主人公は、エステラに呼ばれたので部屋に向かった。
エステラが言うには、水の領域は今までの領域とは様子が違うようだ。
早速オルストフのもとへ向かう主人公。
「おお。解放者さま。ご足労頂きまことにすみません。」
「実はお願いがあり、非常に面目次第もないお話なのですが。」
神官長ナダイアが話を引き継ぐ。
「水の領域へ渡った我が教団の団員たちは、いまだ聖塔へと至る道を見つけることがかなわずにいる。」
「要するに、まだ水の領界の調査で成果を得られていないということだ。」
「まったく、なんのための調査団であるのか。ふがいない。」
「神官たちは皆、アタマが固く柔軟な発想に欠けるきらいがあるな。」
総主教オルストフが続ける。
「子は親に似ると言いますから、私のアタマの固さに似てしまったのでしょう。」
「いやはや、お恥ずかしい。」
「そこで今一度、解放者さまのおチカラを貸していただきたいのです。」
「どうかこれより水の領界へ渡り、その手で活路をお開きいただけませんか?」
主人公は闇の領界の円盤の遺跡に向かう。
エステラが待っていたので、一緒に水の領界へと渡った。
「これが水の領界。」
エステラがもの珍しそうに辺りを見回す。
「水がうねりながら流れてゆく。これが教団が所蔵する文献に書かれていた海というものでしょうか。」
「私の故郷の炎の領界では考えられません。皆へのお土産に持って帰れないかしら。」
エステラが物思いに耽る。
「すみません、私としたことが。」
「今は領界をつなぐ使命が最優先でしたね。」
「先行していた教団の者たちはどこに・・」
その時、トビアスの怒鳴り声が聞こえる。
「お前たちは一体いつまでこのしょっぱい水の上で足止めを食らわす気だ?」
部下たちが怯えながら答えている。
「申し訳ございません。あれに見えるのが次なる聖塔なのは間違いないのですが、あの塔より激しい高波が発生しており我らの船では近づくことはおろか、まともに進むことすらかないませんのです。」
「さらに塔に近づけば、暴風がうず巻き、たとえ竜の翼でも降り立つことは困難です。」
「予測ではこの島にある水柱に囲まれたほこらに、先に進むための手がかりがあると思われるのですが、私の持つ知識を総動員しましてもいまだ謎を解明できずでして・・」
トビアスがまた怒鳴る。
「私が待つのはいい。しかしこれ以上進めないとなればオルストフさまの夢が潰えるのだ。」
エステラが声をかける。
「トビアス、気持ちはわかりますが、頑張ってくださっているこの方達に苛立ちをぶつけてはいけません。」
「今は領界をつなぐために協力すべき時です。」
「おチカラを貸していただけますか?解放者さま。」
主人公が頷く。
トビアスが言う。
「解放者さまがそうおっしゃるならば。」
「見ての通り我々は、この島から聖塔へ至るための手段を探しています。」
「そこにいる教団員の調査によって、どうやら向こうに見えるほこらに道を開く手がかりがあるとわかりました。」
「解放者さまの知恵をお借り出来るなら、どうかほこらの調査に協力していただきたい。」
エステラが答える。
「ええ。解放者さまとチカラを合わせれば、きっと道は開かれるでしょう。」
「では主人公さん、ひとつ調査とまいりましょうか。」
主人公とエステラは、ほこらの調査に向かった。
それを見送るトビアスの顔は嫉妬に歪み、自分の杖を大きく地面に打ちつけた。
主人公はほこらの調査を始めた。
そして、ほこらにかかっていた封印を解いた。
ほこらが光り輝き、辺り一面を覆い尽くす。
エステラが喜ぶ。
「水の壁の結界が消えた。」
「主人公さんならきっと道を開いてくださると思っていました。」
そこへトビアスも慌てた様子でやってくる。
「まさか、ほこらの謎を解いたのか?」
「さすが解放者さま。おみそれいたしました。」
「ふがいない自分を悔しく思います。」
「ほこらを調べましょう。」
ほこらに入ると、空気が入った水の泡に身体全体が包まれた。
