ドラゴンクエストX(DQ10) ネタバレストーリー まとめ

ドラゴンクエストX(DQ10)のメインストーリー、サブストーリーのまとめ

エピソード38 闇の根源 後編

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大魔王の玉座前で意識を失った主人公。
ユシュカの声が聞こえる。
「おい、主人公。俺の声が聞こえるか?」
「ようやくつながった。」
「どにかくもう時間がない。」
「今からお前の頭の中に直接イメージを送る。」
「しっかり意識を集中してくれ。」
「もうすぐ世界の命運をかけた最後の決戦が始まる。」
「ここまで来い、主人公。」
「異界滅神ジャゴヌバを倒すために。」
「そこで俺たちは・・」
主人公が目を覚ますと、アンルシア、ヴァレリア、アスバル、賢者マリーンがいた。
主人公はユシュカの声が聞こえてきて魔瘴に満ちた大空洞や魔瘴の海、奇妙な島などのイメージを見たことを話すと、世界樹の花から女神ルティアナの蝶が出現した。
「世界は音もなく滅びへと向かっている。」
「闇の根源の悪しき手によって。」
「ジャゴヌバは魔瘴を結集させ滅びの槍を放ち、光の河を貫いて魔界もろともアストルティアを滅ぼさんとしている。」
「なんとしても阻止せねばならぬ。」
「急ぐのだ、主人公よ。」


賢者マリーンが言う。
「お前さん、ユシュカと血の契約を交わした覚えはあるかい?」
主人公はうなずいた。
「なるほど。やはりね。」
「そういう事なら納得がいく。」
「あれは古の魔族に伝わる禁断の呪術。」
「契約が成立すればお互いの生命力を高め合うが失敗すると術の反動で命を落としかねない。」
「昔々、赤毛の小僧が片眼を失って苦しむ親友を助けたいと願って魔界中を駆けずり回り、術を習得したようだね。」
「だがそうして挑んだ契約は失敗し、二人して生死の境を彷徨ったのさ。」
「その時はあたしが助けてやったんだが。」
「お前さんとの血の契約は成功したんだね。」
「契約を交わした者同士は時として血を介し意思を交わせると聞いたことがある。」
「ユシュカはそれを覚えていたからわざと連れ去られ、誰にもつかめなかったジャゴヌバの居所を伝えたんだろう。」


