主人公は、母親マローネと久しぶりの再会のため、パドレア邸に向かった。
「ああ、主人公、大変な時なのに、わざわざ来てくれたの。あなたの無事な姿を見られて嬉しいわ。」
「神代の島で、起こったことは聞きました。メレアーデとユーライザさんがパドレを家まで連れて帰ってきてくれたのよ。」
「あの人なら今は寝室で休んでいるわ。キズが治るまできちんと見ているからどうか安心してちょうだい。さあ行ってらっしゃい主人公。」
「パドレとふたり、愛しいあなたの帰りをこの家で待っているわ。」
パドレと話をする。
「主人公。見舞いに来てくれたのか。心配をかけてすまなかった・・・。」
「マローネと約束したのに少し無理をした。」
「俺はありったけの時渡りのチカラをお前にそそぎこんだ。しかし、それでも神話の時代へ送りだすには足りなかった。」
「その時、不意に、身体が軽くなってな・・。何か不思議な存在がお前を送りだすため俺たちに協力してくれたようだった。」
「あれがなければ俺は 自分の命を燃やし尽くしていたかもしれないな・・」
「一命を取り留めたとはいえお前と肩を並べて戦うのは難しそうだ。しばらくは休養につとめるとしよう。」
「マローネと共に無事を祈っている。己の果たすべき使命に全力で取り組め。決して後悔のないようにな。」
メレアーデが相談したいことがあるとのことで、王国軍司令部に足を運んだ。
「ああ、主人公!来てくれてうれしいわ。」
「手紙を見て来てくれたのね。ありがとう。」
「あなたに是非相談に乗ってもらいたいことがあるのよ。」
「あのね、パドレ叔父様も無事に帰ってきて、この国もようやく落ち着いたでしょう?」
「で、私すっごく重大なことを忘れてしまっていたことに気がついちゃったの。」
「それは現代のアストルティアの皆さんに突然現れたこのエテーネ王国の存在を説明すること。」
「自分たちのことで手一杯ですっかり忘れててわ。」
「今のアストルティアでこの国は完全に孤立してしまっているのよ。」
「私たちはこれから現代のアストルティアで生きていかなければならない。」
「そのためにも、他国とは良好な関係を築いていかないとね。」
「だからアストルティアの中の要人をお招きしてこのエテーネ王国のことを知ってもらう式典を開催しようと思うのよ。」
「それでね、もちろん私も頑張るんだけど、かなり大規模にやる予定だから、ちょっと人が足りなそうで。」
「主人公にも手伝ってもらえたら嬉しいなって思ってるんだけど、手を貸して貰えないかしら?」
主人公は頷いた。
「本当?ありがとう!」
「一緒に素敵な式典にしましょうね。」
「で、それはそれとして・・もうひとつあなたに言いたいことがあるの。」
「主人公、あなた冒険ばっかりで最近実家に帰ってないでしょ。」
「せっかくパドレ叔父様が帰ってきたんだから、もっと顔を見せてあげなきゃ。」
「マローネ叔母様だって寂しがってるはずよ。」
「式典のお手伝いについては後で伝えるから、パドレア邸に帰って叔父様と叔母様に顔を見せてあげてちょうだい。」
先ほど会いに行ったばかりだったが、メレアーデに言われたので、再びパドレア邸に向かった。
「まあ、主人公。おかえりなさい。」
「来てくれてうれしいわ。」
「毎日冒険続きで疲れているでしょう?」
「たまには家でのんびり過ごすのもいいんじゃないかしら。」
「そうだわ、庭の花が綺麗に咲いたから一緒に見にいきましょう。」
「きっといい気分転換になると思うわ。」
主人公は、マローネと一緒に庭に出た。
「今日は風が気持ちいいわね。」
「あなたとこうしてゆっくり過ごすことができて、とても嬉しいわ。」
「時間がある時に話してあげたかったの。あなたの生まれた時のこと。」
「あの日は私たち夫婦にとって人生で最良の日になった。」
「あの人ったら、小さいあなたを抱っこするのにずっとオドオドしっぱなしで。」
「うふふふふ、おかしいでしょう?」
「エテーネ王国でも指折りの剣士であるあの人が生まれたばかりの小さなあなたに苦戦するなんて。」
「でもね、そんなあの人の顔を見て、あなたは笑ってくれたのよ。」
「あなたはそこにいるだけで私たちにたくさんの幸せを与えてくれたの。」
「もちろん、今だってそう。」
「私たちはあなたのお父さんとお母さんになれて、とても幸せ。」
「だからもう一度この言葉を言わせて。」
「私たちのもとに生まれてきてくれてありがとう、主人公。」
「あなたのことを心から愛しているわ。」
パドレがやってきた。
「二人とも、ここにいたのか。なんの話をしていたんだ?」
「またこうして、親子3人で過ごす日が来るなど、思いもしなかったな。」
「お前たちにはもう会えぬものだと思っていたから。」
「キュロノスを倒すため、必要なことだと覚悟してはいたが、お前たちとの別れは俺にとって耐え難い苦痛だった。」
「もう二度とお前たちを、この幸せな時を失いたくはない。」
マローネが答える。
「どこにもいきません。私も、主人公も。」
「ずっとあなたのそばにいます。」
「私たちは、家族なんですから。」
「そうだわ、あなたの話を聞かせてちょうだい。」
「あなたの長い長い旅の話を。」
主人公は、マローネとパドレにこれまでの長い長い旅路の話を語って聞かせた。
二人は微笑みながら主人公の話に耳を傾け、親子の時間は過ぎていった。
そして夜が明けた!
「おはよう、よく眠れたかしら?」
「そういえばメレアーデの手伝いをするのよね。」
「それならひとつお使いを頼んでもいいかしら。」
「メレアーデにこう伝えてくれる?例の件なら問題ないから好きに使って。」
「できることは何でも協力するわ、って。」
「あの子も一人だと頑張り過ぎてしまうきらいがあるから。」
「どうか助けてあげてね。」
主人公はメレアーデに会いに行った。
「ああ、主人公。私もうダメ。」
「やることが多過ぎて、何だかクラクラするの。目の前でお星様が回ってる。」
主人公はメレアーデにマローネからの伝言を伝えた。
喜ぶメレアーデ。
「本当!?やったー!叔母様ありがとう!」
「アストルティアの人々を招くのにゲストハウスが必要なのだけど、ドミネウス邸もエテーネ王宮もなくなっちゃったから。」
「軍区画はお客様をお招きするには少し無骨すぎるでしょ?」
「だからパドレア邸をお借りできないかって相談してたの。」
「マローネ叔母様は私が困っているといつでも相談にのってくれて、チカラになってくれるの。」
「本当に実のお姉さんみたいね。」
「よし、叔母様が協力してくれるんだから、こんなところでへこたれてなんかいられないわ!」
「大変な仕事だけど、キリキリ働いてやり遂げなくっちゃね!うん!」
「これからお披露目式の本格的な準備が始まるわ。」
「しばらくはかなり忙しくなってしまうと思うの。」
「あなたもお披露目式が終わるまでは自由に動けなくなると思うのだけれど、準備を始めてしまっても構わないかしら?」
主人公は頷いた。
「主人公とメレアーデはエテーネ王国のお披露目式の準備に取り掛かった。」
「会場の準備、接待客リストや当日の進行確認、連日、目の回るような忙しさだったが、二人で力を合わせ準備を進めていった。」
「そしてついにお披露目式当日。」
「アストルティアの客人たちがパドレア邸にやってきた。」
ウラード国王がグロスナー王と話している。
「ところで、例の調査に関してですが、こちらから派遣した者はうまくやっておりますかな?」
クロスナー王が答える。
「うむ、大いに助かっておる。」
「恥ずかしながら、我が国は学者が不足しておってな。」
ウラード国王が主人公に気づく。
「おお、主人公ではないか。待ちかねておったぞ。」
「む?なんだ?めずらしい組み合わせだと言いたげな顔だな。」
「いや、なに。グロスナー王からドルワーム王立研究院宛にある依頼を受けており、その話をしていたのだ。」
「詳しくは話せぬのだがな。」
他の王たちとも話を終えると、いよいよ、お披露目式が始まった。
メレアーデは国の代表として各国からの賓客を立派にもてなし、客人たちは5000年の時を超えて現れたアストルティアの新たな仲間、エテーネ王国の来訪を心から喜び、歓迎した。
メレアーデがスピーチをする。
「各国よりお越しの皆様、私たちの暮らすエテーネ王国をアストルティアの一員として迎えていただき、心より感謝いたします。」
「私たちが共に手を取り合い、歩む未来が輝かしいものでありますように!」
「我らが故郷、アストルティアに栄光あれ!」
その瞬間、時が止まった。
主人公は動けるが、景色から色が消えている。
観客が次々と闇に呑まれ、消えていく。
そして、マローネも闇に消えていった。
何事もなかったように、時が動き出す。
色も戻っている。
スピーチを終えたメレアーデが主人公に近づいてくる。
「どうだった?ちゃんとできてたかしら。」
「私、緊張しちゃって。」
「どうしたの?何か探してるみたいだけど。」
主人公は今起きたことをメレアーデに説明した。
「マローネ?あなたのお母さん?」
「誰?それ。」
側で話を聞いていたパドレが言う。
「何を言っているんだ。お前の母親はマローネなんて名前じゃないし、お前を産んですぐ死んでしまった、はずだ。」
メレアーデとパドレは慌ただしくその場を離れていった。
「ほう、そなたは気づいたようだな。」
フードを被り、花柄のワンピースを着た赤髪の少女が主人公に近づいてくる。
右手には赤い水晶玉がついた魔法杖を持っている。
「今、そなたの目の前で起こったことは、夢幻ではない。全て現実じゃ。」
「そなたの母の存在はこの世からも人々の記憶からも跡形もなく消え失せた。」
「この場にいた他のものは誰も気づいてすらおらん。」
「認識できたのはそなたと我のみ。」
「これは前触れにすぎぬ。」
「いずれはアストルティアの全てが、この『創失』によって失われるであろう。」
「まったく要領を得ぬ、といった顔だな。」
「まあ、今は分からずとも良い。」
「母を救いたければ、先の戦いでジア・クト念晶体が残していった遺物を調べることだ。」
「この磁光石が鍵となるだろう。持っていくが良い。」
主人公は磁光石を手に入れた。
「オーガの王がそなたを導くだろう。」
「未知の大地に全ての答えがある。」
「行け。アストルティアを救うために。」
「そなたの働き、期待しているぞ、主人公」
謎の少女は忽然と姿を消した。
ひとまず、軍団長室にいるメレアーデのもとへ向かった。
