして。」
「何か体に異常でもあったか?」
主人公は頷いた。
「そうか。なるほど。」
「ならば血の契約はうまくいったようだな。」
「俺の名はユシュカ。見ての通り魔族の旅人だ。」
「で、ここは魔界。」
「俺達魔族が暮らしている麗しき世界だ。」
「まったく訳が分からないという顔をしているな。」
「順を追って説明してやるからそこに座れ。」
「そうだな。まずこの魔界のことを教えておこう。」
「アストルティアから光の河を隔てた近くて遠い世界。」
「魔界には現在特に大きな力を持った3つの国がある。」
「鉄血と暴力の国、バルディスタ要塞。」
「魔界で最も古き悪意の都、ゼクレス魔導国。」
「そして混沌の新興国ファラザード。」
「この辺りは武力にモノを言わせて拡大を続けるバルディスタに滅ぼされた集落の跡地だ。」
「そのバルディスタがついにアストルティアに攻め入ると聞いて、俺は奴らの軍に紛れ込んだ。」
「そうして首尾よくアストルティアにたどり着いたところでお前が倒れているのを見つけたんだ。」
「お前は瀕死の状態だった。」
「普通の回復呪文では追いつかないほど酷い傷を負っていたんだ。」
「しかし俺はお前を見て使えると思ってな。」
「だからこうして魔界に連れ帰って魔族に伝わる血の契約をおこなったのさ。」
「この俺の血を注いでやったんだ。」
「その影響でお前は魔族の姿に変わったが、命があるだけ俺に感謝するんだな。」
「それからお前にアビスジュエルを渡しておく。」
主人公はユシュカからアビスジュエルをもらった。
「その宝石はこの魔界を移動するのに欠かせないものだ。」
「好きに使うがいい。」
「長話にも飽きたな。」
「バルディスタの連中に見つかっても面倒だし、そろそろ行くか。」
「どこへ行くかだと?」
「下僕のお前が気にすることではない。」
「なんだ、その顔は。」
「お前は血の契約をしたからには俺の下僕だ。」
「俺の言う通りにしていればいい。」
「そうだ、お前。まだ名前を聞いてなかったな。」
主人公はユシュカに自分の名前を伝えた。
「ふうん。下僕にしてはやや不相応な名だが、まあいいだろう。」
「仕方ないから教えてやる。」
「向かう先はゲルヘナ幻野の北側、大審門だ。」
「そこでこれからのことを説明してやろう。」
「ゲルヘナ幻野は起伏が多く迷いやすいが、魔界に慣れるためにも自力で来てみろ。」
「俺は先に大審門で待っている。」


ユシュカに言われた通り大審門に向かう。
「ちゃんとここまで来れたか。」
「あれが魔仙卿が住むデモンマウンテンの入り口。」
「偉大なる大審門だ。さあ、こっちへ来い。」
ユシュカについていく主人公。
「いいか、魔界には各国を治める魔王がいるが本来はその頂点に大魔王が君臨するのだ。」
「先代が死んで以来、空位になっているがな。」
「そして大魔王を選定する権限を持つ者こそが魔界の最古老にして大いなる闇の根源との仲介者と言われる魔仙卿というわけだ。」


大審門の前に行くと殺戮のグレボスという魔物に絡まれた。
グレボスにユシュカが言う。
「俺は砂漠の国ファラザードの使者。」
「実はファラザード国の魔王から重要な勅命を賜りこの地に来たのだが。」
「何か気に入らないことでも?」


「グヌウ。ファラザードの魔王の使者かよ。」
「めんどくせえなあ。」
「今回だけは見逃してやる。」
「次に会ったら絶対に喰ってやるからな。」


ユシュカが主人公に言う。
「邪魔が入ったな。」
「聞いての通り俺はファラザードの魔王に使える者。」
「我が主を大魔王にするために動いている。」
「目的を果たすには何としてもこの閉ざされた門を開かねばならないが。」
「お前、そこの文字を読んでみろ。」


門には見慣れない文字が刻まれている。
しかししばらく見つめていたら不思議と文字の意味が分かるようになった。
主人公は刻まれた文字を読んだ。
「相克する天運を持つ者集いし時、大魔王への道は開かれる。」


「古来より大魔王に選ばれし者は必ず大審門を通り他の大魔王資格者との競争に打ち勝って、その位に就いたという。」
「ならば門が開かないのは、大魔王たりうる資格者がこの場に揃っていないからということなのだろう。」
「大魔王たりうる資格者とは何者か。」
「我が主ファラザードの魔王は当然その一人だ。」
「では我が主と相克する天運を持つ者がこの魔界にいるだろうか。」
「実は二人ほど心当たりがある。」
「それはファラザード以外の強国、ゼクレス魔導国の魔王アスバルとバルディスタ要塞の魔王ヴァレリアだ。」
「だが彼らは大魔王の座に興味がないのか、一向にこの大審門に現れる気配がない。」
「そこで俺の出番というわけだ。」
「ゼクレスとバルディスタの魔王に会って、ここ大審門へと引きずり出す。」
「それが俺の果たすべき使命だ。」
「ところでお前、どうもその魔族の姿が気に食わんようだな。」
「残念ながら一度血の契約を交わし魔族の姿へと変わった者は、二度と元の姿には戻れない。」
「それが魔界の理だ。」
「だがたった一人だけ魔族となったお前を元に戻しうる者がいる。」
「この門の先に住む人物、魔仙卿だ。」
「ということは、大審門を開けるという俺の目的を果たせば元の姿に戻るというお前の望みも叶う目が生まれるわけだ。」
「どうだ、お前にとっても悪くない話だろ。」
「どの道下僕に選択肢などないのだから、せいぜい俺のために働くんだな。」
「ゲルヘナ幻野の東には魔王アスバルがいるゼクレス魔導国、西に向かえば魔王ヴァレリアのバルディスタ要塞だ。」
「2国のうちどちらからでも構わない。」
「お前に好きな方を選ばせてやる。」
「さあ、魔界巡りの旅に出かけようじゃないか。」


主人公とユシュカはバルディスタ要塞に向かった。
「ここはバルディスタ要塞。」
「お前に瀕死の傷を負わせたあの魔王ヴァレリアが統治している国だ。」
「すでにヴァレリアの強さはその身体で味わったと思うが、あいつは戦場での指揮や判断力にも長けていてな。」
「どんな不利な戦も勝ち戦にしてしまうその圧倒的な強さから、敵軍の兵士達からは死を運ぶ氷の魔女と恐れられているのさ。」
「一筋縄ではいかないだろうが、なんとかして会談をとりつけるぞ。」
「それじゃ早速城へ向かおう。」


その時、ヴァレリアがバルディスタ要塞に現れた。
「ヴァレリア様のご帰還だぞー!」


物陰に隠れていたダル・ジャムールという魔族の男が剣でヴァレリアに襲いかかる。
「ジャムール王国を覚えているか!」
「私は貴様の率いる軍に一夜で滅ぼされたジャムール王国の王子、ダル・ジャムールだ!」
「祖国の名誉にかけて貴様を殺す!」


ヴァレリアは大矛を出現させ、一瞬にしてダル・ジャムールを真っ二つにした。
「うつけめ。」
「彼我の力量差すら推し量れぬから貴様の国は滅んだのだ。」


その様子を見ていたユシュカが言う。
「とても気軽に話しかけられる雰囲気じゃなくなっちまったな。」
「あいつらどうやら城へ向かったようだ。」
「俺達も向かうぞ。」


城に向かう途中、ヴァレリアの側近のヤイルという男が困っている様子だったので話しかける。
「私がヴァレリア様の側近と知った上で声をかけてきたということは何か目論見があるのでしょう。」
「あなた方のチカラを借りたとして一体私にどんな見返りを求めるつもりなんですか?」


ユシュカが言う。
「話が早くて助かるな。」
「そう警戒しなくていい。」
「俺は砂の都ファラザードの使者でバルディスタの魔王との謁見を望んでいる。」
「だが先の魔王への襲撃事件で城は厳戒態勢。」
「俺達のような一見客は問答無用で追い返されてしまう状況だ。」
「そこで魔王の側近であるあんたから城へ入る許可をもらえるなら、これほど心強いことはない。」


ヤイルが言う。
「やはり裏がありましたか。」
「しかし確かにあなた方はそこいらの傭兵より腕が立ちそうだ。」
「いいでしょう。」
「ブラニック採石場にいる盗賊を倒すためチカラを貸して下さい。」
「その代わり盗賊を倒した後はあなた方がバルディスタ城に入れるよう、私の方で手配しましょう。」
「もし仮に盗賊を倒せたとしても、我が国の魔王ヴァレリア様の御前では決して無礼のないようにしてくださいよ。」