医務室で弟が目を覚ましたとの連絡が入ったので移動した。
「兄ちゃん、心配かけてごめんよ。」
「まだ思うように動けないけど、おかげでだいぶ良くなったよ。」
「アンルシア姫、ナドラガンド以来だね。」
「魔仙卿としてならジャゴヌバ神殿でも会っているけど。」
「魔瘴の奔流に落とされて危うく命を落としかけたけどね。」
「魔瘴は魔界の地下水脈に沿って流れてて、気がついたらザハディガル岩峰の水辺に流れ着いていたんだよ。」
「魔仙卿の衣装が魔瘴から守ってくれたのさ。」
「後は知っての通り、リドのタリスマンを持ち出してザードの祭壇へ向かったけど、そこで魔瘴魂に襲われてしまったんだ。」
「大魔王ユシュカには悪いことをしたね。」
「おいらたちを守るためにジャゴヌバに連れ去られてしまうなんて。」
主人公は先程見た光景を弟に伝えた。
「兄ちゃんが見たその光景は間違いない。」
「ユシュカは魔瘴の海を越えた先にある滅星の邪園にいるんだ。」
「滅星の邪園こそ闇の根源がこの世界に現れた場所なんだ。」
「あいらどうにかそこへ行こうと思ってザードの祭壇に向かったんだよ。」
「先代の魔仙卿はおいらにこんなこと語って聞かせてくれた。」
「異界滅神ジャゴヌバが封印され、魔界がアストルティアから切り離された後、残された者たちは魔族や魔物になった。」
「しかし魔瘴によって特異な能力を得た彼らも濃厚な魔瘴が持つ強烈に変質を促す力には肉体が耐えきれず、多くの犠牲が出たのだ。」
「封印から漏れ出す濃厚な魔瘴への対策は魔界の急務だったが、それを成し得たのは初めて魔界を統一したゴダという魔族だった。」
「ゴダはジャゴヌバ神殿を巨大な岩塊で覆い、自らの子ジャディンにその監視を任せると魔族を率いてアストルティアに出征した。」
「それは魔族たちの抱く恨みと怨念がジャゴヌバを刺激して魔瘴を発生させることを防ぐという狙いがあってのことだった。」
「この出征により当時の魔界の魔瘴は減少し、ゴダ自身はアストルティアで討ち死にしたが、その遺志は我、ジャディンに引き継がれた。」
「これが大魔王、そして魔仙卿と呼ばれる者の始まりである。」
「我は父ゴダのような偉大な統率力は持たなかったが、魔瘴の中から有力な者を選び大魔王と成すことで魔界の秩序を守っていた。」
「そうした者の中からヴァルザードが現れた。」
「彼は対症療法的なゴダの戦略を一歩進めてジャゴヌバへの対抗策を模索した人物だった。」
「ジャゴヌバ神殿の真下に存在する大空洞。」
「そこに満ちる濃厚な魔瘴の海の中にこそ闇の根源に迫る秘密があると彼はにらんだ。」
「そこでヴァルザードは我と協力して海の魔獣を創り出した。」
「それは魔瘴の海をも突破できる唯一の生物だった。」
「しかし魔獣が十分に成長するには膨大な時間が必要であり、ヴァルザードもその完成を見ることなくこの世を去った。」
「そして数千年の時が流れ、機は熟した。」
「ヴァルザードが遺した魔獣と交信できる場所こそがザードの祭壇なのだ。」
「ヴァルザードの海の魔獣を呼び出せればおいらたちはそこへ行けるはず。」
「ただ理由はわからないけど、魔獣の精神が何かに囚われていて祭壇から呼びかけても声が届かないんだ。」
「だからリドのタリスマンを使って海の魔獣の精神を解放できないか試していたんだよ。」
「だけど生半可な戦力では立ち向かえない。」
「この場に集っているのはアストルティアと魔界、双方の世界を代表するすばらしい英傑たちだ。」
「今こそ大魔王のもとに結集し、みんなで滅星の邪園へ乗り込んでほしい。」
「兄ちゃん、もうひとつ大事なお願いがあるんだけど聞いてもらってもいいかな?」
「祭壇で試してみてわかったんだけど、リドのタリスマンは本来の力をまだ取り戻せてないんだ。」
「だからタリスマンを解放する方法を大魔道士リドの霊魂にたずねてくれるかな。」
「先代の魔仙卿もそうしていたから。」
「先代の魔仙卿が唱えていたリドの霊魂を呼び覚ます合言葉は『リドよわがともよ』。忘れないでね。」
主人公は弟からリドのタリスマンを受け取った。
「合言葉を唱える場所は魔幻都市ゴーラ跡、朽ちた霊廊の最奥にある守護者の間。」
「タリスマンが安置されていた場所だ。」


主人公はタリスマンを解放した。
「若人よ、よくぞ我を呼び出した。」
「ジャディンはよき後継者を得たようだな。」
「魔界の未来を真に導くことができる者を。」
「我の生きた時代。古の魔界は絶え間ない破壊と混乱にさいなまれ、絶望と怨嗟の声がこだましていた。」
「そしてアストルティアへの増悪こそが魔界を生きる者どもを支配する唯一絶対の掟であったのだ。」
「実になげかわしい。」
「それでは魔瘴に侵され理性を失ったただの獣と何も変わらぬ。」
「己のチカラと知恵のみを信じ、何者にも支配されず己を神として生きる。」
「それこそが真の魔族のありかた。」
「いにしえより続く増悪の連鎖を断ち切るため、汝らが戦いにおもむくというならば喜んでチカラを貸そう。」
主人公の持つリドのタリスマンに大魔道士リドの魔力が注がれ、真の力が解放されていく。
主人公は破戒のタリスマンを手に入れた。
「気の遠くなるような時間が流れた。」
「それでもなおこの魂には刻まれている。」
「ジャディンと語り合った夢が、理想が。」
「我らの願い、そなたの双肩に預けたぞ。」
「魔界を新たなる未来へ導いてくれ。大魔王主人公よ。」


