奈落の門を開くための印章の修理が終わったと聞き、主人公は竜族の隠れ里にいるオルゲンの所へ向かった。
「おお、主人公。よく来たな。」
「ちょうど例のカギとなる品の修理が終わったところだ。」
「これがあれば、奈落の門を開くことが出来るはずだ。持って行くが良い。」
主人公はオルゲンから修理済みの印章「竜の聖印」を貰った。
飛竜に乗り、奈落の門へ向かう。
奈落の門の前で竜の聖印を使うと、あっさりと門が開いた。
そこへ何故か、マイユとダストンが古代の乗り物「反重力飛行装置」に乗ってやってくる。
飛竜に乗れなくても「反重力飛行装置」があればどこにでも行けるようだ。
マイユが主人公に得意顔で語る。
「驚いた?この反重力装置のおかげであなたに追いつくことができたわ。」
「私、グランゼドーラ城に立ち寄ってシオンさんに会ってきたの。」
「そうしたら主人公が竜族の世界に行くって聞いたから私も一緒に行こうと思って。」
「アロルドを蝕む毒は竜族のものでしょ?だからあれを治す解毒薬も竜族の世界に行かないと見つからないと思うの。」
「古代遺跡で発見されて復元されたばかりの反重力飛行装置をドゥラさんに頼んで貸してもらったんだ。」
どうやらマイユは竜族の世界に一緒に行くようだ。
マイユが竜族に連れて行かれないようにあれだけ苦労したのに。
しかも反重力装置には城主ダストンまで乗っている。
竜族に奪われないように隔離していた城主ダストンも、一緒に竜族の世界へ行くという。
「さぁ、門の向こうへ行きましょう!」
神の器達を何故わざわざ危険な場所に連れていかなければならないのか疑問に抱きつつ、3人は奈落の門をくぐった。
奈落の門の中は、闇に包まれていた。
まずは城主ダストンが、次にマイユが光の玉に閉じ込められてしまう。
そして、それぞれが何処かへ転送されてしまった。
主人公の身体も光に包まれ、光の玉に閉じ込められた。
そして何処かへ転送されてしまうのだった。
主人公が目を覚ますと、そこは炎に包まれた世界だった。
大地も、木々も、空もすべてが炎でできているようだ。
その時、主人公の頭上を闇に包まれた鳥が通り過ぎて行く。
ものすごく大きな闇のチカラを感じる。
そこへ一人の竜族がやってきた。
「この人は、まさか。」
主人公の頭のなかで突然、弟の声が聞こえる。
「あんなに来ちゃダメって言っておいたのに。ついにここまで来ちゃったんだ。」
「このままお兄ちゃんが進むというなら、僕は絶対に・・・」
主人公は気を失っていたようだ。
先ほどやって来た竜族が主人公に話しかける。
「ああ、よかった。お気づきになられたようですね。」
主人公は自分の名前を名乗った。
「闇の炎に包まれた鳥にやられたのですね。」
「ひどい火傷を負っていましたが、治療を施したので心配はいりません。」
そこに、この村の村長がやってきた。
「神官エステラ様、救援の願い出を聞き届けて頂き感謝しております。」
主人公を治療してくれた竜族は、エステラと言う名前のようだ。
「只今、村の若い衆が皆で魔炎鳥の討伐に向かっているところです。」
「これに神官様方のチカラも加われば、あの魔炎鳥を討伐することが出来るでしょう。」
「どうか我々を助けて下さい。」
「ところで、エステラさまの姿しか見当たりませんが、他の神官様方はいつ頃到着なさるのでしょうか。」
エステラが申し訳なさそうに答える。
「ネオル村長、申し訳ありませんが教団には救援を出す余裕がありません。」
「だからせめてもの助けにと、私が来たのです。」
ネオル村長が詰め寄る。
「つまり、教団の助けは来ないと?」
「なんということだ。このままではアペカの村は・・」
「ネオル村長、ひとつご相談が。」