そして3人は水の泡に包まれたまま水の底へと導かれる。
水の底へ着くと、身体をおおっていた水の泡が消えた。
不思議なことに、水の泡が消えても普通に呼吸が出来る。
エステラが言う。
「ここ、息が出来るみたい。声も普通に聞こえますね。」
「なんだか穏やかな領界ですね。目に映る景色がとても色鮮やかで。」
「それでは聖塔へ向かいましょうか、主人公さん。」
3人は聖塔のある町に着いた。
町の中を進んでいくと、大きな虹色のサンゴで作られた円形のオブジェがあった。
そのサンゴに向かって町の人々が祈りを捧げている。
「カシャルさま、カシャルさま・・・」
「この身より、血より、感謝を捧げます。」
「我らの喜び、我らの支え。唯一の救い。白きイルカよ。」
そこへ大きな杖をもった竜族の女性がやってきた。
町の人々が騒ぐ。
「フィナさま!」
「うるわしきカシャルの巫女さま!」
フィナと呼ばれる女性は、手に持っている大きな杖を振りかざした。
杖は光り輝き、大きな虹色のサンゴで作られた円形のオブジェも呼応して輝きだす。
フィナが杖を大きく振ると、サンゴから空気が溢れ出し、水の領界全体を空気で満たしていく。
町の人々が喜ぶ。
「おお、海中が空気で満たされていく・・・」
「ぼくたちの命のみなもと。カシャルさまの恵みに感謝を。」
空気を送り出す儀式を終えたフィナは、神殿へ帰っていった。
護衛たちが叫ぶ。
「我らルシュカの民はいつ、いかなる時も、神獣カシャルさまとともにある!」
主人公たちは、聖塔のある神殿へ向かった。
フィナと会い、話をするためだ。
主人公がフィナがいる祈りの間へ着くと、すでにエステラとトビアスが話をしていた。
「聖塔への道が閉ざされていましたのでこちらの水の領界の方々にご協力をお願いしているところです。」
エステラがフィナに話をする。
「私は神官エステラ。遠き炎の領界よりナドラガ教団の使いとしてこの水深き地に参りました。」
「こちらはナドラガンドが待ちわびた解放者、主人公さまです。」
フィナは何もしゃべらない。
「我々は総教主オルストフさまの指揮のもと、竜族の神ナドラガを復活させ、ナドラガンドを救おうとしています。」
「名高き巫女さまとお見受けしてお願いします。どうか領界をつなぐ手助けをしていただけないでしょうか?」
突然フィナが泣き出した。エステラが困惑する。
「あの・・どうかされましたか?」
フィナの護衛がエステラに言う。
「こちらにおられるフィナさまは、神獣カシャルの巫女として神秘のサンゴを守っておられる尊いお方だ。」
「そして我は、この領界を守護する青の騎士団の長、ディカス。」
「お声の出せないフィナさまに代わって告げる。」
「異教の者よ。いますぐこの領界から立ち去られよ。」
「この領界では、救いの白きイルカ、神獣カシャルさまをあがめている。」
「我らの伝承では、竜の神は世に嘆きをもたらすと伝わっておるぞ。」
「そのようなわざわいの神を復活させようと企む輩、たしかオルストフとか言ったな?」
「そやつ、よほどの能無しに相違ないわ!」
トビアスが怒り狂う。
「貴様!ナドラガ神だけでなくオルストフさまを侮辱するとは!許さん!」
「我々の肩には竜の民の未来がかかっている!力ずくでも通してもらうぞ!」
トビアスがディカスに襲いかかる。
そのときヒューザが現れトビアスを止める。
「熱くなってんじゃねぇ。」
「あんた、ケンカ売りに来たわけじゃねえんだろ?」
フィナが何かを叫んだが、皆には聞こえない。
しかし、ヒューザには言葉が聞こえているようだ。
「ちっ、うっせーな・・」
ディカスが言う。
「こちらはフィナさま直属の騎士、ヒューザ殿だ。」
ヒューザと主人公の目が合う。
エステラが謝る。
「身内の非礼をお詫びいたします。」
「ですがお願いです。どうか話しを・・」
ディカスが言う。
「そなたが信じる神を軽んじたおとは詫びよう。」
「だがそなたたちとは相容れぬ。去るがいい。」
3人は祈りの間を出た。