皆と一緒にザードの祭壇に向かった。
破戒のタリスマンを弟に渡した。
「我こそは魔仙卿。」
「汝を創りし者たちとの約定に応え、我が前に出でよ、海魔獣ブルラトス!」


海魔獣ブルラトスが現れた。
「ブルラトス、君を解放してみせる!」
破戒のタリスマンが金色に光り輝く。
「よかった。正気に戻ったんだね。」
「これまでいったいどうしていたの?」
「ブルラトスは先代の魔仙卿の命令で魔界中の魔瘴が流れ込むファラザード近海を調査してくれていた。」
「長い間調査は続いたけど、ついにジャゴヌバの本拠地、滅星の邪園に辿り着く秘密の海底洞窟を見つけたんだって。」
「だけどその時にジャゴヌバの暗黒の手に捕まって、自我を奪われてしまったらしい。」
「ブルラトスが滅星の邪園まで連れて行くから自分の背中に乗れって言ってるよ。」
「おいらも滅星の邪園についていきたいけど、今の有り様じゃ足手まといになる。」
「おとなしく身体を治すことに専念するよ。」
「それとこれを渡しておくね。」
「きっと何かの役に立つと思うんだ。」
主人公は弟から大魔王の覇印を受け取った。
「世界は闇に飲み込まれようとしている。」
「兄ちゃんたちだけがこの世に残されたたった一つの希望だ。」
「さあ、行け!ブルラトス!」
「希望の光を魔界の底へ届けるんだ!」


ユシュカの声に導かれ、主人公たちは滅星の邪園に辿り着いた。
最奥へ向かうと声が聞こえてきた。
「我らは魔祖。」
「神話の時代より滅星の邪園を守護する闇の眷属にして古き魔族の源流だ。」
「魔瘴の奔流を越えこの滅星の邪園まで辿り着くことができたとは。」
「さすがは覇印を持つ者か。大魔王よ。」
「その覇印は歴代の大魔王が我らが主、異界滅神ジャゴヌバ様に謁見するために作られた呪具。」
「我ら魔祖が濃密な魔瘴を注いだ大魔王の覇印だけがこの扉を開き、深淵への昇降機を起動できるのだ。」
「だが扉は開かせぬ。」
「世界はまもなく滅びる運命にある。」
「我らは貴様を排除する。」
「この滅星の邪園でもろともに朽ち果てよ。」


途中、魔祖ガルドが現れた。
「俺の名は魔祖ガルド。」
「アストルティアの者と会ったのはあの悲劇が起きて以来だ。」
「ジャゴヌバ様はここよりさらに下層、滅星の深淵で世界を滅ぼさんとしている。」
「あの方の支度が整うまでこの俺があんたの相手をしてやるよ。」
「貴様は魔祖の血族を知っているか?」
「かつてアストルティアを襲撃した羅刹王バラシュナに連なる異形の者どもだ。」
「はるか昔、俺たち魔祖は叡智を結集し、濃密な魔瘴を魔物に注ぎ込んで異形と成し地上に送り込んでやったのさ。」
「今こそその外法を見せてやろう。」
「貴様らの命と引き替えにな!」
「魔瘴よ!我もとに集いてこの身を剛勇たる獣に作り変えよ!」
「我が名は起源獣ガルドドン!」
主人公は魔祖ガルドを倒した。


さらに下層に進むと魔祖ザークがいた。
「やあ、僕の名は魔祖ザーク。」
「せっかくだから話でもしようよ。」
「例えば異界滅神ジャゴヌバが闇の根源と呼ばれる前のこととかね。」
「教えてあげようか?」
「本来の異界滅神とは遠い彼方からやってきた生命を鉱物へ変容させる者だったんだよ。」
「水は砂に。草木は石に。果実は宝玉に。」
「神話時代のアストルティアは生命が死に絶える危機を迎えようとしていた。」
「でも僕たち魔祖はジャゴヌバ様のおそばにいることで何万年も生きる不滅の者となったんだ。」
「たとえこの身が腐り落ちてもあの方をお守りするんだ。」
「魔瘴よ!我もとに集いてこの身に灼熱の業火を宿したまえ。」
「我が名は起源将ジェルザーク!」
主人公たちは魔祖ザークを倒した。


さらに下層に進むと魔祖スコルがいた。
「私の名は魔祖スコル。」
「あなたがたを見ていると昔の自分を見るようでもどかしい。」
「私達魔祖は神話の時代、アストルティアの賢者と呼ばれていました。」
「遠い彼方より飛来した異界滅神により鉱物化し、滅びゆく世界を女神と共に守らんとしたのです。」
「志を胸に燃やし乗り込んだのがここ。」
「ジャゴヌバの乗る船、滅星の邪園でした。」
「しかしそんなことに意味はなかった。」
「全くの無駄だったんですよ。」
「この絶望、怒り、苦しみ、恨み。」
「あなたにも味あわせてあげましょうね。」
「魔瘴よ!我もとに集いてこの身に硬き甲殻を与えたまえ!」
「私の名は起源魔スコルパイド!」
主人公たちは魔祖スコルを倒した。