「主人公!体調は大丈夫?ずいぶんと真っ青な顔をしていたから。」
「おかげでお披露目式は大成功。アストルティアのみんなに、このキィンベルを気に入ってもらえて本当に嬉しいわ。」
「ちゃんとできるか不安だったけど、あなたと叔父様のおかげで最後までやり切ることができたの。本当にありがとう!」
「あ、そうだ。忘れるところだった。」
「ガートラント王国のグロスナー王があなたに何か用事があるみたいなの。」
「オーグリード大陸のガートラント王国。お城の玉座の間にいらっしゃるはずだから早く行ってあげて。」
「ねえ、主人公。本当に大丈夫?ひとりで何か抱え込んでいたりしない?」
「私にできることがあったら、何だって協力するから言ってちょうだいね。約束よ。」
主人公はガートラント王国のグロスナー王に会いに行った。
「おお、主人公か。呼び立ててしまい、すまぬな。」
「キィンベルの式典では世話になった。」
「覚えておるだろう?我がオーグリード大陸に突如ジア・クト念晶体が出現させた結晶の塔のことを。」
「そなたの活躍のおかげでかの脅威を退けることができたわけだが。」
「オーグリード大陸の西、バカンウグレ遺跡にジア・クト念晶体が残したものと思われる別の遺跡が発見されたのだ。」
「異界の者の手で作られたと推測されるだけあり、これが実に得体の知れぬモノでな。」
「周囲に害をなす危険性も否定できんため、この残骸の調査を行わせているのだが、どうにも難航しているようなのだ。」
「調査の参考とするため、現場の責任者がジア・クト念晶体と直接戦ったそなたの話を是非聞かせてほしいと言っておる。」
「すまぬがバカンウグレ遺跡に向い、調査の責任者に会ってきてくれぬか。」
「バカンウグレ遺跡へはこの大陸のザマ峠の北西にあるバカン山道から行くことができる。よろしく頼んだぞ。」
主人公がバカンウグレ遺跡へ向かうと、ドゥラ院長が待っていた。
「バドリー岩石地帯に現れた塔と同じく、ジア・クト念晶体が残したとされるこの遺物・・」
「もともとガートラント王国だけで調査を行なっていたそうなんですが、専門家が足りず、難航していたようです。」
「そこで、アストルティアで最先端の技術力を有するドルワーム研究院の長であるこの私が招かれたと言う訳です。」
謎の装置の前に移動する。
「これはジア・クト念晶体が使用していたなんらかの装置だと推測されますが、詳しいことはわかっておりません。」
「彼らは、我々をはるかに超越する技術力を持った生命体だったようですね。」
「いろいろと試してみてはいるのですが、肝心の動力源が切れているようで、装置を起動させることすらできないのです。」
「ジア・クト念晶体と戦ったあなたであれば、この装置が何か見当がつくのではないかと思い、お呼びした次第でして。」
主人公が装置に近づくと、ポケットに入れていた磁光石が光り輝きだした。
磁光石に装置が反応しているようだ。
装置をよく見ると何かをはめるような窪みがある。
主人公は迷わず、磁光石を窪みにはめた。
気がつくと、主人公とドゥラ院長は別の場所へ転送されていた。
「どうやら私たちはあの装置によってどこかへ飛ばされてしまったようです。」
「あれはジア・クト念晶体の転送装置だったのですね。」
「主人公さんが持っていた石は彼らのエネルギー貯蔵器でしょうか。」
「装置と合わせて検証しなければ。」
「しかし、ここはどこなのでしょう。地形の特徴を鑑みるに、オーグリード大陸ではなさそうですが。」
「この装置は、バカンウグレ遺跡のものと同じものでしょうか?」
「しかしずいぶん長い間、放置されているように見受けられます。」
「とりあえず周辺の状況を確認した方が良さそうですね。」
「私は北側を調べてみましょう。」
「主人公は南側の調査をお願いできますか。」
「何か気になるものを発見したら私に報告してください。」
南側を調べると、ジア・クト念晶体のようなものを発見した。
「ジア・クト念晶体!?オーグリード大陸のバドリー岩石地帯以外に彼らの爪痕が残る土地があったとは。」
「バドリー岩石地帯の封鎖区画には彼らの建てた拠点らしき塔があったようですが、ここにはそのようなものは見当たりません。」
「周辺の様子を見る限りでは大きな危険はなさそうですし、ひとまず安心してよさそうですね。」
「ふむ、今ある情報だけでは、ここがアストルティアのどこか特定するのは難しそうですね。」
その時、アストルティアにはいない魔物が襲いかかってきたが、主人公が撃退した。
「今の魔物・・私の記憶が正しければ、アストルティアで確認されていないものです。」
「もしかして新種か?」
ドゥラ院長は、ふと、星空を見上げた。
「え?この星の配列は・・まさか、あり得ない。」
「いや、でも、しかし、ひょっとするとさっきの魔物も?」
「すごいぞ、なんてことだ。」
「先ほど我々の前に現れた魔物は、アストルティアで確認されていないものです。」
「私もはじめはただの新種かと思いました。」
「ですが、ここの天体を視認したところ、我々の知るそれとは似ても似つかない観測上あり得ない配列をしています。」
「自分で言っていても信じがたい話ですが、これらの事象から導き出される答えはただ一つ。」
「私たちはアストルティアではない未知の世界に来てしまったのです!」
「ともかくこれは歴史に残る重大な発見と言えるでしょう。」
「ただちに調査を開始したいところですが・・」
「先ほど現れたものの他にも危険な魔物が生息している可能性は否定できませんからね。」
「一旦アストルティアに戻ってガートラント城にいらっしゃるグロスナー王にこのことをご報告しなければ。」
「調べたところ、この装置は遺跡にあったものと対になっていて、問題なく使用できそうです。」
「これを使い、アストルティアに戻りましょう。」
主人公はドゥラ院長とともに、グロスナー王に報告することにした。
「では、あの装置はジア・クト念晶体が使用していた転送装置で、未知なる世界につながっていると?」
「だとすると、その世界はジア・クト念晶体が支配する危険な地ではあるかいか。」
「結晶があるのも確認したのだろう?」
ドゥラ院長が答える。
「恐れながら、もしそうであれば周囲にジア・クト念晶体の拠点なりがあるのが自然ではないかと。」
「彼の地をジア・クト念晶体が支配する領土だと断ずるのは早計に思います。」
「それを確かめるためにも探索すべきです。」
「生態系や天体だけではない、あの地にはアストルティアに存在しない様々な可能性が眠っている。」
「ただちに大規模な調査隊を結成し、未知の大地の調査に向かうべきだと私は考えます!」
「あの世界の存在は、必ずやアストルティアの発展において有益なものとなるでしょう!」
「と言うのも・・」
グロスナー王が興奮するドゥラ院長を制止する。
「まあ待て、ドゥラ院長。」
「そなたの考えも理解できる。」
「しかしジア・クト念晶体のことを抜きにしてもどんな危険があるかわからぬではないか。」
「ガートラントの王として、我が国の兵の命をいたずらに危険に晒すわけにはいかぬ。」
「無論、そなたたちの命もだ。」
「そなたはどう思う?主人公。」
「未知の大地へ向かうべきだと思うか?」
主人公は、謎の少女が言い残したセリフを思い出し、グロスナー王に事の経緯を説明した。
「大切な者を救うため、自分は未知の大地へ旅立たなければならない、そう申すか。」
「何やら深い事情がありそうだな。」
「わかった!これまでアストルティアのため尽くしてくれたそなたの望みを無下にはできん。協力しようではないか!」
「ただちにドルワーム王国と協力してアストルティア中から有志を募り、異世界探索の調査隊を結成するとしよう。」
「そして、主人公をその調査隊の隊長、ドゥラ院長を特別技術顧問にそれぞれ任命する。」
こうしてガートラント王国が中心となり、アストルティア全体を巻き込む一大プロジェクトが発足したのだった。
主人公はドゥラ院長と共にグロスナー王のもとで未知の世界の調査の準備を進めて行った。そして・・ドゥラ院長が主導して行なっていた調査隊のメンバー選出も完了した。
その中の一人は、グランゼーラ王国の勇者姫、アンルシアだったが、約束の期日を過ぎても姿を見せない。
主人公はアンルシアの様子を見に行くことにした。
グランゼーラ城の西の塔にあるアンルシアの居室に向かうと、アンルシアはベッドで深い眠りについていた。
そこに賢者ルシェンダがやってくる。
「なるほど、グロスナー王の使いで来たのだな。」
「王には本当に申し訳ないことをした。」
「緊急事態ゆえ、こちらも気が回らなかった。」
「調査隊への参加を承諾する連絡をしてすぐ、突然倒れてな。」
「それ以来、ずっと眠り続けているのだ。」
「安心しろ、アンルシアは眠っているだけだ。身体に異常はない。」
「いろいろと手を尽くしたのだが、一向に目を覚まさん。」
「まるで何かを拒むかのように。」
「ただの呪いや病気のたぐいとは思えぬ。異常事態だが、こんな時頼りになるはずのシオン殿も突然姿を消してしまったのだ。」
「このグランゼーラに一体何が起こっているのか。」
「アンルシアの眠りを解く方法は私の方で探しておく。」
「何かわかったらお前にも知らせよう。」
「すまないがアンルシアは今回の旅に同行はできない。」
「グロスナー王によろしく伝えておいてくれ。」
ガートラント城に戻り、グロスナー王に報告すると、ドゥラ院長がやってきた。
「アンルシア姫はおいでにならないと・・」
「ずっと眠ったまま目を覚まさないとは心配ですね。」
「おっと、そうだ。」
「たった今他の調査隊のメンバーが揃ったところです。」
「みなさん、体調にご挨拶を!」
調査隊メンバー1・ヒューザ
「よ、久しぶり。」
「実入りの良さそうな仕事だったんでな。」
「調査隊とやらに同行させてもらうぜ。」
調査隊メンバー2・ジーガンフ
ジーガンフはオーガの猛者たちが住むランガーオ村の武闘大会チャンピオン。
「ジーガンフだ。マリーンの事件の時は世話になった。」
調査隊メンバー3・ナブレット団長
「へへ、俺はかわいい甥っ子、ラグアスに頼まれて参加したってわけさ。」
「自分の代理で遠い世界を見に来てくれってな。」
「おっと、こう見えて俺は腕も立つし、見知らぬ土地に行くのにサーカスの芸ってのは意外と役に立つぜ?期待しててくれよな!」
調査隊メンバー4・エステラ
「お久しぶりです、主人公さん。」