「こちらの方をしばらくの間、この村に置いてはもらえないでしょうか。」
「この方はアストルティアという世界から迷い込んできた異種族の方です。」
「教団が所蔵する文献に書かれていました。」
「アストルティアには私たち竜族とは異なる種族たちが暮らしているのだと。」
「迷えるものに手を差し伸べることも教団の使命。この一帯が魔炎鳥の脅威にさらされている今、放っておくわけにはいきません。」
ネオル村長はしぶしぶ頷いた。
「神官様の頼みなら仕方ありませんな。いいでしょう。」
「ただし、しきたりがありますので。村に留まるものにはナドラガ様に祈りを捧げて来てもらわねばなりません。」
主人公とエステラは、村の東にある「ナドラガ神のほこら」に向かった。
主人公がほこらで祈りを捧げた。
ほこらには、神代の昔からこの世界を守ってきた竜族の神「ナドラガ」の頭部といわれる大きな岩があった。
「ナドラガ神のご加護があるから私達竜族はこのような過酷な環境でも生きていくことが出来るのです。」
エステラはそう言った。
主人公とエステラがアペカ村に戻ろうとすると、竜族の青年が倒れていた。
エステラが声をかける。
返事はないが、まだ生きているようだ。
急いでアペカ村に連れて帰り、治療を施した。
青年はギダという名前だった。
ギダは魔炎鳥の討伐へ行っていた。
仲間は全員、魔炎鳥に殺されてしまったのだという。
ギダの兄レゼロも殺されてしまったようだ。
ネオル村長がギダに声をかける。
「ギダよ。魔炎鳥はどうなった?どうして一人で帰ってきた?」
うつむき、黙っているギダ。
ギダは一人で逃げてきたようだ。
臆病者と罵る村長。
そこにエステラが割って入る。
「ネオル村長、怒るのは後にして下さい。」
エステラはギダの治療に専念すると言い、その場は解散となる。
主人公は一晩アペカの村で休み、ギダの家に行ってみた。
ギダは自分で起き上がれるまでに回復していた。
エステラが一晩中、介抱していたようだ。
ギダが主人公に話しかける。
「あなたは異世界から来た人らしいね。神官様から話は聞いたよ。」
ギダは魔炎鳥との戦いの様子を話し始めた。
「僕たちは全員で魔炎鳥と戦い、もう少しで倒せるところまであの魔物を追い詰めた。」
「だけど地獄はそれからだった。」
「魔炎鳥が近くを流れるマグマを食べると、たちまち傷が回復していったんだ。」
「それまでの戦いで疲れきっていた仲間たちは次々とやられていった。」
「そして僕と兄さんだけが残ったんだ。」
「だけど兄さんは何を思ったのか突然危険を帰りみず魔炎鳥の尻尾に生えていた真っ赤な尾羽をもぎとった。」
「それを僕に託してこういったんだ。」
「炎樹の丘にいけ!あの曲を弾くんだ!と。」
「意味はわからなかったけど、それを聞いて僕は走りだした。当然兄さんも一緒だと思って。」
「そしてその時、兄さんは持っていた火薬ツボを爆発させて落盤を起こしたんだ。」
「僕が逃げる時間をかせぐために。」
「覚えているのはそれだけだよ。だけど兄さんはなぜ突然あんなことを。」
主人公と、エステラ、ギダの3人で炎樹の丘に行くことになった。
炎樹の丘に着いた3人。
ギダは、ハープを使って演奏を始めた。
曲を聞いたエステラは驚く。
「これは。」
「炎のように燃え上がる聖なる鳥よ。」
「天より高く舞い上がり、見守りたまえ。」
「我ら竜の民を、永遠に。」
エステラの言葉を聞いたギダも驚く。
「今のはもしかしてこの曲の歌詞?」
「あなたはこの曲を知っているんですか?」
「これはかつて、この地の守り神である聖鳥に祈りを捧げるため奏でられた曲。」
「祈り鳥の曲といいます。」
「昔、この地の竜族が聖鳥の怒りを買った時に彼らが祈り鳥の曲を奏でて怒りを沈め、この地は救われたという逸話があります。」