主人公は大魔王の覇印を扉に共鳴させ先へ進んだ。
そこには魔祖メゼがいた。
「我が名は魔祖メゼ。」
「無意味にあらがい続けるのはよせ。」
「この世界は必ず滅びる。」
「かの遠き世界、とこしえのゆりかごも若き神ルティアナを出立させたのち異界滅神の一族により滅びを迎えた。」
「我ら賢者はアストルティアをかの世界の二の舞にはさせぬと女神により借り受けた光のチカラで異界滅神に挑んだのだ。」
「そしてついに異界滅神の能力を封じ、世界の鉱物化を食い止めることに成功した。」
「その時だった。」
「異界滅神は巨大な肉塊へと変容し、全身から濃密な魔瘴を噴き出し始めたのだ。」
「何が起きたのかはわからぬ。」
「ただアストルティアを救わんとした我らの手により魔瘴は生まれてしまった。」
「ならばこれは定められし運命なのだ。」
「世界の滅びはどうあがいても止められぬ。」
「貴様も我らと同じく運命を受け入れよ。」
「魔瘴よ、我がもとに集いてこの身に蒼き迅雷を宿したまえ。」
「我が名は起源鎧デルメゼ!」
主人公たちは魔祖メゼを倒した。


昇降機の起動装置の前にやってきた。
賢者マリーンが言う。
「これが昇降機の起動装置だね。」
「どうやら魔祖たちのチカラにしか反応しないよう作られているようだが・・」
「その大魔王の覇印には魔祖から吸い上げた闇の力が宿っているようだ。」
「装置が起動できるか試してごらん。」


主人公は大魔王の覇印を使い、アンルシア、マリーン、ヴァレリア、アスバルの4人のチカラを捧げ、昇降機を起動させた。


途中、魔祖たちの記憶の結晶があった。
「俺たち賢者は健忘録として遠い彼方より飛来した未知なる敵の調査経過を残すことにした。」
「敵の船周辺はありとあらゆるものが鉱物と化し、生命の気配は感じられない。」
「集落らしき場所を捜索したが、奇妙な形をした人間大の岩石がゴロゴロと転がっていた。」
「あれは多分、くそ!胸糞悪いぜ。」
「いよいよ明日、船内へ侵入し計画を実行する。」
「おお、偉大なる母女神ルティアナよ。その光で我らを守り給え。」
「僕たちは女神から託されたチカラで敵の能力を封じ、世界の鉱物化は止まった。」
「全てが終わったはずだったのに。」
「突然敵から魔力の奔流がほとばしり、その身体が何倍にも膨れ上がって醜悪な肉の塊にかわっていったんだ。」
「俺たちの周囲は魔力の霧に包まれている。」
「賢者メゼはこれを魔瘴と呼んでいた。」
「まるで闇の底にいるような恐怖を感じる。」
「魔瘴に侵された者は毒々しい色に変化し、苦痛の声と共に人にあるまじき禍々しい角まで生やし始めた。」
「かく言う私もおぞましい異形の姿に。」
「混乱の中、仲間と支え合い正気を保つよう呼びかけあうだけで精一杯です。」
「何が起きたというのでしょう。」
「女神から借り受けた創生の光で未知なる敵を封印したあの瞬間に。」
「魔瘴の噴出を止めねば世界は破滅する。」
「まずは冷静になって対策を講じるのです。」
「賢者として、母なる女神の子として。」
「昨夜、我、賢者メゼは暗闇の底で女神ルティアナの神託を聞いた。」
「未知なる敵が放つ魔瘴の勢いはすさまじく、もはや完全に消し去ることはできない。この世界は闇に覆われつつあると。」
「我には女神の心がわかった。」
「ゆえに賢者の長として決断を下した。」
「女神よ、どうかアストルティアが闇に閉ざされる前に魔瘴に侵された地を世界から切り離してほしい。」
「世界が存続するにはそれしか方法がない。」
「残された者たちのことはこのメゼが責任を持って見届けよう。」
「我の言葉を聞いた女神ルティアナは長い沈黙の後『承知』と言い残しそれきり声は途絶えた。」
「取り残され、魔瘴に侵された者たちは女神への怨恨とアストルティアへの羨望を喉が裂けるほどに叫び続けている。」
「我らが万にひとつ救われる道は絶たれた。」
「女神ルティアナは我らを利用した挙げ句、不要になったから見捨てたのだと。」
「それは違う。」
「女神として世界を守るために仕方がなかったのだ。」
「そう説いても聞く耳を持とうとしない。」
「世界を救う使命に燃えた賢者の中にさえ女神を奉ずる心を失いかけている者がいる。」
「なんと愚かな。」
「そこに思いがけず肉塊と化した未知なる敵が我らに語りかけてきた。」
「自らは闇の根源である。」
「その名を異界滅神ジャゴヌバであると。」
「異界滅神ジャゴヌバは我ら賢者にある取引を持ちかけてきた。」
「闇の眷属となり賢者の叡智をもってこの不浄なる世界の統治を手伝うなら不滅の肉体を与えてやろうと。」
「そのようなことはとても承服できぬ。」
「だがこのまま闇の中で息絶えたとて何になろうか。」
「我は女神と約束したのだ。」
「取り残され魔瘴に侵されし人々。」
「魔族たちの行末を見届けるとこを。」
「ならばこの取引を利用してやろう。」
「闇の根源と契約し不滅の身体を得て世界の敵にあらがい続けようではないか。」
「我らは闇の中、壊れ始めている。」
「人とはかくももろく弱いものなのか。」
「ガルドやザークは人が変わったように異形を生み出す外法や魔瘴塊の研究に熱を上げ女神への恨みごとをはき続ける。」
「あれほど思慮深かったスコルでさえ女神を慕いながら世界の滅びに加担している自己矛盾に精神を病み、ふさぎがちになった。」
「私は不滅の肉体を得て永久の時間を過ごす中で考えにふける。」
「人は生まれ、いずれ死ぬ。」
「ならば世界もまた同じではないのか。」
「滅びとはあらかじめ定められた運命だ。」
「たとえ世界を鉱物化から救ったとしても異界滅神が生まれてしまったように。」
「どんなにもがき生きて抗おうと行き着く先は同じ滅びの未来なのだ。」