「また共に冒険できるなんて、夢のようです。」
「竜族代表として頑張らせていただきますね。」
調査隊メンバー5・アスバル
アスバルはウェディーの姿をしている。
「やあ、大魔王・・おっと、ここでは隊長と呼んだ方が良さそうかな。」
「ああ、この姿のことは気にしないで。」
「個人的にアストルティアの近況を調べていたら、君が隊長となって冒険の旅に出ると聞いてさ。」
「いてもたってもいられなくて来てしまったよ!」
調査隊メンバー5・メレアーデ
「お披露目式では主人公の言うことを信じてあげられなくてごめんなさい。」
「ひどい態度をとってしまって。」
「パドレ叔父様も同じ気持ちよ。」
「私の想いを伝えたら、私が不在の間、国を支えてくださると約束してくれた。」
「私はあなたの言うことを信じるわ。」
「マローネさんを捜すのに私も同行させてちょうだい!」
そこに、入隊希望者という一人の少女が乱入してきた。
容姿は、お披露目式で主人公が出会った謎の少女そっくりだ。
「えええ!?締め切りなんて聞いてないよう!」
「ねえねえ、何とかならないの?」
「どうしよう・・お師匠様に怒られちゃうよ・・」
主人公の姿を見つける少女。
「あ!ねえねえ、もしかして君、主人公?」
「わあ、お師匠様の言ってた通りだ!」
「はじめまして、あたし、ポルテ!」
「調査隊に入って主人公を助けるように師匠に言われたんだ〜。」
「んん?どうしたの?あたしのことじーっと見て。」
「あたしの顔に何かついてる?」
「お披露目式?何のこと?」
「君とは初めましてだよ。」
「お師匠ほどじゃないけど、あたし、特別な術が使えるんだよ。きっと役に立つよ!」
「いっくよ〜、見ててね〜。」
「むむむむぅ〜・・」
ポルテの体が光だすと、手に持つタネが発芽し、みるみるうちに花が咲いた。
「ね、ね、すごいでしょ?」
「だからあたしを調査隊に・・」
「主人公、お願い。あたしどーしても一緒に行かなくちゃいけないの!」
「あたしを調査隊に入れてよ!」
主人公は頷いた。
主人公の推薦もあり、調査隊に同行することになったポルテ。
ドゥラ院長がいう。
「まあ、隊長がそういうなら、何かの役に立つかもしれませんし、あなたの入隊を許可しましょう。」
「さて、これで調査隊が揃いました。」
「バカンウグレ遺跡の転送装置を使い、異世界へ旅立つとしましょう。」
「謎に包まれし、未知なる大地に火を燈せし我ら『燈火調査隊』、いざ出発!」
転送装置に向かうと、突然、時が止まり、側にあった兵士の像が跡形もなく消えていった。
他の調査隊メンバーには見えていないようだ。
そして時が動き出した時、ポルテが近づいてきた。
「消えちゃった・・今の見たよね?」
「お師匠様の言ってた通りだ。」
「これが『創失』・・」
「気づいているのはあたしたちだけ。」
「みんな像があったことすら覚えていないみたい。」
「『創失』はアストルティアに降りかかった呪い。」
「創生の力を奪われちゃうんだって。」
「『創失』の呪いは全ての存在を食い潰す。」
「このままいくとアストルティアそのものが消えてしまうだろうって。」
「創生の力っていうのは、すべてのものに宿る生命力見たいなもの。」
「これが弱まるとこの世に存在できなくなっちゃうんだ。」
「アンルシア姫が眠ってしまったのも『創失』に関係があるかも。」
「お師匠様が言ってた。」
「これから向かう未知の世界には『創失の呪い』を解く手がかりがあるんだって。」
「アストルティアを救えるのはあたしたちだけ。」
「なんとしてもその手がかりを見つけなきゃ。」
「行こう、主人公!」
「君のお母さんを助けるためにも!」
調査隊は転送装置で未知の世界へ移動し、探索拠点「はじまりの地」の設営を行なった。
ドゥラ院長がメンバー全員を集める。
「それではこれからの調査計画についてお話しさせていただきましょう。」
「拠点設営の際、撤去した結晶が塞いでいた先を見回ったところ、この始まりの地の周囲は広大な平野となっていることが判明しました。」
「さらにこの平野から東西南北へ続く道が発見されたのです。」
「皆さんには二人一組でチームを組み、平野の先の調査へそれぞれ向かっていただきたい。」
「僭越ながらバランスを考え、事前に私の方でチーム割りをさせていただきました。」
「まず、メレアーデ王女とジーガンフ殿。お二人には南の地の調査をお願いします。」
「ヒューザ殿とアスバル殿は北をお願いします。」
「ナブレット殿とエステラ殿には東に向かっていただきましょう。」
「そして、残る西の地は主人公隊長とポルテ殿、お二人に行っていただきます。」
「各地で何が待ち受けているかわかりません。十分な備えをしてから調査に向かってください。」
主人公とポルテが西の地に向かうと、『峠の祠』があった。
中に入ると、突然、金色の光が出現し、その光の中から半透明の女神が姿を現した。
「私は女神ゼネシア。この世界、果ての大地ゼニアスを守護する者。」
「あなた方は、ゼニアスの住人ではありませんね?」
ポルテが答える。
「はじめまして、女神様!」
「あたしはポルテ。こっちは燈火の調査隊の主人公隊長。」
「あたしたち、アストルティアという世界からジア・クト念晶体っていう奴等が残した装置を使ってこの世界に来ました。」
「アストルティアは今、『創失の呪い』に蝕まれていて、それを解く方法を探してるんです。」
「それであたしたち、この扉の先に進みたくて。」
「その、何とかならないでしょうか?」
「扉の先は、いわば禁足地。」
「この世界の秘密が眠る場所。」
「あなた方が求めるものは、そこで見つけられることでしょう。」
「この世界の神として、わたくしもあなた方の力になって差し上げたいのですが、古の戦いによりわたくしは力を封じられており、動くことがかないません。」
「ですが方法はあります。」
「この世界で星のオーラを探すのです。」
「南、北、東の地に赴き、そこで暮らす人々を助けることで星のオーラを手にできるはず。」
「この星封の結晶をあなた方に授けましょう。」
主人公は星封の結晶を手に入れた。
「星封の結晶に星のオーラを満たすのです。」
「さすれば道は開けるでしょう。」
「また、その結晶があればこの世界の様々な場所を自由に行き来することができます。」
「星々の加護のあらんことを。」
主人公は南の地、メレアーデ・ジーガンフ組に合流した。
「私たちはこの先で大きな町を見つけたの。」
「だけど取りつく島もなく門番の兵士に追い返されてしまって。」
「仕方なくここまで戻ってきたところだったのよ。」
ポルテが言う。
「この地方は創生の力が薄いんだなって思ってたけど、この辺りから少しずつ強くなってるね。」
「創生の力は全てを創り出し、全てを存在させる力のことだよ。」
「土も水も人も動物も、この世界に存在する全てのものは創生の力を宿してるの。」
「お師匠様の受け売りだけどね。」
ジーガンフが言う。
「ふむ、万物に宿るエネルギーか。」
「たしかにある流派の武術にも似たような教えはあるがな。」
「それで、これからどうする?門番に追い返されたが、もう一度あの町に向かうのか?」
「そうね、そうしたいけれど、まずは町に入れてもらう方法、つまり門番さんに信用してもらう方法を見つけなきゃ。」
「とりあえず今日のところはここで野営にしない?」
主人公は食材を集めてきた。
集めてきた食材をメレアーデに渡すと、それを見たジーガンフが言う。
「ん?お前が持っているのはマガマガタケだな。」
「毒はあるが処理すれば美味いキノコだ。」
「修行でよく山に籠っていたからな。」
「食事や料理も修行の一環だ。」
「この世界にもアストルティアと同じものがあるとはな。」
「こいつと魚でスープを作るなら、先にマガマガタケの下処理を済ませた方がいい。」
「鍋が沸騰したら毒消草と一緒に・・」
結局、ジーガンフが料理することになった。
主人公たちはジーガンフが見事な手際で作った美味しいスープで空腹を満たした。
食事の後、ジーガンフは幼馴染のマイユとアロルドと共に育ったこと、村で一番強い男がマイユと結婚できること、ある年の武道大会でアロルドに勝ちを譲られたこと、その悔しさに漬け込まれて伝説の悪鬼ゾンガロンに操られ暴走してしまったこと、勇者覚醒の証『世界中を照らした白い光』でゾンガロンは再び封印され、再び正気を取り戻したこと、真の勝者であるアロルドと花嫁のマイユが村から旅立つのを見送ったことを全て包み隠さず話して聞かせた。
メレアーデとポルテは目を輝かせながら話に聞き入っていた。
「あたしもメレちーもジーくんの話、感動しちゃった!」
ポルテがつけたあだ名「ジーくん」に衝撃を受けるジーガンフ。
「ジーくん!?」
「・・・ゴホン!その後俺はゾンガロンを倒すべく修行の旅に出たんだが、その間に奴は主人公の手で倒されていたらしい。」
「ああ、文句を言いたいわけじゃないんだ。」
「間に合わなかった俺が悪いだけだからな。」
「しかし己の武を懸ける目的を失って、この先自分は何をすべきか。」
「悩んでいたところに調査隊の話を聞いてな。」
「ゾンガロンを倒すための修行で鍛え上げたこの拳に相応しい強敵との出会い。」
「それがこの旅に俺が望むことだ。」
そこに、黒い鎧を着た騎士が現れた。
「先日、我が国を訪れたのは貴殿だな。」
「フーラズーラには見えないが・・」
「人間には見えぬのもまた事実。」
「悪いが言葉は信じられぬ。」
「貴殿らの正体、我が槍にて確かめさせてもらおう。」
主人公とジーガンフは襲いかかってくる謎の黒騎士を退けた。
「非礼をお詫びしよう、異国からの客人よ。」
「我が名はイルシーム。」
「アマラーク王国の戦士だ。」
「それでお前たちはどこから来たのだ?オーガなどという言葉は初めて聞いた。」
「人間以外の種族というのもな。」
メレアーデが説明する。
「私たちはとても遠い場所からこの地の調査にやってきました。」
「私たちの住む地ではオーガだけでなく、様々な種族が共存しているのです。」
イルシームが頭を下げる。
「そうなのか。俺もそうだが、ほとんどの者は国から出たことがない。」
「無知ゆえの無礼を重ねてお詫びする。」
「そして異国からの客人よ。もしよければお前たちを招待させて欲しい。」
「我が祖国、アマラーク王国へ来てくれ。」
アマラーク王国に入ると、フーラズーラという人喰いの魔物が人々を襲っていた。