主人公、ユシュカ、ヤイルの3人でブラニック採石場に向かう。
盗賊達を倒すと、そこにヴァレリアがやって来る。
「盗賊どもがこの採石場を占拠していると聞いてやってきたが、どうやらこの者達のようだな。」
命乞いをする盗賊達を皆殺しにするヴァレリア。
「この盗賊どもは以前、城へ向かう荷馬車を襲い私の部下を殺した。」
「貴様らのおかげで思っていたより楽に片付いた。礼を言うぞ。」
「ヤイル、私は先に城へ戻る。」
「魔瘴弾は3日以内に手配しろ。それ以上は待たん。」
ヴァレリアは帰っていった。


ユシュカが言う。
「とにかく頼み事は片付けたんだから約束は果たしてもらおう。」
「バルディスタへ戻るぞ。」


ヤイルと一緒にバルディスタ要塞に戻る。
「お二人ともご助力感謝します。」
「あなた達のおかげで魔瘴石の確保はなんとか間に合いそうです。」
「約束通りバルディスタ城に入れるよう手配しておきましょう。」
「ヴァレリア様にも謁見の話をお伝えしておきます。」
「私は昔、敵兵に殺されかけたところをヴァレリア様に救っていただいた身。」
「今はその恩返しができてとても幸せです。」
「城でまたお会いしましょう。」


主人公達は城内に入り、玉座の間でヴァレリアに謁見した。
「お前達はブラニック採石場に巣食う盗賊どもを倒してくれた功労者だったな。」
「そのせつは大儀であった。」
「私に用があるそうだな。」
「よかろう、なんなりと申してみよ。」


ユシュカが言う。
「謁見をお許しいただき感謝します。」
「私は砂の都ファラザードの魔王に使える使者ユシュカと申します。」
「我が主ファラザードの魔王からヴァレリア様にこちらの書簡をお届けするよう仰せつかって参りました。」
ユシュカはヴァレリアに書簡を渡した。


「ふむ、砂の都ファラザードか。」
「バルディスタとは相容れぬ国だが、その魔王が一体何を。」
書簡を見るヴァレリア。
「フッ、そういうことか。」


ユシュカが言う。
「いかがでございましょう。」
「我が主はヴァレリア様に是非大審門までお越しいただきたいと。」


「断る。」
「現在我が国が最も優先すべきことはアストルティアへの再侵攻だ。」
「魔王同士で馴れ合っている暇はない。」
「よほどその騒ぎに私を巻き込みたいようだが高所から見下す魔仙卿とやらも気に入らんし、そやつから与えられるチカラにも興味がない。」
「用件はそれだけか?」
「ならば謁見はこれまでだ。下がるがよい。」
「どこの馬の骨が大魔王になろうとも、我がバルディスタの前に立ちはだかるのならばこの大矛の錆にしてくれるわ。」


主人公とユシュカが玉座の間を後にすると、ベルトロという男に話しかけられた。
「あーあ、フラれちまたねえ。」
「そう睨むなよ。男前が台無しだぜ。」
「バルディア山岳地帯にある月明かりの谷、そこに行けば何かつかめるかもしれないぜ。」
「今のはただの独り言さ。」
「あんたらは城で誰かの独り言を聞いた。それだけだ。」
ベルトロは去っていった。


月明かりの谷に向かうと、月明かりの家という孤児院があった。
施設の管理者であるグレシア院長に話を聞く。
「こんな所へ何をしにいらしたの?」
「ここは月明かりの家。私と子供達だけが暮らす小さな孤児院です。」


突然外が騒がしくなった。
なんとヴァレリアがやって来て、子供達と楽しそうに話をしている。
それを窓から見たユシュカが驚く。
「あれは魔王ヴァレリアじゃないか。」
「どうしてここに。」


グレシア院長が言う。
「どうしても何も、この月明かりの家はヴァレリア様がお作りになったのですよ。」
「アナタ達お若そうだけど、1000年程前に魔界とアストルティアの間で大きな戦乱があったのはご存知よね?」
「1000年程前、ネロドスという大魔王のもと配下の大軍がアストルティアに攻め込み激しい戦乱が始まったの。」
「その後ネロドスの死と共にアストルティアでの戦いは終わったわ。」
「でもアストルティアとの戦が終わった後も支配者なき魔界では混乱が続き、敵味方もなく殺し合うような内乱に発展していった。」
「当時まだ幼かったヴァレリア様は目の前でご家族を殺されたうえ、ご自身も戦士として命がけで戦わされたのよ。」
「その後マデサゴーラという覇者が誕生し内乱は収まったけど、その魔王も死んだ今再び戦乱の時代が訪れようとしています。」
「ヴァレリア様がご自身にも周りの者にも大変お厳しいのは、あの時の惨苦をもう二度と民に味あわせないため。」
「私はあの方ほど我欲を捨てて民のために身を粉にしている魔王を他に存じ上げません。」


ヴァレリアが子供達と一緒に月明かりの家に入ってきた。
主人公とユシュカの姿を見つけたヴァレリアの顔色が変わる。
「なぜ貴様たちがここにいる?」
「運が良かったな。」
「この場所でなければ貴様を叩き斬っていたところだ。」
「私の弱みを握ろうとしても時間の無駄だぞ。」
「策を弄するならもっと別のことに頭を使うべきだな。」
ヴァレリアは去っていった。


子供達からヴァレリアの好きな物を聞き出すユシュカ。
ターボル渓谷に咲くバルディジニアの花が好きだという情報を得たのでそこへ向かう。
バルディジニアの花を摘んで孤児院に戻ると、リズティという女の子がヴァレリアに書いた手紙をくれた。
「魔王様。お兄ちゃん達と仲良くしてあげて下さい。」
「見栄っ張りだけどやさしいお兄ちゃんです。」


ユシュカは手紙と花を持って再びヴァレリアに謁見した。
「また貴様らか。何しに来た?」


ユシュカが言う。
「前回はこちらもぶしつけでした。」
「本日はこのような手土産を持参したので是非受け取っていただきたい。」
ユシュカは子供達の手紙とバルディジニアの花をヴァレリアに手渡した。
「なるほど。」
「貴様らがあの子達にここまで気に入られてるとはな。」
「だがバルディスタをなめるな。」
「私はこんな物で懐柔されたりはせん。」
ヴァレリアはユシュカに手紙と花を突き返した。


そこにバルディスタの兵士がやって来る。
「謁見中のところ申し訳ございません。」
「失礼致します。」
「バルディア山岳地帯にある月明かりの谷の方面で魔瘴が大量に発生しているようなのです。」


「月明かりの谷だと?」
「分かった。お前は急いで魔瘴対策部隊を向かわせろ。」
ヴァレリア慌てた様子で玉座の間を出ていった。


ユシュカが言う。
「おい、聞いたな。」
「月明かりの谷といえば孤児院のある方角だ。」
「俺達も急いで向かうぞ。」


月明かりの谷には魔瘴の霧が立ち込めていた。
ベルトロが孤児院に向かおうとするヴァレリアを制止する。
「魔王様!ここは危険ですのでさがってください。」


ベルトロを振り切り月明かりの家に入るヴァレリア。


ベルトロが毒づく。
「クソ!飛び込みやがった!」
「こんな濃密な魔瘴の中でまだ生きてると思ってんのか。」
「ヴァレリアに何かあってみろ。」
「そしたらまず俺が矢面に立たされるじゃねえか。」
「冗談じゃねえ。」
「出世すりゃおいしい思いができると思ってここまで踏ん張ってきたってのによ。」


ヴァレリアがリズティを抱えて月明かりの家から出てきた。
「私はいい。」
「早くこの子の手当てを。」
そこにヤイルが走ってやって来る。
「ヴァレリア様!お怪我はございませんか!」
「この付近で魔瘴が噴出したのでしょうか。」
「こんなになるなんて。」
「ヴァレリア様、気を落とされませぬよう・・」
リズティに気づくヤイル。
「ああ、まだ生きている子がいたんですね。」
「よかった。」
「早く手当をしましょう。」
「まずはこの回復薬を飲ませて・・」
回復薬をリズティに飲ませようとするヤイルをヴァレリアが止める。
「ヤイル、待て。」
「その回復薬、まずは私が飲む。」
ヴァレリアが回復薬を飲もうとした時、ヤイルは回復薬を叩き落とした。
「ヤイル、これはどういうことだ?」
「そこにいるベルトロには以前、院長が腰を痛めた時この孤児院の世話を頼んだことがある。」
「それ以外、私は孤児院のことを話していない。」
「そこでだ、ヤイル。貴様はなぜこの孤児院が私に関係あると思ったのだ?」
「貴様の忠誠心を疑ったことはない。」
「だがそれで貴様が過ちを犯さぬというわけではあるまい。」
「魔瘴石を使い事故に見せかけ皆を殺したのだな、ヤイル。」
ヤイルは逃げ出した。
そのヤイルの前にユシュカと主人公が立ちふさがる。
「魔王ヴァレリア!」
「コイツは俺達が相手をする!」
「だからあんたは子供の手当を早く!」
主人公とユシュカは襲いかかってくるヤイルを倒した。