「そうだったのか。昔、兄さんと二人で大神殿に行った時にたまたまこの曲を聞いてその記憶を頼りに弾いていたんだけど。」
「なぜ兄さんはこの曲を弾けといったんだろう。」
エステラが思案顔で答える。
「もしかしたら。」
「ギダさん、お兄さんから受け取ったという魔炎鳥の尾羽を見せてもらえませんか?」
尾羽をみたエステラ。
「真紅の聖鳥はその身に宿す。地上をさまよう死者の想いを。」
「そしていざわなん、安息の地へと。」
「今のも歌詞の一部です。もしかしたらお兄さんはこの曲の歌詞を知っていたのかもしれません。」
「きっと気がついたのでしょう、魔炎鳥に生えていた1枚の真っ赤な羽を見て、目の前にいる魔炎鳥が聖鳥であることを。」
「そしてこの曲でなければ魔炎鳥の怒りをしずめられないことを。」
「だから兄さんは命を犠牲にしてまで僕を生かしたと?」
「祈りの鳥の曲を弾けるのは村で僕しかいないから。」
エステラが頷く。
「ウデが立つだけでなく深い知識を持っていた方なのですね。」
ギダは覚悟を決めた。
「神官様、僕はこれから村の東にある煉獄の谷へ向かいます。」
「魔炎鳥の棲み家はその谷の奥にあるんです。」
3人は煉獄の谷へ向かった。
谷に着くと魔炎鳥がいた。
「いた、アイツが村の仲間を殺したんだ。」
「アイツのせいで兄さんも。」
「ギダさん、これは復讐ではありません。お気持ちはわかりますが、お兄さんのためにも怒りを抑えて下さい。」
「魔炎鳥は完全に我を失っているようです。」
「ギダさんの演奏で魔炎鳥の怒りを鎮めるには、まずおとなしくさせなければいけません。」
「私はギダさんの守りに専念しますので、主人公さんは魔炎鳥を弱らせてください。頼みましたよ。」
主人公は、魔炎鳥を弱らせた。
「ギダさん、今です!祈りの鳥の曲をひいて下さい!」
ギダはハープで祈りの鳥の曲を奏でた。
その曲に合わせてエステラが唄う。
「炎のように燃え上がる聖なる鳥よ」
「天より高く舞い上がり見守りたまえ」
「我ら竜の民を永遠に」
魔炎鳥は炎に包まれた。
そして、その炎の中で聖鳥として生まれ変わった。
エステラは言う。
「真紅の聖鳥はその身に宿す。地上をさまよう死者の想いを。」
「そしていざわなん、安息の地へと。」
ギダは空中に漂う青い光を見て驚く。
「これはもしかして、亡くなった仲間たちの想いのかけら?」
その時、ひとつの青い光が光輝き、ギダの兄レゼロが姿を現した。
「ギダよ。オレたちは聖鳥と一つになる。」
「一つとなって遠い空から見守ろう。」
「オレたちの故郷の行末を。」
「これからはお前が村を守るんだ。お前なら出来ると信じているぞ。」
「お前は人の弱さを許すことが出来る。その優しさこそがお前の強さなんだ。」
「後のことは頼んだぞ、オレの自慢の弟よ。」
ギダの兄レゼロは再び青い光に姿を変え、聖鳥の身体に引き寄せられていく。
そして、聖鳥は天空に飛び立っていった。
「聖鳥よ。この地の守り手よ。」
「彼らの魂を無事に安息の地へと送りとどけたまえ。」
3人はアペカの村へ戻った。
エステラはネオル村長に経緯を説明した。
「炎の領界の守り手である聖鳥が闇に取り込まれるなんて。これも邪悪なる意志のチカラなのか。」
ネオル村長はギダに謝罪した。
「我々はギダに救われたということか。」
「ギダよ。本当にすまなかった。」
ギダが答える。
「ボクは役立たずでした。自分のことしか考えていなかったんです。」
「これからは亡くなったみんなの分までボクが頑張って村を守っていきます。」
エステラが主人公に話しかける。
「今だから告白しますが、私はこれまで主人公さんが信用できる方なのか試していたのです。」