ジーガンフがフーラズーラに蹴りを放つが、体をすり抜けてしまう。
全ての攻撃が空振りに終わった。
そこにイルシームが現れ、黒槍でフーラズーラを倒した。
それを見たジーガンフが驚く。
「あの化け物は一体なんなんだ?」
「俺の拳は効かなかったのに、なぜお前の攻撃は通用する?」
「それは、この槍、黒槍クバーラトの力だ。」
「黒槍クバーラトはフーラズーラに効くこの世で唯一無二の武器なのだ。」
「ただし、フーラズーラは倒したところでいくらでも湧いて出て、突如音もなく町中に現れては人間を食う。」
「この国ははるか祖先の代からフーラズーラの脅威に悩まされているのだ。」
「この国は危険だ。」
「故郷へ戻るなら止めはしない。」
「しかし、もしまだお前たちがこの国の調査を望むなら王に紹介してやろう。」
「アマラーク城へ来るといい。」
主人公たちは国王リズクに会いに行った。
玉座の間に入ると、側にイルシームもいた。
リズクが主人公等を出迎える。
「ようこそ、はるか異国からの客人よ。」
「我が名はリズク。このアマラークの王である。」
「しかし客人よ。そなたらも見たであろう?フーラズーラという正体不明の恐怖を。」
「一刻も早くこの国を去った方がいい。」
メレアーデが言う。
「陛下、この国の窮状を見たからこそ、帰るわけにはまいりません。」
「フーラズーラを倒せるかは分かりませんが、アマラークを救うため、協力させていただけませんか?」
「異国からの客人よ。そなたらの申し出に心から感謝する。」
「滞在中はこの城の客間を自由に使うといい。」
「客間は1階にある。まずはそこで休まれるといいだろう。」
主人公たちは、図書館でアマラークの歴史を調べた。
「はるか昔、砂漠の遊牧民の族長が新天地を求め、一族を連れて砂漠を出ました。」
「野を越え、山を越え、結晶の海を越え。」
「そして長く辛い旅の果てに緑豊かな土地と無人の城を発見しました。」
「今から300年ほど前のことです。」
「城には謎の黒い槍と共に、『この地に住むことなかれ』と刻まれた石板が残されていましたが、忠告は無視されました。」
「この世界、ゼニアスの環境は非常に厳しい。」
「緑豊かな地に聳え立つ堅牢かつ無人の城など奇跡に等しい。」
「豊かな土地と城のもと、人と文化が育まれ、いつしかこの地はアマラーク王国と呼ばれ、族長は王と呼ばれる存在になっていました。」
「ところが建国から100年、今から200年ほど前から人間を食う謎の魔物が現れるようになったのです。」
「しかし今更土地と城を捨てると言う選択ができるわけもなく、犠牲を許容しながらも我々はここに住み続けているのです。」
訓練場でアドハムという男に話を聞く。
「なんてったってフーラズーラを倒せるのは黒槍クバーラトを持つイルシーム卿だけだからな。」
「イルシーム卿はアマラーク最高の大戦士!」
「王から黒槍クバーラトを賜るのにもっとも相応しい英雄さ。」
「実際、イルシーム卿が黒槍クバーラトを持つようになって、ここ20年近くはフーラズーラによる死者数が激減してるらしいぜ。」
「卿は神出鬼没のフーラズーラに備えて一歳酒を飲まないし、妻を迎える気もないんだと。すげえ覚悟だよなあ。」
「けど、そんな完全無欠のイルシーム卿とはいえ、流石に食事や睡眠、入浴なんかの休息は取らざるを得ない。」
「その間は、俺とシャムスって男が黒槍クバーラトを預かり、警戒に当たってるのさ。」
同じ場所で訓練中のシャムスという男に話を聞く。
「フーラズーラは神出鬼没。」
「幽霊のようにいきなり音もなく現れては人間を食らって、また姿を消します。」
「そしてご存知かもしれませんが、やつらは黒槍以外の攻撃を受け付けないのです。」
「もし黒槍を持たぬ者がフーラズーラと出会ってしまったら、逃げるしかありませんが、そう易々と逃してもくれません。」
「しかしやつらは、一人か二人人間を食えば満足するらしく、その場から消え去るのです。」
「ゆえに黒槍を持たぬ一般兵士の役割は、民に代わってフーラズーラに食われること。」
「罪なき民を守るため、この命を捧げるのはこの上なき名誉。」
「志願兵は後を絶たないのですよ。」
メレアーデが言う。
「私たちの目的はアマラークを救うこと。」
「つまりフーラズーラを倒すこと。」
「その観点で情報を整理してみたの。」
「フーラズーラを倒せるのは黒槍を持つイルシーム卿だけ。」
「その黒槍は300年前、この城と一緒に残されていた先人の遺産。」
「だからフーラズーラと戦うために今は1本しかない黒槍を量産、つまりレプリカを作れないかしら?」
「この国の兵士さんは戦いを諦めているけど、黒槍の効力は身に染みて理解しているわ。」
「彼らも黒槍のレプリカがあれば戦うはず。」
「で、レプリカを作る方法だけど、ドゥラ院長に協力してもらおうと思うの。」
「まずはドゥラ院長に黒槍を見てもらいましょう。」
「イルシーム卿にお願いして一緒にはじまりの地へ・・」
イルシームとリズク国王が主人公たちのもとにやって来た。
「俺は先王、リズクの親の代から仕えていてな。」
「こいつのことは赤ん坊の頃から見て来た。」
「おしめを替えてやったこともある。」
リズクが笑う。
「彼の言うとおり、イルシームは私の兄のような方なんです。」
「城の者の前では王と臣下として接していますけどね。」
「イルシームからあなた方は信頼できる人物だと聞き、一人の男としてお礼を言いに来ました。」
「主人公さん、縁もゆかりもないこの国と民のため、力を貸してくださること、本当にありがとうございます。」
「ですがひとつだけ約束してください。」
「この国のために無理はしないと。」
「決して命を捧げたりはしないと。」
イルシームが言う。
「お前たちも見ただろう。」
「この国の兵士は死をいとわない。」
「むしろ美徳とさえ思っている。」
リズクが言う。
「黒槍以外の攻撃を受け付けないフーラズーラと言う天敵を抱え続け、長い年月の中で兵たちの意識は変わりました。」
「黒槍を持たぬ一般の兵士たちにできるのは民の身代わりとなってやつらに食われること。」
「つまり死こそが誇りであると。」
「王として彼らの献身はありがたい。」
「むしろそう思うように過去の王たちが仕向けたのかもしれません。」
「ですが私自身は、誰も死なせたくない。」
「自ら命を投げ打つことが誇りだなど、そんな話があってなるものか!」
「ですから先ほども言いましたが、あなた方は決して無理をしないでください。」
「けれど不思議ですね、主人公さん。」
「あなたなら私たちを救ってくれるのではと、何故かそう思ってしまうのです。」
メレアーデが思いついたアイディアをリズクに話す。
「私たち、黒槍と同じもの、レプリカを作れないかって話していたところだったんです。」
「黒槍をお見せすること自体は構いませんが、この国から持ち出すことは許可できません。」
「フーラズーラの襲撃があると困りますから。」
「申し訳ありませんが、その学者の方をこの国に連れて来てくださいませんか?」
ドゥラ院長に事情を話し、アマラークに来るように伝えた。
ドゥラ院長の到着を待っている間、一人で猛特訓しているイルシームを見かけた。
「お前たちが思うほど禁欲的な生活をしているわけでもないさ。」
「酒はやらんが、甘味のたぐいは大好物だしな。」
「大恩ある先王に報いなければならん。」
「俺は物心がついた時から孤児だった。」
「名前すらなかった。」
「ある日、隙をついて先王を襲撃したが、返り討ちにあった。」
「しかし先王はそんな俺を罰することなく、腹が減っているだろうと言って飯をたらふく食わせてくれた。」
「子は国の宝、お前は国の長たる私の宝だから、と言って。」
「女王は俺に名をくれた。教育をくれた。」
「兵士という役目を、生きる場所をくれた。」
「リズクが生まれると兄になってくれとも。」
「・・女王はフーラズーラに食われた。リズクを庇って、幼いリズクの目の前で。」
「当時は上級士官以上の兵士が持ち回りで黒槍を持って巡回を行っていた。」
「一兵卒にすぎなかった俺は城で訓練中だった・・」
「まあ、リズクには自分や城より町を中心に警備しろと命じられているがな。」
ドゥラ院長が玉座の間にやって来た。
「みなさんに集めてもらったサンプルを検証した結果、鉱物や植物、水などはアストルティアのものとそう変わりません。」
「たとえば鉄鉱石などはアストルティアのそれと完全に成分が一致しました。」
「しかし黒槍は全く未知の物質で構成されており、現時点での複製は難しいと言わざるを得ません。」
「さて、どうしたものか。」
「黒槍が遠方で作成された可能性も考えられる。」
「別の地方でもサンプルを採取するか・・」
そこへ、突如、謎の少年が現れた。
「ラキに母はいない。」
「いるのは父様と、姉様。」
ラキは黒槍を指差した。
「お前たちが黒槍と呼ぶそれは、ラキの父様が創った。」
「・・父様には会えない。」
「代わりに知っていることを教える。」
「黒槍はフーラズーラに効く。」
「けれど黒槍が効いているわけではない。」
「ハディン採石場の奥、そこで全部教える。」
「入れるようにしておくから、来て。」
ラキは姿を消した。
主人公たちがハディン採石場の奥に向かうと、ラキがいた。
「ラキは知っている。」
「フーラズーラは黒槍自体に弱いわけじゃない。」
「やつらを傷つけるために本当に必要なのは創生の力。」
「ラキは事実を言っているだけ。」
「黒槍がフーラズーラに効くのはあの槍が強い創生の力を有しているから。」
「黒槍じゃなくても創生の力が宿る攻撃ならフーラズーラを倒せる。」
ラキの話を黙って聞いていたジーガンフが言う。
「創生の力、生命のエネルギー、武術でいう気のようなもの・・」
「もしや、気を集中させた攻撃ならばフーラズーラを倒せるのか?」
突然、フーラズーラが現れたが、ジーガンフは気を集中させて、攻撃を当て、撃退した。
「創生の力を宿す攻撃、掴んだ!」
「これでフーラズーラを倒せる!」
「主人公、気を集中させるんだ。」
「そうすれば攻撃がフーラズーラに通用する!」
主人公はすぐにコツを掴み、フーラズーラに攻撃を当てることができるようになった。
その様子を見ていたラキが言う。
「フーラズーラ、今はそう呼ばれているあいつらは城に住み着いた人間たちを食べて来た。」
「住み着いてすぐには全部食べない。」
「少しずつ食べる。」
「やつらが命を繋ぐ分だけ。」