ヴァレリアの治療によりリズティは助かったようだ。
「ヤイル、なぜこんなことをした?」


「ヴァレリア様がおかしくなってしまわれる前に私がなんとかせねばと・・」
「あの日、私は見てしまったのです。」
「魔王様がここを訪れているのを。」
「あの孤児たちと話している時のヴァレリア様はまるで戦を忘れてしまったかのような腑抜けた目をされていた。」
「冷厳で強く美しい。」
「死を運ぶ氷の魔女と恐れられた魔王様を奴らは堕落させようとしたんだ。」
「ヴァレリア様は孤高で非情で氷のように冷たく、強くあらねばならんのだ。」
「奴らが生きていれば魔王様の弱点としていずれ思わぬ災いを招き寄せるだろう。」
「だからそうなる前にバルディスタに仇をなすゴミどもを魔瘴で掃除してやったんですよ!」


ヤイルの胸ぐらを掴むヴァレリア。
「そうか。その理由に嘘は無いのだろう。」
「だが、災いを招いたのは貴様だ。」
ヴァレリアはヤイルにとどめを刺した。


月明かりの家の前には沢山の墓石がある。
「ヤイルが生まれたのは国境付近の小さな集落でな。」
「他国からの侵略を受けて滅ぼされてしまったが、その時部隊を率いて駆けつけた私が敵軍に殺されかけていたヤイルを助けたのだ。」
「ここはかつて私と共に戦った仲間達の墓場だ。」
「院長にどこまで聞いたかは知らんが1000年程前、激しい戦いがあってな。」
「その頃まだ幼かった私はろくでもない傭兵どもに拾われて、他の子供達と一緒に捨て駒みたいに戦わされたのさ。」
「バニト、ディセル、ルチオ、タチアナ、スーゴ・・」
「生まれた国は違ったが、皆大事な仲間だった。」
「仲間達とは戦が終わったらみんなで安心して暮らせる家を作ろうとよく語り合っていたよ。」
「だが生き残ったのは私一人だった。」
「彼らはただ仲間達と静かに暮らすことだけを願っていたのに。」
「ファラザードの使者とやら、バルディジニアの花はまだ持っているか?」
花をヴァレリアに手渡すユシュカ。
ヴァレリアは墓石にバルディジニアの花を捧げた。
「私が魔界統一を果たし、この乱世を終わらせよう。」
「貴様の主とやらに伝えておけ。」
「魔仙卿に会って闇の根源のチカラを我がものにしてやると。」
「私は準備ができ次第大審門へ向かう。」
「そこで再び会おう、ファラザードの者達よ。」
ヴァレリアは去っていった。


ベルトロが言う。
「色々とありがとよ。」
「大きな声じゃ言えないが、俺は現状でアストルティアに侵攻するのは反対だったんだ。」
「今のバルディスタじゃあアストルティアとの戦は長引き泥沼化しちまうだろうよ。」
「そうなったら1000年前の戦の二の舞だ。」
「俺は魔王ヴァレリアが大魔王になって魔界統一を果たしたうえでアストルティアに攻め込むべきだと考えていたのさ。」
「ってなワケでこれからは晴れて敵同士だ。」
「もう協力することも無いだろうよ。」
「手伝ってくれて感謝するぜ。」
ベルトロは去っていった。


ユシュカが言う。
「この国でやるべきことは終わった。」
「お前もよくやってくれたな。」
「次はゲルヘナ幻野の東にある魔王アスバルの治める国、ゼクレス魔導国に向かおう。」
「行くぞ。」


ゼクレス魔導国にやって来た主人公とユシュカは、魔王アスバルに謁見するため城へ向かった。
しかし魔王アスバルが不在だったので町を探索することにした。


町を歩いているとベラストル家の当主リンベリィがいたので話しかけてみる。
リンベリィの付き人が割って入る。
「お前ら何者だ!」
「こちらはベラストル家のご当主、リンベリィ様であるぞ!気安く近寄るな!」
リンベリィは小柄な少女だ。
「ちょっと!何よアンタ達!」
「みっすぼらしい身なりでよくもこの私に口がきけるわね。」
「これだから身分をわきまえない下等魔族は嫌なのよ。」
「今すぐ目の前から消えてくれない?」


ユシュカが言う。
「はじめまして、リンベリィ様。」
「不躾な問いで恐縮ですが、魔王アスバルの居場所をご存知ありませんか?」


「あー、もう。全然人の話を・・ってあら?」
「アナタよく見たらなかなかイケてるじゃない。」
「そんなみすぼらしい恰好をしているなんてもったいないわ。」
「磨けば最高にいい男になること間違いなしですもの!」
「そうだ、ねえアナタ。我がベラストル家で今夜開催される秘蔵の芸術品のお披露目パーティーに招待してあげる。」
「私が直々にアナタに見合う衣装を見繕って専属の召使いとして雇ってあげるわ。」
「このリンベリィ様のお気に入りになれば出世は約束されたも同然。」
「いい目を見させてあげるわよ。」
ユシュカはリンベリィからパーティーの招待状を受け取った。
「それじゃ、アナタ!この私に気に入られたこと、光栄に思いなさいよ!」
「パーティー会場でまた会いましょ!」
リンベリィは去っていった。


ユシュカが言う。
「パーティーはごめんだが何か情報は得られるかもな。」
「俺は城下を探索するからパーティーにはお前が潜入してくれ。」
「お互い聞き込みを終えたらまた城下で落ち合おう。」
「招待状は渡しておくぜ。」
主人公はユシュカからパーティーの招待状を受け取った。


パーティー会場に入りリンベリィに会いに行く。
「はあ?アンタ誰?」
「なんでこんなみすぼらしいのがパーティーに紛れ込んでるわけ?」
主人公はユシュカと一緒にいたことを説明した。
「え?あのイケてる男の横にいた?」
「全然記憶にないんだけど。」
「あの美男子はどこいったの?」
「私が招待したのは従者のアンタじゃなくてアイツなのに。」
「ひどいわ。私の誘いを断るなんて許せない。」
「今度見かけたら絶対会いに来なかったことを後悔させてやる。」
「その招待状はアンタにあげたんじゃないんだから。返してよね。」
リンベリィは主人公から招待状を取り上げ、粉々にちぎってしまった。
「このパーティーは招待されてない客は入場お断りなのよ。」
「お前達、今すぐこいつをつまみ出しなさい。」


その時、主人公のそばにシリルという男がやってきた。
「その子は僕の連れなんです。」
「慣れない場で迷ってしまったようで。」


「なんだ。アンタの下僕だったの?」
「下級魔族がうろうろしないようにちゃんと首輪つけておいてよね。」


「ふふ、これは失礼しました。」
「よく言っておくよ。」
「君もびっくりさせてしまったね。」
「さあ、僕についておいで。」
主人公はシリルについて行き、パーティー会場の隅までやって来た。
「僕の名はシリル。」
「君と話したくてつい出しゃばってしまった。」
「今は手が離せないから、平民街の北にある僕が経営する骨董屋・六大陸堂で待ち合わせをしよう。」
「用が済んだらすぐに僕も向かうから、そこで話をさせてくれないか。」
「それじゃ、またあとで。六大陸堂で会おう。」


主人公はパーティー会場を出て六大陸堂に向かった。
「やあ、いらっしゃい。」
「案外早かったね。無事に着いてよかった。」
「こっちはリンベリィを振り切るのに大変だったよ。」
「そう言えばまだ名前を聞いていなかったよね。」
「君はなんていう名前なのかな?」
主人公は自分の名前を告げた。
「そうか。主人公、いい名前だね。」
「もしかして君はアストルティアから来たんじゃないかな?」
「あの時、ひと目君の身なりを見てすぐ分かったんだよ。」
「僕はずっと昔から身分の差がなく自由に暮らせるアストルティアに憧れてた。」
「だからすぐピンときたんだ。」
「この店もこの国の貴族達が所有するアストルティアゆかりの品を集めるために開業したんだよ。」
「あ、それでさ。君が持っているそれはキーエンブレムだろ?」
「よかったらそれを僕に見せてくれないか。」
主人公はシリルに金のキーエンブレムを見せた。
「ずっと憧れていたけど本物を見るのは初めてだよ。」
「これは国を救う程の偉業を達成した者だけに与えられる品なんだろう?」
「なんてきれいなんだ。」
「これを授与されているなんて君はきっと凄く腕が立つんだろうね。」