「もしも村に、竜族たちに、危害を加えるような方なら私があなたを止めるつもりでした。」
「ですが行動を共にして、主人公がとても強く、やさしく、信頼できる方だとわかりました。」
「今まであなたにいろいろと押し付けるような真似をしてしまい、本当に申し訳ありません。」
「アペカの村だけでなく、今この世界にはあなたのような強くて信頼できる方が求められています。」
主人公はエステラから紹介状を貰った。
「私が書いたその紹介状があれば、ナドラガ教団の大神殿がある聖都エジャルナに出入りすることが出来ます。」
「聖都エジャルナはここから西にある橋を渡ったところにあります。」
「私は先に戻ってこのことを総主教さまに報告しておきます。」
主人公は聖都エジャルナに向かった。
聖都エジャルナに着くとにエステラが待っていて、総主教を紹介してくれた。
「来てくださったのですね。主人公。」
「聖都エジャルナへようこそ。」
「総主教さま、こちらが先ほどお話した主人公さんです。」
「信用に足る方だと私が保証いたします。」
「はじめまして、主人公。」
「ナドラガ教団の総主教を務めるオルストフといいます。」
「あなたのご活躍はこのエステラから聞いています。アペカ村を救って頂き、感謝の言葉もありません。」
「今この世界にはただならぬ危機が迫っており、そのために各地で異変が生じているのです。」
「異変は民の生活をも脅かしています。」
「その危機とは、邪悪なる意志と呼ばれるもの。」
「影のように忍び寄り、姿は見せずとも、それは確かに存在しているのです。」
「アペカの村の近くに現れた魔炎鳥の正体は姿を変えた聖鳥であったそうですね。」
「これも邪悪なる意志の影響でしょう。」
「私達ナドラガ教団は、この世界を守るべく、邪悪なる意志に戦いを挑んでいるのです。」
「今私達は共に戦ってくれる者を求めています。ぜひとも主人公さんのチカラもお借りしたい。」
「これから神殿内の集会場で今後の教団の活動について話し合いますのでよろしければご出席ください。」
主人公は早速集会場へ足を運んだ。
総主教オルストフが神官たちを前に話し始める。
「神官の皆さんはご存知の通り、このナドラガンドは炎、氷、闇、水、嵐という5つの領域に分断されています。」
「邪悪なる意志に対抗するためには、5つの領域をひとつにつなぎ、全竜族がチカラをあわさねばなりません。」
「私達ナドラガ教団の最初の目的は、ここ、炎の領域のとなりにある氷の領域への道を開くこと。」
「古文書によれば、この地の南西にある業炎の聖塔におもむき、試練を果たした時、氷の領界への道が開くとされています。」
「その試練を果たせるものこそが解放者であり、我々はその出現を待ち望んでいます。」
「しかし未だに試練をすべて果たせたものは現れず、事態は遅々として進んでいません。」
「主人公さんをここに呼んだのは、竜族ではないこの方の存在により何かが変わるのではないかと考えたためです。」
「主人公さんのことはエステラに任せます。皆さんはこれまで通りそれぞれの役目に励んで下さい。」
「竜族の民は希望を求めています。そして解放者こそが竜族の希望。」
「世界を救う、唯一無二の存在なのです。」
エステラが話したいことがあるというので、エステラの部屋に向かった。
「先ほど聞いていただいた通り、私達神官は5つの領域をつなぎ、ナドラガンドに救いをもたらしたいのです。」
「そしてそれを成すことができる解放者の出現を待ち続けています。」
「主人公さん、あなたは何のためにこの世界に来たのですか?」
主人公は、エステラに友人たちがこの世界に連れ去られてしまったことを話した。
「そんなことが、なるほど。理解出来ました。」