「城を中心に町が栄えるのを待って、人間がいっぱいになったら一気に食らい尽くす。」
「大昔からずっとそれを繰り返している。」
「アマラークはもう随分大きくなった。」
「いつ滅ぼされてもおかしくない。」
その時、大量のフーラズーラが出現したが、襲いかかってくるわけではなく、そのまま姿を消した。
「いけない!」
「きっと今のやつらはアマラークへ向かった。」
「あの国を滅ぼしに!」
「侵攻はいつ起こってもおかしくない状況だった。」
「けれどきっと今の戦いが呼び水になってしまった。」
「お前たちをここに呼んだのはフーラズーラが出てくるであろうこの場所で奴らとの戦い方を学んでもらうため。」
「知識だけで戦いはできない。実践しないと身につかない。」
「父様がそう言ってたから。」
「でもそれでアマラークを滅ぼしては意味がない。」
「ラキは見て来た。ずっとずっと見て来た。」
「たくさんの国が、人が食われるのを。」
「お願い、アマラークを助けて!」
「言いつけでラキは手出しできない。」
「けど、お前たちなら!」
主人公たちは急いでアマラークに向かった。
大量のフーラズーラが町を襲っていた。
イルシームが孤軍奮闘でフーラズーラを撃退している。
アムル広場に向かうと、他とは違う種類のフーラズーラがいた。
主人公とジーガンフは協力してアズ・フーラズーラを倒した。
「助けて、助けて、助けて・・・・」
アズ・フーラズーラは消滅した。
そこへイルシームが駆けつける。
「町中のフーラズーラが一斉に姿を消してな。」
「お前たちが親玉を倒してくれたんだろう?」
「よくやってくれた!」
リズクも広場にやって来た。
「ジーガンフ殿、フーラズーラとの戦い方をどうか私に教えてほしい。」
「この200年は耐え忍ぶしかなかった。」
「しかし、これ以上はもう、アマラークの民を死なせはしない!」
リズクの言葉を聞いたジーガンフが主人公に言う。
「主人公、調査の途中ですまないが、俺はこの国に残る。」
「アマラークの民に戦いの指導をするためにな。」
「今まで武を磨くこと自体を目的にして生きて来た。だがこの国に来て、俺は初めて武の使い道を見つけたように思う。」
主人公が持つ星封の結晶が青白く光っている。
星のオーラが手に入ったようだ。
その様子を陰から見守るラキ。
「よかった。ちゃんと星のオーラを手に入れたみたい。」
「言いつけ通り、あの者たちを導けました。」
「ラキはあなたのお役に立てましたか?姉様・・」
主人公たちはアスバル・ヒューザ組と合流した。
「あ、主人公じゃないか!様子を見に来てくれたのかい?」
「僕は君のように剣は使えないけれど、その代わり魔法だけは多少得意だから、そこで役に立てるよう頑張るからね。」
「でもこの姿だとちょっと窮屈だな。」
「主人公とも合流できたことだし、元の姿に戻らせてもらうよ。」
アスバルは魔族の姿に戻った。
「よし、これなら全力で魔法を使えそうだ。」
「これから僕ら4人でこの異世界の謎を解き明かしてやろうじゃないか!」
魔族の姿を見たヒューザが目の色を変える。
「お前のその姿、魔族なのか?」
「なんで魔族が調査隊に加わってるんだよ。」
しばらく考えた後、剣を収めるヒューザ。
「今となっては魔族が必ずしも敵じゃないってのはわかってるさ。」
「いきなり目の前に現れて驚いただけだ。」
「それで、お前らが来る前に俺とこいつでこのメネト村ってところを調べてたんだが、かなり奇妙だぜ。」
「なんせ村の周辺はずっと夜のままだし、住人は皆立ったまま寝こけてて、いくら話しかけても反応なしだ。」
「声をかけたりゆすったりしたが、まったく目覚める気配がねえよ。」
アスバルが言う。
「おそらく強力な魔法の効果だと思う。」
「どうやったら目覚めるのか。」
「それに村人にひとり、気になる子がいるんだ。」
「もしかしたらこの村の謎を解く手がかりになるかもしれないから見てみてほしい。」
「その子は宿屋の先の小道を西に曲がって奥に進んだところに立っているから一緒に向かおう。」
アスバルが気になるという少女のところに向かう。
すると、眠っている少女に語りかけている少年がいた。
声をかけると、一目散に逃げ出した。
慌てていたのか、フクロウ型の香炉を落としていった。
「この少女が気になった理由はまだ新しい花がたくさん供えられていたからだったんだけど、彼の仕業だったのか。」
「でもあの少年だけ、どうして眠っていないんだろう。」
「これは、香炉のようだね。かすかに魔力を感じるから、おそらく呪具の類だろう。」
「この村の住人の眠りに関係しているのかな?」
「ちょっと調べてみようか。」
その時、一羽のフクロウが飛んできた。
鳴き声を聞くと、全員に眠気が襲って来た。
「うっ!まずい!」
「僕まで眠く・・このままじゃ・・」
「くそ・・出よ!レイジバルス!」
「僕たちを村の外に連れ出せ!」
主人公が目を覚ますと、そこは村の外だった。
「危うく全滅するところだったけど、間一髪でレイジバルスが村の外に僕らを運び出してくれて助かったんだ。」
「あのまま村の中で眠ってしまっていたら、今頃きっと僕らも眠りの世界に仲間入りだったろうね。」
ポルテが言う。
「あのフクロウの鳴き声を聞いた途端に眠くなっちゃったんだよね。」
「もしかして村のみんなを眠らせてるのは、あのフクロウなのかな?」
ヒューザが言う。
「だがそれならさっきの小僧はどうして今まで眠らずにいられたんだよ。」
「あの少女の足元にはたくさんの花束があった。」
「きっとさっきの小僧は何度もあの子に花を供えに来てたはずだぜ。」
「もしかするとあの少年が落としていった香炉にはフクロウの眠りを妨げる効力があるのかもしれないね。」
「少年が落とした時に香炉の火が消えたんだ。」
「そのせいでこの香炉が本来の効力を発揮できなかったんじゃないかな。」
アスバルが香炉に魔力を注ぐ。
「うん、火を灯したら香炉から発せられる魔力が強まったね。」
「もしまた眠ってしまいそうになっても、レイジバルスで逃げればいいし、村に戻ってみようよ。」
「フクロウの声は村の奥から聞こえるから北にある広場の方に行ってみよう。」
村の奥にある広場に向かうとフクロウが木にとまって鳴いていた。」
「この香炉から発せられる香りに包まれていれば、フクロウの鳴き声を聴いても眠らずにいられるみたいだ。」
「ただ、このままじゃ香炉の効力は僕の周辺だけにしか及んでいない。」
「おそらく少しでも離れたらまた眠ってしまう。」
「君たちが思う存分戦えるよう、ちょっと細工をしてみよう。」
アスバルはそう言うと、巨大な円陣を描き、一帯を香炉の煙で満たした。
「うん、大丈夫そうだ。」
「僕は香炉の煙を広げて維持するから、ヒューザと主人公でフクロウを倒してくれ!」
主人公とヒューザは協力してフクロウを倒した。
するとさっき香炉を落として逃げ去っていった少年がやって来た。
「あのフクロウをあっさり倒しちまうなんて、あんたらめちゃくちゃ強いんだな!」
「俺の名前はトープスっていうんだ。」
その時、フクロウの群れがが一定の方向に飛び去るのを見かけた。
「俺はあいつらの群れを見たことがある。」
「きっとどこかに巣があって、そっから飛んできてるんだ。」
ポルテがトープスに事情を説明する。
「調査隊・・村の異変を解決したいって・・なんだよ。」
「長い間誰も助けに来てくれなかったのに。」
「なんで今になって。」
「でも俺だけじゃあのフクロウに何もできなかったしな。」
「いいぜ、あんたらを信じてやる。」
「気づいたら俺だけ夢見の香炉を持って、村を彷徨っていたんだ。」
アスバルがトープスに夢見の香炉を渡す。
「よかった。捜してたんだ。」
「あんたらが持ってたんだな。」
「これがあればフクロウが鳴いても眠らずにいられるし、村のみんなとも話すことができるんだ。」
「この香炉は、眠っている相手とも会話できるんだ。」
「寝言で話をしてるって感じかな。」
「村の大通りに花に囲まれた女の子がいただろ?」
「あの子はティセっていって、俺の一番の友達なんだ。」
「ティセは花が好きだから。俺が毎日花を摘んできてやってるんだ。」
「眠ってるだけの毎日じゃ退屈だからさ。」
「でもしばらく前から眠りが深くなってるみたいで、香炉があってもティセの声が聞けなくなっちゃったんだ。」
「ティセだけじゃなくて他のみんなの声も聞けなくなってるみたいで、このままじゃ絶対まずい気がしてさ。」
「だから手遅れになる前にみんなを起こそうとしてるんだけど、俺だけじゃどうにもならなくて。」
皆でティセの前に集まった。
「ティセ!聞こえるか?」
「俺たちのことを助けてくれる人たちがついに来てくれたぞ!」
ティセの返事がないことで、がっくりと肩を落とすトープス。
「今までは夢見の香炉を持って近づけば寝言が聞けていたんだ。」
ポルテの提案で主人公が夢見の香炉を手に持つと、香炉の光が強まった。
それを見たトープスが驚く。
「え?香炉の光が強まった??」
ティセが寝言を話し始める。
「お花の、いい香り・・」
「トープス、またお花をくれたんだね。とってもいい香り。」
「フクロウが消えれば長い夢は終わるってロナ長老が言ってた・・」
「それしか知らないんだ・・」
ポルテが事情を説明する。
「その夢見の香炉は使用する人の創生の力に反応して効力を発揮するものだと思ったんだよ。」
「だから桁違いの力を持った隊長なら夢見の香炉の効力が強まるんじゃないかなって思って。」
村の北にある家の前にいるロナ長老に寝言を聞きにいく。
途中、飛んでいるフクロウを見つけたアスバルは、ドラキーの姿に変身して行き先を調べに向かった。
ロナ長老が寝言を語り始めた。
「宵と暁の伝承の全編はこうじゃ。」
「まれびと、お空に魔法をかけた。」
「太陽隠れてお空は真っ黒。」
「月と星だけ輝いた。」
「まれびと、今度はフクロウ呼んだ。」
「フクロウ鳴くと、みんなは眠る。」
「眠れば何も怖くない。」
「まれびと、みんなの眠りを見張る。」
「お山の神殿、守りの砦。」
「悪夢を捕らえて一緒に眠る。」
「フクロウ消えたら朝日が昇る。」
「太陽戻ればみんなは起きる。」
「夢から覚めて元通り。」
「これが伝承の全てじゃ。」
「おお、そうじゃ。子供達に話してやろうと伝承の本を持っとったことも思い出したぞ。」
「ワシの家の本棚から持っていくがよい。」
主人公は宵と暁の伝承の本を手に入れた!