主人公は一人で最奥にある炎獄王の座までやってきた。
ユシュカが一人で立っている。
「ようやく辿り着いたか。待ちくたびれたぞ。」
「俺の理性が残ってるうちに血の契約でお前をここへ導けてよかったぜ。」
「血の契約は禁断の呪術。」
「高位の魔族が他者に生き血を与えることでその生命と運命を分かち合う儀式。」
「あの時お前の命を助けたとっさの契約が導いたのはこんな運命だったか。」
「お前が俺を殺すという運命。」
「俺は闇の根源の眷属になりかけてる。」
「いつまでマトモに話せるかもわからない。」
「そうなる前に俺を殺せ、やってくれるな?主人公。」
主人公は首を横にふった。
「お前は大魔王だ。」
「自分の背負うもののために俺を倒して前に進め。」
「ありがとな。お前が大魔王で本当によかった。」


ナラジアが現れた。
「いつもの大魔王選定の儀なら魔王ユシュカが大魔王として選ばれ、僕は闇の根源の力を授けていただろう。」
「ちょっと意外かな?」
「でも昔の彼をよく思い出してごらん。」
「まわりの者を見下し、他者をしもべと扱い、自分こそが唯一選ばれし者だと思い込む。」
「その傲慢さは王者の器たりうる。」
「そして彼を選ぶに値する理由はもうひとつある。」
「僕が時代ごとの大魔王に求めてきたのは王者の器と、斬新で改新的な思想。」
「僕にとって未知の概念を持っていること。」
「ねえ、教えてよ。」
「協調ってなんなの?」
「傲慢な魔王が協調などとうそぶき、利を説いてアストルティアを意のままにする。」
「それはどんな災いを招くだろう。」
「だけどそのとなりには君がいた。」
「さらに興味深い未知の存在がね。」
「真の大魔王は未だ選ばれていない。」
「だったらここで決めてしまおうじゃないか。」
「今こそ君が望んだ大魔王にしてあげよう。」
「供物としてその身を捧げ、大いなる闇の根源のチカラを宿すがいい。」
「今の君ではおとなしすぎてつまらない。」
「あの頃のように傲慢に、強引に。憎み、恨み、妬んでおくれ。ほら!」


ユシュカは闇の根源の眷属に成り果てた。
「腹の底からチカラがわいてきやがる。」
「これが闇の根源との契約か。悪くない。」
「こいつが大魔王だと?」
「なんの覚悟も持たない者が?」
「何一つ背負うものすらない者がか?」
「お前は俺のしもべくらいがちょうどいい。」
「今ここで示さなくてはならん。」
「大魔王に相応しい者は俺だけだとな。」
「このユシュカが導こう。」
「魔界の未来を。」
「俺の理想を、強調する世界を。」
「魔界にあまねく増悪を炎の翼となしてアストルティアを支配し、魔界を救ってやる!」
「俺こそが真なる大魔王だ!」
主人公は襲いかかってくる大魔王ユシュカを倒した。