「主人公さんのご友人をさらったもの、おそらくそれは、邪悪なる意志の手先として動く者たちでしょう。」
「邪悪なる意志という存在については教団でも調べているのですが、残念ながら明確なことはまだわかっていません。」
「他の領界で邪悪なる意志の情報を集めることが出来れば、あなたのご友人の所在もつかめてくるのではないでしょうか。」
「竜族と無関係であるあなたに頼むのは心苦しく思っていましたが、それならばお互いの利となるはずです。」
「主人公さん、氷の領界への道を開くため、私達にチカラを貸してください。」
「氷の領界への道を開くには、業炎の聖塔におもむき、いくつかの試練を乗り越える必要があるのです。」
「その試練は水の満ちた球体の中に置かれた燭台に炎を灯すというもの。」
主人公はその試練をクリアするため、エステラの故郷「マティル村」に向かった。
マティル村は、廃墟になっていて村人は一人もいなかった。
廃墟になった家の中に崩れかけた祭壇を見つけた。
そこへエステラがやってきた。
「幼いころはその祭壇の前で毎日のように聖鳥に祈りを捧げていました。」
「この村は私の故郷。」
「ここは炎に包まれた過酷な世界ですが、私達は力を合わせ、希望を捨てることなく生きてきました。」
「最初はただの、はやり病だと皆思っていたのです。」
「それが恐ろしい死病だと気づいた時にはもう手遅れでした。」
「まず私の父が、そして私の母も。多くの村人がその死神に命を奪われていったのです。」
「最期に残された弟だけはなんとか救いたい。その一心で私は思いつく限りのことを弟のために試してみました。」
「ですが、弟を救うことは出来なかったのです。」
「あの子も目の前で息を引き取り、気がつけばこの村で生き残ったのは私一人だけ。」
「最期まで病気にかからなかった私も、いずれ死にゆく運命にありました。」
「そんな私を拾い、絶望の底から救ってくださったのが総主教オルストフ様だったのです。」
「私はオルストフ様のもとで厳しい修行に打ち込み、ナドラガ教団の神官となりました。」
「二度とマティル村のような不幸は起こさないと心に誓いをたて、人々を救うためのチカラを求めたのです。」
「塔の解放を急ぐ教団の意志に背き、私がアペカの村に向かったのは、滅び行くあの村の姿が故郷と重なったため。」
「何もしないで村を見殺しにすることが私には出来なかったのです。」
「たしか、ここに。」
エステラはそう言うと、祭壇の下を探し始めた。
そして、祭壇の下に収められていた箱から「業炎のトーチ」を取り出した。
「これは聖鳥の炎を授かる際に必要となる業炎のトーチというものです。」
「かつてこの村では聖鳥を崇めていました。」
「魔物を退ける聖鳥の炎を授かるために火山を登り、聖鳥の巣に向かったのです。」
「決して消えることのないと言われるあの炎ならば、水の中にある燭台にも火を灯すことができるはず。」
主人公とエステラは聖鳥が生まれた場所であるフェザリアス山に向かった。
火山の山頂に聖鳥の幽居という場所がある。
主人公とエステラは山頂に向かう。
山頂に着くと、聖鳥がやってきた。
業炎のトーチを手にしたエステラに聖鳥が向かってくる。
「炎の領界の守護者よ。お願いがあります。聖なる炎を我々にお授け下さい。」
エステラが叫ぶと、聖鳥は業炎のトーチに炎を灯し、飛び去っていった。
「この炎なら水の中にある燭台にもきっと火を灯すことができるでしょう。」
「氷の領界への道、業火の聖塔は聖都エジャルナよりはるか南西にあります。」
主人公とエステラは業火の聖塔に向かった。
業火の聖塔に入り登ると、途中に水の満ちた球体があった。
その球体の中には燭台が置かれている。