アスバルが調査から戻って来た。
「ラランブラ山道の北の山頂付近に神殿のようなものがあったんだ。」
「そこにフクロウは入っていったよ。」
トープスは村のみんなを守っていると言うので、主人公たちだけで神殿に向かった。
神殿の奥に進むとフクロウの顔をしたどう見ても悪役の魔導士がいた。
「メネトの眠りを邪魔せんとしているのはお前たちだったんホ?」
「我が名は永眠のフクロウ魔人!」
「守護者様からメネト村を任された眠りの番人ホー!」
「メネトの眠りを妨げる者は許さんホゥ!」
「お前たちには永遠に目覚めぬ死という眠りをプレゼントするホー!」
主人公たちは協力してフクロウ魔人を倒した。
「永眠するのは、我だホ?そんなアホーな・・」
「守護者様から託された最後の力、使わせていただきますホー!」
「反転せよ!夢見の香炉よ!」
「逆夢の香炉と化し、こやつらを眠りの深淵へと引き摺り込むんだホー!」
ヒューザが機転を利かし、香炉を破壊してなんなきを得た。
フクロウ魔人は消滅し、空が明るくなっていく。
「部屋の隅に気になるモンがあったんだ。」
「あの棺桶なんだが、なんか入ってるみたいでな。」
ヒューザが指をさした先には怪しい棺桶があった。
「この棺桶の中にまれびとってのが入ってそうなんだが・・」
こじ開けようとしたが、棺桶はびくともしない。
アスバルが言う。
「それにもう一つ気になることがあるよ。」
「さっき倒したフクロウ魔人は夢見の香炉を詳しく知っているどころか、むしろ香炉の力を操ってみせた。」
「となるとトープス君はそんなものをどうして持っていたんだろう。」
村に戻って、トープスに直接聞いてみる、ということになった。
トープスは喜んで主人公たちを出迎えてくれた。
そしてトープスはティセに花束を渡す。
「ティセ!俺のことがわかるか?」
「トープスだよ!ずっと眠ってるお前と話してたよな!」
そして・・ティセが目を開けた瞬間、トープスが目の前から消えた。
「どういうことだ?あいつ、消えちまったぞ?」
ポルテが主人公に小声で言う。
「でもトーくんのことをヒューくんも覚えてるみたいだから、『創失』とは違う現象だよね・・」
ロナ長老がやって来た。
「お前さんたちが夢の中でワシらを目覚めさせるために尽力してくれていたのはちゃんと憶えておるぞ。」
「眠りの世界は寂しくてのう。」
「こうして再びお天道様を拝むことができて、ワシは本当にうれしいんじゃ。」
「最初は夢の世界も楽しかったが、長い年月が経つうちに、ワシらもだんだんと変化のないまやかしに疲れてしまってなあ。」
「楽しい夢でも誰とも話せない寂しさや虚しさが増していき、徐々に心が錆びついて深い眠りに陥っていったんじゃ。」
「そんな中でお前さんたちとトープスの声はまさに救いだったぞ。」
ティセに話を聞く。
「ずっとそばにいてくれたはずのトープスが目の前で消えてしまう夢を見た気がするの。」
「そんなのただの夢だよね。」
「だって、私が目覚める時は絶対そばにいるって、トープスと約束したもの。」
主人公の持つ星封の結晶が突然、青白く光った。
星のオーラが手に入ったようだ。
アスバルがロナ長老に言う。
「宵と暁の伝承の本をもう一度僕に貸していただけませんか?」
「ちょっと思うところがあって、その本をもう一度ちゃんと読み直したいんです。」
アスバルはロナ長老に本を借りた。
主人公とポルテはエステラ、ナブレット団長組と合流した。
「主人公、ポルテさん、来てくださったのですね。」
「ここはムニエカの町。」
「とても平和で穏やかな町で住民の方々もみんな友好的に接してくださるんですよ。」
「そうだ、この町の町長であるエドアルドさんにもお二人をご紹介しなくてはなりませんね。」
「エドアルドさんのお家は町の北側。高台にある赤い屋根のお屋敷です。」
エドアルド邸の前に着くと、エドアルドが勢いよく玄関から飛び出して来た。
「待ってくれ〜チュピちゃん!」
壮大に顔面から転び倒れるエドアルド。「へぶっ!!」
「ああ〜チュピちゃ〜ん!行かないでぇ〜!」
エステラの姿に気づくエドアルド。
「君たちはエステラ君とナブレット君。大変だ。僕のチュピちゃんが・・」
「すまないが僕の代わりにまたチュピちゃんを連れ戻してくれないかい?」
「僕はこの通り、脚を痛めてしまって・・追いかけられそうになくてね。」
前にもチュピちゃん探しを手伝ったことがあると言うエステラと共にチュピちゃんを探し出し、連れ戻した。
エドアルドがチュピちゃんを抱きしめる。
「ああ、チュピちゃん!町の外は危険だから僕のそばから離れちゃダメだといつも言っているじゃないか!」
「チュピちゃんを連れ戻してくれて感謝するよ。」
「おっと、君たち二人にはまだ自己紹介をしていなかったっけね。」
「ようこそ、ムニエカの町へ!」
「僕はここの町長を任されているエドアルドというんだ。」
「よろしく頼むよ。」
エステラがエドアルドを紹介する。
「エドアルドさんは天才人形師でもあって、チュピちゃんやそこにいらっしゃるドロテアさんは彼が作ったのだそうです。」
主人公たちはエドアルドが主催する歓迎会に参加することにした。
振舞われた料理を食べていると、急に眠気が襲って来て、意識を失った。
気がつくと倉庫のような部屋に閉じ込められていた。
ポルテの姿はあるが、エステラとナブレットの姿が見当たらない。
ポルテを起こし、見つけた抜け穴から外への脱出に成功した主人公。
再びエドアルド邸に入り、地下室に向かうと、エステラとナブレットの姿をした人形が襲いかかって来たので、返り討ちにした。
エドアルドが拍手をしながら現れた。
「お見事!最高のショーだったね!感動したよ!」
「それは僕から君たちへの贈り物なのだが、まだ未完成でね。」
「自力で動くことができないから僕が操っていたのさ。」
「安心したまえ。今は空っぽの人形だけど、ここに二人の魂が入ればちゃーんと自分で動いておしゃべりできるようになる。」
「そう、お察しの通り。ムニエカの住民は全員人形さ。」
「もちろん、この僕も例にもれずね。」
「信じられない、といった顔だね。」
「そうだなあ、全ては奇跡の力の賜物、といったところかな。」
「君たちを眠らせたのは他でもない。君たちも今の肉体を捨てて、僕たちと同じ人形の身体になればいいと思ってね。」
「おやおや、怖がる必要なんてないよ。」
「今より性能のいい身体に生まれ変わるんだよ?最高じゃないか!」
「この世界で生きていくには人の身体は脆すぎる。」
「みんな簡単に壊れて死んでしまう。」
「だが人形の身体であれば多少の故障なら修理できるし、完全に壊れたとしても魂さえ無事ならまた作り直せるだろ?」
「この町の平和と笑顔を守り続けることが僕の責務だからね。」
「みんなを死なせるわけにはいかないんだ。」
「僕は君たちのことが本当に気に入った。」
「だから君たちにも死んでほしくない。」
「この町で永遠に生きて欲しいんだ。」
本物のエステラとナブレットがやってきた。
それをみたエドアルドは、そばにいた町民「セアトロ」の身体をバンバンと叩いている。
「なぜ理解してくれないんだい?人形の身体は生身の肉体よりずっといいものなんだよ?」
「見てくれよ。この美しさと頑丈さを・・」
強く叩きすぎたのか、セアトロは倒れたまま動かなくなってしまった。
「なんてことだ!軽く叩いただけで故障してしまうとは!」
「まさか奇跡の力が限界だと言うのか?」
「奇跡が消えればムニエカの町は終わる・・畜生!このままでは約束を果たせなくなってしまう・・」
「すまない・・君たちにもちゃんと説明したほうが良さそうだ。」
「もう少し落ち着けそうな場所、2階にある僕の私室で話そうか。」
2階の私室に移動する一同。
「ごめんごめん。サプライズのつもりだったんだが、演出過剰だったかね。次からは加減するとしよう!」
「セアトロ氏は一応動けることは動けると思うんだが・・しかしそれもいつまでもつか。」
「奇跡の力の枯渇だけはどうしようもない。」
「僕たちは大昔、この世界を襲った災害によって生身の肉体を失ってしまってね。」
「本来ならそこで死んでいたはずなんだが、この町を訪れていた不思議な力を持つ旅人の女性が死にかけの僕たちの命を救ってくれたんだ。」
「彼女の力で魂と人形を結びつけることで僕らは生身の身体のときと同様に生活できるようになった。まさに奇跡さ。」
「だがそれから長い年月が経ち、僕らの身体に宿った奇跡の力がだんだんと薄れているようなんだ。」
「奇跡の力が完全に失われれば、魂と人形の結びつきも失われ、ムニエカ住民は全員死んでしまうだろう。」
「僕は長い間、彼女と共に町の復興と住民の修繕に努めていた。」
「だがあと少しで復興が叶うと言う時に・・」
「彼女は突然この町から姿を消してしまった。」
「今どこにいるかも、どうしているかもわからない。」
「僕は彼女と約束したんだ。彼女が好きだと言ってくれたムニエカの町を、みんなの笑顔を、永遠に守り続けると。」
「このままでは約束を果たせなくなってしまう。」
「いったいどうすればいいんだ・・」
ドロテアが恐る恐る言う。
「精霊の泉・・西にある森の奥、精霊の泉、あそこになら残っているかも・・」
「彼女が足げく通っていた泉か・・」
「確かにあの泉には古き精霊の祝福が宿っていると町の言い伝えにもある。」