その時、フラフという銀色の子竜が近づいてきた。
「この子はフラフっていってゼクレス魔導国近くのベルヴァイン湖に渡ってくる銀翼竜のヒナなんだ。」
「毎年そこで銀翼竜の群れを見るのが僕の楽しみだったんだけど、数年前その湖に凶暴化した魔獣が住みついてしまったんだよ。」
「それで銀翼竜の群れを襲うようになって。」
「この子は去年襲われていたところを僕が助けてこの店で手当していたんだ。」
「また今年群れがきたら返そうと思っていたんだけど、参ったな。」
「今年は例年より群れが戻るのが早いようだ。」
「湖に竜たちが降り立つ前に魔獣を倒さないとまたフラフの家族が襲われてしまう。」
「そうだ、君なら。」
「銀翼竜の群れがベルヴァイン湖に着く前に湖の魔獣を倒してくれないか?」
「お礼として僕にできることならこの後なんだってチカラになる。」
「だからどうかお願いだ。」
主人公は頷いた。
「本当かい?ありがとう。」
「じゃあ僕もフラフを連れてすぐ出発するから君も急いでベルヴァイン湖に向かってくれ。」
「ベルヴァイン湖はこの国を出てベルヴァインの森の西側から南の方角だ。」
「この店は閉めるから湖で待ち合わせしよう。」


店を出るとユシュカがやって来た。
「捜したぜ。それでどうだ?」
「何か有力な情報は得られたか?」
主人公は事情を説明した。
「シリルってやつの手伝いだと?」
「おいおい、一体何をしている。」
「魔王を捜すって話はどうなったんだ?」
その時、ユシュカは店の裏から飛んでいくフラフと白いドラキーを見つけた。
「あの白いドラキーは・・」
「そうか、なるほどな。」
「よし、お前はシリルってやつとしばらく行動を共にしろ。」
「俺は引き続き町で情報を集める。」
「手伝いが済んだらすぐ町に戻ってこい。」
「俺の方も頃合いを見て合流しよう。」


ユシュカと別れた主人公はベルヴァイン湖に向かった。
そしてベルヴァイン湖に住み着いているボルゲルグという魔物を倒した。
シリルが喜ぶ。
「やはり君はとても強いんだね。」
「あまりにすごくて見惚れてしまったよ。」
「これでこの湖にやって来る銀翼竜達にも平和が訪れるだろう。」
銀翼竜の群れがベルヴァイン湖にやって来た。
「あ、見てくれ。」
「ちょうどフラフの家族達が今年もまた戻って来たみたいだ。」
フラフを群れに返すシリル。
「フラフを家族のもとに返せてよかった。」
「これも君のおかげだよ。本当にありがとう。」
「僕がこの国に残っている理由もこれでなくなった。」
「毎年帰ってくる銀翼竜の群れを見守ることが僕の生きがいだったんだ。」
「だけど見守るうちに僕自身広い世界を自由に旅する夢を抱くようになった。」
「自分にはできないって諦めていたけど、最近アストルティアへの道が開いたって聞いたんだ。」
「こうしてアストルティアから来た君と偶然出会えた今こそが旅立つ絶好のチャンスだと思うんだよ。」
「僕は夢を諦めたくない。」
「うん、決めた。」
「僕は今夜アストルティアへ旅立つ。」
「やっと自分の迷いを断ち切れそうだよ。」
「だけど旅立つ前に一つだけ持っていかなきゃいけない物があるんだ。」
「どうしてもあれだけは。」
「君と会えて良かった。」
「またいつかアストルティアの地で再会できる日を楽しみにしているよ。」
「それまでは少しの間さよならだね。」
シリルは去っていった。


町に戻りユシュカと合流する主人公。
「待ってたぜ。」
「シリルってやつからの頼まれごとは無事終わったようだな。」
「それでシリルはどこへ行った?」
「一緒じゃないのか?」
主人公は事情を説明した。
「なるほど、アストルティアに行く・・ね。」
「魔界を出られると面倒なことになるな。」
「なんとかその前に捕まえたいところだが。」
「アストルティアに旅立つ前にどうしても持っていきたい物があるって言ってたんだよな。」
「それなら心当たりがある。」
「シリルは城下町で骨董屋を経営していたんだよな。」
「その店を探れば何か手がかりがつかめるはずだ。」


六大陸堂の中を探ると隠し階段を見つけた。
「おそらくこの先は城のどこかにつながっているはずだ。」
「とりあえず行ってみるとしよう。」
会談はゼクレス城地下の宝物庫につながっていた。
中にはシリルがいて、左手にコンパスを持っている。
ユシュカがシリルに言う。
「アストルティアに旅立つ前にどうしても持っていかなければいけないもの。」
「やはりそのコンパスだったか。」


シリルが驚く。
「お前は!どうしてここに・・」
「それに主人公、君までいるなんて。」


「ちょっとした縁で命を助けてやってな。」
「それ以来こいつのことは俺の下僕としてコキ使ってるのさ。」
「それはそうと、シリルなんて偽名を使っていたとはな。」
「だが俺にはあの白いドラキーが変身したお前だってすぐ分かったよ。」
「なあ、アスバル。」
なんとシリルの正体は魔王アスバルだった。
「主人公、お前には言ってなかったが俺は昔この国に滞在してたことがある。」
「アスバルはこの国の王子として、俺は国から国を渡り歩く有力な宝石商として出会ったんだ。」
「当時からこいつはアストルティアにご執心だったよ。」
「だから俺は師匠からもらったアストルティア産のコンパスを王子殿下に献上してさしあげたのさ。」
「いつかアスバル殿下もアストルティアを旅できますようにとな。」
「アスバル、一人でこの国を逃げ出すくらいなら俺と一緒に来い。」
「今度こそ俺がお前を自由にしてやる。」


アスバルが言う。
「うるさい!勝手に去っていった裏切り者の話なんて今さら何も信用できない!」


そこにゼクレス魔導国の兵士がやって来る。
「お前達何者だ!ここで何をしている!」
「侵入者だ!応援を呼べ!」


アスバルが言う。
「仕方ない。」
「王族しか使えないよう封印で閉ざされた秘密の抜け道がある。」
「二人とも僕について来い!」


アスバルと一緒に城の外に出ると、アスバルの母親・エルガドーラ王太后が待ち構えていた。
「あの秘密の抜け道が開かれると、わらわの杖の宝玉が光るよう呪いがかかっているとも知らずに。」
「この母から逃げられると思うとは、まだまだ詰めが甘いのう、アスバル。」
「おおかたそのコンパスを持って、最近開いたというアストルティアへの道に逃げ込むつもりだったのだろう。」
ユシュカに気づくエルガドーラ王太后。
「お前は・・ユシュカ!」
「わらわが追放してくれたのに性懲りもなく舞い戻るとは。」
「アスバルは高貴なるゼクレス王家の血を受け継ぐ者。」
「やがてはこの国を背負い、魔界全土を統べる大魔王となる器。」
「お前のような雑種とは住む世界が違う。」
「アストルティアを共に旅するなどという世迷い言を吹き込んでも無駄だ。」
「アスバル、お前がずっとそのコンパスに執着していたのは知っているぞ。」
「以前その男から貰った宝物なんだろう?」
「あの日ユシュカが突然国を去ったのは、わらわが追放したからよ。」
「お前に良くない影響を与えていると知ったからね。」
「お前はその雑種と共に行きたいなどと馬鹿なことを願っていたようだが、あの手紙はわらわが握り潰した。」


ユシュカが言う。
「あの時の行き違いはあんたのせいだったのか。」
「どうせそんな事だろうとは思っていたがな。」


「こんなどこの馬の骨とも分からぬ男とアストルティアなぞに行って何になる。」
「まず大魔王となって魔界の統一を果たし、その後で堂々とアストルティアに攻め入ればよかろうものを。」
「だというのにお前は今もくだらぬ夢にうつつを抜かし、大魔王となる覚悟も持てないまま。」
「本当に甘ったれた子。」
「そろそろ母の我慢も限界ぞよ。」
「いいかげん目をお覚まし。」
「お前はこの母からは逃れられぬ。」
「伝統あるゼクレスの跡継ぎとなることだけがお前の存在理由と思い知るがいいわ!」
エルガドーラ王太后は杖の魔力でアスバルが持つコンパスを引き寄せ、粉々に砕いてしまった。