その燭台に火を灯そうと、トビアスという神官が試行錯誤していた。
「ふむ、この炎の呪文でもだめか。となると、もっと強力な・・。」
その時、トビアスはエステラと主人公の姿に気がついた。
エステラが言う。
「トビアス、私達に代わってくれませんか。」
「エステラか。神官の身分でありながらよそ者と行動しているとはな。」
「まあ、いいだろう。好きにするがいい。」
エステラは水の球体の中にある燭台に業炎のトーチの炎を近づけた。
トーチの炎は消えず、燭台に火が灯った。
それと同時に、塔の奥へと進む扉が大きな音をたてながら開いた。
驚くトビアス。
「見事だな、エステラ。どちらが氷の領界への道を開き解放者となるか、勝負といこう。」
エステラが呟く。
「まったく、今は功を競っている場合ではないのに。」
エステラと主人公も、トビアスに続き塔の最上階を目指して進んだ。
塔の最上階にはすでにトビアスが到着していた。
すると目の前に「炎魔アグニース」という魔神が現れた。
「怒れるガズバランが打ち込みし炎のくさびを取り払わんとする者よ。」
「我に挑み、チカラを示せ。」
「さすれば氷の領界への道がそなたの前に開けるであろう。」
トビアスが言う。
「なるほどな。どうやらここが最後の試練のようだ。」
「私が先に挑ませてもらおう。」
トビアスが炎魔アグニースに飛びかかるが、あっさりと負けてしまう。
エステラが主人公に言う。
「主人公さん、炎魔アグニースの相手をお願いします。」
何故か炎魔アグニースと戦うことになってしまった主人公。
炎魔アグニースを打ち破った。
トビアスが言う。
「まさかあの番人を倒してしまうとはな。」
「どうやら功をあせる気持ちが私の目をくもらせていたらしい。」
炎魔アグニースは砕け散り、その跡には「炎の解錠の円盤」が落ちていた。
「以前塔の周辺を調査した時、外の遺跡でその円盤と同じ形のくぼみを見たことがあります。」
「そこに円盤をはめれば何かが起きるかもしれません。」
「主人公さん、塔の外にある円盤の遺跡に行ってみましょう。」
主人公たちは塔の外にある円盤の遺跡に向かった。
遺跡に着いた主人公は、くぼみに炎の解錠の円盤をはめ込んだ。
轟音とともに目の前にある円形のオブジェが青白く光輝き、魔法陣が浮かび上がった。
そこから一本の光が出て、空を覆っている厚い雲を突き破った。
トビアスが驚く。
「なんだ、これは。」
「これが氷の領界に通じる道なのか。」
「この目で見ることができようとは。」
エステラが主人公に話しかける。
「主人公さん、私はアペカの村の近くで倒れていたあなたを見た時から思っていました。」
「今この世界に異種族の者が現れたことには何か大きな意味があるのではないかと。」
「あなたがこの炎の領界に来なければ、魔炎鳥が聖鳥に戻ることもなく、試練を果たすことも出来なかったのです。」
「そして、最後の試練として私達の前に現れた番人を倒したのも他ならぬ主人公さんでした。」
エステラが皆の方を向く。
「皆さん、以上のことから私は確信しました。」
「主人公さんこそが竜族の希望。」
「この世界の解放者なのです。」
トビアスが主人公にひざまずく。
「解放者さま、これまでの無礼な物言いの数々、どうかお許し下さい。」
「総主教さまより、もし領界がつながった時は解放者さまを危険にさらさぬようにと命じられております。」
竜族の兵士たちが次々と魔法陣の中に飛び込んでいく。
「氷の領界の安全の確認がとれるまで、この通路は閉鎖させていただきます。」
「今は総主教さまへご報告に戻りましょう。」
「私とトビアスは先に戻っていますので、すぐに大神殿の2階にある総主教さまの部屋までお越しください。」
主人公は総主教オルストフのもとに向かった。