「今思えば、彼女は泉の力を使い、奇跡を起こしていたのかもしれない。」
「泉の水があればもしかしたら・・」
「だが今やあの森は魔物が生息する危険な場所だ。ムニエカの住民ではひとたまりもないだろう。」
道案内のドロテアと一緒に、主人公たちは精霊の泉に向かった。
精霊の泉に着くと、魔物がいた。
「ロベール・・オレ、オレ・・モウイヤダ・・コンナカラダ・・タエラレナイィ・・オカアサン!」
主人公たちは襲いかかってくる「嘆きのロベール」を倒した。
嘆きのロベールは消滅した。
辺りを見回すと、泉などどこにもなく、乾いた地面があるだけだ。
その時、ポルテの様子が、変わった。
「特別に力を貸してやる。」
「ふむ。確かに泉は随分前に枯れてしまったようじゃ。」
「だが死に絶えてはおらぬ。」
ボルテは、いつの間にか手に持っていた魔法の杖を振りかざし、精霊の泉を復活させた。
「別に大したことはしておらん。」
「この地に眠っていた水脈に働きかけ、泉を復活させただけじゃ。」
「なんじゃ?人の顔をまじまじと見て。我の顔に何かついているか?」
「そうか。我と顔を合わせるのはあの時以来か。」
「そなたには話しておいても良いじゃろう。」
「今こうして話している我と、そなたとこれまで行動を共にしていたポルテとは別の人格。」
「我は故あって普段は存在を隠しておるが、まあ事情が事情だったからのう。」
「今回は特別じゃ。」
「うむ、力を使い、少々疲れた。」
「悪いがしばらく休ませてもらおう。」
「『創失』を解く鍵は間違いなくこのゼニアスにある。」
「この地に秘められし真実を探し求めよ。」
「このバカ弟子を、よろしく頼む。」
・・いつものポルテに戻った。様子が変わった後のことは全く覚えていないようだ。
主人公は泉の水を水瓶に汲み、エドアルドに届けた。
「ありがとう。君たちが森へ向かってから僕も思い出したことがあってね。」
「彼女は住民たちの身体を修理する前に、毎回あの泉の水で愛用の道具を清めていたんだ。」
「当時は特に気にしていなかったのだが。」
「あれは泉に宿っていた奇跡の力を道具に込めていたのだね。」
「同じように僕の木槌を泉の水で清めて・・さあ、これでいけるはずだ。」
「セアトロ氏のもとへ急ごう。心細い思いをしているだろうからね。」
エドアルドはセアトロのところに向かい、清めた木槌で修理した。
「おお、ありがとうございます。エドアルドさん!」
「見てください!あれだけ錆びついたように固まっていた身体が自由に動くようになりましたよ!」
喜ぶエドアルド。
「すごいぞ!まるで新品同然じゃないか!」
「君たちが水瓶いっぱいに泉の水を持ち帰ってくれたからね。」
「今後しばらくこの町は安泰だ。」
主人公が持つ星封の結晶に力が集まっている。
星封の結晶が星のオーラで満ちたようだ。
ジーガンフ以外のメンバーが始まりの地に集結すると、ラキが現れた。
「ラキは見ていた。」
「お前たちが星のオーラを手に入れるのを。」
「峠の祠へ来るといい。ゼネシア姉様がお前たちを待っている。」
主人公とポルテ、メレアーデの三人は峠の祠に向かった。
すると女神ゼネシアが姿を現した。
「その声はラキですね。」
「遠方より来たりし客人とすっかり仲良くなったのですね。」
「私も嬉しく思いますよ。」
「必ずや成し遂げてくださると信じていました。主人公。」
「彼方なる世界より来たりし誓約の子らよ。」
「どうかその力をお貸しください。」
「今あなた方と言葉を交わしているこの姿はかりそめのもの。」
「本当のわたくしはこの扉の向こう、禁足地と呼ばれる地にて長き眠りについております。」
「まこと、恐ろしき災いでした。」
「我が父もあの戦いで・・」
「神なき世界がいかなる有様になるかはゼニアスを旅したあなた方がご覧になった通り。」
「誓約の子らのもたらす光にて目覚めることができた今こそ、私はこの世界を救いたいのです。」
「さあ、主人公。あなた方に授けた星封の結晶をこの扉へ・・」
「ああ、懐かしき星のオーラの輝き・・」
「どれほどこの時を待ち侘びたことか。」
「時は来たれり!扉に星封の結晶をかざし、ゼニアスに光をもたらしたまえ!」
主人公は星封の結晶を扉にかざした。
「祠を抜けた先は禁足地、ウォルド地方。」
「その北にある大樹の鳥籠に私は封じられています。」
「星封の結晶が導いてくれるでしょう。」
「あなたがただけがゼニアスの希望。果ての大地全ての民の者のため、どうか。」
女神ゼネシアは姿を消した。
「封印の地、大樹の鳥籠には絶対に近づくなとラキは父様からきつく命じられている。」
「ゼネシア姉様を頼んだ。」
ラキは一人でウォルド地方に向かった。
途中、朽ち果てた町があったので立ち寄った。
2人の子供が井戸水を汲んでいる。
町の境界を越えようとした時、白い大きな狼の魔獣が子供たちを威嚇した。
襲いかかる様子はなく、主人公たちを見つけるとそのまま何処かへ行ってしまった。
主人公はロイザという少女に、大樹の鳥籠という場所を探すためにこの町にやってきたのだと説明した。
「この町の住人はね、生まれてから死ぬまで一度も町の外に出たことがないの。」
「あいつに襲われるから。」
「あんたたちが来なかったらデニッサはオオカミに食べられてたかも。」
「デニッサは双子の妹なんだ。あの子ってば、こわがりでさ。多分家の中で震えてる。」
「よかったら会っていってあげて。」
ロイーデという町民と話をする。
「あなたたち、何者なの?どうしてよその人がこの町に?」
「まさか幻でも見てるのかしら。」
「そう、生きている旅人なのね。すごいわ。」
「町の壁の向こうから誰かがやって来るなんて。」
「ここは聖湖ゼニート。神宿る滝、ウォルドの聖簾から注ぐ聖なる水を讃えた湖の町。」
「古い伝承によれば、かつてはゼニアス全土から巡礼者が訪れる大きな町だったそうよ。」
「今ではこの有様だけど。」
ケルジャブという老人に話を聞く。
「私たち一家はこの廃墟の町、聖湖ゼニートの最後の住人。」
「私が子供だった頃はもっと大勢が住んでいたのだが、何年も前にみんな死んでしまってね。」
「だが、そうか。町の外にはちゃんと暮らしている人々がいるんだな。」
「それがわかっただけで嬉しいよ。」
デニッサと話をする。
「あの狼はあたしやお父さん、お母さんやおじいちゃんが生まれる前からずっと町のみんなを見張ってるんだ。」
「時々町に来て守護天使様の像の前で遠吠えしてる。多分町の外に出るなって脅してるんだと思う。」
「あいつ、あたしたちが町の外へ出るのを嫌がるの。」
「だからこの町に生まれて外へ出られた人は一人もいないんだ。」
「旅人って物語の中だけじゃなくて、本当にいるんだね。いいなぁ、旅ってすっごく楽しそう。」
「町の北側には森が広がってるみたい。」
「町の北に使われていない大きな門があるから、もしかしたらその門の向こうに探しているものがあるかも!」
「でも外には狼が・・」
町の北側の門を出ようとすると、ロイザとデニッサがやってきた。
「町の外に出ちゃ危ないよ。」
「あの狼がどこかで見張ってる。」
「外に出たら襲われるかもしれない!」
「この町に子供はあたしたちだけ。お父さんとお母さん、おじいちゃんと誰もいない町に閉じ込められてる。」
「だからあたしたちずっと古い物語の本に出て来る世界に憧れてたんだ。」
「お願い、ずっとこの町にいて。町の中にいれば狼は襲ってこない。」
「あたしたちに外の世界のこと、教えてよ。」
メレアーデが言う。
「ごめんなさい、二人とも。」
「私たち、とても大事な用があるからどうしても旅立たなきゃいけないの。」
「でも心配はいらないわ。」
「主人公は世界中の誰よりも強くて頼りになるの。」
「狼だってへっちゃらよ。」
「約束するわ。大事な用事が終わったら、必ずこの町へ戻って来ると。」
「メレちーにこれあげる。」
メレアーデはデニッサから守護天使のお守りをもらった。
「すごーく昔におじいちゃんがくれたの。」
「町の守護天使様の力が宿ったお守りなんだ。」
「聖なる力で悪い奴から守ってくれるんだって。」
「あの狼にも効くかもしれないよ。」
主人公たちが大樹の鳥籠に入ると、女神ぜネシアが薔薇の呪縛で捕えられていた。
「誓約の子らよ、どうか、私をここから・・」
その時、鳥籠の番人が襲いかかってきたが、退けた。
「なーんだ。お前たち誓約の子だったのか。」
鳥籠の番人は消え去った。
星封の結晶を女神ゼネシアに捧げると、呪縛が消え去った。
「何万年もの間、この時を待ち侘びていました。」
「わたくしを解き放ってくださったこと、心より感謝します、主人公。」
「さあ、ゼニアスに生きる全ての者のため、この鳥籠を後にしましょう。」
「あなたがたとともに。」
主人公たちは女神ゼネシアと共に外に出た。
「大地に満ちるこの気配・・数万年の眠りを経ても世界を蝕む呪いは未だ消え去らぬとは。」
「あなた方の世界に広まりつつあるかの災いの源こそが果ての大地ゼニアスを蝕む恐るべき呪い。」
「『創失』の呪いが消えぬ限り、ゼニアスもあなた方の世界も決して救われることはないでしょう。」
「これは誓約の子であるあなた方にしかできぬこと。」
「ゼニアスに満ちる『創失』の呪い、その源を断ち切ってくださいませ。」
「聖湖ゼニートより川沿いに遡り、西のウォルドの聖簾を目指すのです。」