トビアスが言う。
「悪かったな。交渉を決裂させて。」
エステラが答える。
「あなたがオルストフさまのことを深く敬愛しているのはよくわかっていますよ。」
「主人公さん、せっかく同席して頂いたのに残念な結果になって申し訳ありません。」
「しかし諦めるわけにはいきません。」
「竜族の希望であるあなたがここにいてくださるのですから。」
「あの不思議な巫女、フィナさんには何か底知れぬチカラが秘められていそうな、そんな迫力がありましたね。」
「あの方たちを説得するためにも、私たちは水の領界のことをもっとよく知る必要があるように思うのです。」
トビアスが言う。
「そういえばあいつら、この領界ではナドラガ神ではなく、白いイルカを崇めているなどとほざいていたが。」
「そうですね。たしか神獣カシャルさまだったかしら。彼らとわかりあうための糸口になりそうです。」
「きっとこの町を調べていけば、その白いイルカについて何かわかるはずです。手分けして調べてみましょう。」
トビアスの目に、憎しみの感情がこもる。
主人公は町にいるハチェという老人に頼まれ、墓に供える花束を用意した。
そして古びた墓石にそっと花束をそなえた。
「お若いの、花束をありがとうよ。」
「あんた、ウワサになってるよ。この海底の町にまたも外界の、それも異種族の人が来たってねぇ。」
「わしの一族は先祖代々、墓守をしとる。この墓碑はずっとずっと昔、ルシュカが沈んだ時に作られたそうじゃ。」
「神代の昔のこと、我らの世界ナドラガンドに災厄があり、大地が5つに割れた。」
「このルシュカは巨大な海洋都市だったが、一夜にして海に没した。」
「我らの祖先は死にゆくさだめだった。」
「その時、神獣カシャルさまは現れた。」
「カシャルさまは、上の広場にある神秘のサンゴを使って海中を空気で満たし、我らの祖先をお救いになったのじゃ。」
「おかげでこの領界に出た犠牲者は、ルシュカの姫ただひとりじゃった。」
「姫は深き海底に住むカシャルさまのもとへ泳ぎ着くと、ルシュカの民を救ってくれと頼み、そのまま息を引き取ったという。」
「その姫の死をいたんで、この墓碑は建てられたということじゃよ。」
そこへヒューザがやってきた。
「お前、解放者なんて呼ばれてんのかよ。」
「相変わらずお人好しだな、主人公。」
「お前のおせっかい病には同情するぜ。」
「あいつら、ナドラガ教団とかいったっけ。」
「主人公、あいつらを見限って青の騎士団に来いよ。」
主人公は考え込む。
「なんて顔してんだよ。」
「お前がそんなに器用じゃねぇってのはわかってるけどな。」
「海の底の暮らしも慣れれば悪くはねぇよ。」
「静かで時が止まったような。」
「遠い故郷みたいな場所だぜ。ルシュカは。」
「それにこれでも、お前には感謝してんだ。こんな海の底までオレを探しに来たんだろ?」
「実はあれから・・・」
その時、フィナの護衛団の一人がやってきた。
「ヒューザ様!例によってフィナさまが・・・」
「はあ?またかよ、あいつ。うぜぇ。」
「どうせいつもの場所だろうが、今日は様子がおかしかったな。」
「主人公、ちょいとオレに付き合えよ。」
「フラフラ巫女を迎えに行くついでに、お前に話したいこともあるしな。」
「そんなわけで、フィナの捜索を手伝ってくれ。あいつはこの町を出て南西にあるガイオス古海にいるだろうから。」
主人公とヒューザはガイオス古海へ向かった。
二人はカイオス古海の奥へ着いた。
「すこし空気が薄くなってきたか?神秘のサンゴからもだいぶ離れたしな。」
「ここらで休憩でもするか。」
「ワケがわからねぇって顔してんな。」
「まあお前から見れば、ヴェリナードでさらわれたヤツがこんなへんぴな場所で騎士なんて呼ばれてりゃ困惑するか。」
「別にあいつの騎士なんてやりたくてやってるわけじゃねぇけど。」
「さらわれた後のことはあまり覚えてねぇんだ。」
「オレが連れてこられたのがこの水の領界なのは間違いないようだが。」