「うわああ!よくも!」
我を失い暴走したアスバルは、激昂の巨人・レイジバルスを召喚した。


「その気概を他国にぶつけてくれれば、すぐにでも我がゼクレス魔導国が魔界を征服できようものを。」
「まったく聞き分けのないこと。」
「お前はわらわの言うことに逆らえないというのがまだ分からぬとは。」
エルガドーラ王太后が杖を振りかざすと、アスバルの首に巻かれているチョーカーが光りだした。
「う・・やめろ・・」
アスバルは気を失ってしまった。


「ちょうどいい。」
「この化け物を使って邪魔者どもを始末してもらおう。」
「さあアスバル。こやつらを八つ裂きにしろ!」
エルガドーラ王太后に操られたアスバルが激昂の巨人・レイジバルスとともに襲いかかってくる。


主人公とユシュカは協力して激昂の巨人・レイジバルスを倒した。


「チッ、しぶといことよ。」
「だが覚えておくがよいぞ。」
「ゼクレス王家の後継者たるアスバルに己の自由などない。」
「わらわの指図ひとつでアスバルは何度でもお前達に牙をむくだろう。」
「諦めてこの国から出ていくがいい。」
エルガドーラ王太后は去っていった。


エルガドーラ王太后から解放され意識を取り戻したアスバルが言う。
「ユシュカ、お前の望みは分かってるさ。」
「ファラザードからの書状に書いてあった通り次の大魔王を決めたいんだろ。」
「いいだろう。望み通り魔仙卿のもとに行ってやるよ。」
「だがそれはお前のためじゃない。」
「勿論、母のためでも。」
「僕は大魔王になって母の支配を破り、望みを全て叶えてみせる。」
「アストルティアを旅するのはその後だ。」
アスバルは去っていった。


ユシュカが言う。
「よし、これでこの国でやるべきことは終わった。」
「次はいよいよ俺の仕える国、ファラザードの王に会わせてやる。」
「ファラザードはこの国を出てゲルヘナ幻野を横断し、南に行ったジャリムバハ砂漠にある新興国だ。」
「行くぞ、出発だ。」


砂の都ファラザードにやって来た。
「ここが砂の都ファラザード。他の国とは随分雰囲気が違うだろう。」
「我が主の統治のもとに様々な欲望が日夜問わず交差する。」
「まさに魔界の不夜城ってやつさ。」
「ようやく帰ってきたことだしゼクレスとバルディスタでの首尾を報告したいところだが、馴染みの店にも顔を出しておきたい。」
「先にこのファラザードが誇る自由の象徴、バザールを案内してやろう。」
「活気があって一見の価値があるぞ。」


バザールの元締め、ジルガモットに会いに行く。
ジルガモットは女の魔族だ。
「このバザールはジャリムバハ砂漠の北東、ディンガ交易所から運ばれる様々な物資を取り引きしているのよ。」
「近頃その大事な交易路、ズムウル峠に次から次へと凶悪な魔物が現れて物資を運ぶ隊商を襲っているの。」
「ファラザード軍に討伐を頼んだものの、あちらにもご事情があるようで大きくは動けないとつれないお返事。」
「みんなあなたを待っていたの。」


ユシュカが言う。
「後のことは任せておけ。」
「俺達が元通りのバザールに戻してやる。」
「主人公、魔界にある3つの大国のうちファラザードは一番の新興国だ。」
「この世には訳ありな奴らがごまんといる。」
「集落からあぶれた者、借金を背負った者、故郷を失った者、どこにも行くアテのない者。」
「あらゆる者を分け隔てなく受け入れる代わり、それまでの一切の縁を断ち切ってファラザードの魔王と主従契約を結ばせる。」
「ゼクレスのような血統主義でもバルディスタみたいな恐怖統治でもない方法で民を集め、一つの国を成したってわけだ。」
「ファラザードの魔王の務めは契約を果たすこと。」
「民を庇護し、その暮らしを保証すること。」
「だが魔王との契約を結ばず、一方的にファラザードの富を奪おうとするならず者どもも近隣には潜んでいる。」
「この問題もファラザードの魔王のやり方が気に食わない連中の仕業に違いない。」
「俺は王城と連絡を取ってみる。」
「お前はバザールの問題を一人で解決してみせろ。」
「俺の下僕として相応しい働きを期待してるぞ。」


主人公は盗賊団・シシカバブ団を倒し、一人でバザールの問題を解決した。
ジルガモットに報告する。
「安全な交易ルートが確保されたから、じきに隊商が到着して品不足は解消されるはずだわ。」
「あなたみたいな有能な下僕ならどんな大金を積んでも惜しくないわ。」
「ねえ、いくらなら私のものになる?」
「私かなり本気よ。」
「私には妹がいるんだけど、私たち姉妹は元はジャリムバハ砂漠の果てにあるとある小国を治めていたの。」
「だけど今のファラザードの魔王にこれまでにない理想郷を作るため協力してくれって熱心に口説かれてね。」
「こんな多種多様な国をまとめ上げる切れ者の魔王なら今度こそ本当の魔界の楽園を築いてくれると信じてるわ。」
「ただ少し気になることもあるの。」
「隊商を襲っていた魔物たちはごく最近、バルディスタの方から流れてきた集団よ。」
「砂漠の土地勘なんてあるはずないのに交易の要所を占拠してファラザードの弱点を突いてくるなんて偶然にしてはね・・」
「この国のことをよく知っている別の誰かが魔物に入れ知恵をしたなんて考えすぎかしら。」
「ユシュカは本当に価値のあるものにしか興味を示さないの。」
「ましてそばに置くものならなおさら。」
「あなた、よっぽどユシュカに気に入られているのよ。」
「今度はお客様としても会いに来て。」
「あなたならいつでも大歓迎よ。」


ユシュカと合流した主人公は、ファラザードの魔王と会うため城の玉座の間に向かった。
しかし玉座には誰も座っておらず、ファラザードの魔王の副官・ナジーンが立っているだけだった。
するとユシュカが何も言わず空席の玉座に座った。
ナジーンがユシュカに声をかける。
「お帰りなさいませ、我が主・魔王ユシュカ。」
なんとユシュカ自身がファラザードの魔王だった。


魔王ユシュカが言う。
「ゼクレスの魔王とバルディスタの魔王を大審門の前に引きずり出さんがため会談を取り付けるファラザードの使者。」
「その正体は魔界の南を統べる新興国の魔王。」
「まあそういうことだ。」


ナジーンが言う。
「ユシュカは自分の言葉で二人の魔王を説得すると我を押し通した。」
「私は危険すぎると反対したのだが。」
「しかもご自分の下僕にまで隠し通していたのは感心しませんね。」


「ファラザードに戻って身の安全が確保できたらすぐにでも伝えるつもりだったさ。」
「だがバザールで問題が起きていてそれどころじゃなくなったんだ。」
「これは留守をあずかるお前の怠慢だぞ?」


ナジーンが言う。
「お手をわずらわせ申し訳ありません。」
「ですがこちらにも事情がありまして。」
「我が王の帰還を待ちわびていたのですよ。」
「ご存知の通り新興国である我が国の兵力は充実しているとは言い難く、国境付近の防衛と城下の警備に苦慮しています。」
「あなたが外遊中に得た豊富な経験を生かしてこの状況を打破する目覚ましい政策を是非ともご教示いただけたらと。」


「分かった分かった。後でな。」
「こっちは帰ってきたばかりなんだし、ちょっとは休ませてくれよ。」
「主人公、お前にはこの城内に部屋を与えてやろう。」
「魔王の下僕に相応しい上等な部屋をな。」
「ナジーン、後は任せるぞ。」


ナジーンが主人公に言う。
「君の部屋は1階の西側に用意させよう。」
「部屋の前には侍女のウテンが立っている。」
「もしも迷ったら目印にするといい。」
「君とは少し話がしたい。」
「私も後で向かうから部屋で待っていてもらえるだろうか。」