主人公の頭の中にユシュカの声が響く。
「魔剣アストロンをここへ。」
「このままでは奴は爆散する。」
「身体に魔剣を突き刺して鉄塊化させろ!」


主人公は魔剣アストロンを大魔王ユシュカの身体に突き刺した。
ユシュカの命は燃え尽きようとしていた。
「お前がいなかったら、夢を叶えても意味がないじゃないか・・」
「だから一緒に休んでもいいよな・・ナジーン・・」


ユシュカの目の前に魔剣アストロンを構えたナジーンが現れた。
「思考を止めることは死ぬことと同じ。」
「そう言ったのはあなたでしたよ。」


「あはは。どこにもいないと思ったら、やっぱりあの時から魔剣に宿っていたのか。」
「さっさと声かけろって。」


ナジーンが言う。
「深い眠りについていました。」
「しかしこの魂はとても不安定なもの。」
「話せるのはこれが最後になるでしょう。」
「副官として王の怠慢は見逃せません。」
「まだ戦えますね?」


ユシュカはナジーンが差し出した魔剣アストロンを手にとった。
「行くのか、ナジーン。」
「お前は本当にそれでいいのか?」


ナジーンが答える。
「今のあなたならひとりでもやっていける。」
「未練がないと言えば嘘になるが、肉体を失ったこの身ではどうにもならない。」
「さようなら、ユシュカ。」
「あなたは私が失った光そのものだった。」


ユシュカは魔剣アストロンで自分の身体を刺した。
「お前との血の契約だ。」
「その生命も運命も俺と分かち合え。」
「俺が死ぬ時までお前は俺の副官だ!」
「お前のチカラが必要なんだ。」
「一緒に行こう、ナジーン!」


ナジーンはユシュカが差し出す魔剣アストロンを掴んだ。
「どこまでもお前と共にあろう。」


ユシュカが復活し、握られた魔剣アストロンにナジーンの魂が宿る。
「我が魂は主の剣に宿りて今ここに。」


ユシュカが魔剣アストロンを構える。
「異界滅神ジャゴヌバ!」
「貴様を倒すため死の淵からわざわざ戻ってきてやったぞ。」


魔剣アストロンから声がする。
「我が王を愚弄し、その理想を侮辱した罪。」
「己が死をもってあがなえ。」


ナラジアを追いかけ、ユシュカと共に下層に進む。
「闇の底へようこそ、主人公。」
「君を待つ間ずっと考えていたんだ。」
「ひょっとすると君はこの世界にたったひとつ残された大いなる可能性なんじゃないかって。」
「光の世界で生を受けながらも君が歩んできた道は祝福されているとは言い難いほど困難の連続だったね。」
「何より故郷を滅ぼされたあの時、君の心は復讐や増悪、恐怖といった闇のチカラに囚われたはずだ。」
「だというのに君は光の神々に愛され異界のチカラを使いこなし、果ては魔族共を従えてまでここに立っている。」
「もしかして光と闇が入り混じること、君の存在こそが協調なのかい?」
「僕はその協調なるものが気の遠くなるような神々の戦いに終止符を打つんじゃないかってとっても期待しているんだ。」
「神すら知らぬ未知の概念を体現する者よ。」
「今からでも遅くないから僕の手を取って真の大魔王になろうよ。」
「残念だけど君の意思は関係ないんだ。」


ナラジアは闇の根源の手を主人公に放つが、女神ルティアナの光のチカラに守られた。
「もの者に触れさせはせぬ!」


「なんだ。しぶとく生きていたの?」
「あれほど命の源を散らしてやったのに。」
「ルティアナ、僕に一度負けているくせに、また同じことをくり返すつもりかい?」
「仕方ない。つきあってやろう。」
「魔界の底でわだかまった増悪と怨念、恐怖と絶望、闇の根源のもとにその全てを結集する。」
「光あるところに必ず闇はある。」
「だが闇があるところに必ずしも光はあるだろうか。」
「否!闇はそれだけで在ることができる。」
「光など不要なのだ!」
ナラジアはジャゴヌバと同化した。
「我は異界滅神ジャゴヌバ!」
「彼方より来たりし大いなる闇の根源。」
「あまねく闇を統べ、光を根絶する永遠偉大なる滅びの神なり!」