「ゼニアスを守護する神として、長き眠りの果てにこの世界がいかなる姿となったかを見定めねばなりません。」
「我が民と大地の現状を確かめたならすぐに私もウォルドの聖簾へ向かいましょう。」
夜も更けたため、主人公たちは一旦聖湖ゼニートに戻ることにした。
すると、デニッサは『創失』により存在が消え去っていた。
主人公はメレアーデに、守護天使のお守りをくれたデニッサが『創失』してしまったことを伝えた。
「わからない・・私の記憶にそんな女の子はいないの。」
「でもあなたが嘘をつくとは思えない。」
「ごめんなさい、デニッサ。あなたのことを忘れてしまって・・」
「それにしても不思議ね。」
「どうして主人公とポルテちゃんだけが『創失』した人のことを覚えていられるのかしら。」
翌日、主人公たちはウォルドの聖簾に向かうとラキが待ち構えていた。
「ウォルドの聖簾は聖なる地、立ち入ることは許さない。」
「去れ!二度とこの滝に近づくな!」
「たとえ姉様の言いつけでも、ここだけは絶対にダメだ!」
ラキはメレアーデに雷の攻撃を放つが、守護天使のお守りが攻撃を防いでくれた。
「どうして・・しかたない。」
「ラキは役目を果たすだけ!」
主人公たちは襲いかかってくるラキを退けた。
「・・ラキは命にかえても役目を果たす!」
そこに女神ゼネシアがやってきた。
「主人公たちは私を封印から解き放ってくれた恩人、傷つけることは許しませんよ。」
「ラキ、あなたは父の守護者であると同時に、果ての大地ゼニアスの守護者なのです。大事を見失ってはいけません。」
ラキが首を横に振る。
「『創失』の呪いは悪き者どもを退けた!」
「もう何万年か待っていれば呪いは薄れて消え、ゼニアスは平和になる!」
「その間、数え切れぬほどの命が『創失』の呪いにより失われていくのを、あなたは黙って見過ごすつもりですか?」
「長き微睡の中で私は儚き希望を抱いておりました。」
「永劫にも思える微睡の間に『創失』の呪いはこの地より消え果てるはず、眠りにつく前、父が私に約束してくれたように。」
「けれど父の願いも虚しく、『創失』の呪いは未だ消えず、異世界アストルティアにまで害を及ぼした。」
「ラキ、もはや我々だけの問題ではないのです。」
「ゼニアスとアストルティア、二つの世界のため、呪いの源を断つしか・・」
言っても聞かないラキを、術で束縛する女神ゼネシア。
「しばらくそこで頭を冷やしていなさい!」
「心配はいりません。あの子が落ち着いたらすぐに出してあげますから。」
女神ゼネシアは、ウォルドの聖簾の封印を解いた。
すると力を使いすぎたのか体が透き通ってしまう。
「私は少し休んでからすぐにあなた方を追いかけます。」
「お行きなさい、主人公。」
「ゼニスの封宮へ・・」
主人公たちはゼニスの封宮に向かった。
姉妹の女神像が守る扉をくぐり、奥に向かうと巨大な神グランゼニスが眠りについていた。
グランゼニスの身体から『創失』の呪いが湧き出ているようだ。
そこに、聖湖ゼニートにいた狼の魔獣が現れた。
「主人の眠りを妨げることは、絶対に許さない!」
襲いかかって来る狼の魔獣を倒すと、その魔獣はラキの姿になった。
「父様の眠りを妨げる者は許さない。お前たちには指一本触れさせない!」
「ラキは父様を守る!たとえこの命に代えても!」
その時、『創失』の呪いがラキを包み込む。
女神ゼネシアが現れた。
「いけない、ラキ!」
「お父様から離れるのです!」
女神ぜネシアは光の力で『創失』の呪いを退けた。
「神なる身をもってしても逃れられぬ呪いは今なおお父様の身体より湧き出でて世界を滅ぼそうとしている。」
「自分一人残して世界の全てが消え去ることをどうしてお父様が望むでしょう。」
「誓約の子たるあなた方ならば、呪いの源を断つこともできるやもとこの地へ導きましたが、『創失』の呪いの前にはラキすらこの有様。」
「人たる身に太刀打ちできるはずもない。」
「他の方法を探すしかないようですね。」
ラキは足を引き摺りながら無言でゼニスの封宮を後にした。
「あの子がご迷惑をおかけしましたね。」
「ラキは世界の創造主たる我が父の神獣。」
「主に忠義を尽くすあまり、その言いつけを絶対と思い込んでいるだけで悪い子ではないのですよ。」
「この地底に眠る巨人こそが『創失』の呪いの源、そして我が父なる神、グランゼニス。」
「我が父の生み出せし『創失』の呪いこそがゼニアスとアストルティアを蝕む全ての元凶なのです。」
「父はこの地底に自らを封じ込めることで、何万年もかけて呪いを鎮めようと試みましたが、失敗に終わったようですね。」
メレアーデが聞く。
「あの!今の神様の名前って、アストルティアの人間の神と同じでは?」
「あなた方の世界のことは存じませんが、この世界、ゼニアスにおけるグランゼニスは万物の創造神。」
「我が父にして我ら全ての父、一なる神、主神グランゼニスによってゼニアスは創世されました。」
「そして私ゼネシアと妹のルティアナは主神グランゼニスの娘たる女神。」
ポルテが驚く。
「女神ルティアナ?」
「それってしばらく前に亡くなられたアストルティアの創造主様だよね!」
「ルティアナが?あの子が死んだと?」
「そうですか・・私が長き眠りについている間に、妹はもう・・」
「気が遠くなるほど昔、果ての大地ゼニアスをジア・クト念晶体という恐ろしい生命体が襲いました。」
「激しい戦いの末、敗北を予感したお父様はか弱き妹、ルティアナとこの世界の生き物をゼニアスの外へと逃したのです。」
「ルティアナを送り出した後、私は父を助け、ジア・クト念晶体と戦いましたが、力及ばず敗れた。」
「父はジア・クト念晶体から私を守るため、この身を大樹の鳥籠に封じ、最後の手段を選びました。」
「それこそが『創失』の呪い。」
「呪いに触れたもの全てを消し去る諸刃の剣を振るい、父グランゼニスはジア・クト念晶体を滅ぼそうとした。」
「二つの世界を蝕む『創失』の呪いは、かつてこの世界を守らんがため放たれたものだったのですよ。」
「ジア・クト念晶体は『創失』の呪いに侵され逃げ去りましたが、呪いは父の身体を蝕み、消えなかった。」
「そのためお父様はこの地下神殿深くに己が身を封じ、時が呪いを消し去ると信じて長き眠りについたのです。」
「されど数万年の時を経ても呪いは消え去らず、それどころか逃げ延びたジア・クト念晶体が『創失』の呪いをアストルティアにもたらすとは。」
「父は私にこう言いました。」
「妹ルティアナが帰還せし時、未だ呪いが消えておらぬならば己が身ごと断ち切れと。」
「ですが遠き地にてルティアナは息絶え、私一人では呪いに立ち向かえない。」
「もはや打つ手は・・」
その時、主神グランゼニスの声が聞こえた。
「ルティアナの子らよ、よくぞゼニアスへ帰り来た。」
「お前たちに伝えねばならぬ。」
「誓約を果たすのだ。」
「二つの光、世界を・・」
声は聞こえなくなった。
「父はとうに呪いに飲み込まれ、助けることはできぬと諦めていましたが。誓約の子らを認め、こうして呼びかけた。」
「希望は残されていたのですね。」
「あなた方と目覚めし父が邂逅を果たせば、光明がもたらされるかもしれません。」
「私はそれに賭けてみたい。」
「誓約の子、主人公、いえ、ルティアナの子らよ。」
「どうかゼニアスのため、力を・・」
呪いの力が強まった。
「いけない!この神殿は『創失』の呪いが最も強い場所。」
「一旦外へ出るとしましょう。」
女神ゼネシアは、ゼニスの封宮をもう一度封印した。
「お父様が眠る祭壇の間の扉は閉ざしておきました。」
「これ以上『創失』の呪いが漏れ出さないように。」
「ここウォルドの聖簾も聖湖ゼニートも私が眠りにつく前は多くの人々で賑わう栄えた場所でした。」
「ラキが創失の呪いから人々を守るため、力をふるっていてくれたようですが、それでも多くの命が失われてしまった。」
「これ以上一人の命とて失いたくない。」
「それが私の願いです。」
「ラキの気配は神殿内にはありません。どこか遠い場所で身を休めているのでしょう。」
「父と私は長き眠りの中で再びこの世界に妹ルティアナの子らが帰還するその日を待っておりました。」
「ゆえにこの世界ゼニアスはとこしえのゆりかごという二つ名で呼ばれているのですよ。」
「か弱き妹が成長し、その子らと共に帰還する頃には創失の呪いやジア・クト念晶体による心配はなかろう、父たる主神グランゼニスはそう考えていたようですが、まさかルティアナがすでに・・」
「・・ええ、感じます。あなた方は確かにルティアナの子ら。」
「あの子の優しさ、あの子の心の強さ、そしてあの子の愛らしさはルティアナが創り出したる新しき命。」
「あなた方にはっきりと宿っている。」
「わたくしはふたつの世界と愛する父とを救わねばなりません。」
「それこそが死せるルティアナがあなた方誓約の子らに託した最後の願いのはずなのですから。」
「今はまだ、封印から解き放たれたばかりで力も戻り切らぬ私ですが、必ず父を目覚めさせる方法を見つけます。」
「その時はどうか、私に力を貸してくださいませ、主人公。」
「ですが、申し訳ありません。」
「しばし休ませてください・・」
女神ぜネシアは姿を消した。
「お父様、目覚めさせる方法、突き止めたら・・すぐに・・呼びかけます・・またお会いしましょう・・」
To Be continued..