部屋で待っているとナジーンがやってきた。
「慣れぬ魔界でユシュカに振り回され長旅の疲れも出てくる頃だろう。」
「この部屋は自由に使ってくれ。」
「ユシュカがアストルティアから連れてきた君の件については報告を受けていた。」
「ユシュカと血の契約を交わしたこともな。」
「話したかったのはそのことだ。」
「君はユシュカの血を与えられたことで魔族に変じ生き延びたわけだが、あれは魔界でも秘伝に属する禁断の呪術。」
「高位の魔族が他社に生き血を与えることでその生命と運命を分かち合う儀式だ。」
「ユシュカのことだからいつもの調子で君のことを下僕にしてやったとでも言ったのだろうが、禁術とはそんな都合の良いものではない。」
「命さえ落としかねない危険な賭けなのだ。」
「まして魔族ならぬ者に血を与えるなど。」
「はっきり言って成功したのは奇跡に近い。」
「ユシュカはただの魔族ではない。魔王だ。」
「そんな重大事を伝令から聞かされてずいぶん気をもんだものだが、あいつのも何か考えがあってのこと。」
「その決断が必ず実を結ぶと信じ、これまで城を預かってきた。」
「そして今日、この城に到着したユシュカと君を見てそれが正しかったとようやく確信することができたよ。」
「改めて礼を言わせてほしい。」
「君には本当に感謝している。」
「他国の魔王との危険な交渉を遂げて我が主をファラザードまで無事に帰還させてくれた。」
「あいつは型破りで危うい所もある。」
「正直会談の成功よりもその身の無事こそが私にとっては何より価値のあることなのだ。」
「死んだ魔王より生きている使い魔とは言うが、アストルティアにも似たような言葉があるだろう?」
「お互いに苦労は多いが、共にあいつを支えていこう。」


主人公はユシュカに会うためザードの尖塔に向かった。
「魔界の南部は砂漠に覆われていて、豊かな実りなどとても期待できない。」
「だから古くから交易が発達してきた。」
「砂漠の小国家群がそれぞれに隊商を組んで農作物や家畜、毛皮や織物など様々な品物を取引する。」
「俺ももとは宝石商の生まれだ。」
「隊商の荷車がゆりかごみたいなものだった。」
「宝石は富と権力の象徴だから、俺が渡り歩いた国はどこも活気にあふれ夢のような栄華を極めていたものだ。」
「だがそういう国ほど驚くくらいあっさりと滅んでしまう。」
「そんな光景を幾度も見てきた。」
「侵略、内乱、あるいは天災。」
「なんにせよその兆しが現れた時、奴らは問題を先送りにする。」
「そしていつしか積もり積もった災いの火種が破滅を呼び寄せるのだ。」
「思考を止めることは死ぬことと同じだ。」
「考え続け新しいものを取り入れなければこの魔界で生き残ることはできない。」
「だから俺は今までの魔界にはない方法で俺の理想郷を築くことにした。」
「そう、今までどんな魔王も試したことのない新たな方法で。」
「これが砂の都ファラザード。俺の自慢の国だ。」
「ここまで国を大きくするのは苦労したぞ。」
「ジャリムバハ砂漠の小国家群をあの手この手で統一しなきゃならなかったからな。」
「まだ解決すべき問題はごまんとある。」
「シシカバブ団みたいな連中はファラザードの闇の部分とも言えるな。」
「だが俺の野望はファラザードに留まらない。」
「この魔界はもっと新しく、もっと刺激的な面白い世界にできる。」
「それを成し遂げられるのは大魔王になった俺だけだ。」
「お前の方は早く元の身体に戻りたい一心だろうが、俺が大魔王になるまではキリキリ働いてもらうから覚悟しろよ。」
「明朝、デモンマウンテンへ出発だ。」
「俺の足手まといにならぬよう、自分の部屋でしっかり休んでおけよ。」


次の日、魔王の正装に着替えたユシュカとともに、魔仙卿に会うためデモンマウンテンへ向かった。
大審門前に行くとアスバルとヴァレリアがすでに到着していた。
「やはり貴様がファラザードの魔王だったか。」
「あまりに遅いのでもはや来ないものと思っていたがな。」


3人の魔王が大審門の前に立つ。
「大審門よ!役者は揃ったぞ!」
「魔仙卿への道を開くがいい!」


大審門から声が聞こえてくる。
「相克する天運を持つ者集いし時、大魔王への道は開かれる。」
「今こそ時は満ちた。」
「王の試練を乗り越え、いざ頂へと来たれ。」
大きな音をたてながら大審門が開いた。


アスバル、ヴァレリア、ユシュカ、そして主人公は大審門の中に入っていった。


魔王達はデモンマウンテンの試練を乗り越え、頂きを目指す。
途中、ユシュカを恨み追いかけてきたシシカバブの襲撃を受ける。
主人公とユシュカは協力してシシカバブを倒した。
「シシカバブよ。お前が持っている底なしの体力と打たれ強さほどファラザードのため役立つものはない。」
「今日からお前をファラザード軍の特攻隊長に任命する。」
「盗賊団の仲間もまとめて俺のものになれ。」
「その代わり俺がお前に生きる意味と居場所を与えてやる。」
「それが契約だ。」
ユシュカはシシカバブを仲間にした。
「俺が大魔王になって帰るまでファラザードを守ってくれ。」


シシカバブが言う。
「こんな頭が悪いオデでも役に立つなんて言ってくれたのはユシュカが初めてだ。」
「ガッテン承知!ファラザードのことは特攻隊長シシカバブ様に任せておくど!」


デモンマウンテンの頂上付近にやって来た。
するとヴァレリアがスッテンテンという弱そうな魔物に大矛を向けていた。
アスバルもいる。
「その物騒なものをしまえよ、ヴァレリア。」
「いったい何の騒ぎだ?」


スッテンテンが言う。
「ワイは旅の商人スッテンテン。」
「大魔王になるためにデモンマウンテンをエッコラヤッコラ登ってきたものの、そろそろ疲れも出てくる頃。」
「そこでここまで生き残った皆さんで野営をしてはどうかと考えたのですじゃ。」
「ですがこのお美しい方がワイを恐ろしいエモノでテンツクツンと。」
「ワイは運良くここまで登ってこられたですじゃ。」
「こんな非力なワイにできることといえば、ウットリするような安らぎの一時をドドーンと提供するくらい。」


ユシュカが言う。
「よし。では世話になろう。」
「実際ここまで来てヘトヘトだろ。」
「この先で待ち受ける試練を考えれば体力を回復しておくに越したことはない。」


ヴァレリアが言う。
「貴様ら、共謀しているのではあるまいな?」


「気になるなら見張っていたらどうだ?」
「焚き火のそばで休むだけだぞ。」


魔王たちは焚き火を囲み休憩をとることにした。
「こうやって三国の魔王が一堂に会するのははじめてだな。」
「小うるさい部下や母親の監視もないんだ。」
「気兼ねなくお互いのことを話そうぜ。」


アスバルが言う。
「その手には乗らないよ。」
「いつもそうやって甘い言葉を囁いて自分の思い通りにしようとするんだ、お前は。」


「そう邪険にするな。」
「これが交易で生きてきた俺のやり方なのさ。」
「いつかゼクレスやバルディスタとは大々的に交易をしたいと考えている。」
「長い目で見ればお互いに益はあるはずだ。」
「だが目先の利益だけでは物事は動かない。」
「昔ゼクレスではそれを思い知らされたな。」
「あれは大きな失敗だった。」
「アスバルとはうまくやれると思ってた。」
「お互いの益になる取り引きをしたはずが、少しすれ違っただけで全部台無しだ。」
「ただ自分でもなんとなく感じてたんだ。」
「俺の中で何かが欠けてる。」
「利益よりももっと重要な何かが。」
「その時、師匠に大切なことを教わった。」
「俺が幼い頃から世話になってるアストルティア出身のある旅人にな。」
「師匠は異郷の地アストルティアが発展してきた歴史を語ってくれた。」
「そこでは種族の異なる者達が集まり、それぞれの知識や文化が混ざり合ってひとつの大きな世界を築いたという。」
「考え方が違えばぶつかることもある。」
「そんな時はお互いに知恵を出し合ってより良い解決方法を編み出すのだと。」
「師匠の言うそれは協調というものらしい。」
「魔界にはない概念だが、俺にはすぐ分かった。」
「この魔界に足りなかったのは他者を受け入れて交ぜ合わせ、新しい価値を生み出すことだと。」
「たとえ立場や利害が違う相手でも協調することで強く大きくなれる。」
「そこに血統や権威、恐怖や暴力なんて必要ないんだ。」
「どうだ、こんな考え方がお前達にできるか?」
「新しいものを取り入れ滅びを回避できるか?」