「無我夢中で逃げ出した時には、みっともねぇが全身ズタボロだったからな。」
「意識がはっきりしやがらねぇまま、気づいたらオレは海の底で倒れてた。」
「そう、ちょうどこの辺りだったかな。」
「遠くの海面で光がうるせえくらいまたたいてんのをかすんだ目で見上げた。」
「ここで死ぬんだなってわかったよ。」
「そのとき、声が聞こえた。」
「かすかな声、女の声だ。二度目ははっきりと聞こえた。」
「生きて」
「それが出来るんなら苦労しねえよって腹立ててたら、傷がみるみるうちに治っていった。」
「視界が戻ってきて、目の前にいるやつを見た。」
「生気のない瞳をした女だった。」
「ま、それがフィナだ。」
「あいつは声が出せないらしいんだが、なぜか迷惑なことに、オレには聞こえるんだよ。」
「それがバレて面倒押し付けられたわけだ。」
「だいたいそんなところだ。」
「あいつはいつも言ってやがった。私は変わらないこの町を愛しているってな。」
「だがお前がナドラガ教団とかいう連中と一緒に現れた時、無表情なフィナが珍しく表情を見せた。」
「何にも勝る、絶望って顔だったぜ。」
二人はさらに奥へと進む。
すると、フィナが魔物に襲われて倒れているのを見つけた。
ヒューザと二人で魔物を倒す。
すると消滅する魔物の後ろから呪いの攻撃が飛んでくる。
呪い攻撃は倒れているフィナを直撃する。
「邪悪なる意志サマ・・」
それを見届けた魔物は消滅した。
「フィナ!」
フィナを抱きかかえるヒューザ。
魔物が消滅した場所には、黒いフードをかぶった男が立っていた。
魔物が「邪悪なる意志」と呼んでいた男だ。
邪悪なる意志が言う。
「おろかで哀れなけがれた巫女よ。」
「貴様は差し伸べたつもりの手で貴様の愛する者共を深き海底へ沈めているのに気づかぬか?」
「貴様の救いはすべて見せかけ。滑稽すぎて笑いが止まらぬぞ。」
邪悪なる意志が主人公の方を見る。
「よくぞここまで来たな、解放者。」
「だが貴様がいくら邪魔立てしようとも、我が理想の実現は止められぬ。」
「ナドラガンドに真の救済を。それこそが我の望むもの。」
「竜族は絶え間なき苦しみの果てに、神代の罪をあがない終えるのだ。」
「解放者よ、他に救いの道があるというならば示してみるがいい。」
邪悪なる意志はそう言い終えると、闇に消えていった。
「おい、大丈夫か?」
ヒューザがフィナに呼びかける。
「どこが大丈夫なんだよ・・・」
フィナはとても苦しそうだ。
「あのゲス野郎は絶対に許さねえが、今はこいつの治療を優先させてくれ。」
フィナの側に、ペンダントが落ちていた。
「ああ、それはフィナがいつも身につけている妙なペンダントだな。」
主人公はフィナにペンダントを渡した。
「ひとまずルシュカに戻るぜ。」
3人は急いでルシュカに戻った。
立ち去る時に主人公が辺りを見回すと、ウェディの神「マリーヌ」の像があった。
ルシュカに戻った二人。祈りの間でフィナを休ませる。
「ったく、面倒かけやがって。」
「この高熱、病気なのか?」
そこへエステラがやってきた。
「失礼します。フィナさんが倒れたと聞いて。」
「こちらのヒューザさんが主人公さんの探しておられた仲間の一人だったのですね。」
「私ったら、気づけなくてごめんなさい。」
「どうか、フィナさんの治療のお手伝いをさせてください。」
エステラがフィナに癒やしの魔法をかける。
「体内の魔力を奪われつづけている。」
「わたしにできるのは、ほんの少し症状を和らげる程度のことのようです。すみません。」
「先の闇の領界にてナダイアさまから己の立場と使命を自覚せよと諭されましたが、私はどうしても目の前で苦しむ人を見過ごせないようです。」
その時突然、シオンの声が聞こえる。
「やあ、主人公。頑張っているようですね。」
「おや?そこの眠り姫は・・・」
「主人公、状況を教えてください。」
主人公はシオンに事の成り行きを説明した。
「なるほど、白いイルカに守られた海底の都市ですか。」