主人公たちは異界滅神ジャゴヌバを倒した。


「滅びの神に肉迫するだと?」
「そのような者は幾星霜現れなかった。」
「光と闇の交わりし者よ、これが協調のチカラか。」
「寄越せ。」


女神ルティアナが光を放つ。
「邪悪なる闇よ。」
「ことごとく滅せよ。」
「今こそ我が内に宿る創生のチカラその全てをもって貴様を消し去らん!」


異界滅神ジャゴヌバが苦しむ。
「創生のチカラ・・」
「女神ルティアナよ。」
「我は貴様の滅びを渇望する一方で貴様そのものを求めていたのやもしれぬ。」
「我は思案した。」
「闇と光は絶えず反発し、戦いは果てぬ。」
「封印の中じっと身を潜め、目を凝らして。」
「我は試行した。」
「あまたの大魔王を鼓舞し、増悪と憤怒でアストルティアの光を削ぎ落とすため。」
「そして我は到達した。」
「光と闇の交わりし者がもたらした協調の真髄に。」
「光在るところ必ず闇は在る。」
「強い光であるほど影もまた濃くなり、闇はより一層深くなる。」
「光を飲み下した深淵なる我が闇で、あまたの生命を、思念をひとつに統べること。」
「それこそが協調だったのだ!」
「目覚める!これぞ我が求めていたものだ!」


ジャゴヌバは女神ルティアナの光を全て身体の中に取り入れた。
「我が名は絶対滅神ジャゴヌバ。」
「あまねくものを支配する混沌の神なり。」


「主人公、どうかこの世界を守って。」
女神ルティアナは世界樹の花ごと消滅した。


「完全な存在となった我が前に、貴様たちのチカラなど取るに足らぬわ。」
「全ては闇より来たりて闇へと還る。」
「恐怖の底で息絶えるがよい。」
「我は真の協調をここに得たり。」


どこからか声が聞こえる。
「聞け、アストルティアの子らよ。」
「今、大いなる闇の根源が世界を破滅へ至らしめんとしている。」
「滅びに立ち向かいしは世界も種族も異なるあらゆるしがらみを乗り越えて絆を結び、手を取り合った闘戦士たち。」
「アストルティアの子らよ。」
「戦い続け挑み続ける者たちへどうか、そなたらのチカラを貸して欲しい。」
「祈り、願い、想うのだ。」
「そならたの光あふるる魂の輝きは彼らを守護するチカラとなろう。」
「聞け、魔界に生きるアストルティアの子らよ。」
「かつて我は魔瘴から世界を守るため魔界を汚された地として切り離した。」
「だがそれは過ちであった。」
「魔瘴はそなたらの姿形を変えたが、久遠の時を経ても人の心は失われなかった。」
「魔界の子らよ。どうかそなたらも滅びに立ち向かう者たちのため祈り、願い、想い、協調してほしい。」
「そこにチカラが生まれる。」
「神をも超える比類なきチカラが。」
「我が愛しき子どもたちよ。」
「今こそアストルティアをひとつに!」
皆の祈りが光となり、主人公に注がれる。
「主人公、そなたを慕うアストルティアの光、すぐそこに感じられるか?」
「そなたの冒険がそなたを助ける。」
「苦難の道を歩む旅路で手を取り合ってきた仲間たちとの絆が今、闇を打ち払わん!」
「魔王ユシュカ、そして魔剣に宿りし高潔なる魂よ。」
「我がチカラをそなたらに託す。」
「創生の刃で闇を払い、主人公を勝利へ導くのだ。」


絶対滅神ジャゴヌバが言う。
「小賢しいことを。」
「このような寄せ集めのチカラが一つにまとまるなどできるはずもない。」
「完全なる協調は闇が全てを覆ってこそ。」
「いやしき光、喰らいつくしてくれよう。」
「我こそは大いなる闇の根源なり!」


主人公たちは襲いかかってくる絶対滅神ジャゴヌバを倒した。


「グヌオオ、いまわしき寄せ集めごときが。」
「我はルティナを飲み下した。」
「光と闇は我にこそあり。」


ユシュカが言う。
「貴様は何もわかっちゃいない。」


絶対滅神ジャゴヌバの頭上に光が降り注ぐ。
「なぜだ。なぜなのだ。」
「種も主張も光も闇も不揃いでバラバラではないか。」
「それがなえ貴様のもとでひとつになることができている?」


魔剣アストロンに宿るナジーンが言う。
「たとえ命のありようがそれぞれに異なろうと降りかかる災いに立ち向かうため私達は手を取り合うことができる。」
「そこに共通するのは大切な誰かを守りたいという人の願いだけだ。」