ヴァレリアが言う。
「よくも御託をべらべらと。」
「協調だと?笑わせるな。」


「アストルティアにはまだまだ未知の可能性が眠ってるに違いない。」
「そこで向こうの世界に行く方法をあれこれと思案していたら、なんとバルディスタが門を開いてくれてな。」
「礼が遅れた。感謝してるぞ、ヴァレリア。」


ヴァレリアが言う。
「彼の地に進行した際、何者かの手で妨害され我軍は撤退を余儀なくされた。」
「貴様の仕業か。大いに納得した。」


アスバルが言う。
「それにしても君がアストルティアに抜け駆けして行ってたなんて僕も初耳だな。」
「さぞや楽しい旅だったんだろうね。」


「いじけるなよ、アスバル。」
「俺が大魔王になったら夢はすぐそこだ。」
「今度こそ俺達とアストルティアに行こう。」


アスバルが言う。
「お前なんかには頼らない。」
「大魔王になるのはこの僕だ。」


ヴァレリアが言う。
「とんだ茶番だな。」
「異郷の地は我らバルディスタが征服する。」
「先の侵攻で奴らのチカラがどの程度のものかは理解できた。」
「噂の勇者姫も期待していたほどの強さではなかったな。」


アスバルが言う。
「そういう油断が命取りになる。」
「アストルティアの何を理解したというんだ?」
「君こそ考えが甘いんじゃないのか。」


ユシュカが言う。
「大魔王になったらこういう奴らを一つにまとめなきゃならないんだ。」
「まったく楽じゃないぜ。」


主人公は3人の魔王達と焚き火のそばで休んだ。
休憩が終わり、ついに3人の魔王たちが頂上にたどり着く。
突然スッテンテンの様子が変わる。
「ひょうきんな旅の商人スッテンテンとは仮の姿。」
スッテンテンは巨大な魔物に姿を変えた。
「その正体はデモンマウンテンの門番、デモンズゲイト。」
「大審門を開いた相克する天運を持つ者達。」
「この場所に至るまでそのチカラを見定めてきたのだ。」
「これがデモンマウンテン最後の試練。」
「我こそは魔仙卿に会う資格ありと証明してみせるがいい。」
デモンズゲイトは4体に分裂した。
襲いかかってくる2体のデモンズゲイトを主人公とユシュカが協力して倒す。
それと同時にヴァレリアとアスバルもデモンズゲイトを倒したようだ。


デモンズゲイトが元のスッテンテンに姿を変える。
「相克する天運を持つ皆様、どうぞこの先へお進みくだされですじゃ。」


先へ進むと濃い霧が立ち込め、皆バラバラになってしまった。
一人になった主人公が奥に進んで行くと、ジャディンの園があった。
中央の玉座に巨大なモーモン・モモリオン王が座っている。
「ここは魔界の桃源郷・ジャディンの園。」
「モーモン王国と呼ぶ者もおるがな。」
「ワシはか弱き魔物たちの王・モモリオン。」
「してそなたは何用で来られた?」
主人公は事情を説明した。
「ほう、魔仙卿とやらを捜しにまいったか。」
「だがそのような者は知らんのう。」
「そんなことより、青きバラのように麗しい我が妻・アントワネットが行方不明なのだ。」
「癒やしのチカラを持つ彼女を失い、この楽園は謎の奇病に苦しんでおる。」
「ここへ来たのも何かの縁じゃ。」
「ワシの国を救ってくれんか。」
主人公は苦しんでいる魔物たちに薬草を渡し、癒やしてあげた。
「そなたの答え、見せてもらったぞ。」
「これなるは王の審判。」
「そなたも魔王たちの答えを見るがいい。」


モモリオン王に大矛を突きつけているヴァレリアの姿が見える。
「この世に救いなどない。」
「自らを救えぬ者に生きる道はない。」
「ならば弱者は強者に喰われるのみ。」
「それこそがこの世の理だ。」
ヴァレリアはモモリオン王を殺してしまった。


魔物たちに囲まれているアスバルの姿が見える。
「あがくから傷を負う。」
「求めるものがあるから苦しいんだ。」
「全てを諦めてしまえばいい。」
「全てを受け入れてしまえばいい。」
「死を恐れることはない。」
「死とは平等に訪れる安息なのだから。」
アスバルは楽園に暮らす全ての魔物を滅ぼしてしまった。


魔物たちの前で演説しているユシュカの姿が見える。
「皆、聞け!」
「民が苦しむのは王の悪政あってこそ。」
「ゆえに頭をすげかえるしかない。」
「今日からは俺がお前達の王だ。」
「守ってやるからついてこい。」
ユシュカは玉座に座った。


モモリオン王が主人公に言う。
「さて、誰が大魔王にふさわしかろうな。」
「ともに見極めようぞ。」
モモリオン王は魔仙卿に姿を変えた。
「我こそは魔仙卿。」
「託宣をもって魔界を守りし者。」
「さあ、そなたも神殿の中へ進むがいい。」
魔仙卿は神殿の中に入っていった。


気がつくと玉座に本物のモモリオン王が座っている。
「やあやあ主人公。驚かせてしまったかのう。」
「魔仙卿様のお茶目でな。」
「このプリチーボデーを貸しておったのじゃよ。」
「ワシらモーモン族は生意気だからと魔界で迫害を受け滅びようとしていたところを魔仙卿様に救っていただいたんじゃ。」
「魔仙卿様はゴダ神殿でそなたが来るのを待っているようじゃぞ。」
「早く向かいなされよ。」


隣にはアントワネット妃もいる。
「ごきげんよう、主人公。」
「わらわこそが青バラの女王、アントワネットなのだわ。」
「ちょっぴり迷子になりやすいのが魅力よ。」
「迷っていたら手を貸していいのだわ。」


主人公がゴダ神殿に入ると、すでに3人の魔王達が揃っていた。
魔仙卿が魔王達に言う。
「さて、今の世の魔王達よ。」
「幾度の試練を乗り越えよくぞ参った。」
「そなた達がここへ来た理由を我は知る。」
「これより魔界に訪れる、大魔瘴期。」
「魔瘴は魔族や魔物を生み出したが、大魔瘴期のそれはあまりに濃密。」
「その中では何者も生き残れぬ。」
「それは未曾有の災厄となろう。」
「そなた達が大魔王選出へ名乗りをあげ魔界の統治者たらんと欲したのもこの災厄に抗うためであろう。」


ユシュカが言う。
「そこまで分かっているなら話は早い。」
「さっさと俺を選べ。」
「一刻も早く魔界統一を成さねばならん。」


ヴァレリアが言う。
「下がっていろ、宝石売り。」
「貴様ごときが大魔王に相応しいなど、小賢しい口で吠えるな。」
「最強の武力を有する我がバルディスタは魔界に生きる者達の新天地としてアストルティアを選んだ。」
「そして侵攻はすでに始まっている。」
「生きるとは弱肉強食。」
「その理をアストルティアの弱者どもに思い知らせてやろう。」


アスバルが言う。
「すべての魔族を救おうなんて君も甘い人だな。」
「ゼクレス魔導国は提唱する。」
「優れた魔族のみ選別することを。」
「魔瘴から身を守る魔導シェルターを作り、優秀な魔族だけを選んで生かせばいい。」
「その者達が次の魔界を導くだろう。」
「アストルティアの者どもが我らをどう思っているか知っているか?」
「関わらないほうが身のためだ、そう思ってるんだ。」


ユシュカが言う。
「お前達の提案にはなんの面白みもない。」
「アストルティアへ侵攻?」
「いつまでそんな旧来のやり方にとらわれている?」
「優秀な魔族を選別?似たような連中ばかり生かした先に新しい時代なんて来るものか!」
「このユシュカが示そう。魔界の未来を。」
「アストルティアには長い歴史の中で培われた魔瘴への対抗策があると聞く。」
「それを交渉によって手に入れる。」
「我らはアストルティアの民の手を借りてこの危機に立ち向かうべきだ。」


ヴァレリアが言う。
「アストルティアの弱者共の手を借りるだと?」
「貴様に魔族の誇りはないのか?」


「お前にはわからないだろうな、ヴァレリア。」
「だがこれが魔界を救うための唯一の道。」
「俺の掲げる協調だ。」
「アストルティアの民の中にも利を説いてやれば、主人公のように俺に従うものがいるはずだ。」