「状況はわかりました。私の見立てによれば、その娘は古代の病、クロモノス熱にかかっています。」
「クロモノス熱は奇病。唯一、虹色のヤシの実という果物だけが病気を癒すことが出来るのです。」
「虹色のヤシの実は、アストルティアのとある孤島の固有種でした。」
「しかしその島は、数千年前、巨大な怪獣にまるごと飲み込まれたと言われています。」
「ですが、あきらめるのは早計です。私に考えがあります。」
「じつはごく最近、私はある噂を耳にしたのです。」
「グランドタイタス号のエイブラム船長が、航海中にとてつもなく巨大な何かを見たと。」
「船長に話を聞ければ、きっと何か手がかりをつかめるでしょう。」
主人公はエイブラム船長にその場所を聞き、飛竜に乗って向かった。
その場所には、謎の小島があった。
島の真ん中に謎のでっぱりがあったのでつついてみると、巨大なモンスターが現れた。
「ブウウーイッ!ワシのヘソをつつくヤツは誰じゃ?」
主人公が小島だと思っていた場所は、巨大なモンスターのお腹だった。
「なんじゃ、虫けらか。いつもならこのブオーンさまのひづめでつぶしてくれるところだが・・」
この巨大なモンスターはブオーンというようだ。
「今はそれどころじゃないわい!!ブオーーーン!!」
ブオーンは突然泣き出した。
「あれはワシがこうして昼寝をしておった時よ。ついうっかりウトウトして・・・」
ブオーンは昼寝中、頬の上にあった何かをうっかり飲み込んでしまったようだ。
「ワシはかけがいのない宝物を飲み込んでしまったのだ。」
「それ以来、悲しみで立つこともままならん。このままではやがて絶望の海に浮かぶただの島と成り果てようぞ。」
「ところで虫けらよ。さっきから思っておったのだが、キサマはなかなかよい具合の小ささだな。」
「ちょうど飲み込むにもよさそうだ。」
「フム、思いついたわい。」
「これよりワシの腹の中に入り、ワシの宝物を見事に探してきたらプチッと潰さずに見逃してやろう。」
主人公はブオーンの腹の中に入り、飲み込まれた宝物を探すことになった。
「うん?ワシの宝物とは何かだと?宝物と言えばかけがえのないツヤツヤした大切なアレに決まっておるだろう。」
「ええい!ゴチャゴチャ言ってないで早くワシの宝物を取りに行かんかー!」
主人公はブオーンの口の中から入り、腹の中の宝物を探した。
腹の中には小さな小島があった。
消化されず、そのまま残っているようだ。
その小島には虹色にかがやくヤシの実があり、主人公はそれを手に入れた。
ふとヤシの木のふもとを見ると、小さなツボがあった。
ツボのフタがカタカタと音を立てている。
主人公はフタを開いた。
突然ツボの中から、小さな魔物が現れた。
「ブウウーイッ!やっと出られたプー。」
「オイラは原始最強のブオーン族のまつえい!戦士ブオーンの子、プオーンだプー!」
「オイラ昼寝してる父ちゃんのほっぺで遊んでたら、ペロッと飲み込まれたんだプー!」
「そしてこの胃袋に流れ着いたプー。」
「消化されないようにツボの中に隠れていたところをお前に助けられたプー!」
「この気持を感謝と呼ぶプー。」
「オイラ、またこのツボの中に入ってるから、外に運んでほしいプー。」
主人公はプオーンの入ったツボを持って外へ出た。
プオーンがツボから飛び出した。
「父ちゃーん!」
ブオーンが喜ぶ。
「せがれーー!!」
「おお、よくぞ帰ってきた。」
「そうじゃ、かけがえのないツヤツヤした大切なワシの宝物とは、この息子よ!」
「虫けらよ、よい働きをしたな。キサマがブオーン族だったら、ワシの身体のコケを分けてやったものを。」
息子プオーンが言う。
「オイラ、主人公についていって、ここぞと言う時に恩返しをしたいプー!」
ブオーンが怒る。
「何?そんなこと許さんぞ!」
「父ちゃん、男は恩を受けたら命をかけて返さなきゃいけないんだプー。」
ブオーンが言う。
「せがれよ、立派になりおって。」