ユシュカが言う。
「魔界とアストルティアのチカラ、今こそひとつに。」
「これが真の協調だ!」
「滅びよ!悪しき闇の根源、絶対滅神ジャゴヌバ!」


「ミナデイン!」
天空から巨大な光の雷が絶対滅神ジャゴヌバに落ちた。
「光と闇が交わりし・・これが協調・・」
「大いなる神をも滅ぼす・・底しれぬチカラ・・」
「イルーシャ・・君は・・」
絶対滅神ジャゴヌバは消滅した。


世界樹の花びらがひとひら、天から舞い落ちる。
「アストルティアの子らよ。」
「よくぞ大いなる闇の根源を討ち果たした。」
「そなたたちの活躍が神話の時代より続く聖戦に終止符を打ったのだ。」
「闇の根源が滅びたことによりもはや新たな魔瘴は生み出されることはない。」
「だがこの世界に蔓延した魔瘴が完全に霧散するまでコレより先、久遠の年月を費やす必要があるだろう。」
「愛しき子らよ。」
「我はもはやチカラを貸すこと、あたわぬ。」
「その日が来るまで、どうか強く生きて欲しい。」


ユシュカが言う。
「アストルティアへの増悪を完全に消化しきれるとはとても思えない。」
「世界は大きく変わらないまま続いていく。」
「考え方が違えばぶつかることもある。」
「対立は簡単には消え去りはしない。」
「それでも前に進むんだ。」
「俺は絶対に忘れない。」
「アストルティアと魔界が手を取り合い、滅びの災いに勝利したこの日のことを。」
「俺たちには未来を切り開くチカラがある。」
「ふたつの世界を背負って立つ主人公こそがその証だ。」


「主人公、そなたが築く新たな未来を信じている。」
「我は最後の務めとして闇の残滓を打ち消すため光の河へと戻り、神としての役割を終えよう。」
「そなたらが手を取り合い歩む道が輝かしい明日へ続くことを未来永劫願っている。」
「ありがとう、アストルティアの子らよ。」


大魔王城で吉報を待ちわびていた弟たちは大魔王の凱旋を大いに喜び祝福した。
大魔王主人公が仲間たちと共にジャゴヌバを討伐したという噂はまたたく間に世界中に広がり、魔界と主人公に縁の深い者たちを大魔王城に招待した。
戦勝記念の宴が開かれることになった。


魔仙卿の面を被った弟が言う。
「偉大なる大魔王によって闇の根源は滅び去り、女神ルティアナは我ら人の子に世界を託してこの世を去った。」
「我らは大魔王の意思のもとアストルティアと魔界で手を取り合い新たなる未来を築いていこう。」
「大魔王主人公の栄光を称えよ!」
「我ら大魔王の伝説を永久に語り継がん!」


ユシュカが主人公に近づいてきた。
「魔王としもべという形から始まった俺達の関係だったが長い長い旅の果に大魔瘴期を乗り越え魔界を救うことができた。」
「魔界とアストルティアが協調できたのはお前が架け橋となってくれたおかげだ。」
「主人公が大魔王でよかったと心の底から思ってる。」
「本当にありがとな。」
「だが2つの世界のさらなる友好を目指すにはお前を魔界に縛り付けていつまでも頼ってばかりいたんじゃ駄目だ。」
「ひとりひとりが自分の意思で異なる世界の者と交わり対等な関係を結んでこそ真の協調の世界が訪れる。」
「だから俺もお前とはちゃんとした関係になりたいんだ。」
「異なる世界の対等な友人として。」
「これからもよろしくな、主人公。」


宴が終わった。
イルーシャの部屋から光が漏れている。
中に入るとイルーシャがいた。
「女神ルティアナが光の河となってその意思が消滅しかけた時、最後にひとつの願いを残したの。」
「人と共に生きてみたかったって。」
「その思いが光の河の中で形になって、あの時、そう・・私は・・」
「ナラジアが背中を押してくれたの。」
「今ではもう・・すべてが夢のようで。」
「よく思い出せないけど・・」
「ただいまを言ってもいいのかしら。」
「おかえりなさいって言ってくれる?」


主人公は「おかえり、イルーシャ」と言った。


イルーシャがニッコリと微笑む。
「ただいま。」


アストルティアの上空に巨大な浮遊城が出現した。
それを見たフォステイルが言う。
「ついにこの時代にも現れたか。」
「選ばれたのはいったい・・」


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