その様子を遠くから見つめている2人の人物がいる。
主人公の弟とクロウズだ。
クロウズが言う。
「どうやら間に合わなかったようですね、弟さん。」
弟がそれに答える。
「お兄ちゃん、どうしても前へ進むつもりなんだ。」
「さて、どうしたものでしょうか。私が何か手を討ちますか?」とクロウズ。
「いいよ、次の機会を待つから。」
「それにクロウズさんにはやってもらいたいことがあるんだから。」
クロウズが頷く。
「そうでしたね。ではひとまず戻りましょうか。」
「私達の領界へ。」
弟は厳しい顔をしている。
「邪悪なる意志か。あまり時間は残されていないようだね。」
2人は姿を消した。
大神殿2Fの総主教オルストフの部屋に行くと、神官たちが主人公を出迎えてくれた。
「おお、お待ちしておりました。解放者さま。」
オルストフが主人公に近づく。
「よもやと思っていましたが、やはりあなたこそがそうであったか。」
「エステラたちから話は聞きました。あなたが業炎の聖塔を制覇し、氷の領界への道を開いたのだと。」
「主人公、我々が待ち望んだ解放者よ。」
「どうかこれからも私達ナドラガ教団にチカラをお貸しください。」
「そうですね、解放者であるあなたには私達の真の目的を話しておきましょう。」
「我らナドラガ教団の目的、それは5つの領界に封印されている竜族の神、ナドラガ神を復活させること。」
「神代の昔、竜族を造りたまいしナドラガ神は邪悪なる意志の悪しきチカラで5つの領域にバラバラに封印されてしまったのです。」
「あなたもすでに見たかもしれませんが、この炎の領界にある竜の頭部の形をした岩はナドラガ神さま、そのものなのです。」
「この世界を苦難より救うにはナドラガ神の復活が必要不可欠。」
「そのために、5つの領域をつながねばならないのです。」
「何はともあれ、氷の領界への道がつながり一安心。」
「この暑さにもうんざりですし、早速私も涼みにいくとしますかな。」
神官長のナダイアが苦言を言う。
「総主教さま、教団の盟主として軽々しい行動はどうかお控えくださいませ。」
「やれやれ、うちの子たちは皆アタマが固くていけませんな。」
「さて、主人公さん。氷の領界へは行けるようになりましたが、まずは安全を確かめなければなりません。」
「そこでトビアス、氷の領界の調査はあなたに任せます。よろしく頼みましたよ。」
エステラが発言する。
「私も氷の領界へ向かってよろしいですか?解放者さまのため、少しでもあちらの情報を集めておきたいのです。」
「認めましょう、エステラ。ですがあなたはトビアスの報告を待ち、安全が確保されてから行くようにしなさい。」
エステラは立ち去っていった。
「さて、主人公さん。氷の領界の安全の確認がとれるまではまだしばらくかかるでしょう。」
「来るべき時が来るまで、お身体を休めておいてください。」
「解放者たるあなたこそが、竜族すべての者の希望なのですから。」
主人公もオルストフの部屋から立ち去った。
オルストフは一人つぶやく。
「我らの待ち望んだ解放者がついに、現れてくれた。」
「これで未来への希望が見えてきましたな。」
オルストフが青い炎の前で祈りを捧げる。
「たゆたう炎よ、解放者がもたらす希望の行く末を、今ここに示しておくれ。」
炎の中に、ピンクの髪をもつ竜族の女の子供がうつし出される。
城主ダストンが危険にさらされているようだ。
主人公の弟が白い小さな箱を使った魔法を使っている。
それを見たオルストフ。
「やっかいなことになりそうですね。」
「しかし、すべての領域をつなげねば、遠からずこの世は滅びの日を迎えましょう。」
「どうかその日まで、竜族の民が生きながらえますように。」