「虫けら・・・主人公とか言ったな。」
「うちの息子を泣かせたらどうなるか深く心に刻んでおくのだぞ。」
息子プオーンが主人公についてくることになった。
「主人公、オイラいつかお前の役に立つ日が来るプー。」
「だからオイラのこと大事にするプー。」
シオンの声が聞こえる。
「いにしえの怪獣と交渉するとは、あなたもなかなかやり手ですね。」
「虹色のヤシの実も手に入ったようですし、これなら水の領界のあの巫女を救うことができるでしょう。」
「さあ、行くのです。」
主人公は、フィナのもとへ向かった。
早速、虹色ヤシの実の果汁をフィナに飲ませる。
フィナはすぐに目を覚ました。
「気分はどうだ?」
フューザが尋ねる。
何やら答えるフィナ。
病気はもう大丈夫のようだ。
そこへ慌てた様子でエステラがやってきた。
「すみません、主人公さん。少しよろしいでしょうか?」
「聖塔への結界がいつのまにか通れるほどに弱まっているみたいなんです。」
「それをトビアスが見つけて、あろうことか青の騎士団の方々を殴り倒して、ひとり聖塔へ向かったのです。」
「なんて愚かなことを。」
「トビアスはオルストフさまを侮辱されたことでまわりが見えなくなっているんです。」
「どうか私と一緒にトビアスを追っていただけますか?」
主人公とエステラは、二人で聖塔に登った。
途中難解な仕掛けが数多く施されていたが、なんとか聖塔の最上階へ登ることが出来た。
最上階にはトビアスがいた。
「トビアス、心を鎮めなさい!」
エステラが叫ぶ。
「このような、他のものを犠牲にするやり方はナドラガ教団の教えに反しますよ!」
トビアスにエステラの声は届かない。
「だまっていろ、エステラ。」
「領界をつなぐことが竜族の救われる道なんだ。」
「オレはオルストフさまをおとしめたこの領界のヤツらさえも救ってやり、オルストフさまの正しさを証明してやる。」
無謀にも水の守護者「水魔ヴァーテル」に一人で立ち向かうが、あっさりとやられてしまう。
意識を失うトビアス。
かわりに主人公が水魔ヴァーテルを倒す。
水魔ヴァーテルが消滅した後に、水の円盤が現れた。
トビアスが都合よく目を覚ます。
「解放者さま!円盤の遺跡はすぐそこです!新たな領界への道をおつなぎください!」
その時突然、主人公とエステラは天井部にある大きな水の塊の中に吸い込まれる。
水の中には白いイルカ「神獣カシャル」がいた。
主人公とエステラに神獣カシャルが襲いかかる。
なんとか神獣カシャルを退ける主人公とエステラ。
水の塊の中から聖塔に戻される。
すると、神獣カシャルはフィナの姿に変わった。
そこへヒューザもやってくる。
「声が聞こえたんだ。」
フィナを抱きかかえるヒューザ。
「お前・・・」
その時、元気を取り戻したトビアスが後ろの方で騒ぎだす。
「これ以上、誰にも邪魔はさせん!竜の民に救いの道を示すのだ!」
水の円盤を横取りしたトビアスは、遺跡のくぼみに円盤をはめた。
ニヤつくトビアス。
「いけません!」
フィナが叫んだ。
フィナが話せたことに主人公は驚く。
円盤をはめたことで、次の領界への道が開かれた。
「なんてことを・・」
フィナが手で顔を覆って泣き出す。
エステラが言う。
「フィナさん、あなた声が・・」
「私の名は、神獣カシャル。」
「水の神マリーヌの眷族。水の領界を、、竜族の行く末を見守る者。」
「戒めが解かれ口をきけるようになった今、ナドラガンドの真実を語る時が来たようです。」
「空の民、竜族。はるかかなたより世界を見守る聖なる者たち。」
「アストルティア神話の一節です。」
「あなたがた竜族は神話の時代、アストルティアの上空に浮かぶ浮遊大陸ナドラガンドに暮らしていました。」
「しかし神々の世に終焉が訪れました。」
「竜族の神ナドラガが邪神に堕ちて、他の六種族の神に大戦をしかけたのです。」
「血で血を洗う争いの日々は数千年に及び、竜族も六種族も幾万もの命の灯が戦いの中で絶えてゆきました。」