魔仙卿が言う。
「そなたらの考え、あいわかった。」
「それでは魔選の儀礼場へ参ろうぞ。」
「これより大魔王選出の儀を始める。」


主人公と3人の魔王たちは奥にある魔選の儀礼場へ向かった。
「はたして誰が大魔王に相応しいか。」
「たずねてみるとしよう。」
天井から闇の手が出現する。
「そは異界より訪いし者。」
「闇の深淵にうごめく始源のかいな。」
「ここに新たな魔界の統治者を示したまえ。」
闇の手は主人公の前で迷いを見せたが、大魔王を選ぶことなく消えていった。
「そなた達3人の魔王の中に大魔王に相応しい者は一人もおらぬ。」
「魔王ヴァレリア、そなたは世界を憎むあまりさらなる地獄へ皆を引きずり込もうとしている。」
「それは私憤でしかない。」
「魔王アスバル、そなたは他者どころか自分を救うことすら諦めている。」
「それは絶望でしかない。」
「そして魔王ユシュカ。そなたは自分こそが唯一選ばれし者だと思い込んでいる。」
「だからこそまわりの者を見下している。」
「自分に仕えるべき存在だと考えている。」
「それは傲慢でしかない。」
「しかしこの中でたった一人大魔王となり得る可能性を秘めた者がいる。」
「それは・・」
魔仙卿は主人公を指差した。
「この者だ。」
「この者は病気の魔物1匹1匹に声をかけ、その病を癒してまわった。」
「その優しさは王者の器たりうる。」


ヴァレリアが言う。
「失望させてくれるな、魔仙卿とやら。」
「このようなカビの生えた儀式に期待して出てきたことがそもそもの間違いか。」
「私は私の覇道を征くまでだ。」
ヴァレリアは去っていった。


アスバルが言う。
「まったく、あまりの非礼に言葉もないな。」
「やはり下賤なる者達とともに生きることなどできないということか。」
「さようなら、ユシュカ。」
アスバルは去っていった。


ユシュカが言う。
「こいつが大魔王に相応しい?」
「なんの覚悟も持たない者が?」
「何ひとつ背負うものすらない者がか?」
「魔仙卿よ。たしかに俺は皆を下に見ているが、それは民を守るべき存在と考えるからだ。」
「それこそが俺の信念であり、王道。」
「だからここで引き下がるわけにはいかない。」
「俺が魔界統一を成さねば多くの民が死ぬ。」
ユシュカが主人公に剣を向ける。
「俺と戦え。」
「今ここで示さなくてはならん。」
「大魔王に相応しい者は俺だけだとな。」
「魔仙卿も俺が勝ったら目を覚ますだろうよ。」


魔仙卿が言う。
「よかろう。」
「そなたの思う大魔王の資質とやら、示してみせよ。」


魔王ユシュカと主人公の戦いが始まった。
戦いは長引き、勝敗はなかなか決しない。
「両者そこまでだ。」
「これでは永遠に勝負がつかぬ。」


ユシュカが言う。
「死にかけだったお前がここまでやるとはな。」
「さすが俺が見立てただけのことはある。」
「だが大魔王に相応しい者はこの俺だけだ。」
「何を言われようとそれは変わらん。」
「俺は俺のやり方で魔界を統一する。」
「次に会う時は敵同士かもな。」
魔王ユシュカは去っていった。


「気に病むな。この結末はそなたのせいではない。」
「魔界もまた人界に同じ。」
「真に相応しき者が王者とならねば民は惑い苦しみ、その果てに死ぬ。」
「そなたとて大魔王の器はあれど、覚悟も志もなくばその任は果たせまい。」
「そなたが何故ここへ来たか。」
「我はすべてを知る。」
「元の姿へ戻りたいのならば、魔族の祖たるチカラに触れねばならぬ。」
「それは大いなる闇の根源と呼ばれる。」
「全ての魔瘴の源であり、魔界を魔界と成さしめる存在。」
「そなたは悪しきチカラと聞いていよう。」
「だがチカラは使い方によって意味を変える。」
「さあ、ついてくるがよい。」


根源の祠にやってきた。
祠には巨大な魔像が祀られている。
「さて、そなたの旅は長く厳しいものだったろう。」
「時には異なる時代に渡りながら、また時には落命の危機にさらされながら、ついに魔界へまでやってきた。」
「我はそなたに敬意を表しよう。」
「よくぞ我のもとへたどり着いた。」
「我はそなたを知る。」
「そなたの中には限りない光がある。」
「たとえ闇の底に落ちようと、決してその光が消えることはない。」
「この像は魔瘴の結晶で出来ている。」
「大いなる闇の根源に繋がっているとはるか昔から伝えられるものだ。」
「歴代の大魔王たちもこの像を通じて闇の根源との契約を結んできた。」
「此度はそなたを元の姿へ戻すためにそのチカラを借りるとしよう。」
「魔瘴を統べるものは魔瘴の根源なれば。」
「これより大いなる闇の根源との接触をはかる。」
「さあ、この像に手を。」
主人公が魔像に触れると、魔像の中に引き込まれた。


どこからか声が聞こえる。
「主人公なら・・超えられる。」


闇の根源の幻影が主人公の前に現れる。
「私は幻影。」
「眠れる者の死の吐息。」
「光と闇の交わりし者よ。」
「そなたに問おう。」
「そも、貴様の真の姿とは何か。」
「5000年の時を超えた赤子が今を生きていると言えるのか。」
「仮初の肉体で生きながらえた時、貴様は真に貴様であったか。」
「神すら殺した者は果たして人と呼べるのか。」
「二度死せる者に、はて、魂は残っているのか。」
「私は無をもって全を知る。」
「故に知らしめよう。」
「その醜き姿こそが貴様の魂のうつしみなのだと。」
主人公は襲いかかってくる闇の根源の幻影を倒した。


根源の祠に戻されると、大きな地響きとともに魔像に亀裂が入った。
亀裂がどんどん増え、魔像が砕ける。
魔仙卿が驚く。
「像が砕けるとは・・」


砕けた魔像の中から銀髪の少女が現れる。
少女の両手首にはそれぞれイバラが巻かれている。
「あなたの光が私を導いた。」
銀髪の少女の身体が金色に輝き、主人公の身体にある魔瘴をすべて吸い取った。
「あなたはあなたのままでいい。」
主人公の姿が元に戻る。


魔仙卿が言う。
「魔瘴を操るとは、そなたは一体・・」


少女の名前はイルーシャと言うようだ。
「私はイルーシャ。」
「分かるのはそれだけ。」


「魔瘴の結晶より生まれし者か。」
「我の座へ参られよ。話を聞くとしよう。」


主人公達はゴダ神殿に戻った。
「さて、まずは無事元の姿に戻れたようで喜ばしい限りであるな。」
「そなたが闇の中で出会ったもの、それは大いなる闇の根源の影。」
「ほんのカケラに過ぎぬ。」
「それでもそのチカラに打ち勝てたことは大きな意味を持つだろう。」
「これから魔界を襲うであろう大魔瘴期。」
「これを食い止めねば魔界もろともアストルティアは滅ぶ。」
「いずれ我はそなたに助力を求めるだろう。」
「その時はどうか応えてくれ。」
「イルーシャ、そなたが何者なのか我はまだ見極めておらぬ。」
「ゆえにこのジャディンの園でしばらく保護させてもらうとしよう。」
「さいわいジャディンの園は弱い魔物たちの保護区となっている。」
「そなたに危害が加わることもなかろう。」
魔仙卿が指を鳴らすと真っ白いモーモンが現れた。
「この者にそなたの世話をさせよう。」


モーモンがイルーシャに近づく。
「モモモです!なんでもお申し付けを!」


「さて、気がかりは3人の魔王たちだ。」
「彼らは忍ぶことを知らず、あまりに誇り高い。」
「おそらくその胸に怒りを燃やし、思うままに我が道を突き進むだろう。」
「その激情は、時に己が身すら焼き尽くす。」
「魔界に火が放たれる日は近い。」


「主人公、あなたに渡したいものがある。」
主人公はイルーシャから転魔の刻印を受け取った。
「私があなたの中から魔族のチカラを取り出してこの刻印に収めた。」
「だからあなたは元の姿に戻ったの。」
「あたたかい光、あなたの中から溢れてくる。」
「それを受け入れるべきか拒むべきかすら今の私には分からないことなの。」


魔王ヴァレリアはバルディスタ要塞に戻り兵を集めていた。
「皆の者!武器を持て!」
「魔界を征するのは我らバルディスタだ!」


ゼクレス魔導国に戻った魔王アスバルは、完全にエルガドーラ王太后に支配されていた。
「お前は私の人形。」
「偉大なるゼクレスの生贄。」
「生まれた日から永遠に。」


砂の都ファラザードに戻った魔王ユシュカがナジーンと話をしている。
「万事つつがなく進行しております、魔王ユシュカ。」
「全てはファラザードのために。」


―次回、魔界大戦―