「そして終わりなき戦いに終止符を打つため、神々はナドラガンドもろとも、かの邪神を奈落の果てへ封じることにしたのです。」
「ナドラガはその身を引き裂かれ、ナドラガンドの大陸に封じられました。」
「そして大地は神々の手で5つに割られ、奈落の門の先、断罪の虚空へ送られた。」
「ナドラガに従い、その先兵となって戦った多くの竜族たちと共に。」
「竜族の苦難の日々がここに始まったのです。」
エステラが衝撃を受けている。
「ナドラガ神が?そんなの信じられません。」
フィナが続ける。
「いつか罪が許された時、竜の民は永年の罰から解放され救いが訪れるはずでした。」
「なのに・・・あなたがたは、なにゆえ邪神を蘇らせ、ふたたび破滅の道を歩もうというのか。」
トビアスが叫ぶ。
「ふざけるな!」
「ナドラガ神が邪神だと?大嘘ならべるのもたいがいにするがいい!」
「ナドラガ教団の信じた未来をおとしめ、そのような妄言をはき散らすなど断じて許せぬ!」
突然声がする。
「その通りだ、トビアス。」
その声の先には神官長ナダイアがいた。
「その娘は神の名を騙り人心を惑わす邪悪なる意志の手先。」
「こちらでも調べてみたが、この領界は邪悪なる意志に掌握されて腐敗しきっている。」
「解放者よ。あなたは見てきたはず。」
「炎に焼かれる村を。寒さに震える子らを。毒にむせび泣く竜の民たちを。」
「それらに手を差し伸べていた我らと異なり、その娘が守りたいのは水の領界のみ。」
「竜の民すべてを救う気など、かけらもないのだ。」
「水の領界という閉じた偽りの理想郷を築き、竜の民の魂を堕落につなぎ止めた罪、万死に値する。」
「さあ、解放者殿。邪悪なる意志の手先に裁きを。」
「その娘を殺し、水の領界の民を解き放つのです。」
主人公は首を横に振る。
「ほう、解放者殿は邪悪なる意志に味方すると。」
「解放者ですらこうも簡単に邪悪なる意志に心を支配されてしまうとは。」
「いや、悲しいことだがその者は解放者などではなかったのだ。」
「今より貴様をナドラガ教団の敵と見なす。」
「我らの目前に二度と姿を現すな。邪魔立てをするようならば容赦はせん。」
「ナドラガ神の使徒たちよ。いざ行かん。」
「我らが最後の大地、吹きすさぶ嵐の中へ。」
トビアスが神官長ナダイアにひれ伏す。
「我らの意志はけがれることはない。すべての竜族の民を救うため。」
トビアスはエステラの腕を無理矢理引っ張り、神官長ナダイアとともに嵐の領界へと向かった。
フィナが言う。
「あの者たちも、自らが信じる正義のために戦っている。私の言葉は決して届かないでしょう。」
「ヒューザ、主人公。あなたがたには私のことも含めて、きちんとお話させていただきます。」
「今はカシャル海底神殿へ戻りましょう。祈りの間でお待ちしております。」
主人公は祈りの間へ向かった。
「主人公、大切な仲間と決別の道を歩ませたこと、まずは謝らせてください。」
「今のナドラガンドの在り様は神代より連綿と続いてきた天罰。」
「あなたにも今の竜族にも非はないのです。」
「私の声が戻ったのは、今こそ真実を伝えるべき時というマリーヌ神のご意思なのでしょう。」
「あなたがたに水の領界の神話をお話ししましょう。」
「先程も話した通り邪神ナドラガを封ずるため、ナドラガンドは神々の手で5つに分けられました。」
「その時、私、マリーヌ神の眷族である神獣カシャルのほこらにルシュカの竜の姫がひとり流れついたのです。」
「姫は今にも死にゆこうとしていました。」
「私のもとにたどり着くまでの苦難に命を燃やし尽くしてしまったのです。」
「姫は最後の願いを言いました。今まさにルシュカは沈もうとしている。死にゆく民を助けて欲しいと。」
「私は姫のなきがらを前に、たとえ天の意に背こうともルシュカの民を救おうと決心しました。」
「ルシュカが海底に沈んだのは神々が竜の民に与えた天罰のひとつ。」
「私は主であるマリーヌ神に許しを乞いました。ルシュカに住む竜の民たちを救い、ともに生きてゆきたいと。」
「マリーヌ神はおっしゃいました。ナドラガンドの未来は、竜の民たちが自らの手で切り開かねばならない。」
「それを支えるのは構わぬが、彼らの意志を左右させぬようお前から声を奪おう。」
「そしていつしか竜の民の罪が許される日まで、幾星霜(いくせいそう)かかろうと聖塔を守り続けよ。」
「私はすぐさま海上から空気を運び、神秘のサンゴのチカラで海中のすみずみまで新鮮な空気を行きわたらせました。」
「そして命を落とした竜の姫の姿を借り、フィナとしてルシュカの民とともに生きてきたのです。」
その時、シオンがフィナに話しかける。
「じつに久しぶりですね、カシャルよ。」
シオンは主人公の身体を通して話している。
フィナが驚く。
「その声、もしやグランゼニス神の眷族ファルシオンでしょうか。」
「六神の眷族の中で最も繊細だったあなたが、結局真実を伝える役割を負うことになるとは。」
「あなたはこのルシュカに住む竜族に肩入れをしすぎたのです。」
「これは神々があなたに与えた罰でしょう。」
フィナが答える。
「おっしゃるとおりですわ。」
「私はルシュカの者たちさえ生き長らえればそれでいいと思っていましたから。」
「彼らが自分たちのチカラで自らを救うように見守ってあげることができなかった。」
「しかしあなたもこちらの方に話せないことを苦にしておられたのでは?」
シオンがうろたえる。
「主人公、私は竜族の神ナドラガが邪神に堕ちたという真実を知りながら、神々との約定でそれを伝えられませんでした。」
「あなたを神々の戦いの後始末に巻き込んでしまったこと、どうか許してください。」
「ですが私は今こそ、そしてあなたこそが竜族たちに救いをもたらす者だと信じ、賭けてみようと思ったのです。」
ヒューザが口をはさむ。
「つまりナドラガ教団の連中は、救いの時が来たのに何をトチ狂ったか邪神を復活させてもう一度地獄に堕ちようとしているのか?」
フィナが答える。
「そう、そして困ったことに彼らはそれこそが救いの道だと信じ込んでいるようなのです。」
「そうなるように彼らを惑わせたのは邪悪なる意志と呼ばれる者。」
ヒューザが言う。
「それなら道を間違えているヤツらをオレたちで正してやればいいだけのことだ。」
「そうだろ?主人公。」
主人公が頷く。
「ありがとう、心優しき者たちよ。どうかお願いします。」
「ナドラガンドに光を。」
「どうやらオレをさらったヤツの正体も邪悪なる意志の配下と見てよさそうだな。」
「これでオレの戦う理由も決まった。」
ヒューザはそう言うと、一人で旅立とうとする。
「ヒューザ。あなたにはマリーヌ神の加護が宿っています。だから私の言葉が届いたのでしょう。」
「悠久に思えた孤独の中であなたと話せたこと、私は嬉しかったのですよ。」
「あなたの旅にいつか安息が訪れますよう。」
ヒューザは振り返らず、一人で旅立っていった。
場面は変わり、神官長ナダイアが総主教オルストフに報告している。
報告が終わると、無表情のままその場を去った。
「解放者さまとの道が分かたれようとは。なんと悲しきさだめであろうか。」
「たゆたう炎よ。嵐吹きすさぶ混迷の中に訪れし新たなる未来を今ここに示しておくれ。」
青白い炎の中に未来が映し出される。
クロウズが帽子をぬぐ。その表情は見えない。
白い神獣のような馬が駆け抜けていく。
ラグアスが気を失って倒れている。その横にはフウラ。フウラは泣いているようだ。
アンルシアが剣を構え、巨大な竜に立ち向かっている。
「解放者というともし火を失おうとも、竜族の夜明けはすぐそこに迫っておる。」
「ここで立ち止まることは許されぬ。」
そうつぶやくオルストフの表情は決意に満ちている。
「我らが神、ナドラガ神よ。どうか竜族の民をお導きくだされ。」
立ち去ったはずの神官長ナダイアが柱の影でオルストフの様子を見ている。
まるでオルストフを監視しているかのように。